習近平氏は決して鄧小平氏を越えない。

歴史的な崩壊が起きている
 中国当局が8月に公表した一連の経済数値からは、今年7月において中国経済が崩れていることはよりいっそう鮮明となり、地滑り的崩壊が現実に起きていることが分かる。
 まずは中国指数研究院が7月31日に発表した数字だが、7月において、中国では「百強房企」と呼ばれる、売上上位100位内の不動産開発大手の売上総額は前年同月比で34.1%減。前月比では33.8%減。それは、不動産市場の崩壊が加速化していることを鮮明に示した数字である。
 中国税関総署が8月8日に発表したところでは、7月、中国の対外輸出(ドル建て)は前年同月比で14.5%減となり、2020年3月以降で最大の下落幅なのである。今年1~7月の中国の輸出は前年同期比で5%減となっているから、中国経済を牽引する「三大の馬車」の一つとされる対外輸出は完全に失速している。その一方、7月の輸入も12.4%減となっているから、国内需要は大変な勢いで落ち込んでいることは分かる。
 そして中国国家統計局が8月9日に発表した数字では、今年7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.3%下落した。それは。21年2月以来、2年5カ月ぶりの低下である。同じ9日の国家統計局発表によると、7月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比で4.4%下落となったという。CPIとPPIの同時下落、特に生産者物価指数の10ヵ月連続下落は当然、中国経済がすでにデフレに入っていることを示している。
 中国人民銀行(中央銀行)は8月11日、一つびっくり仰天の重要数字を発表した。7月の新規人民元建て銀行融資は3459億元(478億ドル)であって、6月の3兆0500億元からは89%減となったという。「89%減」とは、中国人自身の言葉で言えば、まさに「断崖絶壁からの飛び降りのような急落」である。
 中国政府が経済刺激策として金融緩和を実行している最中にもかかわらず、銀行新規融資が前代未聞の9割減となったことは、国内企業が一斉に生産拡大や投資拡大をやめたことの結果であって、無数の企業が生産停止・廃業・倒産に追い込まれたことの結果でもある。それは当然、今後における中国経済の歴史的な転落の発生を意味するのであろう。

そして本命の不動産も火がついた

 こうした中で、8月10日、不動産開発大手の碧桂園は今年1~6月期の純損益が最大550億元(約1兆1000億円)の赤字になるとの業績予想を発表。それと同時に、碧桂園はまた、発行したドル建て社債2本総額2250万ドル(約33億円)の保有者に対し今月7日が期限だった利払いを履行できなかったことは明らかにされた。
 同じく不動産大手の遠洋集団も14日、今年1~6月期の純損益が最大200億元(約4000億円)の赤字になる見通しだと発表。同時に、利払いが滞った遠洋集団の米ドル建て債券の取引が停止されたことも明らかになった。
 そして8月18日、売上では業界2位の不動産開発大手の恒大集団とうとう、約48兆円の負債を抱えてニューヨックの裁判所に破産申請を出した。それはかつてのリーマンショックとは同様。中国不動産バブルの崩壊を告げる歴史的大事件である。
 このようにして、今年7月から8月中旬にかけ、対外輸出の激減、銀行新規融資の絶望的な急落、そして恒大破綻が告げる不動産バブルの崩壊など、中国経済の地滑り的な総崩れを意味する重大事態が集中的に発生し、「中国経済崩壊」という世界史的大事件が目の前で起きているのである。

それでも習近平は何もしない

 しかし、このような重大事態の発生に対し、中国の習近平指導部、とくに習近平主席本人はほとんど無反応にして無策、逃げの一手の「駝鳥政策」に徹している。
 8月1日から16日までの16日間、習主席はいっさい公の場で姿を見せることなく、中央財経委員会主任として経済問題に対して発言したり・指示を出したりすることもいっさいない。おそらくその間、習主席が大水害の発生や経済崩壊の事態を横目にして避暑地の北戴河に雲隠れしていたと思われる。
 8月16日、同じ北戴河で避暑していたと思われる李強首相はやっと動き出して、経済対策を講じるための「国務院全体会議」を開いた。会議には国務院幹部全員と各中央官庁の責任者が参集した以外に、各地方政府(省、市)の責任者たちもオンラインで参加。今年最大の規模の経済対策会議となった。
 しかし、危機的な状況下で開かれたこの肝心の経済対策会議に対し、習主席が出席せずに、何からのメッセージや指示を送ることもなく、いっさい関与せずの姿勢をとった。それは、8月15日に開かれたエコ関連の全国会議に対し、習近平が側近の丁薛祥政治局常務委員を通して「重要講話」を行ったとの好対照である。
 結果的には、李首相主宰の全国規模の経済会議は経済危機に対して有効な対策をいっさい打ち出せずにして国内外からの注目はほとんどない。習近平個人独裁体制が確立した今の中国では、習主席自身が動かなければ何も起こらないのである。

政権はこの先も経済危機を見て見ぬフリ

 習主席が避暑地から帰京して会議に出たのは8月17日。彼は政治局常務委員会会議を主宰し、「重要講話」を行った。関連の報道は翌日の人民日報の一面を大きく飾ったのだが、肝心の会議のテーマは「経済」ではなく「水害対策」だった。
 しかし、8月17日の時点では、河北省を中心に発生した大水害はすでに一段と収まった。水害が収まった後の「水害対策会議」とはいかにも間抜けにして頓珍漢な話であるが、結局それは、喫緊の経済問題から逃げようとする習主席が「仕事をしているフリ」をしてみせるためにとった行動の一つに過ぎない。
 そして週明けの21日からは習主席は今度、国際会議参加のために外遊を開始した。彼はあくまでも、危機的な状況下にある国内の経済問題から逃げ回る一方である。
 おそらく今後においても、ますます深刻化していく経済問題に対し、習近平はいっさい関与せずの姿勢を貫いて責任回避を続けることとなろうが、問題は、今の習近平個人独裁体制の下では、独裁化した最高指導者がこのような無責任な態度を取り続けると、政権が何の有効な対策も打ち出せないだけでなく、政府全体、そして共産党政権の幹部集団全体においては経済危機を見て見ぬ振りして問題解決を放棄するのは一種の風潮となっていくのであろう。
 今まで、中国の若者たちの「寝そべり」は大問題とされてきているが、これから起きてしまうことは、「政府の寝そべり」であって、特に経済問題に対しては政権が責任を放棄して全くの機能不全となろう。
 そしてそのことの結果、中国経済が落ちるところまでに落ちていき、完全に崩壊していく以外にない。今、すべての中国問題の根元にあるのはまさに「習近平問題」であるが、習近平個人独裁体制が存続する限り、中国の衰退と破綻は避けられないのである>(以上「現代ビジネス」より引用)




 今日は石 平氏(中国評論家)の「恒大破綻、輸出急減、融資大収縮……中国で地滑り的経済大崩壊始まるが、「逃げの一手」習近平、全く対策打つ気なし」を取り上げる。高橋洋一氏の論評と殆ど同じだが、石平氏が中国出身者だけあって、習近平氏を辛辣に批判している。
 中国共産党が中国を建国した。だから中国を好き勝手にして良い、というのが中共政府の基本的な姿勢だ。もちろん国家及び地方政府の官僚たちは大部分が中国共産党員だ。

 もとより中国共産党は軍閥の一つだったため、経済政策など門外漢だった。毛沢東時代は軍閥そのもので、戦争に勝ちさえすれば良かった。しかし戦乱が収まり国民の要求が多様化すると自ら敵を国内に作って「文化大革命」を演出して知識人や富裕層を数千万人も粛清した。
 毛沢東が発案したという食糧増産の「大躍進」は大失敗に終わり、数千万人が餓死したといわれている。鄧小平氏が登場するまで、中国は農業主体の後進国だった。資本蓄積もなく、科学技術の基礎すらない状態で、第二次産業が飛躍的に発展することは望めない。いかにして中国を発展させ先進国にするのか、それを真剣に取り組んだのが鄧小平氏だった。鄧小平氏は1978年12月から1989年11月まで最高指導者となり、「改革開放」「一人っ子政策」などで毛沢東時代の政策を転換し、現代の中華人民共和国の路線を築いた。

 鄧小平氏は経済成長させるために「白い猫も黒い猫も、鼠を捕る猫は良い猫だ」と発言した。つまり経済成長させるためには社会主義であろうと資本主義であろうと構わない、というものだ。彼は「改革開放」政策を断行して、外国資本と外国企業の国内誘致に乗り出した。
 中国の急激な経済成長は、1992 年に改革開放の促進を号令した鄧小平の「南巡講和1」(外資導入による経済建設を大胆に推進する政策) により本格化し、2010年には日本を抜いて世界第2位の経済大国となった。
 そうした経済成長の最中2013年に中華人民共和国主席に就任したのが習近平氏だ。鄧小平氏は中国が国際外交において「韜光養晦」(爪を隠し、才能を覆い隠し、時期を待つ戦術)策を採り、裏で活動し、論争を避け、国際協力のレトリックを重視した。鄧小平氏以前の中国の外交政策とは一線を画すものであった。が、習近平氏は「戦狼外交」に方向転換した。

 戦狼外交は2017年に出現し始めたが、2019年7月、在パキスタン大使館の趙立堅がアメリカ合衆国内の人種差別等に対しツイッター上で批判をしたことがきっかけで、諸外国に吼えたてる戦狼外交が展開され始めた。戦狼外交の出現は習近平総書記の政治的野心と、中国政府関係者の間で感じた西側からの反中敵意に対する反発とが結びついている。しかし西側の反中敵意は習近平氏が展開した「一帯一路」や「新シルクロード」さらにはAIIB政策などが西側諸国が築いて来た世界秩序に挑戦するものだったからだ。
 戦狼外交は2020に世界的パンデミックを引き起こしたコロナ禍で「世界の工場」となっていた中国が医療物資の禁輸措置で最高潮に達した。習近平氏はサプライのハブとなった中国の立場が世界経済を支配する強国だ、と勘違いしたことにより墓穴を掘った。

 コロナ禍が収まった現在、先進諸国は「モノ造り」の軸足を中国から他国や自国へ移している。中国から外資が流出し、外国企業が撤退すれば、中国は「世界の工場の廃屋」になるだけだ。若者(16才~24才)の失業率が46.3%となり、中国全土に失業者が溢れている。
 世界第二位の経済大国に押し上げた投資は半減し、輸出も減少の一途を辿っている。経済の一角を担って来た個人消費も金融不安から貯蓄へと回り、中国経済は奈落の底へ向かって転落している。

 習近平氏は鄧小平氏が国家主席の任期は最大二期(10年)までとした党規約を改定して三期目に突入した。彼は党内闘争に勝利したが、政治・政策ではことごとく大失敗している。同様に彼がお手本としている毛沢東は建国の戦争こそ勝利したが、治世面では無能の誹りを免れない。そして習近平氏もライバルを蹴落とす術には長けているが、治世面では目を覆うばかりだ。
 引用論評で石平氏が指摘しているように、経済の衰退が明らかになっているにも拘らず、習近平政権は何も手を打っていない。彼がなしうる最良の政策は第二の「改革開放」宣言だ。もちろん政治体制も「改革開放」して国民に参政権を与え、一年か二年後に総選挙を実施すると国民と約束し、一党独裁政権の終焉を宣言することだ。そうしない限り、先進自由主義諸国は二度と対中投資しないだろうし、中共政府の外交をどの国も信用しない。しかし独裁者病に罹った習近平氏には決して出来ないだろう。かくして、中国経済は崩壊し、中共政府も瓦解へと向かい、中国社会は大混乱に陥る。

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