ジムロジャース氏は現代のノストラダムスか?

「世界恐慌は早ければ2025年にも。私の生涯で最悪の事態になるでしょう」

読者からの質問
 近年中に世界恐慌は起こるでしょうか?今のバブルはいつはじけるでしょうか?私は金先物ダブルブルで積立を始めようと思っています。いい投資だと思いますか?円安はどこまで進むのでしょうか?
ジム・ロジャーズ氏の回答
 大きな問題が起きたときに備えて、私は金も銀も保有しており、売るつもりはありません。何か問題が起きると、世界はいつも金と銀に目を向けてきましたよね。そして、これからもそうし続けるでしょう。だから私は、もしまた世界が大きな経済問題を起こしたときに備えて、金と銀を保有しています。
 おそらく来年か再来年に世界恐慌は起きるでしょう。というのも、2008年からの歴史を見てください。2009年以降、いたるところで負債が急増しています。アメリカだけでなく、どこの国でも食べることに困っている方がいます。中国でさえ、負債を抱えています。だから、次に問題が起きたら、私が生きている間で最悪の事態になるでしょう。
 だから心配してください。でも皆さん、何が起きているのかを理解すれば、心配にはなるでしょうが、備えはできるはずです。そして、何が起きても大丈夫なように準備すれば、おそらく上手くいきます。どんなに悪い状況でも、いつも上手くいく人たちはいます。あなたがその一人になることを願います。私も生き残ることを願っています。
 金先物に関して、トレードの仕方によっては、誰にでもできるものではない気がします。しかし、自分のやっていることが分かっていれば、先物で大金持ちになることはできるでしょう。
 レバレッジは破産することもあるので気をつけてほしいです。ほとんどの人が苦しみますが、自分のやっていることが分かっている人にとっては、レバレッジはすぐに大金持ちになれる手段です。そのことを十分に理解せずに先物を見ている人のために、このような注意書きを入れておくべきだと感じました。
 もし、あなたが自分のやっていることを十分に理解し、わかっているのであれば、先物は素晴らしいものです。
 バブルが弾けるという点では、私たちは何も時間を計ろうとしているわけではありません。今度、株式市場の問題、経済の問題が起きたら、私の生涯で最悪の事態になるでしょう。というのも、前回問題が起きた2008年と比較すると、負債が大きな問題になっているからです。
 2008年のリーマンショック時には中国が世界を救済してくれました。しかし今、中国でさえ莫大な負債を抱えています。日本もアメリカも驚異的な負債を抱えています。つまり、世界を見渡しても、これほど多くの負債を抱えた時代は、世界の歴史上ほとんどないのです。しかも、それは毎日増え続けています。
 アメリカや日本の現状を見れば、人間が物理的に返済できる方法はありません。これは持続可能な状況ではありません。
 それと円安は対ドルでどこまで進むのかという質問ですが、私の生涯の中で、対ドルでの375円という数字を見たことがあります。円相場が375円だった時、日本は健全だと誰もが思っていました。健全な国で、経済もうまく回っていました。しかし、375円以降、日本の借金は急増し、人口は減少しています。
 では、なぜ円は再び375円にならないのでしょうか?なぜなら、日本の銀行家たちは毎日、目を覚ますと全力でお金を刷り始めるからです。彼らはそれが得意なのです。日本人は決心すればいろいろなことができます。
 しかし、なぜ円が崩れないのか私にはわかりません。今後数年のうちに――それを防ぐことができるのは、ドルがさらに悪化した場合だけでしょう。米ドルが大惨事になることです。それに比べれば、終わりは良く見えるだろうが、良くはないでしょう。
「つまり、日本円のファンダメンタルズは最悪です」

読者からの質問
 有事の円買いと昔は言われていましたが、中東情勢が悪化すると、むしろ円安になっていると感じます。円の信認は低いのでしょうか?金が上昇していますが、これは無国籍通貨で、どこかの通貨と違って負債が紐付けされていないからでしょうか?「危機の時の円」という言葉は、もはや当てはまらないと思いますか?
ジム・ロジャーズ氏の回答
 円に関連して、日本には「危機の時は円」という言葉がありました。昔は皆さんもよくご存じだったと思います。しかし今、中東情勢が悪化し、円はさらに安くなっています。
 円に対する信認が低下しているということです。そして、最終的に信頼が地に落ちるのには理由があります。人口減少が15年も続いている中で、借金が急増しています。つまり、ファンダメンタルズが最悪です。
 このような国は、ほとんどの場合、通貨が下落します。通貨を買うのが良いとは限りません。100年前、イギリスは最も豊かでした。世界で最も強力な国でナンバーワンでした。50年後、イギリスは破産しました。そしてIMFに救済されなければならなかった。これは多くの国で起こったことです。
 米国は今や巨大な債務国であり、日々悪化している。米ドル。今、ドルが強いのは、人々が他に何をすべきかを知らないからでしょう。しかし私は、米ドルが再び弱くなる時が来ると断言します。
 人々はそれぞれ好きなように投資先を決定するべきだが、私は終了しようとしている円を買うつもりはありません。
 また「金は無国籍通貨であり、資産に結びついた負債がないため、上昇しているのか」という点に関して、それは正しい理由(認識)の一つだと私は思います。
 多くの人が金を買っており、その習慣は数百年、数千年も続いてきました。貴重な富の貯蔵手段として、銀も同じ扱いです。これは何世紀も続いてきました。国際的に認められており、簡単に持ち運べるものは価値があり、その価値を維持してきたんです。
「どこかに必ずチャンスがある、それを見つけ出すんです」

読者からの質問
 日銀が算出する「円の実質実効為替レート」の推移を見ると、最近の円の購買力は1970年代前半とほぼ同レベルで推移していて、変動相場制移行後の最安値である2015年6月とさほど変わらない水準にまで低下しています。私は円で収入をもらって海外に住んでいるため生活が苦しいです。下りのエスカレーターに乗っているようです。収入や資産を維持するためには、日本人はどうすればよいでしょうか?
ジム・ロジャーズ氏の回答
 引っ越すことです。この相談者はもうやっていて、海外に日本の会社を作っているようだね。それで、彼らはまだ給料を円で受け取っているということですね。
 あなたの会社は問題を知っているんでしょうね。彼は問題を把握する必要があります。
 そして解決策として、従業員がより多くのお金を現地通貨で稼ぐ必要があります。
 日本では人口が減少し、負債が増加しています。そして、それはどの国の通貨にとっても良いことではありません。だから、事実を直視しなければなりません。そして多分、調整が必要でしょう。別の会社で働く、別の国で働くなどです。
 日本には多くの利点があります。それに対処する必要があります。そして何をすべきかを考える必要があります。そして多分、その解決策は、あなたの人生で何かを劇的に変えることです。
 私はあなたやあなたの技術についても知りません。でも、どこかに必ずチャンスがあることだけは知っています。そしてそれを見つけ出すんです――
「トランプが大統領になれば、株式にとって最後のラリーになる可能性が高い」>(以上「MAG2」より引用)




ジム・ロジャーズ氏「最後の米株ラリーを経て世界恐慌は2025-26年、私の生涯で最悪の事態になるでしょう」」と題する論評があった。ジムロジャース氏は投資家というより予言者に宗旨替えしたかのようだ。
 世界恐慌が必ず来る、とジムロジャース氏は繰り替えし発言しているが、まさにノストラダムスの大予言を聞いているかのようだ。ノストラダムス氏は1999年末に地球は滅亡する、と大予言していた。しかし2000年1月1日もいつもの通りに夜明けを迎えた。

 ジムロジャース氏は手持ち資金を金や銀に変えて保有しているという。それが値上がり傾向にあり、世界共通の「安定資産」だからだと説明している。しかし自由市場ではモノの価値は需要と供給で決まる。金価格が上昇しているのは需要増に対して供給が少ないからに他ならない。
 金の需要は中国だ。自国通貨を信用しない中国民が金購入に動いている。だから金価格が上昇している。ただ、それだけのことだ。ジムロジャース氏は日本円を価値が下落している、と貶している。だが昨今の円安は日本の資産総額に対する貨幣発行量で除した、単位当たり「円」に対する価値が適正に評価されたものとは思えない。多分に投機相場の様相を呈しているのではないだろうか。

  ジムロジャース氏は米国や日本をはじめとして、世界各国(政府)が負債だらけになっていると慨嘆しているが、負債は必ずしも悪ではない。各国の政府借金は社会インフラなどの投資に回ればその国の経済成長の礎になる。米国の政府借金は社会インフラの投資はもちろんだが、強大な軍事力を支えるために支出されている。それは米国にとって必ずしも悪いこと
ではない。
 日本の場合は歳入に対して歳出が多いため、その他らない部分を国債発行で賄っている。日本政府の赤字体質という構造的な問題もあるが、必ずしも国債残が日本政府を破綻させるほど巨額ではない。財政を健全化させるためには経済成長すべきだが、そうした方針を自公政権は30年来取って来なかったし、現在も経済成長型の予算編成になっていない。バカげたことだが、政府は自ら衰亡の経済政策を取り続けている。

 ジムロジャース氏は大恐慌が近いうちに起きると予測しているが、私は起きないと予測する。なぜなら世界経済は1929年9月4日のニューヨーク株式市場の大暴落に端を発したものだが、現在の国際金融は当時とは比べ物にならないくらいの協調関係が構築されている。
 だから2015年末に上海株式市場が大暴落した当時、世界各国の株式市場は微動だにしなかった。2008年のリーマンショックが世界に大きな影響を与えたのはサブプライムローンという米国の金融工学と称する「ローン詐欺」を見抜けなかった投資家たちが大損害を被ったからだ。だが国際金融の規模と比較して、米国の投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が抱えていた負債は約64兆円でしかなかった。確かに当時としては史上最大の経営破綻だったが、中国の不動産会社各社が抱えている負債額(たとえば恒大集団は34兆円と云われているが)と比べたら二倍程度でしかない。

 たとえば中国高速鉄道一社を取っても、負債総額は122兆円に達していると云われている。中国の官民が抱える負債総額は1京3000兆円と云われている。中国経済は崩壊過程に入っているが、それでも世界の金融市場は激震に見舞われていない。なぜなら、対中デカップリングが進んでいるし、なによりも中国「元」が国際通貨でないからだ。
 世界各国(政府)が巨額な負債を抱えている、とジムロジャース氏は近いうちの大恐慌の根拠に挙げているが、政府負債と国家負債とは異なる。まさか、そうした簡明な政府財政と国家金融の仕組みをジムロジャース氏はご存知ないのだろうか。

 米国政府が抱える双子の赤字は危機的だが、米国の国家金融は健全だ。米国政府は何度も支払い不能に陥っているが、国際通貨ドルが為替市場から排除されることはない。もちろん日本政府が抱える国債残は巨額だが、日本国家の資産規模と比較すればそれは1/10にも満たない。だから日本円が安くなっても、円が国際通貨として信認を失い、為替市場から排除されることはない。
 もちろん世界各国は多かれ少なかれ政府債務を抱えている。しかし政府は家計簿とは異なる。債務を抱えることも経済政策の一環だし、財政のあり様も各国の経済政策の一環だ。家計簿なら一家の債務返済が収入を上回れば破綻するが、政府債務の場合は支払いと借入を同時に何度でも繰り返せば良い。むしろ先進諸国では政府債務償還と借り換えを予算書に表記しない国の方が多い。日本は丁寧に両建てで予算計上しているが、その両建て部分も含めてマスメディアが「巨額な債券償還額」だと騒ぎ立てて国民の不安心理を掻き立てる。何ともタチの悪い連中だが、それも財務官僚の差し金なのだろう。

 最後に、ジムロジャース氏は「トランプが大統領になれば、株式にとって最後のラリーになる可能性が高い」とトランプ氏を評しているが、果たしてそうだろうか。トランプ氏はジムロジャース氏のような投機家たちを設けさせるような株式相場を演出するとは思えない。彼は「Make America Great Agein」を達成するために、米国は資源大国の面目を取戻し世界経済に存在感を示すだろう。そのような経済政策に舵を切り、バイデン氏が米国を縮小させ衰退させた経済政策「グリーンニューディール」を廃棄し、経済政策を転換させるだろう。
 それは世界各国の経済にとって良いことだ。そして対中デカップリングをより一層強力に推進するだろうから、中国に投資している投資家たちは対中投資資金のすべてを損失処理しなければならなくなるだろう。この程度の予測は誰にだって出来るはずだ。ただ現代のノストラダムスになったジムロジャース氏は世界大恐慌の再来を予言するしかないのか。



<私事ながら>
 この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼がいかにして維新の功労者になり得たのか、維新以前の彼に関する著述は殆どありません。
 既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングの期日は7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。

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