続・経済成長のススメ。

<一時は1ドル=150円にまで達したドル円相場だが、コロナ以前は110円程度だったからこの3年強でドルあたり40円も安くなってしまった。このまま円安が進む可能性は低いと言われているものの、過去の歴史を振り返えると通貨が暴落する「通貨危機」が日本を襲う可能性もゼロとは言えない。
 通貨危機が日本を襲えばどうなるのか。太平洋戦争直後の通貨切り替えを経験済みの日本だが、過去の通貨危機からそのリスクについて考えたい。

超円安はどこまで行くのか?

 ドル円相場がさらに安くなってもせいぜい160円程度だろう、と考えている人が多いはずだ。日本は、32年連続の「対外純資産・世界第1位」の国であり、2022年末の段階で約418.6兆円(3兆2200億ドル、1ドル=130円換算)もある。さらに「外貨準備高」も前年に比べて大きく減少したとはいえ、1兆2275億ドル(約160兆円、2022年末、1ドル=130円換算)。中国に次いで第2位の準備高を持つ国だ。
 そんな国の為替レートが急激に大きく下落する可能性は低い。しかし、世界はいま「想定外」のことが連続している。異常気象をはじめロシアがウクライナに侵攻し、イスラエル軍のガザ地区占領など、地政学リスクが高まっている。不透明な世界情勢の中では、何が起こるかわからないのが常識だ。
 実際に、国際決済銀行(BIS)が発表した2023年8月の円の実質実効為替レート(2020年=100)は73.19と過去最低となり、1ドル=360円の固定相場だった1970年8月よりも円の価値が相対的に安くなっていると日経新聞は報道している(2023年9月21日)。
 確かに、日本は32年連続の対外純資産1位の国だが、2021年末には2位のドイツの2兆9329億ドルに迫られているし、外貨準備高もその大半が財務省所轄の「外国為替資金特別会計(外為特会)」で、アメリカ国債で運用されている。いざというときに、役に立たない「絵に描いた餅」とも揶揄されている。
 たとえば19世紀に基軸通貨だった英国ポンドは、1992年の「ポンド危機」などを経て通貨の価値を大きく下げた歴史を持つ。「ポンド円」相場の推移を見ると、1971年3月には「1ポンド=864円」だったのが、2011年12月には「1ポンド=119円」にまで下落。ざっと7分の1にまで下落した。
 7分の1と言えば、円の最高値は1ドル=75円32銭(2011年10月31日)だから、英国ポンドが対円で下落した幅を当てはめると、1ドル=500円を超えることになる。為替相場は、それだけ大きく動く可能性があるということだ。

通貨危機とは「急激な価格変動」のこと?

 こうした通貨の大きな変動は、歴史上しばしば起こる。最近ではトルコの「リラ」やアルゼンチンの「ペソ」が急激な下落を続けている。たとえば、ここ3年弱の相場変動を対ドルベースで見てみると、次のようになる。
<トルコリラ>
・1ドル=5.88リラ(2020年1月10日)
・1ドル=28.67(2023年11月15日)
<アルゼンチンペソ>
・1ドル=59.52ペソ(2020年1月10日)
・1ドル=350.06ペソ(2023年11月15日)  
 リラは、米ドルが約4.8倍になった勘定になる。NHKが2022年1月17日に「お金の価値が1年で半分に減った国」(国際ニュースナビ)として、トルコリラの暴落を取り上げているが、急激なリラ安の影響で1年前に比べて36%(2021年12月)のインフレに悩まされていると報道している。急激なリラ安はインフレを招き、年金だけでは暮らしていけない状況に陥っている。
 アルゼンチンペソも、米ドルが3年で5.88倍になった。同じくNHKがアルゼンチンの過剰なインフレについて2023年9月28日に取り上げているが、両替商の言葉として「1ドル500ペソだったのが、朝起きたら750ペソになっていた」と報道している(おはBiz 5分で分かる経済トレンド)。
 ちなみに、日本円は1ドル=109円47銭(2020年1月10日)から、33年振りの円安と言われる152円を突破したとしても、まだ1.38倍。通貨危機にはまだ余裕がある。

アジア、ロシア……、歴史から学ぶ通貨危機

 直近の通貨危機以外にも経済の歴史を見ると、意外とその歴史は古く、かつ数十年おきに起きている。簡単に紹介しておこう。
〈アジア通貨危機〉
1997年7月にタイのバーツに起きた通貨の暴落がアジア全体に広がり、その後ロシアや中南米へと伝播したのが「アジア通貨危機」だ。90年代前半、相対的に安く評価されていた米ドルに連動していたアジア通貨だが、90年代後半になって米ドルが高くなり、高く評価されていたアジアの通貨がヘッジファンドなどに狙われた。簡単に、国別にその概要を紹介すると次のようになる。
●タイ……90年代前半に1ドル=25バーツ台だったのが、97年には1ドル=55バーツ近辺まで下落。97年7月以降、バーツの価値は対ドルで2分の1まで下落。通貨危機直後の消費者物価指数は9.2%に上昇、98年の実質経済成長率もマイナス10.5%に落ち込む(物価指数と成長率は、「季刊 国際貿易と投資 Autumn 2003年、『通貨危機後のアジア経済』」より、以下同)ことになる。
●マレーシア……97年7月以降、通貨「リンギット」は1ドル=2.5リンギット程度から97年の末には3.89リンギット、98年には4.5リンギット近くまで下落。ドルに対して50%程度の減価となり、98年のインフレ率は8.5%に上昇。GDPはマイナス7.4%に下落する。
●インドネシア……通貨「ルピア」は、1ドル=2300ルピア台だったレートは98年1月は1ドル=9662.50ルピアまで下落。IMF(国際通貨基金)の金融支援を受け入れたものの1ドル=1万4000ルピア台まで大暴落。対ドルに対して5分の1となり、当時のスハルト大統領が辞職する政権交代が起きている。98年の実質経済成長率はマイナス13.1%、インフレ率も75.3%と凄まじい物価上昇に襲われる。
●韓国……アジア通貨危機の中で最も大きな影響を受けたのが韓国の「ウォン」だ。97年6月まで1ドル=850ウォン程度だったのが97年12月末は1ドル=1695ウォンまで下落。IMFによって経常収支の改善や財政収支の黒字化など様々な面で要求された。韓国ではIMF危機と呼ばれており、朝鮮戦争以来、最大の国難と評価されている。98年の実質経済成長率はマイナス6.7%、インフレ率も5.1%の上昇を記録している。
<ロシア・ルーブルショック>
 アジア通貨危機はアジアにとどまらなかった。当時、原油安の影響などで財政危機に陥りロシア国債の債務不履行(デフォルト)を起こしている。この影響で、アジア通貨危機が起きた97年当時1ドル=5ルーブル台だったのが、1998年9月には1ドル=14ルーブル台に下落。1999年10月には1ドル=28ルーブル台にまで下落している。
 ロシア国内ではハイパーインフレが起こり、99年には消費者物価指数が前年同月比で120%に達している。このルーブルの下落によって、アメリカのヘッジファンド「LTCM」が経営破綻。アメリカを金融不安に陥れ、FRBが救済することになった。

通貨危機が国民生活にもたらす影響とは?

 この他、第2次世界大戦直後や70年代の中南米など、通貨危機に見舞われた国は意外と多い。日本もそのひとつだが、どんな影響を受けるのか。簡単に整理すると次のようになると考えていい。
① すさまじいインフレに見舞われる
② 政治が不安定となり政権交代がしばしば起こる
③ 国内企業が外国資本に買収され、既存の海外資本の企業が相次いで撤退する
④ 不動産などの国内資産が外国資本に買われる 
⑤ 政府機関等のコストカットが要求され、行政サービスが質量共に低下する
⑥ 国内の優秀な人材が流出し、海外からの出稼ぎ労働者等がいなくなる
 現在進行形で進んでいるアルゼンチンペソ危機も、この1年間で食料品価格などは2倍以上になった、と報道されている。大統領選挙でもハビエル・ミレイ下院議員が「中央銀行と通貨のペソを廃止し、米ドルを法定通貨にする」という政策を掲げて大統領選に勝利した。通貨に対する信任がいかに重要かを物語っている。
 実際に、アルゼンチンの消費者物価指数は、23年10月に前年同月比142.7%(日経新聞 2023年11月15日)上昇。この数字はアルゼンチンが急激なインフレで苦しんでいた1991年8月の144.4%以来32年ぶりの上昇となった。2022年の通年でも94.8%の上昇となっており、通貨の暴落はインフレとセットになる。
 ここ数年の世界的なインフレは戦争などによる資源価格の高騰もあるが、同時に起きた通貨変動の影響がある。その背景には、アメリカの中央銀行にあたる「FRB(連邦準備制度理事会)」の急激な金利上昇がある。金利上昇に合わせて、アルゼンチンやトルコ、アジア諸国などから、金利の高い米ドルに資本が流出して通貨が売られたわけだ。

超円安で生活はどう変わる?

 今後、円安がさらに進んだ場合、われわれの生活はどうなるのか。すさまじいインフレを体験した国の人々の話を整理すると、大きく4つのポイントに絞られる。
●国全体が貧しくなる
 激しいインフレが起こり、企業業績が急激に悪化していく。賃金の上昇をはるかに上回るインフレが生活を襲い、ほとんどの国民は生活苦に陥る。とりわけ、資産を自国通貨(=円)だけで運用してきた人は一気に財産が半分に減少してしまうので、生活も苦しくなる。
●政府や地方自治体の財政が急激に悪化する
 財政赤字はさらに拡大し、地方自治体の中には職員に賃金が払えなくなるなど、公共サービスが一時的に停止になる事態がやってくる。政府の補助金に頼る年金給付や健康保険、介護保険、雇用保険といった社会福祉事業や公共サービスが危機を迎える。年金だけでは暮らせないレベルまでインフレが進み、生活が困窮する事態が起こる。
●金利が急激に上昇していく
 円安を止めるため金利を上昇させることになるため、住宅ローンなど融資を受けている人や企業が危機に直面する。住宅ローンは一気には上がらないものの、利息だけを返し続ける羽目になる場合もある。不動産市場や株式市場は低迷する。
●企業の業績が急激に悪化する
 海外での収益が円安で急増する反面、日本国内での業績は急激に悪化する。これまで企業がため込んできた内部留保も、円だけで運用してきた企業は資産が半減することになる。銀行は、円預金を引き出して外貨に換えようとする客で混乱し、最悪取り付け騒ぎに発展する可能性もある。経営基盤の弱い銀行の破綻も相次ぐ可能性がある。
 日本がトルコやアルゼンチンのような状況に陥る可能性は低いが、日本には食糧やエネルギーを自給できていないというリスクが存在する。円安による食糧不足や原油価格高騰といった事態になれば、国民は困窮する。海外の投資家も、日本から資金を引き上げるために、円を売って外貨を買うことになる。超円安のシナリオも完全無視するわけにはいかないだろう。>(以上「東洋経済」より引用)




日本人は「超円安」の恐怖がわかっていない!忍び寄る「通貨危機」への準備はできているのか」とは随分と上から目線の表題だ。反対に岩崎博充(経済ジャーナリスト)氏に訊いてみたい。かつてニクソンショックがあり、プラザ合意に基づく円高ショックがあったことをどのように解説するのか。
 ニクソンじょっくで戦後1ドル360円に固定されていた為替相場が変動制になった。そして日本が米国へ集中豪雨的に輸出していたことに反発したホワイトハウスによってプラザ合意により強制的に円高へ切り上げられた。

 もちろん国家財政破綻により通貨がハイパーインフレに見舞われた場合は為替相場も猛烈な下落となる。まさにアルゼンチンがそれにあたり、国家財政破綻によるハイパーインフレにより為替相場も1/10以下に下落した。その国家破綻の場合と通貨発行国家間の公定歩合等の変動による為替相場の変動は全く別物だ。確かに日本経済は長年の停滞により相対的な貨幣価値の下落はあるだろうが、それは殆ど誤差の範囲だ。その証拠に安倍政権時に日銀が異次元緩和策を実施するまでは円高基調で推移していた。
 だから岩崎氏が指摘する「忍び寄る通貨危機」の正体が何なのか判然としない。日本の国家財政がアルゼンチンのように破綻するとも思えないし、国債残がハイパーインフレを引き起こす、と主張する愚かな経済評論家のような事態が起きるとも考えられない。そしてやはり似非・経済評論家が巨額な国債発行しているため日銀は金利を引き上げられないからゼロ金利の日本と米国のFRBが引き上げた金利差で円安は続くだろう、と予測しているが、金利は国内経済状況によって決定するものだ。日銀が「日本経済はインフレだ」と判断すれば金利を引き上げるだろう。ただし、現在のインフレはコストプッシュ・インフレであって、経済成長に伴うインフレでないため、日銀が金利引き上げを決定するとは思えない。

 さらに似非・経済評論家や素人コメンテータが訳知りな顔で「日本は国債発行残が1200兆円もあるから金利を引き上げれば国債金利が上昇して財政破綻に繋がる」などとトンチンカンな発言をテレビで拡散し、金融に無知な国民は「ソーナンダァ」と感心している。
 しかし発行した国債のうち、約576兆円も買い入れていて、実に発行した国債の53.3%は日銀の金庫にある。つまり莫大な金利を支払ったとしても、その53.3%は日銀を通過勘定として国庫に入る。しかも金利引き上げを日銀が判断する時は景気が過熱気味なのを冷ますたるの措置であって、日銀が市中に出回っている国債を積極的に買入て市中の貨幣流通量を減らそうとする。つまり政府が国債金利として支払う国庫支出は必ず減少する。

 金融政策とはそうしたもので、日銀の役割は景気のアクセルとブレーキをいつ踏むかを判断するのが本来の役目だ。現在は離陸しない経済を成長軌道に乗せるために異次元な金融緩和策を維持している。しかし市中銀行への資金需要が弱いため、景気がなかなか良くならないし経済成長しないまま30年以上も同じ所で足踏みしている。
 日銀が金利を引き上げれば国債金利により財政赤字が添える、と危惧する人がいるが、ある意味では既に国債は国が償還している。日銀が発行した国債の53.3%も保有していることは連結決算で見れば償還しているのと同じことだからだ。その金利は大したことではなく、国債発行で穴埋めすれば良い。その穴埋めした以上の国債償還が経済成長によるインフレで行われている。

 物事は固定的に考えてはならない。すべては相互に関連して弾力的な「政策」として見るべきだ。それらの政策の行き着くところは、決してプライマリーバランスのためではなく、国民生活が豊かになるために実施すべきだ。
 30年以上も経済成長しなかったのが諸悪の根源だ。国民が貧困化し、少子高齢化が進行したのも、失われた30年の成せる業だ。だから財政均衡よりも、経済成長が優先されるべきだ。そのために消費税を廃止して、個人消費を刺激すべきだと主張している。

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