電動キックボードの公道走行は危険ではないか。

<仏パリは2023年9月1日、これまでとは違う朝を迎えた。電動キックボードのレンタルサービスが禁止されたのだ。 

 パリでは2023年4月、電動キックボード・レンタルサービスの是非を問う住民投票が実施され、約90%が禁止を支持した。 レンタルサービスを展開する米カリフォルニアのLime、オランダ・アムステルダムのDott、ドイツ・ベルリンのTier3社はいずれも、市当局と契約を結び、計1万5000台を提供していた。 一部の地区では、安全性や無謀運転、駐車場などの問題について苦情が寄せられ、レンタルサービス会社は対応に頭を悩ませていた。
 会社側は市当局に対し、苦情への対処法についていくつか提案を行っていた。 最終的には、アンヌ・イダルゴ市長が4月に住民投票を実施し、電動キックボードのレンタルサービス禁止が決定した。ただし、市当局は禁止をただちに発効せず、現行の認可が切れる8月末まで運営を許可していた。 住民投票では参加した市民の90%以上が反対票を投じているが、電動キックボード推進派は、投票率が8%未満と低かったことと、投票所数が足りなかったことがその原因だと批判。投票結果には民意が反映されていないと主張している。 
 いずれにせよ、Lime、Dott、Tierの3社は、欧州の主要都市であるパリではもう電動キックボードのレンタルサービスを展開できなくなったことを受け入れざるを得ない。2024年パリ五輪を1年後に控えたタイミングでの禁止となった。 電動キックボードは禁止されたものの、3社は現在も、電動自転車レンタルサービスをパリで運営している。五輪大会期間中や観光シーズン中には、市民と観光客の両方を対象に、サービスを強化する予定だ。 
 パリ市は、多額の資金を投じて自転車向けのインフラ整備に取り組んでおり、クルマの使用を控えて自転車を使用するよう促している。そのため、電動自転車のレンタルサービスについては、電動キックボードほど批判されることはないだろう。 電動キックボードのレンタルは、パリを除く仏国内のほかの主要都市で、現在も運営されている。 欧州の諸都市では引き続き、電動キックボードを巡る問題が争点となっている。
 レンタルサービス会社は、電動キックボードを各地に配備し、さらに多くの都市にマイクロモビリティの利用を広げようと意欲的だ。その一方で、安全性を危惧する声や、不適切な駐車で道がふさがれているといった苦情が収まらず、各地の議員や当局者の間では激しい議論が続いている>(以上「Forbes」より引用)




 日本でも電動キックボードが全面解禁とされて以来、歩行者との衝突事故が後を絶たない。同時に道交法を守らないキックボーダーもみられるようで、道路をマリオカートの走行を許可して、様々な問題を生じているのと併せて緩くなった道路交通法の運用に首を傾げざるを得ない。
 なぜなら法改正の前に車道区分を新たに設置するとか、自動車と系車両の装甲区分を分けるための拡幅工事を全面的に実施した、ということもなく、雑然とした道路交通法の改正だけを実施した「稚拙」の感を拭えないからだ。

 たとえば、以下の道交法改正が免許を持つすべての国民が理解しているだろうか。
「電動キックボードに関する法改正は、
 (1):時速20kmまでなら免許不要(車道を走行)、ヘルメット着用は努力義務
 (2):(1)に加えて時速6kmまでなら歩道(自転車走行レーンを持つ)走行可能
 となっている。
 しかし、電動キックボードの違法行為による事故は急増しており、最近では飲酒運転はもちろん道交法違反だが、それも徹底しているとは言い難い。

 警察庁は、2021年9月から2022年2月の間に全国で電動キックボード利用者による道交法違反容疑が168件あったと報告している。そのうち半分以上となる86件は、禁止されている歩道を走行するなどの「通行区分違反」で、続いて信号無視と一時不停止が各20件となっているという。
 指導や警告を受けたのは、ナンバープレートやミラーの不備といった整備不良や無免許などが多数あったという。「免許不要でもOK」となった時点で、違法行為がさらに激増することは目に見えているが、なぜこのタイミングで電動キックボードの規制緩和ともいえる改正道交法が可決・成立に至ったのだろうか。

 もし時速制限が30km設定されている電動キックボードなら、特定小型原付扱いにはならず、通常の原付バイクと同じ扱いになる可能性があって、当然ながら原付バイク扱いの電動キックボードは、免許・ヘルメットが必要になり、歩道走行は禁止だ。
 また電動キックボードで公道走行するためには、保安基準を満たしている必要がある。詳細は国土交通省「特定小型原動機付自転車について」を参照して頂きたいが、これらの装置がひとつでも欠けていると、保安基準をクリアしておらず、特定小型原付として扱われなくなる。

 そうすると特定小型原付として走行はできなくなるし、保安基準の対象となる装置は多くのものが構造上後付けできないという。製造段階で設置されていることが前提となるため、最初から条件を満たした電動キックボードを購入する必要がある。
 「免許なし・ヘルメットの着用が努力義務の電動キックボードを購入したい」と思ったら、条件を満たして特定小型原付として扱われる電動キックボードを選ぶことになるという。また特定小型原付なら条件付きで「歩道走行」もできる、というからややこしい。
 電動キックボード等の特定小型原付は、最高時速によって走行できる場所を切り替えられるというから、さらに複雑化している。その区分は以下の通りになっている。
「基準 時速制限 走行場所 最高速度表示灯
  歩道走行モード 6km 歩道(自転車走行可能)・路側帯 点滅
  車道走行モード 20km 車道・自転車レーン・路側帯 点灯
 走行モードを「車道・歩道」と切り替えることで、車道・歩道の両方を走行できるようになった」という。
 法改正前は、電動キックボードは車道のみ走行でき、歩道走行が禁止されていたので、大きな変化だが、それだけ歩行者と電動キックボードの衝突事故の危険性が増したのではないか。

 特定小型原付の基準に対応した電動キックボードは、車道走行・歩道走行とモードチェンジできるという。モードチェンジすることで、最高時速と最高速度表示灯が切り替わるというが、モードをチェンジしたという自覚のない利用者が増えはしないだろうか。
 ただし、電動キックボードで公道走行する前に一定の手続きが必要になっている。
「公道走行する前に、下記の手続きが必要となっている。
  自賠責保険加入
  ナンバープレート装着
 自賠責保険とは、対人事故を補償するもので、車やバイクも加入が義務になっている。」

 そうした手続きはコンビニなどで気軽に加入手続きができるが、また電動キックボードの車体に、ナンバープレートを装着しなければならない。役所に行って30分程度手続きすれば、無料でナンバープレートを取得できるという。自賠責保険の加入・ナンバープレートの装着は、電動キックボードの種類の関係なく、公道走行するための必須条件だ。もし自賠責保険に未加入だったり、ナンバープレートを装着してなかったりすると、交通違反になるのはいうまでもない。

 2023年7月から、条件を満たす電動キックボードは16歳以上なら免許不要で運転できるようになったが、交通違反したらどうなるのか。結論からいうと、罰金を支払うか、違反者講習を受けることになる。一時停止無視・走行中の携帯電話操作などの違反だと、5,000〜6,000円程度の罰金が課せられ、悪質な違反を繰り返していると、違反者講習を受けることになり、3時間の講習を受けて6,000円の手数料を払わなければならない。もし電動キックボードで飲酒運転をすると、免許停止・3年以下の懲役・50万円以下の罰金に課せられる可能性がある。ただし電動キックボードは免許不要で運転できるため、自動車・バイクのように交通違反に反則点数はない。
 さらに電動キックボードは、原付バイクと同じ扱いになるため、交差点を右折するときには二段階右折をしなければならない。ただし交差点によっては、二段階右折が禁止されている場合もあるので、二段階右折が禁止されている場合は、小回右折となる。

 かくも細々とした道交法の改定が成されたわけだが、本質的には、それでなくても狭い日本の道路に走行性が必ずしも安定的でない電動キックボードが加わることになり、電動キックボード絡みの交通事故が増えるのは避けられないだろう。それでなくても自動車運転者の立場からいえば、左折時に横断歩道へ走り込む自転車は危なくて仕方ない。それに電動キックボードが加われば危険この上ない。もちろん横断歩道へ電動キックボードに乗車のまま進入するのは違反だが、事故を起こせば自動車運転者にも運転責任が問われることになる。
 なぜこうした危険極まりない道交法改定をしたのか、疑問だらけだ。そもそも免許を持たない者に道交法違反かどうかを認識できるのか、電動キックボードに関する道交法の改正は拙速との誹りは免れないだろう。

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