中国の国際協調を破る「唯我独尊」体制の崩壊。

バイデン氏、関税引き上げは「ずる賢い」中国から国を守るためと説明
◎現時点で年間180億ドル相当の輸入品に影響へ-ホワイトハウス
◎バイデン、トランプ両氏はともに中国に対するタフな姿勢

 バイデン米大統領は中国からの輸入品に対する大幅な関税引き上げを発表した。11月の米大統領選での再選を目指し、重要産業で国内製造業の強化を図る。
 大統領は関税引き上げを、窃盗や欺瞞(ぎまん)、不当な廉価販売から米国の労働者と企業を守るために必要な措置だと正当化した。
 半導体チップやバッテリー、太陽電池、重要鉱物を含む広範囲にわたる中国製品について、輸入関税率を引き上げる。先に引き上げの方針が伝えられた一部の鉄鋼やアルミニウム、電気自動車(EV)に加え、港湾クレーンや医療用品の関税率も引き上げる。ホワイトハウスは、現時点で年間180億ドル(約2兆8200億円)相当の輸入品に影響が見込まれるとしている。
「中国の戦術は競争ではない。競争を否定するずる賢い行為だ。米国にその被害が及ぶのをわれわれは目にしてきた」とバイデン大統領は14日、ホワイトハウスのローズガーデンで述べた。
 今回の動きは、最初にトランプ前大統領が課した対中関税の最も包括的なアップデートであり、対中貿易へのタカ派的アプローチが引き続き米有権者の間で人気があることを認めるものだ。トランプ前政権が課した対中関税の引き下げはない。
 バイデン大統領は、米国として新型コロナウイルス禍で輸入に困難を抱え、政権が発足してからは増強を図ってきた半導体チップや環境に優しいエネルギーなど主要産業に絡んだ製品の関税率を引き上げる。
「中国政府は国内企業に国家予算をつぎ込んでいる」とバイデン氏。「中国はこれらすべての製品に多額の補助金を出し、世界が吸収できる量をはるかに超える生産を中国企業に促し、そして余った製品を不当に安い価格で市場にダンピングしている」と説明した。
 ただ、バイデン政権は注意深くバランスを取る必要がある。関税引き上げは既に高インフレの打撃を受けた米消費者にさらなる物価上昇をもたらすリスクがあるほか、中国側が反発して報復措置を講じる恐れもある。
 中国との対立を望んでいるのではなく、ただ 「公正な競争 」を望んでいるだけだとバイデン氏は主張。関税は国民が欲しい自動車を買うことを制限するものではないと、消費者の理解を求めた。自身のアプローチは、中国製品全体を対象としたトランプ前大統領の関税方針より好ましいと主張。トランプ氏のやり方は米国の家計に1500ドルのコスト増という負担をかけると批判した。
 新たな関税措置は2024年から26年にかけて時期をずらして発効が予定され、トランプ氏がホワイトハウス返り咲きの場合に打ち出すとしている一律60%の対中関税に比べて的を絞ったものとなる。EVの輸入関税率が4倍と最も大幅な引き上げとなり、この他の輸入品は2倍となったり、初めて賦課の対象となったりする。
 中国は直ちにこれを強く批判。対抗措置を講じると表明した。ただ措置の具体的内容には触れていない。
 中国商務省は声明で、「中国は自国の権利と国益を守るため断固たる措置を講じる」と表明。「米国は誤った行動を直ちに修正し、中国に対する関税引き上げを取り消すべきだ」と付け加えた。

ターゲット
 中国製半導体の輸入関税率は現行の25%から、25年までに50%に倍増される。米国での生産増強に向けた多額の補助金を通じ、バイデン大統領が製造業強化策の中核としてきた半導体産業をターゲットとするものだ。
 賦課の目的は、比較的古い世代の部品でありながら、世界経済にとって引き続き重要ないわゆる「レガシー半導体」の生産を中国が加速させるのに対抗することだ。バイデン政権は最近、自動車や航空宇宙、国防などの100社余りを対象として、こうした旧世代半導体のサプライチェーンの調査を終えたところで、欧州連合(EU)も同様の独自調査の開始を検討している。
 一部の重要鉱物と港湾クレーンは今年、25%の関税を新たに課され、天然黒鉛と永久磁石は26年に同率の関税賦課の対象となる。
 EVの輸入関税率の引き上げは今年発効の予定で、現行の27.5%が最終的に102.5%となる。中国からの鉄鋼・アルミ輸入のうち、現在の関税率が0%ないし7.5%の製品については今年25%に税率を引き上げる。
 EV向けリチウムイオン電池とバッテリー部品の関税率は今年、7.5%から25%に引き上げられ、EV向け以外のリチウムイオン電池の関税率も26年に同様の引き上げとなる。太陽電池の関税率は今年、25%から50%と2倍になる>(以上「Bloomberg」より引用)




 経済崩壊する中国が唯一縋ろうとした「藁」がバイデン氏によって断たれた。「溺れる者、藁にも縋る」というが、経済崩壊する中国はEVと太陽光パネルの輸出に経済復活の「夢」を託した。しかしEVと太陽光を合わせた輸出高は中国GDPの2%にも満たない。たとえ倍増させたところで実質マイナスに陥った中国の経済成長率をプラスに転換させるほどの力はない。
 なぜならEVも太陽光パネル製造も裾野の広い産業とは云えないからだ。ことにEVは公園のバッテリーカーにリチウムイオン電池を大量に積載しただけの代物だ。決して新時代の乗り物でもないし、環境に優しいゼロカーボン社会(それが決して正しい未来目標とは思わないが)に寄与する自動車ではない。太陽光発電パネルに到っては自然破壊の代名詞のようなものだし、製造地がウィグル地区であることから、何がなされているか国連の人権左派活動家連中は黙っているが、酷い人権侵害がなされていることは想像に難くない。

 だからバイデン氏がEV輸入関税を7%から25%に引き上げるのは賢明な措置だ。しかしバイデン氏はバリ協定に参加した大統領だから、彼はバリ協定に縛られているが、米国内で販売される新車のEV化率の達成をどうするのだろうか。
 トランプ氏はバリ協定という環境左派がゼロカーボンなどと出来もしないしやるべきでない施策を世界各国に強要するバカげた運動から「下りる」と宣言している。だからトランプ氏が大統領に復帰すれば堂々とEV化策を撤回できるし、米国の自動車産業の城下町は息を吹き返すだろう。

 それだけではない。環境左派がいかに荒唐無稽な政策を展開しているか、ドイツを見れば明らかだ。ドイツには環境左派の集団「緑の党」があって、ドイツ政治を根底から覆し、欺瞞に満ちた政治を展開している。環境を守るためならオオカミに喰われても良い、というがごとき政治など、人としてあるまじきだ。実際にドイツではオオカミが爆増して、都市部でもオオカミの姿を見かけるという。
 日本でも人里に下りた熊を殺処分すると、動物愛護だとか環境団だとかを主張する体が殺処分は怪しからん、と息巻くが、それなら熊にあなたの子供を供えるのか。一度、人里に下りた熊は二度三度と人里に下りて、餌を漁る。その方が山を歩き回って餌を探すよりも簡単だからだ。そのうち人を襲い始めるのは時間の問題だ。だから一度人里に下りた熊は殺処分すべきなのだ。

 中国は先進自由主義諸国との貿易で莫大な利益を上げてきた。だから今後とも先進自由主義諸国に輸出して稼ぐ産業構造を変えることはない。だから関税を高くして自国産業を保護しないと自国産業が成り立たなくなる。中国の利益と先進自由主義諸国との利益は相反する構造になっている。
 なぜそうなったのか。それはグローバル化による国際分業論に従った愚かな企業経営者が中国に進出して、製造業の基本を教え、貿易のあり方を教えたからだ。一度産業と貿易の関係を覚えてしまえば、それを拡大再生産するのはバカにでも出来る。バカに出来ないのは頃合いを見つつ、協調し合うことだ。残念ながら、中国の政府首脳は余り賢くなかった。ただただ厚顔無恥なだけで、その厚かましさで先進自由主義諸国に「戦狼外交」を展開した。

 中国を追い詰めたら暴発して台湾軍事侵攻をするのではないか、という評論家がいるが、台湾海峡の有事は中国にとっては一大事だ。なぜなら中国の貿易の70%は海上輸送だからだ。その内原油などのエネルギー輸送は90%を海上輸送に頼っている。そして中国の原油備蓄量は一月分でしかない。
 中国が台湾軍事侵攻すれば、中国の海上輸送はすべて断たれる。日本の場合はマラッカ海峡を通らないで大きく迂回すれば、海上輸送が途絶することはない。つまり台湾海峡の有事は日本の有事ではない。中国は戦争により海上が封鎖されるため、民生用の石油は一月で払底する。それでは軍事用の石油の備蓄はどうかというと、いずれも怪しい。軍のタンクは空っぽではないかと云われている。軍の備蓄米は果たして軍の倉庫を満たしているのだろうか。

 米国民主党は米国を弱体化させた。それのことは先日の私のブログに掲載した。だから中国が大きな顔をしてEUを訪問したりしている。しかし米国とEUとの関係に楔を打ち込むほどの力は、中国の外交力にまだない。まだまだ未熟な国力だ、ということを理解せず、グローバル形によって国際社会に組み込まれた「世界の工場」という立場を過信して、先進自由主義諸国を制圧しようと目論んだ。しかしあくまでも「世界の工場」は工場でしかない。
 工場が「製品を独占する」と宣言すれば、工場を展開している企業は安全な場所へ工場を移すだけだ。そうする「世界の工場」は「世界の工場の廃墟」になるだけだ。そうなりつつある深圳や広州の現地を見て、習近平氏は焦っているのだろう。しかし時既に遅しだ。先進自由主義諸国は対中デカップリングの動きを逆戻りさせることはない。



<私事ながら>
この度、私の歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。

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