国民は国民生活に資する政治を求めている。

派閥の本質は「仲良しグループ」でも「悪の存在」でもない
 日本では、自民党の各派閥の政治資金報告書に金額の不一致があるということを、共産党系の学者(専門は政治資金の研究)がコツコツと調べ上げて告発したところ、なぜか検察庁が全面的に動きました。
 その結果として、清和会安倍派、志帥会二階派が厳しい取り調べを受けて会計責任者と一部の政治家が起訴、宏池会岸田派も会計責任者が起訴されました。
 これを受けて、この3派はいずれも「派閥解散」を宣言しています。
 実に込み入った話である一方で、ともすれば本質から外れた議論ばかりがされているのですが、この派閥解消という問題を今回は議論してみたいと思います。
 まず、自民党の派閥の問題ですが、これは「自民党内の仲良しグループ」があって、それが勝手にカネを集めておいて、それを違法に隠しているというような問題ではありません。
 また、そのような「怪しい仲良しグループ」は悪い存在だから、解体するなり罰するなりすれば良いという話でもありません。
 問題は、総理総裁をどのように選出するのかというプロセスであり、これに個々の国会議員にとってはどのように自分の議席を守るのか、つまり次回の選挙で当選するのかという問題が関わってきます。さらに、これに各地方における利権の交通整理という機能が重なります。
 つまり、派閥というのは、総理候補を担いだ応援団であり、また総裁選の票の集合体であり、同時に選挙へ向けた互助組織、そして利権分配のマシンという性格を持ったものです。
 そこまでは多くの有権者は理解しています。例えばですが、その派閥の争いが極端なものとなった昭和の時代には、自民党の派閥には現在以上に強い社会的批判が浴びせられました。
 まず70年代のロッキード事件があり、これに80年代にはリクルート事件が重なることで、世論のアンチ派閥という感情は最高潮に達しました。
 この感情論の落とし所として、小選挙区比例代表並立制という妥協的な制度が実施され、これによって細川政権の誕生という形で、政権政党が交代することにより、有権者が政権を選択できるということになったのでした。

なぜ民主党政権と2大政党の試みは失敗したのか

 ところが、この2大政党の交代による有権者の政権選択という制度は、その後崩壊していきました。
 2009年に成立した鳩山政権にはじまる民主党政権は、「左派ポピュリズムによる無関係な政策の羅列」「左派なのに金融はタカ派で理想主義から来る財政規律へのこだわり」「ハコモノ批判を続けながら震災復興ではモノへのバラマキに走る」など具体的な問題を多く抱えており、その結果として崩壊していきました。
 問題は、民主党政権が崩壊したことではなく、民主党が下野後に問題点を修正して政権復帰を狙うことを諦めて専業野党に転じたことでした。
 エネルギー政策のバランスを取るのは面倒なので反原発に流れ、沖縄問題では普天間返還に努力するのは面倒なので辺野古反対で済ませるという、実に安易で、しかしながらそれなりに議席を維持することはできる戦術へと退廃していったのでした。
 これによって、少なくとも中道左派の政権選択肢は消滅しました。これに代わる存在として、今度は都市型の納税者の反乱による「小さな政府論」を掲げた中道右派の動きが活発化しました。
 しかし、これも「希望の党」改め「都民ファ」がコロナ禍におけるバラマキで東京都の財務状況を一気に悪化させ、「維新」が万博実施に失敗しつつある中では、急速に影響力を弱めています。
 ですから、とにかく代替する存在がないわけです。自民一強という言い方は当にその通りであって、いくら自民党の支持率が下がっても、それを受け止める政治勢力はありません。

派閥潰しで「岸田のままで6月解散」に現実味

 ここでやや観点を絞って、直近の政局ということで考えてみますと、現在の情勢の中では次のようなことが言えると思います。
「とりあえず、今、すぐに総選挙をやれば、自民批判票は出るが、それは限定的。しかも、野党と言っても各グループに分散するので集まって対抗勢力にはならない」
「ある時点から宏池会岸田派は、清和会安倍派の解体を目論んだが、この目的は完全に達成された」
「そんな中で、岸田派・二階派も解散しており、とりあえず政治勢力としては、派閥解消を宣言した3グループの方が、解消できない平成研茂木派や為公会麻生派などより、微妙にイメージが良いことに」
「派閥解消は世論にウケたようで、震災に対して用意ができるまで被災地訪問を待ったことと併せて、岸田の支持率は微増」
 という不思議な状況になっています。良く分からないのですが、現在のこの「微増」というのは2%程度ですが、仮にこのまま岸田が安全運転で進んで、派閥解消がポーズにしても何らかの格好を伴って見えるようになると、5%程度アップする可能性もあります。
 その延長上には、「岸田のままで6月解散」という昨年まで誰も考えなかったような作戦が見えてくるのかもしれません。
 その場合は、岸田の勝利ラインは限りなく下がります。公明と組んで与党で過半数維持ということで御の字みたいな話になり、そうした「期待しない感じ」が先行する中で、「3大派閥は、裏金問題で申し訳ない」という「お詫び選挙」に徹することでダメージを最小化するかもしれません>(以上「冷泉彰彦『冷泉彰彦のプリンストン通信』」より引用)




 「「岸田のまま6月解散」に現実味。自民派閥潰しの結果がこれなのか…嘆く有権者が誤解した「日本の仕組み」」という驚くような仮説が飛び出してきた。低迷する政権支持率と同様に、政治レベルも低迷したまま、岸田氏は政権運営を続ける、という最悪の状態が維持されるようだ。
 それは国際政治の場で日本が存在感を著しく喪失し、発言権を確保できないまま日本の政治が国内政争に埋没する、という惨憺たる状況に陥るということだ。国民はそんな状況を少しも望んではいない。

 国民が望んでいるのは確実なデフレ脱却と所得増、国民負担の限界まで達した税制を含めた各種公的負担のあり様を根本から見直すことではないか。サラリーマンの多くが給与明細を見る都度、所得の約半分近く占める各種控除にウンザリしたため息を吐くのを政治家諸氏は知らないのだろうか。
 財務官僚の言いなりになって年金増額を含めた年金一元化改革も一向に進まない状況で、このまま老いて大丈夫なのか、と勤労世代の国民は将来への期待を喪失している。なぜ財務省は莫大な埋蔵金を隠したまま、国民負担ばかり求めるのだろうか。

 そして政治家諸氏の不勉強さは目に余る。一向にマスメディアが批判しなくなったが、○公単価(公共事業単価)の民間事業単価とかけ離れたあり様を一切批判しないのはなぜだろうか。たとえば大阪万博の巨大リングが350億円というのは誰が考えても異常に高額な建設費だ。
 集成材、という極めて単価の低い、柱などの構造部分に使うのを控えるべき材料を本体建設に使うという、構造力学的にも誤った建造物を「半年の耐用期間なら大丈夫」という理由だけで許可する、というのもどうかしている。いかる積算根拠に基づいているのか、公共事業のすべてを国民に情報開示すべきだ。

 能登半島地震で明らかになったように、道路建設が社会インフラん基礎だという面が蔑ろにされ、その強靭化計画は何処へ行ってしまったのだろうか。揮発油税を道路財源から取り上げて一般財源化したのは財務官僚とマスメディアの共謀による「道路建設は達成した」という馬鹿げたプロパガンダの成果だったが、能登半島への道路建設がおざなりにされた結果、海岸沿いしかない連絡道路が各地で崩壊すれば半島の一部地域は陸の孤島になってしまう、という結果を招いている。なぜ半島中央を突き切る半島縦断道路建設が放棄されたままだったのか。
 それは決して能登半島だけではないはずだ。島国日本にはどこにも半島は存在し、半分島という状態のまま、新規に半島を縦断する道路建設が一向に進まない半島は全国各地に存在する。揮発油税を道路建設から取り上げた財務官僚とバカな政治家諸氏に責任を問いたい。

 そして野党国会議員諸氏の体たらくには涙が零れる。碌な指導力も構想力も持ち合わせていない、ただただ口先だけの政治屋集団に成り下がった野党に国民は批判勢力としての効能しか求められない、という惨憺たる状態だ。民主党政権が失敗したのは自公政権が「構造改革」を掲げてグローバル化を推進したのに対する、明確な反・グローバリズムという戦略も政策も持ち合わせてなかったからだ。
 いや真実を語るなら戦略はなかったが政策は小沢一郎氏が取りまとめた2009民主党マニフェストにあった。しかし小沢一郎氏が検察の国策捜査によって民主党代表から排除されると、「野党」というだけで飯を食って来た政治屋集団に反・グローバル化の政策を実施する力量はなかった。だから突如として「消費税10%」と叫びだしたのだ。「痛みを伴う」政策を提示したボクちゃんは偉いでしょう、といったパフォーマンスの一環に消費増税を使った政治屋のバカバカしさに国民は未だに気付いてないようだ。消費税は強烈なデフレ政策のため国民を惹か今夏させると同時に経済成長を止める政策だ、という認識すら「消費税10%」を叫んだ当の本人も知らないのではないか。

 現在、自民党は派閥という池に落ちた犬で、ジタバタしているから叩くのは今だ、と野党国会議員諸氏はいきり立っているが、国民はそんなことを求めているのではない。確かにキックバックの構造は解明すべきだが、国民が求めているのは停滞と逼塞している政界の暗雲を吹き飛ばしてくれる政治パラダイムの転換だ。
 「構造改革」政治を明快に転換し、国民ファーストの政治を大胆に打ち出し実践する政治家の登場だ。新人にそれを望むが酷なら、老兵に登場してもらって最後のご奉公を果たしてもらうしかない。云うまでもなく、小沢一郎氏の登板を願うしかないだろう。財務官僚との論戦に一歩も引かない剛腕の持ち主は、現在の政界では小沢氏一人だけではないか。たとえば年金会計の支出総額を年金支給人口で割って、すべて一律化する、という大胆な政策を提示すれば良い。そうすれば「食えない年金」も財務官僚たち自身の問題として認識するしかないだろう。現状では高額年金が保障されているから、年金改革などする必要を財務官僚たちは微塵も感じていない。そうすれば生活保護費は一部障碍者部分を除いて廃止できる。それこそ大きな財源が出ることになるだろう。

 国家財政支出の基本設計をやり直す改革こそ必要だ。日本ほど国民純負担率の高い国は先進諸国にはない。まさに国民は政府の奴隷と化している。この奴隷状態からの脱却に必要なのは強力に実行力を持つ政治家だ。私たちは国民のための政治を希求している。国庫ばかり心配して、国民生活を蔑ろにし、国土経営すらままならない政治など御免だ。

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