パー券問題でなぜ国税庁に切り込む記者が一人もいないのか、マスメディアは国民の素朴な疑問に答えるべきだ。

政治学者・白鳥浩氏が金権腐敗の自民党を一刀両断「岸田首相は“小泉劇場”の再来、再浮上を狙っている」
 2024年の干支は辰、「政変の年」と言われる。ロッキード事件は1976年、リクルート事件は88年に起きた。足元では自民党の裏金事件がくすぶり、世論の怒りは沸騰している。26日からの通常国会を野党は「政治改革国会だ」と腕まくりするが、「政治とカネ」をめぐる問題はなぜ繰り返されるのか。どんな手を打つべきなのか。そして、金権腐敗がはびこる自民党を追い込むことができるのか。裏金疑獄を「令和のリクルート事件」と名付けた政治学者に聞いた。

■本家リクルート事件より悪質

 ──東京地検特捜部による裏金事件の捜査が一区切りしたタイミングで、岸田首相は先月まで会長に居座っていた第4派閥の岸田派(宏池会)を解散すると宣言。政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で岸田派とともに関係者が立件された最大派閥の安倍派(清和会)、第5派閥の二階派(志帥会)も解散を決めました。

 掛け声は勇ましいですが、政治資金の受け皿である政治団体を解散し、事務所を閉鎖するだけで、派閥の実質的な機能は温存される可能性がある。人的ネットワークを根絶するのは不可能です。党総裁選、閣僚ポストなどの配分、選挙の公認などをめぐって今後も集団で動くことは十分に考えられる。「政治とカネ」の問題を特定派閥によるものだとすり替え、論点をずらそうとする動きを見過ごしてはいけません。裏金事件は、本家のリクルート事件よりもはるかに悪質です。現職の閣僚や党幹部が事実上、更迭される事態に発展したのですから。中枢の議員が立件を免れたからオシマイでは済まされません。

 ──岸田首相は政治刷新本部を設置し、「政治への信頼回復に努める」と言っています。

 メンバーの4分の1超を安倍派が占める人選もさることながら、通常国会召集までに中間報告を取りまとめる拙速な運び。「やってる感」を演出するアリバイづくりの組織にしか見えません。「改革」ではなく、「刷新」を謳うのも欺瞞です。国民人気の高い「政治改革男」の石破元幹事長をメンバー入りさせたくなかったからなのか。目下、検証と徹底が求められている自民党の「政治改革大綱」は、石破氏ら当時の若手議員による自発的な働きかけを受けて取りまとめられた。そうした経緯を鑑みても、岸田首相の本気度は怪しい。その一方で、「小泉劇場」の再来を狙っているようにも見えます。

 ──どういうことですか。

 自民党の一組織に過ぎない刷新本部に耳目を集め、派閥の対応によって「悪い自民党」「良い自民党」に色分け。これからは「悪さをしない自民党」を中心にやっていくとアピールする。郵政民営化をめぐり、小泉元首相が「改革派」と「守旧派」という劇場型の対立構図をつくり、それにのみ込まれた世論も大いに盛り上がりましたよね。

 ──つまり、カネに汚い議員や集団は一部に過ぎず、大半はクリーンだと? 金権腐敗は自民党の体質ではないと?

 そうです。党内組織でガヤガヤやっていれば、「小泉劇場」ならぬ「岸田小劇場」の見せ物で自民党はメディアジャックできる。野党の動きはてんで報じられない。そうして「政治とカネ」の問題は矮小化され、コップの中の嵐で終わることを期待しているのではないか。内閣支持率が2割を切り、このままいけば岸田政権はもたない。印象アップのためには、なりふり構っていられません。

 ──岸田政権を支える第2派閥の麻生派(志公会)会長の麻生副総裁や、第3派閥領袖の茂木幹事長は解散に否定的です。

 存続派が主張するように、確かに派閥には人材育成の役割もある。しかし、派閥の流儀が走り過ぎた結果、裏金は億単位に上り、関与した議員も多数いる。世論は派閥温存に納得しないでしょう。日本の政治にはカネがかかるといまだに言われますが、なぜ派閥と議員が結託して裏金をつくっていたのか。2つの選挙にカネを要するからです。衆参両院の国政選挙、そして党総裁選です。それぞれの選挙区の地方議員を動かすカネ、領袖を総裁に押し上げるために他派閥を取り込むカネ。「ニッカ」「サントリー」「オールドパー」といった隠語が飛び交った時代ほどではないにしろ、総裁選にはカネがかかる。党内選挙は公職選挙法が適用されないので、歯止めが利きません。

 ──総裁選があった21年分の政治資金収支報告書によると、岸田派は組織活動費として1億円超を支出。6派閥の22年分の総額を上回っていた。表に出ている分だけでも巨額です。

「平成の政治改革」で衆院は中選挙区制から小選挙区比例代表並立制となり、派閥単位で候補者を擁立できなくなりました。派閥政治や金権腐敗を払拭し、政党本位・政策中心の選挙への転換を目的としたものでしたが、官邸あるいは党本部に権力が集中。総裁や幹事長に誰が就くかで公認、ポスト、カネの差配は左右されることから、我先に主流派を目指し、派閥間競争が苛烈になった。この仕組みの恩恵を享受してきたのが、ほかならぬ安倍派。安倍1強を維持するため、政治資金パーティーを舞台にした錬金術で得たカネで子分を増やしてきた。強大な力を持つ最大派閥の行き過ぎた不正に疑問を差し挟めなかった成れの果てが、裏金事件なのです。小選挙区制の是非も含め、30年前の政治改革を評価し直す必要がある。大ナタをふるわないと国民の留飲は下がらないでしょう。「令和の政治改革」が求められています。

 ──ザル法と言われる政治資金規正法改正による厳罰化が俎上に載せられていますが、具体的なところでは?

 パーティー券購入者の公開基準引き下げ。まずは寄付とそろえて5万円超にした方がいい。会計責任者が有罪になった場合、議員が自動失職する連座制の導入。国会から独立した第三者機関を設け、カネの流れをチェックしなければなりません。収支報告書のデジタル化も必須です。国民には紙の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一本化すると迫っているのに、政治資金は手つかずなんて通りません。「平成の政治改革」で創設された政党交付金もしかり。自民党への交付は昨年が159億円超、今年は160億円超の見通しです。満額受領はどう考えてもおかしい。減額、不交付などのペナルティーを科すべきです。違法薬物事件が起きた日大への私学助成は、3年連続で全額不交付ですよ。政治資金は「入り」だけでなく「出」も見えるようにしなければ意味がない。政党が党幹部に毎年多額の支出をしている政策活動費や、国会議員の「第2の財布」とされる調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開も早急に実現すべきです。

■「財布」透明化は待ったなし
 ──政治家の「財布」の透明化は待ったなしですね。政治家ではない親族による政治団体の継承についてはどうですか? 安倍元首相夫人の昭恵氏が億単位の資金を抱える亡夫の政治団体を非課税で引き継ぎ、問題視されています。

 政治資金が税制優遇されているのは、その活動に公益性が認められるためです。政治活動を行わない場合は、通常のルールにのっとって処理するのが筋でしょう。議論の余地があります。

 ──「政治とカネ」をめぐる問題はすべてテーブルにのせてほしいです。

 自民党任せでは一歩も前に進みません。衆参両院議長の名の下、国会としての協議体を立ち上げ、与野党だけでなく、専門家や有権者も加わって議論するべきです。政治不信は極大化しています。自民党への信頼が損なわれているだけでなく、日本の政治そのものに対する信頼が損なわれている。立法府の責任が問われています。

 ──国会でやれるんでしょうか。

 リクルート事件を受けた政治改革の議論は半年ほど要しました。通常国会で方向性を固め、少しずつ手直ししていくのが現実的ではないでしょうか。昭和のロッキード、平成のリクルート、令和のパー券。ホップ・ステップ・ジャンプではありませんが、「政治改革」でなすべき本当の解をいい加減に出さないと、この国の政治は立ち行きません。
(聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)




 聞き手の日刊ゲンダイ記者に答えているのは白鳥浩(1968年生まれ。早大政治経済学部政治学科卒、早大大学院政治学研究科修了。博士(政治学)。静岡大助教授、英国オックスフォード大客員フェローなどを経て現職。専門は現代政治分析など)氏だ。
 たた現行制度でもキックバックという「裏金」に行政祖意識は容易に切り込むことは出来たはずだ。たとえば国税庁はパー券の「入り」に対して、ホテルへの支払いの「出」をチェックすれば、一度のパー券収入でどれほどのカネが派閥に入っているか計算できる。そこから政党の政治資金収支報告書の当該項目を検証すれば「オカシイ」と気付くはずだ。
 国税がどれほど執拗に脱税者を見逃さないで摘発しているか、その摘発能力を使えば国会議員の壁があるとしても、パー券キックバックの摘発は脱税の側面からもっと事前に出来たはずだ。いかに国税がサボっていたか明らかではないか。

 パー券キックバック問題は派閥の問題ではない。それは明らかに政治資金収支報告書の問題だ。会計者の責任にして国会議員が逃れられる、という仕組み自体が「不備」と云わざるを得ない。「秘書が、」という決まり文句で国会議員が不祥事から逃れる、という構図は昔からあった。地元の金庫番という秘書がいて、その秘書が汚いカネを一手に差配している、という構図にしたいようだが、カネを秘書任せにしている国会議員など皆無だ。
 収支報告書に「違反した場合は国会議員も連帯責任を負う」と一項目書き入れれば良いだけだ。そうすればキックバックや様々な政治献金を自分のポケットに突っ込んで「脱税」すれば国税庁が動く、という仕組みにしなければならない。見つかれば収支報告書を訂正してキックバック分を収支報告書に計上すれば非課税扱いになる、と云うのでは国民との整合性を欠く。来月には確定申告が始まるが、国民は一円の帳尻まで合わせて、必死で申告書を作成して自ら申告している。それでも国税調査が入って「認識の相違」を云い立てられて修正申告せざるを得ない。国会議員と何たる格差だろうか。

 引用記事で指摘されているように、岸田氏は派閥が「悪」で派閥さえ無くせば「悪」は一掃できる、と演出していたが、そんなバカげた議論が国会で通用するわけがない。小泉郵政政局では演者小泉氏の激しいアジ演説に「郵政民営化こそが善」で、それに反対する者はすべて「悪」だとマスメディアを巻き込んで「劇場型選挙」に持ち込んで大勝利した。
 結果として郵政は分割民営化され、郵便料金は値上げに続く値上げが行われている。民営化すれば競争原理が働く、というのは競争相手が多数ある場合に成り立つ議論であって、独占企業ではあり得ない、という分り切ったことすら評論家の多くは指摘しなかったし、マスメディアは報じようとしなかった。それは国定分割民営化でも高速道路の分割民営化でも同じことだった。
 民営化が「善」だという刷り込みをしたマスメディアや評論家たちは誰一人として弁明の論を発表していない。いや、そもそも国民生活に必要な社会インフラを民営化する、という馬鹿げたことを実施する政権を支持する国民が多数いることに愕然とする。現在では水道事業まで民営化するというから驚く。果ては警察や消防や自衛隊まで民営化するのではないか、と恐れる。

 日本は底が抜けてしまったようだ。最低限確保すべきモラルや国民性、といったものの底が抜けて、何でもアリの国になったようだ。国会議員の資質の低落ぶりには驚くが、司直や税関係部署までも底が抜けてしまったようだ。
 安倍自公政権下の司直の劣化ぶりには暗黒社会になった、と嘆いたものだが、安倍氏亡きあとも暗黒社会は国会内で続いていたようだ。パー券のキックバック分を確定申告もしないで、税金も払わずに「私的な政治資金」として使うとは呆れ果てて言葉もない。それが国会議員のやる事か。菊の紋章を模した議員バッジが泣くだろう。国会議員とは国家と国民に奉仕するものだ、という認識すらない者はバッジを外して国会を去るべきだ。

 茂木氏が安倍派幹部は離島や議員辞職を勧告してはどうかと岸田氏に進言したようだが、パー券キックバックが問題視された当初から国税庁が動いていたら、キックバックを行っていた国会議員は摘発され立件され「脱税」でマスメディアを賑わし、実質的な退陣に追い込まれていただろう。そうした意味では、国税庁若しくはその上部省庁の財務省の責任は重大だ。彼らは国家公務員としての職責を放棄して、ダンマリを決め込んでいた。そして、そのことを指摘するマスメディアも皆無だ。
 NHKをはじめとするマスメディアは政府広報機関に堕している。独自の目線で日本の「悪」を暴こうとする気迫も能力もないようだ。こんなマスメディアは不要だ、と新聞離れやテレビ離れ場起きている。当然と云えば至極当然の結果ではないだろうか。パー券キックバック問題の論戦は国会で始まったが、マスメディアの存亡を賭けた「悪の巣窟」を暴く努力は一切何もなされていない。なぜ国税庁に切り込む記者が一人もいないのか、マスメディアは国民の素朴な疑問に答えるべきだ。

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