中国の未来は民主化以外に選択肢はない。

日本もご存じのあのスパイラルが始まった
 中国経済は3年間のコロナ禍を経て、公式統計が示す以上に急減速している。北京や上海などの大都市でも、たくさんの店は閉店を余儀なくされている。
 当初、コロナ禍が終われば、中国経済はV字型回復するだろうと思われていたが、実際は、経済回復の力は予想以上に弱い。なぜならば、コロナ禍の影響により、約400万社の中小企業は倒産したといわれている(中国国内の報道)。中小企業はもっとも雇用創出に貢献するセクターであるため、400万社もの中小企業は倒産して、雇用を予想以上に悪化させてしまった。
 2023年7月、中国の若者の失業率は21.3%と発表された。8月以降、中国国家統計局は若者失業率の発表を停止した。実態は予想よりも遥かに悪いと推察される。
 習近平政権は景気の悪化をよく把握しているはずである。習主席と李強首相は国内向けの談話で「内循環」による経済回復を目指すと呼び掛けている。要するに、外需はアメリカの経済制裁によりあまり期待できないため、内需を刺激して、経済回復を図る考えのようだ。
 問題は若者の失業率が高騰し、個人消費が阻まれ、内需に依存する経済回復は予想以上に難しい。実は、経済回復が遅れた影響はすでに不動産市場に飛び火してしまっている。中国経済はスパイラル的に落ち込む可能性が高くなっている。

政府の失敗隠しの下で膨らむ不良資産

 中国の不動産市場のバブル化について、専門家の間でほぼ意見が一致している。しかし、不動産バブルが崩壊したかどうかについて、専門家の間で意見が分かれている。
 不動産バブルが崩壊したと主張する専門家は、大手デベロッパーのデフォルト(債務不履行)が相次いでいることを理由に挙げている。同時に、開発途中の物件が完成できないまま、放置されていることも問題視されている。
 それに対して、不動産バブルが崩壊していないと主張する専門家は不動産価格が暴落していないことを理由にあげている。それぞれ一理のある主張である。
 中国の不動産バブルが崩壊したかどうかを論ずる前に、中国の不動産市場と日本の不動産市場の違いを明らかにしておこう。そもそも30余年前に日本で起きた不動産バブルは市場の失敗だった。バブル崩壊後の処理について政府の失敗があったが、基本的には市場メカニズムの枠組みで処理された。
 それに対して、中国の不動産バブルとバブル崩壊のいずれも政府の失敗によるものである。今でも、政府は直接不動産価格を市場に介入して直接コントロールしている。政府は不動産価格の急落を嫌って、不動産仲介業者に不動産価格の値引きを禁止する通達を出したりしている。したがって、不動産価格が暴落していないことを理由に、不動産バブルが崩壊していないという判断は正しくない。
 一方、仮に中国の不動産バブルは崩壊したとしても、価格が急落していないことから、影響は限定的でそれほど深刻ではないと判断できるのだろうか。この見方も間違っているといわざるを得ない。
 不動産バブルが崩壊すれば、銀行にとって住宅ローンの担保は元本割れになる可能性が出てくることで状況として深刻になる。現実問題として中国のデベロッパーが債務不履行を起こしているため、銀行のバランスシートに巨額の不良債権が現れているはずである。
 中国の場合、住宅などの物件が引き渡される前に、ローンが実行されている。家を買った個人はデベロッパーが物件を完成できなければ、入居できないため、住宅ローンの返済を拒否する動きが出てくる。結果的に銀行の住宅ローンも焦げ付き、不良債権になってしまう。

中国不動産バブル崩壊は社会不安に行きつく

 30年前、日本で経済バブルが崩壊したあと、少し時間が経ってから、1998年、大手金融機関の倒産が相次いだ。経済バブルの崩壊によって金融危機が引き起こされた。日本は金融危機の広がりを食い止めるために、預金保険制度を活用した。結果的に、金融機関の再編が行われた。一方、デフレが進行し、30年失われたといわれている。
 今、中国で起きている不動産バブル崩壊はかつて日本が経験した経済バブル崩壊よりも、影響の大きいものであろう。
 中国では、不動産バブルが崩壊して、銀行は巨額の不良債権を抱えるようになるだけでなく、影響が広範に広がる恐れがある。なぜならば、地方政府も不動産バブル崩壊の影響を直接受けて、これまで順調に得ていた土地使用権(定期借地権)の売り上げの財源を失うことになるからである。その結果、経済発展が遅れている地方では、その政府が管轄する年金などの社会保障基金のプールに資金が枯渇する恐れがある。
 簡潔にいえば、日本の経済バブル崩壊は社会不安を引き起こさなかったのに対して、中国で起きている不動産バブル崩壊は社会不安を引き起こす可能性が高い。
 まず、不動産バブル崩壊により、大手国有銀行をはじめて、地方の中小国有銀行も巨額の不良債権を抱えるようになる。中国は2015年に日本の預金保険機構を真似して預金保険制度を創設したが、歴史が浅く、金融危機に対処する資金力が十分ではない。ただし、政府は直接介入する可能性が高く、今のところ、システムクライシスになる可能性が低い。
 そして、土地財政に頼っている地方政府は財政難に陥る可能性が高くなっている。その延長線上にある社会保険基金のプールに資金が足りなくなれば、それを頼りにしている年金生活者の生活が困窮する恐れがある。最悪なケースは、親世代は年金が満額支給されなくなり、子世代は買ったマイホームに入居できなくて、これで社会不安が着火して一気に広がってしまう恐れがある。
 中国で不動産バブル崩壊による経済と社会への影響はどれほど広がるかは今のところ、予測不可能である。ある意味では、これは習政権の統治能力を試す試金石になる。不動産バブルが崩壊する根本的な原因は不動産デベロッパーの供給過剰と予想以上の需要不足にある。デベロッパーにとって建設中の物件は売れなくなれば、在庫となる。その結果、銀行などの債権者への債務返済は滞り、建材のサプライヤーや銀行と連鎖倒産になる可能性が出てくる。

国有銀行は救済、地方政府・個人は切り捨て

 では、不動産バブルが崩壊した場合、政府は銀行、デベロッパー、住宅を買った個人をどのような優先順位で救済するのだろうか。デベロッパーも銀行も個人も投資が失敗した場合、当然、自己責任になる。中国政府が優先的に救済するのはおそらく国有銀行であろう。
 デベロッパーについて、資産査定が行われ、採算の取れる事業について国有企業による買収、すなわち国有化が進められる。その経営幹部たちの責任を問われ、刑罰に処する可能性が高い。そうすることのメリットはその経営幹部に責任を負わせることができることである。
 むろん、マイホームに入居できない個人は抗議活動を展開する可能性が高いが、デベロッパーの資産を差し押さえた段階で得られる財源の一部を使って、個人に対して部分的に補償するだろう。ただし、その全額が補償される可能性が低い。
 そもそも不動産市場がバブルになったのは政府の監督責任が大きい。中国政府は毎年高めの経済成長率を目標に掲げている。それを実現するために、不動産投資を促していた。不動産投資はブームになれば、不動産投資は経済成長をけん引してくれる。そのなかで、地方政府は土地使用権を払い下げして、巨額の財源を手に入れることができる。
 しかし、地方政府は貴重な財源を大切に使っていない。地方政府の市役所や区役所をみると、いずれも不必要に巨大なものになっている。
 中国の1人あたりGDPは12000ドル(約180万円)程度だが、大都市のマンションは安くても、6000-7000万円が普通であり、億円以上の物件も少なくない。コロナ禍前の大都市の大学卒業生初任給は5000元(約10万円)程度で、今は3000元(約6万円)程度である。不動産市場がバブルになっているのは明らかである。

対策で強権を使えば使うほど中国は長期に停滞

 他国と同じように、中国にとって不動産バブルの崩壊は金融危機を意味するものである。迅速な対応が求められているが、中国政府は不動産仲介業者に対して、売りに出す不動産物件の値引きを禁止するといった通達を出し価格をコントロールしている。これでは、問題が解決されない。
 そもそも不動産市況が下落するようになったきっかけは、「家は住む場所であり、投機の対象であってはならない」という習主席の談話だった。家が住む場所であるというのは正しい主張だが、個人が不動産に投資するのも自由である。それを抑制するならば、不動産価格を直接コントロールするのではなくて、固定資産税を課税するなどで需給バランスを調整すべきである。固定資産税を課税すれば、個人は必要以上にマンションを購入しなくなるはずである。しかし、今、中国では、まだ固定資産税を課税していないのは問題である。
 これから予想されるのは不動産デベロッパーの大規模倒産である。企業の倒産は自己責任であり、とくに珍しい話ではない。問題は倒産したデベロッパーの後処理である。すなわち、不動産デベロッパーの資産査定と債務返済が透明な形で行われなければならない。ブラックボックスのなかで処理しようとすると、社会不満が溜まることになる。
 中国では、政府の権力がもっとも強いのは否定のできない事実である。しかし、だからといって恣意的に市場に介入すれば、逆に市場の混乱を招くことになる。不動産バブル崩壊を契機に、市場経済の種々の制度を整備するのは中国にとって急がなければならないことである。市場経済制度の整備を怠り、政府が恣意的に市場介入を続ければ、中国経済は長期にわたって停滞することになる>(以上「現代ビジネス」より引用)




 柯隆(東京財団政策研究所主席研究員・静岡県立大学グローバル地域センター特任教授)氏の「習近平・中国の不動産バブル崩壊のその先は、社会保障崩壊・社会不安という日本とは異なる暗澹たる未来」という見出しが目に付いた。名前からして柯隆氏は中国人だろうと想像する。だから中国の事が良く分かっているのだろうと思う。
 昨日引用した近藤氏の論評は習近平氏を「持ってる男」と持ち上げる一方の礼賛で酷かった。現実を見るなら習近平氏も70過ぎの老人でしかなく、彼がいかに独裁者だと威張ったところで今後20年以上も存命することは難しい。

 日本では評論家が頻りと「未来にツケを残さない」と発言するが、国債残を「ツケ」だと認識しているようでは現代財政論が何も解っていない。しかし習近平氏はそもそも金融破壊をもたらすだけの巨額「バブル」すら解消しようともしないで、先延ばし策を弄し続けている。
 習近平氏は独裁者の沽券に関わるとして経済運営批判する経済専門家たちを、自身の無謬(むびゅう)性を貫くために政権中枢から排除してしまった。突然亡くなった李克強氏も経済専門家の一人だった。彼は習近平氏が「中国から貧困を追放した」と宣言した直後に、公の席で「中国には月収千元以下の人口が6億人いる」と国民の多くが貧困に喘いでいる実態を暴露した。現在の中国経済は当時よりも遥かに悪くなっている。不動産バブルを崩壊させないために中共政府が強権発動して不動産取引を制限しているため、不動産価格が高止まりしたままだ。不動産価格が暴落しなければ外見からは不良資産は存在しないことになるが、そんな子供騙しは通用しない。

 外国の機関投資家たちは中国から投資を引き上げている。その勢いは止まらず、中国は慢性的な外資不足に陥って身動きできなくなっている。だからロシアに買い叩いたロシア原油ですら「元」決済を強要したが、ロシアが受け取った「元」を即座に国際金融市場に流しているため「元」安基調が止まらない。習近平氏の唱える「元」経済圏など構築できるはずなどなく、「一帯一路」に参加した130か国のうち、今年10月の会議で北京に参加したのは50ヶ国ほどで、国家元首を派遣したのはロシアのプーチンの他2~3名ほどでしかなく「開店休業」状態だった。
 いかに習近平氏が「偉大なる中国」を叫ぼうと、それに付き合ってくれるのは中共政府のエージェントら成り下がっているバイデン・ホワイトハウスくらいのものだ。11月には習近平氏-バイデン氏が会談する、という。何を話し合うつもりなのか知らないが、せめて「難民に偽装して人民解放軍戦闘員を米国に紛れ込ませるのは止めろ!」と叱り飛ばす元気ぐらいないものだろうか。

 先進自由主義諸国は毅然とした態度で習近平氏と向かい合う必要がある。世界の平和を脅かしているのは独裁者たちだ。その筆頭が習近平氏で、かれは独立国台湾を平然と中国領土の一部だと嘯き「台湾を統一する」と公言している。これほど無残なパラドックスはないが、先進自由主義諸国の政府首脳は「一つの中国」を是認しているというから驚きだ。
 台湾が中国の領土なら、台湾を統一する必要はない。「かつて領土だったから奪還する」というのなら、それは大嘘だ。台湾が中国の領土だった人はないし、現政権下で中国領だったことはサラサラない。そして台湾政府は徴税権・関税自主権・軍事統帥権の三権を有し、独立国家としての要件を具備している。それを統一する、というのは侵略する、と公言しているのと同じだ。侵略を是認する先進自由主義諸国政府は欺瞞そのものだ。或いは「一つの中国」とは「世界は一つ」の「一つ」と同じ意味間、というのなら納得できる。世界は一つだから人類は仲良くすべきだ、という意味で「中国は一つ」と解釈してきた、と先進自由主義諸国政府は統一コメントを発表してはどうだろうか。

 中国経済に話を戻すと、習近平氏は経済崩壊を招いた責任を取って退陣すべきだろう。それとも自身の無謬性を否定して共産党から弾劾を受けるのか。それとも人民から石を以て追われる醜態を世界に配信するのか。
 習近平氏を排除して、中国は経済を改革開放路線に戻し、政治体制を民主主義へ移行する手続きを明確に国民に示すべきだろう。さもなくば、中共政府に何もかも奪われた中国民は中国共産党を許さないだろう。中国の歴史を見れば、王朝を追われた一族がいかなる運命をたどるか明らかだ。そうなる前に、民主化の道筋を示して中国共産党は解体するしかない。彼らが存在する限り、中国民は搾取される存在でしかないからだ。そして中国民はそのことに気付いてしまった。

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