米国親中派の巨頭キッシンジャー氏の逝去により、米国は対中デカップリング策に回帰するのか。

<アメリカと中国の関係が急速に悪化するなか、何かと物議を醸してきたヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が死去した。中国では過去を懐かしみ、キッシンジャー氏に感謝の気持ちを示す反応が広がっている。

 「あなたは永遠に中国人の友人です、安らかに眠ってください」。そんな書き込みが、中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」で多数の「いいね」を集めている。 
 キッシンジャー氏の訃報が伝わると、数時間後には関連のハッシュタグが、中国で最も検索されるトレンドになった。閲覧は何百万回にも上った。 
「いいね」を数多く得た別の投稿は、「ひとつの時代が終わった」と書いた。別のユーザーは、「彼は何十年にもわたって浮き沈みを見続けてきた。現在の中米関係についてはどう思うだろうか」と問うた。 
 アメリカと中国は、キッシンジャー氏がスタートさせた取り組みの集大成として、1979年に公式に対話を始めた。現在の両国の関係は、おそらくそれ以降で最低の状況だ。同年に国交を「正常化」したのはジミー・カーター大統領の政権だったが、1972年に歴史的な初の北京訪問をし、毛沢東・中国共産党主席と会って数十年にわたる敵対関係を終わらせたのは、前任のリチャード・ニクソン大統領だった。 このニクソン氏の訪中は、中国が西側と関わっていくことを決断する上で非常に重要だったと、多くの人が考えている。
 その実現に大きな役割を果たしたのが、冷戦時代の重要期のアメリカの外交政策をリードしたキッシンジャー氏だった。彼は1971年、ひそかに北京を訪れ、会談を準備したのだった。 中国のソーシャルメディアに寄せられたコメントは、多くは丁重で厳かなものだ。キッシンジャー氏のことを、米中が互いを熱心に受け入れ合っていた時代からの、信頼できる旧知の友人として描いている。 
 その時代はまた、アメリカがソヴィエト連邦と対話をしようとしていた時期でもあった。アメリカは、中国との関係改善がソ連への圧力を強めることを望んでいた。ヴェトナム戦争はまだ激しい戦闘が続いていた。キッシンジャー氏は和平協定をまとめて称賛された一方、戦争を早く終わらせなかったとして非難された。
 ラオスとカンボジアに関しては、何万人もの民間人を殺害した空爆を推し進め、戦争犯罪人と呼ばれた。 ヴェトナム、ラオス、カンボジアでは嫌われたキッシンジャー氏だったが、中国では米中関係の蜜月期をスタートさせた人物として、もてはやされた。 
 キッシンジャー氏は、中国人の間で最もよく知られたアメリカ人の1人だった。彼の名前はいまも、中国全土で歴史の授業で教えられている。そのため、多くの人が彼のことを、いまではすっかり少なくなった友好的西洋人の代表格と受け止めている。 何十年にもわたるキャリアを通じて、キッシンジャー氏は中国との関わりを、自らの主な業績の1つと考えていた。 「中国は私が最も長く、深く関わってきた国だ。中国は私の人生にとって非常に重要な一部になっている」。キッシンジャー氏は2011年、中国の国営日刊紙「参考消息」のインタビューでそう語っている。 キッシンジャー氏はまた、毛沢東氏から習近平氏までの中国共産党の5世代の指導者に会った、数少ない外国人指導者の1人だ。国営放送CCTVは彼を、中米関係の進化を目撃した「生きた化石」だと、微博への投稿で呼んだ。 米中の相互関与を強く支持し、1989年の天安門事件における残忍な弾圧を「不可避」と呼ぶほどだった。 
 同年8月の米紙ワシントン・ポストでは、「その残忍さは衝撃的だった」と書いたが、同時に、「首都の中央広場を何万人ものデモ参加者に8週間も占拠されることを容認する政府は、世界中どこにもないだろう」と主張した。 これより前には、「中国はアメリカの安全保障にとって非常に重要な存在であり続けており、中国との関係を危険にさらすことはできない」と書いていた。 
 キッシンジャー氏は近年も、米中間の緊張緩和を呼びかけていた。中国が世界第2位の経済大国に成長し、同氏が生涯の大半において行使してきた「アメリカの権力」に挑戦するようになっても、同じ主張を続けた。 そして、北京に行けば常に歓迎された。アメリカの対外関与の時代を思い起こさせる存在であると同時に、一貫してその提唱者だった。 キッシンジャー氏は中国を100回以上訪れ、現役を退いて何年もたってからも訪問し続けた。最後の訪中は今年7月だった。
 中米関係が冷え込んでいるにもかかわらず、当時99歳の同氏は北京で習主席に歓待された。 習氏は彼に、中国は「古い友人」を決して忘れないと伝えた。中国の外交トップの王毅外相は、アメリカの中国政策は「キッシンジャー流の外交的知恵」が必要だと述べた。 この会談が行われたのは、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が中国との連絡を再び確立しようと、のるかそるかの訪中を行ってからわずか数週間後のことで、ホワイトハウスをいら立たせた。アメリカの現政府高官より、キッシンジャー氏のほうが中国政府への優れたアクセスをもっていることを見せつけるものだった。 中国外務省の汪文斌報道官は11月30日、キッシンジャー氏を「中国人の古き良き友人」とたたえ、「中国とアメリカは、キッシンジャー博士の戦略的ビジョン、政治的勇気、外交的知恵を受け継ぎ、継承しなければならない」と述べた。 中国共産党は臆面もなく、キッシンジャー氏に賛辞を送っている。
 通常、アメリカに対して示す反応とは対照的だ。 駐米中国大使の謝鋒氏は、「この100歳の人物による中米関係への貢献は、歴史が記憶するだろう」と述べた。 国営メディアの中国通信社は、「鋭いビジョンを持ち、世界情勢を見通せた」人物だったと、キッシンジャー氏を評した。 
 一方、海峡を隔てた台湾では、中国の脅威に対する恐怖が高まっていることもあってか、キッシンジャー氏への見方はそれほど優しくない。 アメリカは1979年に中国との国交を正常化した際、主権国家としての承認を、自治権を持つ台湾から、北京に政府を置く中国に切り替え、「一つの中国」という考え方に同意した。 
「歴史的に見れば、彼は好ましくない人物だ」。フェイスブックにはそんな書き込みがされた。 多くの支持を集めた別の投稿には、こう書かれていた。「彼は台湾を苦しめ過ぎた」。>(以上「BBC」より引用)




 キッシンジャー氏の訃報に接して「米国で最大の親中派の巨頭が遂に逝去した」というのが私の偽らざる実感だ。彼が歴史的に果たした役割は日本にとって誠に厳しいものだった。いや日本にとってだけではなく、台湾にとっても中国の近隣諸国にとっても、キッシンジャー氏は厄災の種を蒔き、それを大きく育てた疫病神だった。
 彼は 百年前にドイツにユダヤ系として生まれ、ナチス=ドイツ政権成立によって1938年、15歳でアメリカに亡命した。 ハーバードに学び、戦後はアメリカ兵としてドイツに駐留した。1960年代後半~70年代前半のアメリカのニクソン政権・フォード政権で外交手腕を発揮したが、ことに対中関係改善に尽力した。

 キッシンジャー氏の業績は米国にとっても大きなマイナスを残した。プラスだったと実感しているのは対中投資で儲けたウォールストリートに巣食っている連中だけだ。なぜなら中国が軍拡を強力に推進したことから、米国の軍事予算も削減どころか増額せざるを得ないからだ。それは米国民の税負担に直結する。
 現在、バイデン政権はトランプ氏が着手していた対中デカップリング策から対中デリスキングに転換した。中国を先進自由主義諸国から切り離して衰亡させよう、と云うのではなく、中国のリスクをなくそう、という極めて穏便なものに変化させようとしている。従って習近平氏に舐められ切ったバイデン氏は先のAPEC首脳会議で訪米した習近平氏を喜ばせるためにネクタイの色にまで気を配ったというが、習近平氏は当然のように「900億ドルを寄こせ」と要求したという。米国はそれほどまでに中国を増長させた。その根はキッシンジャー氏にある。

 その反面、キッシンジャー氏の時代の米国は日本に対して酷い仕打ちを何度もした。もちろんニクソンショック(1ドル360円の固定相場の廃止)やプラザ合意による円高強要もさることながら、繊維交渉から造船規制から半導体規制といった日本製造業の根幹に関わる強権を何度も発動し、日本経済を弱体化した。さらに「構造改革要求」まで年次交渉で行って失われた30年を強要し、日本国民すべてに貧困化というプレゼントをした。
 一貫してジャパンハンドラーの中心にいたのはキッシンジャー氏だった。中東の絶え間ない紛争を裏で仕掛けていたのもキッシンジャー氏だった。だからキッシンジャー氏に影響されないトランプ氏の登場によって中東和平が電撃的に達成されたが、彼が不正選挙で失脚すると現在の中東の有様だ。もちろんバイデン氏の無能のお蔭でプーチンを制御できず、ウクライナ侵略まで許してしまっている。

 キッシンジャー氏が高齢化によって徐々に影響力を失うと、それに代わってゴア氏などが出て来て、米国を弱体化させる「地球環境」などと突如として提唱しだして、CO2削減などと叫びだした。そのプロパガンダは後進国を自認する中国を利するだけで、日本も含めた先進自由主義諸国の経済を痛めつけ、先進自由主義諸国の国民を貧困化させるだけだ。
 もちろん省エネに努めるのは当たり前だが、人類活動で排出されるCO2程度で地球の気候が変動するほどのことはない。人類が存在していなくても地球の気候は変動する。「地球環境」を問題視する連中の正体は先進自由主義諸国から富を奪い取り、好きに使いたい連中だ。そうした壮大な仕掛けを戦後の国際社会で中国を使って実施したキーマンの一人がキッシンジャー氏だった。彼の弟子たちがウォールストリートに巣食っているが、中国は出がらしとなり投機場として旨味がなくなったから弊衣同然に打ち捨てるだけだ。そうならないように、日本は決して彼らの動向から目を離してはならない。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。