彼は「超限戦」を唱えて「戦狼外交」に中国の舵を切った独裁者だ。

■会談は無難な挨拶から
 富士山は、静岡県側から登るのと、山梨県側から登るのとでは、景色がまるで異なるものだ。 
 そんなことを思わせる会談が、アメリカ西海岸時間の11月15日(日本時間16日午前)に開かれた。サンフランシスコから南へ約40km行った庄園「フィロリ邸」で、昼食を挟んで約4時間にわたって行われた、ジョー・バイデン大統領と習近平国家主席による米中首脳会談だ。
  この両雄が対面するのは、昨年11月14日のインドネシア・バリ島会談以来、2回目のことだ。 
 バイデン大統領は右手にアントニー・ブリンケン国務長官以下5人、左手にジャネット・イエレン財務長官以下5人を従えていた。一方の習近平主席は、右手に蔡奇党常務委員兼中央弁公庁主任以下4人、左手に王毅党中央政治局委員兼党中央外交工作委員会弁公室主任兼外相以下5人を従えていた。 
 冒頭、互いに比較的無難な挨拶から始まった。 
 バイデン大統領「(習近平)国家主席に再び会えて嬉しい。この10年か12年、私たちは多くの時間をともに過ごしてきた。そして特に今日の首脳会談と、今週のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に関連して、アメリカにあなたを招いたことは、大きな栄誉であり喜びだ。 
 見てほしい。今年のこの時のことを。1年と1日前、私たちはG20(主要国・地域)首脳会談の時、バリ島で会った。それ以来、私たちのチームのキーメンバーたちは、両国と世界に対する重要な議論を重ねてきたのだ……」
 習主席「(バイデン)大統領、こんにちは。ここへ来て、私が国家副主席だった頃のあなたの中国外遊を思い出した。われわれが会談したのは、12年前のことだった。あの時のわれわれの交流のことを、まだ鮮明に覚えている。そしていつでも私に多くの示唆を与えてくれる。 
 最後に会ったのは、バリ島だ。あなたは、1年と1日前だと言った。それから多くの出来事が起こった。 
 世界は新型コロナウイルスのパンデミックから起ち上がった。しかしいまだ大きな後遺症の中にある。グローバル経済は復活してきているが、それは依然として鈍足だ。産業と供給のチェーンは、いまだ分断の脅威にさらされており、保護主義が台頭している。これらはすべて、重大な問題だ……」 

4時間にも及ぶ会談の中身 
 その後、記者団を締め出して行った米中首脳会談の議題は、多岐にわたった。米ホワイトハウスの発表によれば、それはおおむね以下の通りだ。 
 フェンタニルなどの薬物汚染防止、軍同士の対話促進、先端AIシステムの規制、南シナ海・東シナ海などでの自由で開かれたインド太平洋の保証、朝鮮半島の完全非核化、ウクライナ戦争への援助継続、イスラエル・ハマス紛争の早期解決、新疆ウイグル・チベット・香港を含む普遍的人権の保証、台湾の平和と安定、不公正な貿易慣行の解消、先端技術と経済安全保障、中国でのアメリカ人拘束や出国禁止の早期解決、相互航空便乗り入れの増便、教育・文化・スポーツ・ビジネス交流の増加、気候変動危機への対応、ハイレベルの外交交流の促進。
 会談後の記者会見は、習近平主席が拒んだため、バイデン大統領の21分にわたる単独会見となった。  
「この街にこんなに多くの人がいるなんて思わなかった。どうぞ座ってくれ。皆さんご承知のように、習主席との数時間の会談が終わったばかりだ。いくつかのこの上なく建設的で生産的な議論ができたと信じている。 
 習主席とは、互いに副大統領と国家副主席だった10年以上前から、議論してきた。私たちの議論は、いつでも率直で直接的だ。いつでも合意に達するわけではないが、率直ではある。今日も、数カ月にわたったハイレベルな双方のチームの基礎的な仕事の上に打ち立てられたものだ。私たちはいくつかの重要な進展があったと信じている……」 

■「本日の会談後も習氏を独裁者と呼びますか?」 
 ハイライトは、「会見後」にあった。バイデン大統領が会見を終えて引き上げるようとして歩き出したら、女性記者が声を挙げた。するとバイデン大統領が振り返って、対応したのだ。  ホワイトハウスは、そのやり取りまで律儀にホームページにアップしているので、原文に訳文もつける。 
 Q And, Mr. President, after today, would you still refer to President Xi as a "dictator"?  This is a term that you used earlier this year. (それで大統領、今日の(米中首脳会談の)後でも、いまだ習を「独裁者」と呼びますか?  この言葉はあなたが今年初めに使ったものですが) 
 THE PRESIDENT : Well, look, he is. I mean, he’s a dictator in the sense that he ― he is a guy who runs a country that ― it’s a communist country that is based on a form of government totally different than ours. (そうだね、彼を見たまえ。彼は国を運営しているんだ。私たちとは全体的に異なった政府の形態に基づいた共産国家をね。その意味で、彼は独裁者さ)
 最後についにホンネが出たというべきか、あえてホンネを出したというべきか。いずれにしても、この時、バイデン大統領の脳裏にあったのは、来年11月の大統領選挙のことだったろう。 

■「米国は『台湾独立』を支持しないという意思を具体的行動で示せ」 
 だが習近平主席も、バイデン大統領との会談で、台湾問題についてホンネを出していた。『人民日報』の原文に、訳文をつける。 
 台湾问题始终是中美关系中最重要、最敏感的问题。中方重视美方在巴厘岛会晤中作出的有关积极表态。美方应该将不支持“台独”的表态体现在具体行动上,停止武装台湾,支持中国和平统一。中国终将统一,也必然统一。 (台湾問題は常に、中米関係の中で最も重要で、最も敏感な問題だ。中国はアメリカがバリ島での会談で出してきた積極的な態度表現を重視している。アメリカは、「台湾独立」を支持しないという態度表明を、具体的な行動の上で体現しなければならない。台湾の武装を停止し、中国の平和的統一を支持しなければならない。中国は最終的に統一される、必然的にも統一されるのだ) 
 こうして両雄は、頂上から踵(きびす)を返し、再び異なる風景を眺めながら「下山」していった。半世紀の風雲を経た米中関係だが、今後のさらに激しい風雲を予感させるような米中首脳会談だった。>(以上「JB press」より引用)





 近藤大介(ジャーナリスト)氏が米中首脳会談に関する論評を発表した。ただ近藤氏は習近平氏がロスの空港に降り立った時、タラップの下に赤絨毯が敷かれてなかったのに一切触れていない。それはホワイトハウスが習近平氏に如実に示した現在の米中関係の現れではないだろうか。
 米国は決して習近平氏を招待したわけではない。APEC関係国の首脳として訪れた中国首脳を遇したに過ぎない、という事実をマスメディア関係者に知らしめた。その反対にわざわざ米国を訪れた習近平氏にこそ、バイデン氏と会わなければならない事情があったと見るべきだろう。

 会談内容として報じられたニュースを見ると、サンフランシスコから南へ約40km行った庄園「フィロリ邸」で、昼食を挟んで約4時間にわたって行う必要があったのか、と疑問に思った。米ホワイトハウスの発表によれば、それはおおむね以下の通りだ。 
「フェンタニルなどの薬物汚染防止、軍同士の対話促進、先端AIシステムの規制、南シナ海・東シナ海などでの自由で開かれたインド太平洋の保証、朝鮮半島の完全非核化、ウクライナ戦争への援助継続、イスラエル・ハマス紛争の早期解決、新疆ウイグル・チベット・香港を含む普遍的人権の保証、台湾の平和と安定、不公正な貿易慣行の解消、先端技術と経済安全保障、中国でのアメリカ人拘束や出国禁止の早期解決、相互航空便乗り入れの増便、教育・文化・スポーツ・ビジネス交流の増加、気候変動危機への対応、ハイレベルの外交交流の促進」と項目は多いが、それらはお互いに意見を述べ合って終わりの案件ばかりだ。到底意見のすり合わせから調整、さらには合意妥結といった結果を得るための項目ではない。
 果たして「会談後の記者会見は、習近平主席が拒んだため、バイデン大統領の21分にわたる単独会見となった」という。そこで「習近平氏は独裁者だ」というバイデン氏の発言が出た。それが本音ではないだろうか。

 米中首脳が顔を合わせて会談しなければならなかった「愁眉の懸案」は中東問題ではなかっただろうか。おそらく、バイデン氏は習近平氏にハマスに人民解放軍人たちが協力している事実を突きつけて、習近平氏に米国と対決する覚悟があるのか、と詰め寄ったのではないだろうか。
 だから「台湾を軍事的統一ではなく、平和的統一する」と習近平氏は発言せざるを得なかったのではないだろうか。おそらくCIAはハマス幹部を何人かを拘束して、ハマスに協力していた人民解放軍から中国軍の「予定」を訊きだしていたのではないだろうか。だから米国に降り立った習近平氏に赤絨毯が用意されてなかったし、そこから40㎞もの長距離移動を習近平氏に敷いたのではないだろうか。

 さらに習近平氏はAPEC全体会議に出席していないし、集合写真では前列端の岸田氏の隣りに追いやられていた。だから人民日報はAPECの集合写真を掲載していない。あまりに格好悪い習近平氏の姿を中国民に知られたくなかったからだ。中央でバイデン氏と肩を並べている写真なら、確実に掲載したであろう。
 習近平氏はAPEC会議の間、仲の良い国の首脳と会談している。そうした写真を国内向けに報じるしかなかったと云えばその通りだろう。近藤氏は米中が対等な国として認識しているような書き方をしているが、かつて習近平氏がオバマ大統領に「太平洋を東西に二分して、それぞれを米国と中国が支配すれば良いだろう」と持ち掛けた当時とは明らかに習近平氏の鼻息はトーンダウンしている。

 中国は「一つの中国」に拘泥しているが、その意味を米国は「地球は一つ」という意味合いに解釈変更すべきだ。中国と台湾は明らかに別の国だが、「中国語を話す国」としては一つだ、といった具合に解釈を変更して行かなければ、いつまで経っても台湾国民は中国の巨大な影に怯えていなければならないだろう。それがハリボテの影だとしても、大きさに変わりはない。
 中国経済は崩壊過程にある。経済音痴の習近平氏でも、さすがに中国経済が厳しい状況に陥っていることを自覚しているだろう。そうすると頼るべきは米国と日本だ。かつて貧困国だった中国を支援してWTO加入に尽力し、中国を経済大国にした両国に再び頼ろうとするのは自明の理だ。だから喜色満面の習近平氏が米国に降り立ち、バイデン氏と岸田氏と相次いで会談した。しかし決して中国を支援してはならない。彼は「超限戦」を唱えて「戦狼外交」に中国の舵を切った独裁者だ。その本意を習近平氏に問い続けなければならない。

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