農政への提言。日本もEUのようなCAPを導入して、農家の所得補償に農政を転換すべきではないだろうか。

EU最大の農業国の現状と課題
 フランスは、「自由・平等・友愛」を表した青・白・赤のトリコロールの旗が美しいヨーロッパを代表する国だ。国土は日本の約1.5倍、人口はおよそ6,600万人、国内総生産(GDP)は2兆8,064億ドル(日本・4兆8,985億ドル)、アメリカ、中国、日本、ドイツに次ぐ世界第5位の経済規模を誇る。また、一人当たりの国民総所得(GNI)は4万3,073ドルと世界水準の約4倍、日本の3万9,947ドルを上回るレベルだ *1。多くの先進国同様に第三次および第二次産業が経済の中心であり、年間8,370万人が訪れる世界最大の観光国である *2。
 一方で、農業生産額はEU最大であり、EU全体の19%を占める一大農業大国という顔を持つ *3。農地面積は国土全体の52.5%を占め(日本同12%)、EU最大の農地面積を有する。穀物生産量では、中国、アメリカ、インド、ブラジル、ロシア、インドネシアに次ぐ世界第7位。ほとんどの農産物において世界上位10位以内の生産量を誇る。主要農産物は穀物では小麦、大麦、とうもろこし、根菜ではばれいしょ、てんさい、畜産では牛肉、豚肉、生乳、チーズの生産が際立つ。また、ぶどうの生産も盛んでワインの生産量は世界第1位である *4。ちなみに、一人1日当たりの供給熱量で計算したカロリーベースでの食料自給率は、日本の39%に対して129%に達している *5。
「ヨーロッパのパン籠」とも称されるフランスだが、農業が置かれた現状は決して楽観的なものではない。1990年代以降農業者人口は毎年減少し、人口の都市部への集中に伴う都市周辺地域での農地転用、耕作地放棄による農地減少が進んでいる。また、生産効率化のために使用された過剰な窒素肥料による環境汚染も深刻な問題として指摘されている。こうした問題は、フランスのみならず日本を含む先進国の農業が直面している共通の課題ともいえるだろう。今後、それらの課題を解決し、いかに「持続可能な農業」を実現するか。それがフランスをはじめとする先進国各国の農業に問われている。
*1:2013年・国連統計
*2:2014年・世界観光機関UNWTO
*3:農林水産省Webサイト
*4: 2013年・ 「FAOSTAT」FAO統計データベース
*5:農林水産省「食料需給表」

フランス発、 世界の食料問題への解決策
 フランスを含むEU28ヵ国で共通して講じられている農業政策が、Common Agricultural Policy: CAP=共通農業政策である。1962年から導入されているヨーロッパの農業のスタンダードともいえるものだ。このCAPを牽引しているのがフランスであることはいうまでもない。現行のCAP制度は、2つの柱から成り立っている。第1の柱が農家への「所得補助」や「市場施策」である。第2の柱が「農村振興政策」で、環境保全や農村経済の多様化、競争力強化などの取り組みが進められている。こうした政策によって、単一市場で供給・価格を安定させ、農家の所得を維持することを可能としてきた。

農地保全のためにも、畑作と畜産を並行して行うミックス農業が推奨されている

 現在、CAPは環境保護やグローバリゼーションに伴う農家支援など近年の課題を考慮に入れながら、持続可能で生産性が高く、競争力のある農業を目指している。このため、食の安全と環境を保全し、持続可能な農業を実現するための有機農業に取り組む農家には追加補助金を交付するなど、推進策が講じられている。
 こうした、フランスおよびEUの農業、畑作市場へのクボタの参入はどのような意味を持つのか。今回のプロジェクトの中心的役割を担った一人である大型農機事業推進部長の山田進一は、クボタが目指す世界の食料問題解決の新たな一歩であることを指摘する。
「世界人口は2050年に95億人に達するといわれています。人類が生きていくために食料増産は必須のことですが、耕地面積は5~10%程度しか増えないとされており、人類の食料問題の解決は決して容易なことではありません。こうした現状を突破するために求められることの一つが畑作分野を中心とした食料増産であり、一層の生産効率化です。その実現のため、すなわち世界の食料問題解決に向けた新たな挑戦として、フランス、EUの畑作市場への本格参入があるのです」>(以上「For Eartt For Life Kubota」より引用)




 株式会社KubotaのGLOBAL INDEXというサイト(https://www.kubota.co.jp/globalindex/france/01.html)に掲載されていた記事が目に付いた。なぜなら日本の農業を農水省が高齢化した個人から取り上げて、農業法人に改編しようとしているからだ。
 そのために地方自治体主導の農地中間管理機構を全国に設置して、高齢者などが耕作を諦めた農地を一時的に預かって、農業法人に譲渡なり貸与する橋渡しをする「機構」だ。つまり日本の農業従事者の大半が高齢者となり、しかも後継者のいないため、多くの田畑が荒れるに任されるのではないかと、農水省は強い危機感を持っているようだ。

 しかし農業法人化したところで日本の農業が劇的に変わるわけではない。むしろ問題を農業法人に集約化するだけではないだろうか。
 EUではCommon Agricultural Policy: CAP=共通農業政策を実施しているという。1962年から導入されているヨーロッパの農業のスタンダードともいえるもので、このCAPを牽引しているのがフランスであることはいうまでもない。

 現行のCAP制度は、2つの柱から成り立っている。
第1の柱が農家への「所得補助」や「市場施策」である。
第2の柱が「農村振興政策」で、環境保全や農村経済の多様化、競争力強化などの取り組みが進められている。
 こうした政策によって、単一市場で供給・価格を安定させ、農家の所得を維持することを可能としてきたという。決して農業法人への農地の集約化ではなく、もちろん農業の法人化でもない。つまり農業を行う個々人を対象とした「所得補助」や「市場施策」だという。

 フランスの農家は所得の95%が所得補助の補助金だという。生活できる農業を実現させるためには農家の所得を上げるしかないが、そのためには農産物の販売価格を上げるか、補助金を農業者に出す、かのいずれかしかない。
 農産物販売で農業者の生活できる所得を確保する、ということにすれば消費者が直接農産物購入で農家に支払うことになる。それでは農産物価格が高騰して外国の農産物に国内市場を席巻されることになる。

 しかも農業は天候や病害虫などによって工業製品と比較して安定的な生産が出来ない。その場合は農産物価格に生産コストや農家の所得を転嫁すれば農産物価格は乱高下して安定的な農産物価格を維持することは困難だ。
 そうすると農家に対して「所得補償」することによって、農家が安定的な生活の糧を手に入れて農業に勤しめれる。この方がより良い策だと思われるが、日本はどうして農家の所得補償政策を実施しようとしないのだろうか。そして、なぜ農業法人という集団化へ向かおうとしているのだろうか。

 日本では農業を産業として見ているのではないだろうか。農業は農地を所有する農家が行う事業だ、という観念が希薄なのではないだろうか。農業法人化することは法人経営に携わる管理職が必要となる。当然ながら法人なら職務は細分化され、従事者は社員ということになる。作業標準たるマニュアルも必要になるだろう。CAP
 農業に法人化が向いているのか、という根源的な問題がある。農家が自己所有の土地を長年耕作し、農地そのものを知り尽くす、という営農のあり方は法人化では真似出来ない。そして肝心なのは農業法人が破産した場合にどうなるのか、という問題がある。

 農産物価格が市場任せなら破産することだってあり得る。そうしたリスク管理まで考えるなら、日本もEUのようなCAPを導入して、農家の所得補償に農政を転換すべきではないだろうか。さらに問題なのは、こうした論文が農水省から提起されたのでなく、農業機械を生産している農機具メーカーだということだ。日本の農業を真摯に考えているのはドッチた。


<私事ながら>
この度、歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにクラウドファンディングをはじめました。既に電子版では公開していますが、紙媒体でも残そうと思いますが原稿用紙1,000枚を超える大作で私個人の力では出版に及ばないため、よろしくお願い申し上げます。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」を読みたい方はこちらをクリックして下さい。

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