中東の危機は2人の独裁者の妄想が原因だ。

中東はいよいよ「危険水域」へ
 2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻は、「大原浩の逆説チャンネル<第1回・特別版>大乱の八つのテーマと対処法」で述べた「大乱の時代」に我々が突入した象徴的出来事であった。
 そして、そのウクライナ戦争がかつてのベトナム戦争のように泥沼化する中で、昨年10月7日のハマス襲撃以降のイスラエルによるガザ侵攻が始まった。シオニストと評されるネタニヤフ政権は、国際社会からの強い批判にもかかわらず、ガザ地区での攻撃を終わらせる気配は無い。
 さらに、1月23日公開「再び問う、イラン-イスラエル戦争はあり得るか? 英米の『国連が認めていない空爆』で緊迫する中東情勢」のような状況だ。
 パレスチナ問題は、昨年10月23日公開「パレスティナ―天井の無い監獄で何が行われてきたのか?『いじめられっ子』がやり返したら大騒ぎに」、同10月27日公開「中東紛争の本質~白人の南北アメリカ大陸侵略・アジア・アフリカ植民地化との同質性、そして米国は常に『独裁国家』の支援者であった」で述べたように、「ブリカス」とも呼ばれる英国の三枚舌が発端となった。
 しかも、パレスチナ人が平和に暮らしていた土地を奪い、1948年に、2000年前の話を持ち出すシオニストたちの国家が欧米の後押しで建国されたのである。
 この根本的問題をスルーして、いわゆるパレスチナ問題の解決は無い。さらに、「中東問題」には、おぞましい欧米による植民地支配の歴史も関わる。デモ  by Gettyimages
 ロイター 1月18日「イラン、パキスタン領内への空爆認める パキスタンはイラン大使の入国禁止」、同「パキスタンがイラン領内を報復攻撃、武装勢力標的 9人以上死亡か」のように、核保有国であるパキスタンと「すでに核を持っていてもおかしくない」イランとの緊張も高まっている。

なぜ「パキスタン」?

 両国は「兄弟」とも評される緊密な関係を保つ一方で、「テロリスト問題」などでお互いに非難し合う関係でもある。ただ、今回の攻撃は、ニューズウィーク 1月10日「追悼式典での爆破テロに『報復』を誓うイラン、戦火は中東で拡大か」で述べられたように、(米軍に暗殺された)イランの英雄ソレイマニの追悼式典で起きた爆破テロに怒り狂うイラン国民の「ガス抜き」的な色合いが強いと思われる。
 共産主義中国が明確な説明なく「スパイ行為」で邦人を拘束するときに、その対象の多くは「親中派」である。親中派を拘束しても「強い抗議」が起こらないからだ。「反中派」を拘束すれば、「怒涛のような抗議」が予想されるので、手を出しにくい。
 イランにも似た事情がある。宿敵は米国やイスラエルであるが、どちらも核保有国(イスラエル政府は公式には認めていない)であり、なおかつ軍事大国だ。うかつには手を出せない。だから、「親イラン派」のパキスタンを攻撃(イランの説明では、あくまでテロリストが対象)したと考えられる。
 ただ、事前に相手国に通告していた出来レースではないと考えられ、パキスタンによる報復も招いたから、「偶発(核)戦争」も十分あり得る。
 さらに言えば、イラン国民の怒りが「頂点に達している」状態であり、「『軍事大国』とは戦争を避けたいという姿勢がにじみ出ているイラン政府」も、「怒れる国民の声」を無視できなくなっている。したがって、一線を越えるかもしれない。
 また、「怒涛の少子高齢化、韓国・北朝鮮が『消滅』に向かっている!? そして追い込まれた朝鮮半島は紛争世界の第3の極になるのか」で述べたように、長年にわたり疎遠であったロシアのプーチン氏が、北朝鮮訪問を表明した。ウクライナ、中東での混乱が、朝鮮半島という「第三極」にも及ぶかもしれない。
「核戦争」の脅威がますます高まっているが、それ以前にこのような「地政学リスクの高まり」は強烈なインフレ要因であり、世界経済に大きな影響を及ぼす。

今度は「OPECプラス」が発信源?

 歴史を振り返れば、1973年の第1次オイルショックのきっかけは第4次中東戦争である。また、1978年以降の第2次オイルショックは、イラン革命やイラン-イラク戦争によって加速された。
 確かに、1973年の第1次オイルショック当時のOPECの世界シェアは5割を上回っていた。しかしながら、現在のOPECのシェアは3割ほどである。
 だがその一方で、ロシアなどを含む「OPECプラス」で考えると世界シェアが5割程度ある。つまり、「OPECプラス」は1973年のオイルショック当時のOPECと同程度の力を持っていると考えられるのだ。
 現在日本を含む西側が、中東各国以上にロシアと敵対している。「第3次オイルショック」の可能性は充分あるということだ。
 実際、ロシアの石油生産世界シェアは約12%でサウジアラビアの約13%と並ぶ。米国は約19%であるが、多くを自国で消費するので、他国の原油需要の助けにはなりにくい。
 もっとも、1973年当時は原子力発電が普及しておらず、天然ガスも現在のように幅広く活用されていなかった。つまり、石炭を除けば「原油一極集中」であったといえよう。
 確かに、天然ガスは原油に比べて比較的広い範囲に埋蔵されている。だが、ウクライナ侵攻に対する、2022年6月24日公開「ナポレオン大陸封鎖令の大ブーメランに学ぶ経済制裁で自滅する歴史」や、2022年10月8日公開「ノルドストリーム・パイプラインを破壊したのは、本当にロシアなのか?」によって、ロシアの天然ガスなどに頼り切っていたドイツを始めとする欧州勢は壊滅的打撃を受けた。現在ドイツがマイナス成長に陥っている理由は複数あるが、エネルギー不足によって製造業の業績が落ち込んだ影響も大きい。
 また、そのような悲惨な状況にもかかわらず、ドイツは昨年4月15日に最後の原発の稼働を止め、「脱原発」という愚行を犯した。また、日本も福島原発事故以来、原子力発電には逆風が吹いている。
 その上、2021年8月22日公開「脱炭素・EV推進、『合理的な科学的根拠が無い』この方針は、もはや『宗教』だ」で述べた「新興宗教」が世界を覆っている。明らかに(化石燃料を中心とした)エネルギー供給を細らせ価格を釣り上げる、このような「宗教」は1973年当時には存在していなかった。
 その他、日本総研 昨年8月16日「インドのコメ輸出制限の影響 - Research Focus」を始めとする食料問題や、野村総研 昨年12月25日「イエメン・フーシ派による紅海での船舶攻撃で、世界の物流が混乱」など、「インフレ第2波」を引き起こす要因が山ほどある。

「バイデンリスク」は少なくともあと1年続く

「スプートニクニュース」において、トランプ前大統領がバイデン氏を論評した動画がある。「政敵」への評価であるから割り引いて考えなければならないが、かなりの真実を含んでいると思う。
 習近平氏やプーチン氏が、「我々の味方」とは思えないが、「政治家としてそれなりに有能」なのは事実と考える。
 それに対して、大統領就任以来のバイデン氏の「実績」を評価すれば、2022年8月31日公開「外交、軍事、内政、何をやっても『まるでダメ夫』なバイデン米大統領」としか評価しようがない。
 バイデン大統領の任期は、来年1月までだから、「世界各地で火を噴く『大乱』の時代」に、前記「まるでダメ夫」のような米国大統領の時代がまだ1年続くということである。
 幸いにして、1月25日公開「韓国化する米大統領選、トランプ支持が高まって、なりふり構わぬ『反トランプ勢力』」で述べた通り、「反トランプ派(抵抗勢力)が死に物狂いでトランプたたき」を行うほど「トランプ優勢」ではある。しかし、「なりふり構わぬ抵抗勢力(反トランプ派)」が、勝つために『特別なこと』をする可能性を排除できない。もし万が一「バイデン再選」となれば、世界の混乱は収拾がつかなくなるであろう。
 また、「公正な選挙」が行われたとしても、米国の分断は極致に達しており、前記記事で述べたように、「内乱・革命」のような状況になることも考えられる。
 それ以前に、11月の大統領選挙に至るまでに、昨年12月6日公開「世界的金融・経済の惨劇はある日突然~ブラック・スワンはいつやってきてもおかしくない」のブラック・スワンがやってくるかもしれない。
 そうなれば、バイデン大統領の「無策・愚策」によって、昨年4月6日公開「いよいよスタグフレーションがやってくる…金融危機・不況でもインフレは終わらない」となり、「不況なのにインフレ」という最悪の事態を招く。

預貯金は役に立たない

 スタグフレーションを含む「インフレの時代」には、金利上昇がインフレに追いつかないことが多い預貯金はあまり役に立たない。インフレ率と同じだけの金利上昇があったとしても「元本が減らない」だけであり、もし追いつかなければどんどん目減りする。
 その対策については、2021年7月6日公開「『仮想通貨』『ドル』『金』『株』、じつは“一番安心できる”のは…? プロの『意外な答え』」、2020年4月25日公開「コロナ危機で現金、不動産、国債はヤバくなる…結局、株が安全資産」などを参照いただきたい。
 また、現在話題になっている新NISAに関して、「投資信託」への投資はお勧めできない。2018年9月10日公開「投資の神様バフェットが『投信を買ってはいけない』と忠告する理由」のとおりである。もっとも、副題「ただしインデックス・ファンドはOK」だ。
 結局のところ、いくら非課税であっても、運用で損をすれば意味が無い。
 現物株への投資における「非課税枠」が有利なのは言うまでもないが、「大原浩の逆説チャンネル<第15回>バフェット流の真髄は『安く買って高く売る』これがわからない人がほとんどだ。(バフェット流の真髄その1)」などを参照の上、あくまで自己責任で行っていただきたい。
 もちろん運用以外に、「稼ぐ」ことも重要だ。「稼ぐに追いつく貧乏無し」という言葉は、インフレ時代には特に胸に響くはずである。いくらインフレが進行しても、「インフレに対応して上昇した報酬」を受け取れば大丈夫だ。
 大乱の時代に稼ぐには、2022年10月29日公開「東洋のユダヤ人『客家』のサバイバル術~50人の仲間がすべての基本」のように、「信頼できる仲間」が重要であることも心に留めておくべきだろう>(以上「現代ビジネス」より引用)




 投資アナリストとはショウモナイ人種のようだ。何事も大事に至るように、未来には人類の不幸が待っている、と脅さずにはいられない人種だ。
 大原浩(国際投資アナリスト,人間経済科学研究所・執行パートナー)氏も間違いなく投資アナリストの一員で「「第3次オイルショック」の足音、そして、「インフレ第2波」が確実にやってくる」と私たちの未来は大変だゾ、と脅している。しかし「「バイデンリスク」もあとまだ1年」というが、バイデンリスクも「この程度」なら、大したことではない。米国内は大量の不法難民が押し寄せ、警察予算を削減した市や街では治安が悪化して大変だが、少なくとも日本では大したことではない。

 大原氏は中東の火種は拡大する、と予測しているようだ。確かにイスラエルにハマスが同時多発的なテロを仕掛け、ヒズボラも散発的に国境越えのミサイルをイスラエルに撃ち込んでいる。紅海の出入り口ではフーシ派が海賊行為を働いてスエズ運河の機能を停止させた。
 中東は「大変な」様相を呈しているが、それらの根は一つだ。先進自由主義諸国が構築した国際秩序を破壊しようと胎動している独裁者たちの仕業だからだ。独裁者たちとはイランの宗教指導者の意匠を纏っている独裁者であり、中国の社会主義の意匠を纏っている独裁者だ。

 彼らは先進自由主義諸国が構築した国際秩序を破壊すれば自分たちが先進自由主義諸国に代わって独裁者の権威と権益を広く世界に広げることが出来る、と妄想しているようだ。中東で唯一先進自由主義の盟主・米国の支援を受けているイスラエルを叩くことで、米国の威光を踏み躙ることが出来る、と彼らは妄想しているようだ。
 しかし中東の安定がなければイランも中国も国際取引で得ている利益の半分以上を失う、と考えてないようだ。しかもフーシ派の海賊行為によりスエズ運河の稼働率が下がれば、スエズ運河の通行料を国家財政の基盤の一つにしているエジプトに打撃を与えることになる、という因果関係する理解してないようだ。もちろんエジプトもイランと同じアラブ民族でイランの仲間だ。

 中国は先進自由主義諸国、とりわけ米国が構築した国際秩序を破壊することに喜びを感じているようだ。自由主義世界が混乱すればするほど習近平氏は喜色満面になる。だから国連が制裁している北朝鮮を裏で支援し、プーチンのロシアを大っぴらに支援していた。
 しかし習近平氏は肝心なことを忘れている。中国経済が過去30年間で10倍に成長できたのは「自由主義世界の一員として」だということを。日米の経済支援と米国がWTO加盟に助力したことにより、中国は先進自由主義諸国が構築している国際社会の仲間として経済取引できるようになったことで躍進を遂げた。習近平氏は中国が経済的に躍進している最中に国家主席として登場した。だから国際社会が中国を受け容れているのは当たり前だと勘違いしたようだ。

 勘違いした上で、中国が米国を抜いて世界一の偉大な国になれば、中国の独裁者が世界の独裁者になれると妄想した。だから「改革開放」から「戦狼外交」に外交方針を転換した。いきなり尊大な態度で日米に噛み付き、「元」経済圏を打ち立てると虚言を吐き、米国に楯突く独裁者国家を仲間認定して支援するようになった。
 だから先進自由主義諸国が構築している国際秩序を破壊するゴロツキたちが頼もしい「傭兵」だと認定して、彼らに経済支援をしてきた。フーシ派が持っている短距離ミサイルなどはすべて中国製だ。イスラエルに撃ち込まれたミサイルもイラン製と中国製だった。

 ペルシャ湾の航行を阻害したらイランの原油輸出に支障が出るし、世界最大の原油輸入国・中国の原油輸入が止まりかねない。だからホルムズ海峡を封鎖する、とイランは何度も脅しているが、決して封鎖していない。
 しかし紅海なら封鎖しても構わない、と中国はフーシ派を支援したが、しかし船舶保険や積荷保険などが高騰し、ケープタウン経由の航路を取らざるを得ないため運賃が高騰した。貿易の70%以上を海洋輸送に頼っている中国にとってカウンターパンチになっている。

 中東はいよいよ「危険水域」に達したと大原氏は見ているようだが、先進自由主義諸国が構築した国際秩序を破壊すれば自分たちの世界が到来する、と妄想した愚かな独裁者たちが、そろそろ自分たちが犯した過ちに気付き始めたようだ。彼らは先進自由主義諸国との取引によって自国経済が成り立っていることに、遅まきながら理解し始めたようだ。
 イランの独裁者がモスクの奥の院で優雅な暮らしを送れるのも、先進自由主義諸国に原油を売っているからだ。習近平氏が経済大国・中国の夢を妄想できたのも先進自由主義諸国を席巻した「国際分業論」があったからだ。しかし「国際分業論」はサプライチェーンのハブに中国を組み込むことに他ならず、それは自国を危うくする可能性が高い、ということをコロナ禍で学習した。

 フーシ派が海賊行為を強めればスエズ運河の通行料が入らなくなり、エジプトは悲鳴を上げる。イランが対イスラエル攻撃を強めれば、先進自由主義諸国の中東への投資が止まる。それはアラブ民族にとって死活問題だ。
 独裁者たちは自分たちの威光を世界に知らしめようと暴挙に出たが、それは「天に唾する」ことでしかない。米国を敵視し、先進自由主義諸国が構築した国際秩序の破壊は、自動的に自分たちの世界が出現することにはならない、という当たり前のことをやっと習近平氏も学習したようだ。しかし彼がやった「戦狼外交」の傲慢な態度を時間を遡って記憶を消すことは出来ない。イランは中東で孤立するだろうし、中国は経済崩壊により国外にチョッカイを出す余力を失うだろう。中東の「危険水位」は自然と下がっていく。先進自由主義諸国がオタオタしないで、正々粛々と対イラン制裁と対中デカップリング策を続ければ、二人の独裁者たちは大人しくならざるを得ない。

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