日本は防衛兵器の開発に心血を注ぎ、中国の暴発への備えを怠ってはならない。

<CNAS理事長のリチャード・フォンテインが、中国衰退論は尚早、危険であり、それを前提にすることは愚かだ、これが米国の政策の前提になれば米国は中国の挑戦に対する必要な力の結集ができなくなると、2024年1月22日付のワシントン・ポスト紙で述べている。

 中国の李強首相は、ダボスで、自国を安定した投資先としてアピールした。彼は、「中国経済には莫大な潜在力があり、それを選ぶことはリスクではなく、機会である」と述べた。
 聴衆は懐疑的だった。中国は、過去2年間、成功よりも問題が増えている。そのため中国経済の不可逆的な衰退を心配する分析家もいる。
 しかし、これらの懸念は全く早計だ。さらに、これが米国の政策の前提になれば、米国は中国の挑戦に対する十分な力の結集ができなくなる。近い将来の主要リスクは、中国台頭の頓挫ではなく、米国が必要な力を結集することができないことだ。

 中国は依然として膨大な利点を有する。その経済は非常に大きく、いくつかの指標では米国の経済よりも大きい。
 昨年の中国の国内総生産(GDP)の成長は恐らく米国よりも高いだろう。中国は120以上の国の主要な貿易相手国であり、人工知能や量子コンピューターといった重要技術分野で米国主導の制約を克服し乍ら革新を続けている。
 中国は、これらの利点を戦略的な力に転換しようとしている。米の国防予算よりは小さいが、中国の国防予算は拡大しており、それは少なくとも向こう5年または10年以上継続する可能性がある。
 中国は、現在アジア最大の空軍と世界最大の海軍を有し、艦船や潜水艦は370隻以上保有している。新たな弾道ミサイル等核兵器や運搬手段を急速も拡大している。多くの国々で軍事基地や拠点を拡大しようとしている。
 また、習近平の下でその野心は依然として壮大だ。昨年、中国は新興5カ国(BRICS)を拡大した。中国の船舶は、南シナ海で攻撃的な行動をとり、領域主張水域で比船舶に激突する等の行為をしている。
 国防省によれば、中国は、数十回に亘り米軍機に対し危険な妨害行為を行い、中国の戦闘機は今や台湾海峡の中間線を定期的に越境飛行している。先週、中国は台湾の総統選挙の2日後、太平洋のナウルに台湾承認から中国承認に変えさせた。中国の指導者は、特にグローバル・サウスで指導力を発揮している。
 中国は依然として台頭し、地域支配と国際的修正主義に取り組んでいる。しかし、中国の絶対的な力は方程式の半分に過ぎない。この種の競争では相対的な力が重要であり、米の力の強化が極めて重要だ。
 米国の力(経済の規模と活力、軍事的な能力と容量、同盟と連携の強さ、必要な時の政治的結束力)をもってすれば、中国の台頭に十分対応できる。しかし、これらの利点は自動的に結合するものではない。米国は、中国の挑戦を前提に、自らの力の強化を図るべきだ。
*   *   *
巨大な人口と経済圏は続く
 正論である。フォンテインは、中国衰退論は尚早で、危険であり、それを米国の政策の前提にすることは愚かだ、米国は中国の挑戦を前提に自らの力の強化と結集を図るべきだと言う。指摘の通りであり、追加することはない。
 中国の力を過小評価してはならないし、過剰評価する必要もない。中国の成長は、発展に連れて必然的に鈍化するだろうし、それに連れて国民統治も一層難しくなるだろう。しかし共産一党統治はなかなか崩れないだろうし、中国共産党はソ連共産党の歴史を反面教師として、反対にそのイデオロギーを強めている。
 西側および中国の周辺国は、当面中国の力を常に警戒する必要がある。そして、その巨大な国土と人口に具現される中国の単なる大きさは将来にわたって力として残るだろう。
 人口減少が指摘されるが、他国と比較すれば中国の人口はいまだ並外れて巨大だ。それらは潜在的な脅威となり、中国は世界の問題として、半永久的に残るのではないだろうか。
 中国が世界を不安定化させないためには、中国との対話と中国自身の変化(国際協調化)が必要である。中国の孤立化は、打開策にならないだろう。幻想は禁物だが、中国と関与し、辛抱強く中国の変化を求めることが肝要ではないか。
 近年、世界貿易機関(WTO)加盟後の西側の対中関与政策が失敗したことを指摘する論調が多いが、関与の誤りと言うよりも、そのやり方が問題だったのではないか。西側は、余りに無防備に、競って中国に進出し、結果として中国に最大限利用された。西側の過度のナイーブさが問題だったのではないか。

近年の変化の実態は
 中国の変化については、次のようなことが求められるだろう。
 ⑴ 中国の発展自体ではなく、中国が増大する富と力を如何に獲得し、それを何に使うかが問題だ。西欧の技術を詐取し、あるいはネット等で非合法に取得することは止めるべきだ。外国人材の確保についても、国際標準に沿ってやっていくべきだ。
 ⑵国防偏重は修正すべきだ。南シナ海の領有権主張は国際規範と関係裁判所の決定に従うべきであり、南シナ海の軍事化は止めるべき。海外への軍事拠点、ネットワークの拡大にも警戒させられる。今の中国の政策は、一世紀余前の帝国主義的、覇権主義的先例と基本的に違わない。一方的な現状変更は支持されない。
 ⑶大国になったから当然だとの世界観が中国にはあるように思える。可笑しな議論だ。歴史の流れを正しく理解し、戦後世界の足跡をもっと理解する必要がある。戦後の国際社会の発展は、人類共有の歴史であり、価値あるものだ。それは西洋が造った歴史だといった修正主義的議論には違和感を覚える。戦後秩序のルールを守り、協力して発展していくべきだ。更に言行一致が大事だ。
 ⑷人権や民主化は抑圧されてはならない。国家の正直さも必要だ。偵察気球の他国領域飛来やコロナ禍等については問題があった>(以上「Wedge ONLINE」より引用)




 Wedgeという雑誌がいかなるモノか知らなかったのでネットを検索して見た。すると「月刊誌『Wedge』は創刊以来30年以上に渡り、エグゼクティブ層のビジネスパーソンへ向け、日本を前に進めるために必要な施策を大胆に提言する、ビジネス・オピニオン誌です。 東海道・山陽新幹線のグリーン車に搭載されているほか、定期購読や一般販売など様々なチャネルから入手が可能です。」とある。
 そのエグゼクティブ層のビジネスパーソンへ向け雑誌が「<中国衰退論>は時期尚早で危険!「大国」中国の今とこれからを見る4つの視点」と題する記事を掲載していたから一読してみた。すると飛んでもない論理が展開されていて、驚くというよりもWedgeは大丈夫か、と心配になった。この記事のドコが「日本を前に進めるために必要な施策を大胆に提言する、ビジネス・オピニオン誌」だというのだろうか。

 中国は14(正確には12億人程度か)億もの消費市場だ、という議論がある。しかし、それはマトモな所得を得ている家庭を仮定しての話だ。日々の暮らしにさえ事欠く低所得層が何億人いようが消費市場を形成することはない。中共政府当局が発表する経済統計など全く信用できない。
 一昨年の12月に当時の首相が「中国人の6億人は月収2,000元以下の暮らしをしている貧困層だ」と発言した。おそらくそれが本当だろう。そうだとすると、中国14億人の消費市場、というのは当たらない。せいぜい1億人程度が年収1万ドルを超える富裕層だろう。それなら中国に莫大な投資を行って店舗網を構築するのは殆ど意味をなさない。だから中国ではネット通販が発達したのだが、習近平氏の政策によりネット通販企業は殆ど潰されてしまった。

 「巨大な人口と経済圏は続く」の章を見ると「中国の力を過小評価してはならないし、過剰評価する必要もない。中国の成長は、発展に連れて必然的に鈍化するだろうし、それに連れて国民統治も一層難しくなるだろう。しかし共産一党統治はなかなか崩れないだろうし、中国共産党はソ連共産党の歴史を反面教師として、反対にそのイデオロギーを強めている。」とあるが、その論理も矛盾に満ちている。
 「中国は世界の工場」として広大な土地と廉価な労働者を提供しただけだ。中共政府が先進自由主義諸国に営業活動を仕掛けて販路を拡大し、自国で技術開発や製品開発をして世界的な製品に育て上げたものなど何一つとしてない。だから中国に進出した先進諸国の企業が相次いで撤退すると、中国経済はたちまち失速して崩壊の坂道を転がり落ちている。残るのは「世界の工場の廃墟」だけだ。

政府門前で無差別銃乱射事件「21人死亡」か 容疑者は元武装警察官=中国 山東」とのニュースを大紀元が報じているが、詳しくは山東省日照市(人口294万人)の街で2月10日(旧正月)に複数の元武装警察官が銃を乱発して党幹部家族など40人以上が死亡したという。しかし、どうやらこうした事件は日照市だけではないようだ。昨年八月から給与を支払われていない公務員や警察官、さらには人民解放軍人たちが各地で騒乱事件を起こしているようだ。
 もちろん、そうしたニュースは厳しい検閲により報じられることはない。国民のSNSへの書込みも瞬時に削除されて広範な人々が情報を共有することもない。しかし何処からか真実は外部へ漏れ出ている。いかなる権力であろうと、すべての口をふさぐことは不可能だ。

 Wedgeは「人権や民主化は抑圧されてはならない。国家の正直さも必要だ。偵察気球の他国領域飛来やコロナ禍等については問題があった」と指摘しているが、中国内の現実はそうした生半可な状況ではない。社会主義の本質は計画経済で、すべての国民に職を用意し、すべての国民が豊かな暮らしを手に入れる、という理想郷の実現を謳っている。
 しかし現実はそうではない。国民が稼ぎ出した「富」を共産党と軍部が優先的に手に入れ、国民には重い負担のみが課されている。ジニ係数が0.468(2020年現在)の国家など異常と云うしかない。

 中国経済が崩壊すれば世界経済に影響が大きい、と予測する評論家がいるが、中国は単なる「世界の工場」でしかなかったことから、大した影響などない。ことに日本に関しては株式投資一つとっても中国人などの投資総額は300億円ほどで、米国などの各国投資家たちの投資額約3兆円と比べれば、その影響は1/100でしかない。
 ただ富裕層を当てにした商売に切り替えたホテルや飲食業者などは、外国からのインバウンド客が消えたなら相当な衝撃波に襲われるだろう。しかし、それは自業自得だ。一杯のラーメンが2000円以上して一泊の宿泊代が10万円以上とは、冗談にしても程度が酷すぎる。そんなバブル景気が持続するはずがない。国民所得とその可処分所得に見合った価格設定でなければ、持続的な事業として維持できないし、バブルが去れば破綻するしかないのは当然の帰結だ。ただマスメディアは愉快だからバブル景気を集中的に報道するが、それに釣られて浮かれた経営者は破綻の憂き目を見ることになる。

 中国による台湾有事はあり得ない。なぜなら既に中国は内部崩壊の前段階にあるからだ。武装警察ですら遅配に苦しみ、人民解放軍人が遅配により「寝そべり族」になっている国が、どうやって台湾に軍事侵攻すると云うのか。しかも中国軍が装備している装甲車などはインド国境の紛争で、インド兵による投石などによって破損したというではないか。軍需産業にまで「オカラ工事」が蔓延した軍備で兵士たちが喜んで台湾へ侵攻するだろうか。
 台湾有事は日本有事、というのは日本の話だが、中国にとって台湾有事は貿易の7割を占める海路を利用した貿易の途絶を意味する。つまり台湾有事は中国にとって国家存亡の危機そのものだ。

 ただ「CNAS理事長のリチャード・フォンテインが、中国衰退論は尚早、危険であり、それを前提にすることは愚かだ」という指摘はある面では正しい。中国経済が崩壊過程にあって、国内が騒乱状態に陥る全段階に達しているが、それを確実なものになるまで対中経済制裁の手を緩めてはならない。日本もレールガンやレーザー砲といった防衛兵器の開発に心血を注いで、自暴自棄になった習近平氏の暴発への備えを怠ってはならない。

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