絶大なる権力は必ず絶大なる崩壊を迎える。

<プーチンの次の任期にはロシアにとっても世界にとっても暗い見通ししかない。新たな任期の6年は、プーチン自身も窮地に陥ることになるかもしれない>

 圧勝が確実視されていた大統領選挙を目前にした2月末、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2030年までの6年間に予算を重点配分すべき項目を明らかにした。6年間というのは新たな任期。もしこれを全うすれば、在任期間はソ連のスターリンを超える。
 2月29日の年次教書演説でプーチンは、ウクライナ侵攻についてよりも社会政策や自らの統治について多くを語った。ウクライナ戦争は、今やロシア経済とプーチンの統治を左右する中心軸となりつつあるのだが。
  プーチンの掲げる社会政策にはたとえば、人口構造危機への対策も含まれていた。プーチンは、ロシア人の平均寿命を2030年までに78歳まで延ばしたいと語った。78歳といえば任期満了時点のプーチン自身の年齢だ。もしそこまでプーチン統治が続けば、景気後退がさらに深刻化し、ロシアはウクライナや他の国々にさらに侵攻する可能性があると専門家はみている。 

内政重視をアピール 
 ブルームバーグによれば、2030年までの予算規模は総計で15兆ルーブル(約24兆円)。桁数が多いのは、1ドル=約90ルーブルという現在の為替レートからも分かる通り、ルーブルの価値が下がっているせいだ。 
「2024年はロシアとしては初めて、軍事予算と警察予算を合わせた額が社会予算を上回る」と語るのはロシアの野党政治家アレクセイ・ミニアイロだ。国防費は今年、ロシア政府の予算全体の3分の1を占めるという。 
「プーチンは、国民が戦争にひどくうんざりしていることも、今も戦争を強く支持しているロシア人がほとんどいないことも、国民は政府に内政に集中して欲しいと思っていることも承知している」とミニアイロは本誌に語った。
「プーチンはあたかも自分が内政にしっかり意識を向けているかのように見せたいのだが、実際にはそうではない」 ミニアイロは独立系世論調査機関クロニクルズの共同創設者だ。クロニクルズの1月の調査によれば、ロシア人の83%はプーチンと政府に対し、国内問題に集中して欲しいと考えていた。 
「プーチンはさらに多くの人々を前線に送り込むとともに軍需頼みの経済に引きずり込もうとしている」とミニアイロは言う。「国内経済はそのために大きな痛手を被っている」

■トランプ当選なら「ウクライナ侵攻勝利宣言」

 プーチンは2月の演説や国営通信社RIAノーボスチが13日に配信したインタビューで、西側諸国に対し強硬な発言を繰り返した。インタビューでは、ロシアは核兵器を使用する準備が整っていると述べるとともに、米大統領選を酷評した。米大統領選でドナルド・トランプが返り咲けば、ロシア政府とトランプの関係を巡る疑惑が再燃する可能性もある。 
「最大にして最重要の不確定要素は、2024年米大統領選で何が起きるかだ」と語るのは、コロラド鉱山大学のケン・オズゴッド教授(歴史学)だ。トランプと共和党内のトランプ支持派がウクライナでの戦争を早期に終わらせる意向を示しているからだ。
 「アメリカからウクライナへの支援を手控えると圧力をかけて交渉に持ち込めば、ウクライナは領土を回復できずプーチンの勝利になるだろう。すでにロシアの占領下にある地域以外の領土が手に入らなかったろしても、プーチンは勝利を宣言するだろう」とオズゴッドは本誌に語った。「そうした交渉の影響は長い間尾を引くだろう」 

■ねらいはNATOの分裂 では、
 ウクライナ戦争での勝利はプーチンがポーランドに侵攻したり、NATOと戦争を始めたりすることを意味するのか。 「いや、その可能性はそれほど高くないだろう。たとえアメリカがNATOから手を引いたとしても、NATOは依然として核武装をした強大な軍事同盟であり、大規模な反応を引き起こすような直接攻撃は無謀だ」と、オズコットは言う。 だがプーチンは、NATOの分裂を誘発するために、攻撃的なサイバー戦や情報戦を開始する可能性が高い、と彼は言う。
「プーチンは、ハンガリーのビクトル・オルバン首相やドナルド・トランプなど、ロシアに友好的な政治家の勢力を強化しようとするだろう」 英王立国際問題研究所のロシア・ユーラシアプログラムのアソシエイトフェロー、ジョン・ロウは、プーチン政権があと6年も続けば、ロシアは「次第に見通しの暗い状態」になると述べる。 
「多くのロシア人から見れば、プーチンは国民から未来を奪った存在だ。おそらく今から5~10年の間に、彼が掘り、ロシアが落ちた穴が、より明らかになるだろう」とロウは言う。 

■深まるロシアの孤立 
 アメリカがヨーロッパから遠ざかり、NATOの機能が低下するとしたら、「それはプーチンにとって自分の努力の成果であることは間違いないだろう。だがそれによってロシアはますます孤立し、ますます魅力のない国になっていく」、とロウは指摘した。 
 ジョー・バイデン大統領はロシアがウクライナの後に他の国々への侵攻を視野に入れていると主張し、プーチンはそれを「全くのナンセンス」と否定した。だが戦争が終わったときに、ロシアの指導者としてプーチンは国民に何を勝利として示そうとするのだろうか。 
「プーチンは、コストがあまりにも高くつくことから、ウクライナ全土を奪おうとは考えていない」と言うのは、米国防総省の政策顧問を務める元外交官ミエテク・ボドゥシンスキだ。 「むしろロシアが現在支配しているウクライナの国土の一部を、ロシアの飛び地として維持しようとするだろう。そうすることで、ウクライナを分裂させ、弱体化し、NATOやEUに加盟しにくくすることを狙っている」 
「プーチンがNATOと本格的に通常戦争を始めることを望んでいるとは思わない。だが同盟にくさびを打ち込み、偽情報やサイバー攻撃のような手段を使って、NATO諸国に代替戦争を仕掛ける方法を求め続けていくだろう」とボドゥシンスキは、付け加えた。

■締め付けはさらに厳しく
 プーチンは、民間軍事会社ワグネルを率いたエフゲニー・プリゴジンの反乱を阻止することができた。しかもこのところ戦場でロシア軍が勢いを増していることから、幸運に恵まれたと感じているかもしれない。また、ロシアで最も有名な反体制指導者のアレクセイ・ナワリヌイは大統領選の数日前に刑務所で不審死を遂げた。
 今度も、反プーチン派に対する弾圧の強化が予想される。 「ロシア国内で予想されるのは、さらなる弾圧であり、政権のメッセージに反する情報を遮断しようとする取り組みの強化だ。ソーシャルメディアプラットフォームへのアクセスをさまざまな形で妨げようとする可能性がある」と、『プーチン主義の掟』という著書があるニューヨーク州立シラキュース大学のブライアン・テイラー教授(政治学)は言う。 
「この24年間、プーチンの軌跡はほぼ一方向にしか向かっていない。それは自由が減り、抑圧が強まる方向だ」とテイラーは本誌に語った。 だがプーチンの勝利が必ずしも大統領として6年の任期に支障がないことを意味するわけではない。欧米からの経済制裁の影響はロシア経済に打撃を与え続ける上、ウクライナ東部の工業都市アウディーイウカで戦ったような激戦でロシア側が莫大な人的損失を被り続ければ、プーチンの支配を脅かしかねない。 

■プーチンに出口はない 
「あと5回もこんなことをすれば、すでに大きな負担を強いられているロシア社会は深刻な打撃を被るだろう」と、プーチン政権に批判的なシカゴ大学ハリス公共政策大学院のコンスタンチン・ソニン教授(経済学)は指摘する。 
「選挙がそれほど重要だとは思わない」と、彼は本誌に語った。「ミハイル・ゴルバチョフは就任1年目でソビエト連邦の大統領としての権力を失った。プーチンが再選されて、もう1期務めることになっても、政権は安泰ではない。毎年、危機は訪れる」 「プーチンには出口がない。戦争を止めることも、弾圧を止めることもできない」>(以上「NEWS week」より引用)




 「ロシア大統領選での圧勝はなぜプーチン凋落の始まりか」とは逆説的だが、あるいは真実かも知れない。なぜなら習近平氏を見れば明らかだからだ。
 習近平氏は独裁者として国家主席の任期二期十年を覆して、2023年に三期目に突入した。
万全の三期目を迎えたと思われたが、実際は一期目の途中から中国経済は経済成長のピークを過ぎて減速していた。しかし習近平氏は無理やりGDPのアクセルをフカし続けた。当然ながら、政府が経済のアクセルを直接的にフカせるのは投資部門に限られる。そのため社会インフラや住宅投資といった不動産投資を過熱させた。

 プーチンは戦争という経済アクセルをフカし続けている。もちろん戦争とは多大なる政府支出であり政府消費だ。しかし社会インフラとは異なり、国民へのリターンは皆無だ。むしろ国民に犠牲を強制する。まさに国民の命を捧げよ、とギセイを命じる。
 習近平氏の経済政策の失敗は自由市場を利用して急成長した中国経済の成長メカニズムを理解しないで、自由市場をいきなり統制したことだ。2015年の上海株式の大暴落に慌てて市場取引を禁じた。それが「改革開放」で成長した経済政策の転換点だった。しかし習近平氏も彼の側近たちも自分たちが重大な経済政策の転換を行った、という自覚はなかった。

 プーチンは戦争は兵器と兵隊でやるものだと考えている。到って前近代的な政治家だ。だから二年前にウクライナのキーウへ向けて進撃命令を発する前に、兵站を充分に構築してなかった。三日でウクライナを占領できるから携行食糧だけで充分だと判断したようだ。
 しかしたとえ三日でキーウを制圧したとしても、ウクライナ全土を制圧するには一月ほどは掛かるだろう。その間、19万人ロシア軍を養うには、それ相当の食糧と弾薬などの補給物資が必要だが、プーチンは現地調達で何とかなると考えていたのだろう。全く杜撰なウクライナ侵略作戦だった。

 さて「トラ作戦」だが、トランプ氏が大統領になれば米国がウクライナ支援から手を退く、と考えている御仁が殆どのようだが、そうはならないと私は考える。確かに米国大統領の権限は絶大だが、バイデン現大統領がアフガンから撤兵を実施して、アフガニスタンはどうなったか。たちまち中国とイランが触手を伸ばして、両国の影響下に置いたではないか。米国はアフガンでの失敗をウクライナでも繰り返すだろうか。
 たとえトランプ氏がそう決断したとしても、ホワイトハウスは無能揃いではない。米連邦議会も無能な議員ばかりではないはずだ。米国は先進自由諸国の盟主として、自由と民主主義、人権と国際社会正義を護らなければならない。軍事力による国境線の変更を認めることなど決してあってはならない。

 習近平氏が経済崩壊の中国を目の前にして無能無策のまま手を拱いている。投資目的で不動産を購入してはならない、と総量機先を行ったかと思えば、住宅ローンは頭金なしでO.Kだ、としたり朝令暮改のように新経済政策を打ち出しては改正している。しかし根本的な「改革開放」路線を否定したから経済が崩壊したのだということには考えが到らない。先進自由主義諸国と「戦狼外交」を展開したから、世界中の工場が中国から堰を切ったように撤退しているのだ、という根本理由が理解できないようだ。
 プーチンもロシア国民の民心が離反している根本理由が分からないようだ。これまでは戦争で勝利すれば万雷の拍手で歓迎された。しかしウクライナへの侵略は少数民族国家への軍事侵略とは勝手が違った。しかもウクライナ国民はソ連崩壊以後、ロシアの軛から離れて自由主義国家の空気を吸っていた。もはやロシア宗家の軛を受け容れることなど決してないことをプーチンは予想してなかった。

 そして戦時経済でロシア経済は崩壊の坂道を転がり落ちている。僅か24兆円しかない国家予算の1/3を軍事費に支出して、国家が維持できるわけがない。なぜなら戦争支出は社会的リターンのない壮大なるムダな支出だからだ。
 ロシア国内でフル稼働しているのは砲弾製造などの軍需産業だけだ。それらの製品が国民生活を豊かにするために役立たないのは確かだろう。そして夥しいロシアの若者たちが傷つき死亡している。そうした愚策を続けるプーチンをロシア国民が支持するはずなどないではないか。大統領選挙で86%という過去最高の支持率を得たとプーチンは笑顔を見せたが、政敵を殺害し批判するジャーナリストを殺害してもなお、10%以上の反対票があったことにプーチンは震えている。既に彼は政権崩壊の足音を聞いているに違いない。

 ルーブルは戦時景気によって一時上昇したが、戦時経済がロシア国内のストックをすべて消失させてしまった。後はルーブルの大暴落と社会秩序の崩壊が始まるだけだ。その足音は意識していなくてもプーチンの耳に届く。
 その予兆は既に始まっている。ルーブルの価値が少しづつ下落し始めた。中央アジアの共和国がロシアから離反し始めている。もちろんシベリアでもロシアから独立の動きが胎動し始めた。情報統制していても、ロシア国民は敏感にロシア国内の変調を肌で感じる。習近平氏が絶大な三期目に突入したと同時に自国の経済が崩壊している様を目撃しているように、プーチンも大統領選挙に大勝した日から独裁政権の足元が揺らいでいるのを意識せざるを得なくなっている。彼らは同じような運命を辿るしかないだろう。

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