多国化する崩壊後の中国。

<習近平総書記(国家主席)率いる中国共産党政権は、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を受け、日本産水産物の輸入を全面的に停止した。国際原子力機関(IAEA)は「(放出計画について)国際基準に合致する」と評価しており、中国は科学的根拠もなく理不尽な「反日カード」を切ってきたといえる。この背景の1つに、中国の不動産危機が巨大な金融危機、経済危機に発展しつつあり、共産党政権批判の目先を変えたい思いもありそうだ。蔡英文総統の台湾に迫る新たな危機。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、中国経済崩壊と「台湾有事」の相関関係に迫った。

中国の経済崩壊は、台湾問題にどう影響を及ぼすのか。

 国民の不満をそらすために、習主席が武力侵攻する可能性は排除できない。だが、私はむしろ「平和的統一」のシナリオが現実味を帯びてきたのではないか、とみる。それは「もう1つの台湾危機」だ。
 不動産バブルが崩壊した中国は生産者物価や消費者物価が下落し、景気後退とデフレが同時進行する本格的な景気停滞に突入した、との見方が強まっている。となると、数年来、ささやかれてきた「台湾侵攻」はどうなるのか。
 武力侵攻が懸念された理由の1つは、「中国の国力は近い将来、ピークを迎えるので、習氏はその前に台湾を奪おう、と考えるだろう」とみられたからだ。背景には、1人当たりの国民所得が1万ドル(約145万円)を超えた辺りから、経済成長が壁にぶつかる「中所得国の罠」という考え方もあった。
 だが、実際には、早くも経済は崩壊の危機に瀕してしまった。これまで強引な政策で覆い隠してきた矛盾があふれ出てきたからだ。
 先週のコラムで紹介したように、米シンクタンク「ピーターソン国際経済研究所」のアダム・ポーゼン会長は極端に揺れ動いた新型コロナ政策によって、国民の消費・投資意欲が減退し、財政金融政策も効果が薄れた、と指摘している。西側企業がサプライチェーンを見直した結果、輸出も振るわなくなった。
 となると、中国は景気を立て直す手段がなく、停滞の長期化は必至だ。つまり、「ピーク前の武力侵攻論」は前提が崩れている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と違って、習氏は良く言えば「慎重」、悪く言えば「臆病」でもある。大言壮語の類は数知れないが、言葉通り発動された例はほとんどない。
 むしろ心配なのは、「平和的統一への策謀」である。誤解のないように言うが、平和的とは、あくまで中国側のセリフであって、実際には暴力を伴う。例えば、要人の暗殺や少数の特殊部隊による秘密作戦、サイバー攻撃などだ。
 第二次世界大戦でのノルマンディー上陸作戦のような大掛かりな軍事行動は避け、目に見えにくい作戦によって、台湾の支配権を握る。それが、中国が言うところの「平和的統一」である。
 あたかも、台湾の民意によって統一に動いたように見せかけるので、米国も動きにくい。米国の台湾政策は「平和的手段以外によって、台湾の将来を決めようとする試み」に反対している。言い換えれば、平和的統一には反対していないからだ。

台湾が奪われる事態に変わりはない

 ジョー・バイデン米政権は台湾の戦略的重要性を強調して、中国を牽制(けんせい)しているが、「台湾の民意」を盾にされたら、米国が介入する正当性を失ってしまうのだ。
 習氏としても、大掛かりな武力侵攻よりも、秘密作戦の方がリスクが少ない。それは、ロシアによる2014年のクリミア侵攻でも証明されている。「地元義勇軍の行動で、ロシアは関与していない」と言い張ったロシアに対して、西側は動けなかった。
 だが、日本にとっては武力侵攻だろうが、平和的統一だろうが、台湾が中国に奪われる事態に変わりはない。むしろ、平和的統一の方が米国も日本も介入する大義名分を失ってしまうので都合が悪い、とさえ言える。
 日本は「平和的統一」という「台湾有事」にも備えるべきだ>(以上「夕刊フジ」より引用)




 どうして日本のジャーナリストは「台湾有事」が好きなのだろうか。谷川幸洋氏(ジャーナリスト)も「臆病な習主席「中国経済崩壊」で政権批判の目先を変えたい? 台湾有事は「平和的統一」侵攻のシナリオに現実味」と題して台湾有事があるかの如く煽っている。
 私は何度も「台湾有事」は習近平氏が国内の綱紀粛正のために国民に向けた宣言でしかないと書いてきた。戦争を始めるにはまず兵站を整えなければならないが、中国の食糧事情は兵站を整えるどころではない。

 中国は世界一の食糧輸入国で、しかもこの夏に穀倉地帯が洪水に見舞われて平年並みの収穫すら見込めない状況だ。さらにプーチンが始めた戦争で、世界の穀倉地帯ウクライナの小麦の輸出量が減少している。国際穀物相場が高騰しているのも、その影響だ。
 さらに「元」の為替相場がおかしくなっている。その原因は友好国と恃むロシアが「元」を売り払っているのも一因だ。中国は「元」通貨圏を構築しようと、国際金融で「元」流通量を増やそうと必死になって、2倍になったと欣喜雀躍状態だが、それでも国際金融の3.6%を占めているに過ぎない。日本「円」の半分以下でしかない、しかもローカルカレンシーの「元」が基軸通貨になる可能性はゼロだ。

 そうした紙屑でしかない「元」を「一帯一路」などで大量に後進国に貸し付けたが、それらが軒並み焦げ付いている。国内金融は不良債権の塊と化して、窓口に押し掛ける国民を警察官のバリケードで押し返す始末だ。習近平氏が台湾軍事侵攻を叫んだとしても、こんな社会情勢で戦争を始めることなどできない。
 しかも習近平氏は崩壊する経済に対して真剣に向き合うどころか、その日さえ過ごせれば良い、という躺平主義に陥っているかのようだ。河北省の大洪水の被害視察にすら出掛けてないし、被災地の後始末に人民解放軍や官僚組織を動員すらしていない。この徹底した無気力な治世とは何だろうか。

 谷川氏は中共政府による「平和統一」の可能性を上げている。それはクリミア半島などの「住民投票によるロシア併合」も含んでいるようだが、そうした策動が台湾で通用するは思えない。少なくとも中国の国民一人当たりGDPが台湾国民よりも勝り、国民の人権と自由が保障された国にならない限り、台湾で暮らす人々が住民投票で中国の属国になることを選択することなどあり得ない。
 むしろ中国の台湾化こそ現実的ではないだろうか。なぜなら、間違いなく中国経済は崩壊するからだ。そうすると中央政府が瓦解する前に地方政府が崩壊し、中共政府は中国全土をコントロールできなくなり、人民解放軍が侵略した地域の民族が蜂起して独立の挙に出るだろう。好戦的な民族は隣接地域を武力で制圧して巨大帝国を形成するが、全土を支配していた武力の箍が緩むと各民族が独立する歴史を繰り返してきた。中共政府の中国もそうした歴史を歩むだろう。台湾統一よりも、中国の分裂の方が現実的な未来ではないだろうか。

 習近平氏は治世の方向を誤った。中国は自由化し先進国並みの人権国家になる道を歩むべきだった。「改革開放」策を廃して「戦狼外交」への道ではなく、以前よりも一段の民主化と市場の開放へ舵を切るべきだった。しかし、習近平氏は独裁者の美酒に悪酔いしてしまった。彼は中共政府の最後の独裁者として、歴史に名を刻むだろう。

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