e-fuel開発により、原油依存のエネルギーは転換点を迎えようとしている。

<米WTI原油先物価格はこのところ、1バレル=70ドル台前半で推移している。原油価格は今年に入って約10%下落した。
 足元では欧米の中央銀行による追加利上げ観測で景気減速への懸念がくすぶる一方、産油国の減産などによる需給の引き締まりが意識されている。様々な材料が交錯している状況だ。
 こうした中、国際機関による世界の原油需要予測は相変わらず強気だ。
 石油輸出国機構(OPEC)は6月の月報で「今年の世界の原油需要は前年より日量235万バレル増加する」との見通しを示した。中国の原油需要については日量84万バレル増と、5月の予測(同80万バレル増)を上方修正している。国際エネルギー機関(IEA)も強気の姿勢を崩していない。
 筆者はこうした強気の需要予測に懐疑的だ。両機関の予測が正しいとすれば、OPECプラスの減産で世界の原油市場は逼迫し、原油価格は上昇していなければならないはずだ。だが、市場を覆う悲観論を払拭できず、投資マネーの売りが相場を下押ししている。
 投資マネーは需給の実態を認識しておらず、需要が回復していることに気づけば原油価格は上昇するとの見方もある。果たしてそうだろうか。

OPECプラスの減産、どこまで?

 まず、供給サイドの動きから見てみたい。
 中東諸国やロシアなどの大産油国で構成されているOPECプラスは昨年11月から、世界の原油供給量の2%に当たる日量200万バレルの減産を実施している。今年5月からはOPECの主要加盟国が日量116万バレルの自主減産に踏み切っている。
 さらに、サウジアラビアは7月から実施している追加の自主減産(日量100万バレル)を8月以降も継続する方針だ。アブドルアジズ・エネルギー相は7月5日、「OPECプラスは原油市場の安定のために必要なことは何でもする」と述べている。
 ロシアも「8月に輸出を日量50万バレル減少させる」と表明している。ロシアでは6月23日、民間軍事組織「ワグネル」の反乱が起き、「ロシア産原油の供給が減少する」との憶測が流れた。だが、ワグネルの反乱が短期間で収束したことで、これによる原油輸出への影響は出ていない。
 OPECプラスが表明している減産規模は、合計で日量400万バレル以上になる。だが、市場関係者はどこまで減産効果が出るのか冷ややかに見ている。ロイターによると、OPECの原油生産量は5月に日量46万バレル、6月にはさらに同5万バレル減少したが、予定された日量116万バレルという減産規模の半分にも満たない。OPECの一部の国が増産に踏み切るなど、足並みがそろっていないことが一因だ。
 OPECプラス全体の実際の原油生産量は、そもそもの生産目標を下回る状況が続いており、「減産措置は生産の実態に合わせているだけだ」との評価も広がっている。
 そして、世界最大の産油国である米国はOPECプラスの減産方針とは距離を置く。原油生産量は今年に入り、日量1220万〜1240万バレルの間で推移している。かつてはシェールオイル企業の生産活動が世界の原油需給をかく乱する要因となったこともあるが、最近ではこれらの企業の活動も落ち着いている。
 OPECプラスの減産効果が今ひとつ出ていないことに加えて、米国の生産量が横ばいであることから、供給サイドは比較的安定的な動きを示している。
 一方、需要サイドはどうか。

中国で強まるデフレ懸念
 需要サイドは波乱含みだと言わざるを得ない。今年初め「ゼロコロナ政策を解除した中国の原油需要が急拡大し、原油価格は1バレル=100ドルを超える」と言われていたが、このシナリオが外れる可能性がますます高まっている。
 中国の6月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.0となり、3カ月連続で好不況の分かれ目である50を下回った。中国経済の屋台骨である不動産業が不調のため需要が低迷し、生産が伸び悩んでいる。
 中国経済のデフレ化の懸念も強まっている。
 6月の消費者物価指数(CPI)は前年比で横ばいとなった。2021年2月にマイナス0.2%を付けて以来2年4カ月ぶりの低水準だ。
 このような状況で中国の原油需要がV字回復するとは到底思えない。
 世界最大の原油需要国である米国はどうか。

米国ではEVがガソリン需要を抑制

 米国もさえない。夏場は季節的な燃料消費が拡大し、1年間で最も原油需要が高まる時期だ。米国はドライブシーズンに入ったが、世界の原油需要の1割近くを占めるガソリン需要が盛り上がってこない。
 金利上昇による可処分所得の減少とともに、電気自動車(EV)の普及がガソリン需要を抑制しているからだ。ガソリン価格は前年に比べ1ガロンあたり1ドル以上値下がりしており、この傾向はさらに続くと見られている。
 金利上昇は製造業にとってコスト増大を意味する。米国の6月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数は前月の46.9から46.0に低下した。好不況の分かれ目となる50を8カ月連続で下回った。
 他方、米国の原油在庫は減少傾向にある。需要は伸び悩んでいるものの、金利の上昇が原油の保管コストを増大させたため、在庫原油の売却が相次いでいるという。それでも、原油価格の下支え効果は限定的だろう。
 中国も米国も原油需要を回復させる兆しが見えない。だとすれば、国際機関の強気の需要予測は疑わしくなってくる。世界経済の先行きへの懸念は大きく、特に中国の原油需要は期待できないという想定の方が信ぴょう性は高いだろう。OPECもIEAも、中国をはじめとする世界経済の変調を十分に反映していないのではないか。
 もしそうならば、原油価格は今後上昇するどころか、下落に転ずる可能性の方が高いだろう>(以上「JB press」より引用)




 「OPECの「原油需要回復」予測は大ハズレ?忍び寄る原油価格下落の足音」と題する論評が掲載された。藤和彦氏(経済産業研究所コンサルティング・フェロー)の労作だが、藤氏が指摘するまでもなく基本的な原油価格の流れは下落方向だろうと、誰もが予測している。
 なぜなら原油需要は世界一の輸入国・中国の経済がおかしくなっているからだ。「OPECプラスの減産は見掛け倒し、米国・中国経済は波乱含み」と藤氏は分析しているが、中国は経済崩壊の局面にあるが、米国経済は堅調だ。米中を同列に論じるのは正しくない。

 果たして原油はOPECプラスが協調した通りに減産しているのだろうか。引用文中で指摘されているように「OPECプラス全体の実際の原油生産量は、そもそもの生産目標を下回る状況が続いており、「減産措置は生産の実態に合わせているだけだ」との評価も広がっている」という。
 さらに「世界最大の産油国である米国はOPECプラスの減産方針とは距離を置く。原油生産量は今年に入り、日量1220万〜1240万バレルの間で推移している」のが原油価格の上昇を阻む原因の一つになっている。しかしOPECプラスの減産努力にもかかわらず、原油価格が一向に上昇しない主な理由は世界最大の原油輸入国・中国経済が崩壊しているからだ。

 中共政府は4~6月期の対前四半期比較で6.3%↑と発表したが、中国の五月の輸出は対前月比7.5%↓で六月の輸出は対前月比12.4%↓だ。中国経済の約六割を占める貿易が大幅な↓を記録して、中国経済が↑ということはあり得ない。しかも中国経済第二のエンジンたる国内投資も不動産投資やインフラ投資をみても堅調とは言い難い。ことに不動産価格に関しては北京郊外ですら50%近い下落を見せている。
 たとえ中国経済が↑だと当局が発表しても、「嘘」だと即座にバレる状態だ。さすがに当局発表でも脚色の限界を超えたのか「中国の6月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.0となり、3カ月連続で好不況の分かれ目である50を下回った」という。中国から撤退したグローバル企業が東南アジア諸国や本国で生産し始めたため、撤退した企業の製造設備を中国が接収して生産を継続しても、ただ製品在庫が積みあがるだけだ。つまり接収した生産工場を稼働させることにより、デフレ不況が中国経済を襲うという自分で自分の首を絞めていることに政府当局は気付いていない。

 米国のガソリン価格が下落してもガソリン需要が伸びていない原因として引用論評はEVの普及を上げているが、日本円に換算して1リッター200円にまでガソリン価格が上昇したため、米国民の多くがガブ呑みの大型車から燃費の良い小型車に乗り換えたのがガソリン消費の落ち込みに影響している。確かにカリフォルニア州ではEVが新車販売の一位になっているが、米国全体ではEVはそれほど普及していない。
 産油国は長らくオイル・マネーで我が世の春を謳歌してきたが、いよいよ消費国がe-fuelの研究開発に本腰を入れてオイネ離れを本格化しようとしている。それもウクライナ戦争にかこつけて野放図な原油価格の高騰をOPECプラスが演出したのが原因だ。もちろんe-fuel開発には「CO2排出ゼロ」という国際目標も効いているが、主たる研究開発の動機はガソリン価格の異常なまでの高騰だ。民主主義国家では国民の不満を放置したら政権が倒れるのが常だから、政治家は国民の不満を解消すべき勤める必要があるからだ。そうした意味で、OPECプラスの昨年来の原油価格高騰は余りに行き過ぎだった。潤沢なオイル・マネーを湯水のように浪費して成り立っている産油国の贅沢社会は今後とも持続できるだろうか。

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