ロシアが中国の属国化するなど、悪い冗談だ。

<ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議に合わせて10月にも訪中し、習近平国家主席と会談する可能性が浮上した。西側諸国による制裁や封じ込めが続くなか、ロシア国内では人民元取引が拡大し、中国企業や製品の市場参入も相次ぐなど「中国依存」が強まる一方だ。習氏の優位な立場は圧倒的で、ロシアにとっては「中国の属国化」ともいえる屈辱的な状況だ。それでもプーチン氏は習氏の軍門に下るしかないのか。

 習氏は10日にロシアのマトビエンコ上院議長と会談し、10月に開催予定の一帯一路の国際会議に合わせてプーチン氏を迎える準備をしていると述べたとタス通信が報じた。
 米ウィリアム・アンド・メアリー大のエイドデータ研究所の統計では、2000~17年の間、一帯一路を含む中国からロシアへの公的融資は1254億ドル(約17兆2600億円)にのぼった。だが、中国・上海の復旦大学グリーン金融研究センターによると、ロシアのウクライナ侵攻を受けた22年1~6月、一帯一路関連の新規契約は前年から100%減、つまりゼロになった。「債務の罠」も指摘される一帯一路だが、プーチン氏は訪中で融資の再拡大を求める可能性がある。
 新興国経済に詳しい第一生命経済研究所の西濱徹主席エコノミストは「中国は欧米の制裁違反回避や、米国との正面衝突を避けるためロシアへの投資を止めたが、ロシア側は制裁の抜け穴を探っている。実質的に優位な立場の中国が、資源保有国という強みを持つロシアのプライドをいかに傷つけずに議論を進めるかが注目される」とみる。
 ロシア市場で中国の影響力は無視できないほど拡大した。ロシア連邦中央銀行は、3月の外国為替市場で人民元の取り扱い比率が39%に達したと発表した。輸入決済に占める人民元の割合も22年1月の4%から12月に23%に急増した。今年1~3月の中露間の貿易総額は前年比38・7%増の538億4000万ドル(約7兆4100億円)になった。中国の自動車メーカーの市場参入や中国製スマートフォンのシェア拡大なども報じられ、ロシアが「中国経済圏に入ることは避けられない」と前出の西濱氏は話す。
 露紙モスクワ・タイムズは、中国国外で初めてロシア科学アカデミーが習氏の教えに特化する研究センターを開設するとも報じた。
 筑波大学の中村逸郎名誉教授は「中国製の食料品や家電も量販店に並んでいるとの情報もある。ロシア人女性と中国人男性との結婚も増えているというが、今後は中国人と結婚した方が有利と考えている人が増えているとも読める」と解説する。
 北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を防ぐためにウクライナ侵略を決めたプーチン氏だが、皮肉にも事態は逆に進み、今年に入ってフィンランドに続きスウェーデンもNATO加盟の見通しとなった。バルト海沿岸をNATO加盟国が取り囲む形となり、ロシア海軍にとっては痛手だ。ハンガリーも近く批准に入る見通しだという。
 8月には南アフリカで、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アの新興5カ国(BRICS)の首脳会議が対面で開催されるが、国際刑事裁判所(ICC)はプーチン氏の逮捕状を出している。ICC加盟国の南アには拘束義務があり、プーチン氏の出席は不透明だ。外交もままならないプーチン氏は、ますます習氏頼みとなりそうだ。
 前出の中村氏は「プーチン氏は石油や天然ガスなどの資源を背景に中国と対等な関係を望んでいるだろうが、習氏はこのタイミングでロシアを安く買いたたき、〝属国化〟を狙う可能性もある。プーチン氏は政権維持のためにも中国の保護下に入らざるをえない状況にあるのではないか」と指摘した>(以上「AP=共同」より引用)




 逸早く主張した方が良い、とする評論家魂だろうか。「習主席の軍門に下るプーチン大統領 ロシア国内で人民元取引拡大 続く西側の制裁、この機に安く「属国化」する狙い」と題する記事が夕刊フジに掲載された。
 確かにロシアで流通している貨幣量としては、本国のロシア・ルーブル以外では人民元が最多だろう。それは欧米諸国の経済制裁でドルやユーロ経済圏との取引がなくなったからでしかない。決して人民元をロシア国民が大歓迎しているわけではない。

 それが証拠に下落しつつあるルーブルを銀行から引き出して、外貨に換える場合、人気があるのはドルで、次にユーロだという。もちろんロシア国内でドルやユーロに交換できないから、秘かにトルコを経由してルーブルをドルやユーロに交換しているという。
 そして交換したドルやユーロはロシア国民が保有し、決して金融機関に持ち込むことはないという。だから流通している貨幣としてはルーブルと人民元だけということになる。だからといって、ロシアが中国の属国化することなどあり得ない。

 確かにルーブルは下落しているが、人民元も今後は下落する材料しかない。しかも中国がロシアを属国化したしても、ロシアを養う国力など現在の中国にはない。いや養わないまでも、ロシアを庇護下に置くだけの軍事力に余裕もない。
 考えて頂きたい。かつてロシア(旧ソ連)は中国の先生だった。共産主義を中国の毛沢東に教えたのはロシアだ。その後、ロシア(旧ソ連)と中国は領土問題で敵対していた。1969年3月、中華人民共和国ロシア連邦国境のウスリー川中流域にある0.74平方キロメートルの面積を有する小島(ダマンスキー島、中国名「珍宝島」)には中華人民共和国の人民解放軍ソ連軍の両軍が同島で武力衝突する「珍宝島事件」(ソ連側の呼称は「ダマンスキー島事件」)が発生し、中ソ国境紛争に発展した。同年九月にダマンスキー島は中国に帰属することで解決したが、武力衝突期間中、この国境地帯に100万人を超える双方の兵士が動員されていた。

 現在のウクライナ戦争に勝るとも劣らない軍事動員だったが、実際は小競り合い程度で終わっている。しかし中国側には「沿海州」を清国時代にロシアに奪われた、という明確な復讐心がある。ウクライナ戦争の間隙をついて、中共政府にはウラジオストックを奪い返そうとする動きすらあるという。
 筑波大学の中村逸郎氏が指摘するように「プーチン氏は政権維持のためにも中国の保護下に入らざるをえない状況にあるのではないか」という動きが少しでも表面化したなら、その瞬間にプーチンは他の誰かによって大統領の地位を追われるだろう。そして新しくロシア大統領になった者も、独裁者としてロシア国民に君臨しようとするだろう。

 ただロシアは莫大な戦費に国力を使い果たし、現在のロシアの版図を維持することなどできない。版図を維持するとはつまり各地域の公務員や治安組織などの行政体制を堅持し支配することだ。しかし戦費調達で国力を使い果たし、行政組織の維持も出来なくなり、ロシアは各地の少数民族ごとに独立するのではないかと思われている。
 ロシアには各地域で独立する動きはソ連崩壊時にもあった。実際に独立したのがベラルーシでありウクライナだった。ほかにもジョージアなども独立したが、現在はプーチンが軍を派遣して支配している。タタール人のチェチェンも独立運動が起きたが、ロシアが軍を派遣して独立運動を抑え込んだ。しかしロシアの国力が弱まれば各地の少数民族はそれぞれの国を打ち立てようとするだろう。

 いや国力が弱まれば少数民族が独立運動を起こして蜂起する、と見られるのはロシアだけではない。中国もその可能性が高い。そもそも本来の中国とは華北・華中・華南の三地域だけだった。北は万里の長城を北限とし、西域はウィグル人の地域だった。もちろんチベットは独立国だったし、モンゴルも中国の版図ではなかった。それらの地域が独立するムーブメントは常に存在する。そのムーブメントを打破するために中共政府はそれらの地域から言語や文化を奪い漢族化政策を強制している。
 作用があれば反作用が働くのは物理界だけの現象ではない。民族にも抑圧があれば解放の力が募って来る。中国が各民族支配の源泉となっている経済力を失えば、各地域へ派遣している官僚や治安警察や人民解放軍を維持することが出来なくなる。既に中国は官僚の給与を75%に削減する、と通達している。ロシアを属国化する余力など、中共政府にあるはずもない。今後の見通しとしても、中国経済は崩壊して国内の治安維持すら困難になるのではないかと思われる。何しろ公務員が国民の7人に1人の割合でいるお国柄だ。生産活動に関与しないタックス・イーターを膨大な数抱えているのが社会主義諸国の特徴だ。つまり社会主義国家とは官僚国家だ。働かない膨大な数の公務員を国民がセッセと働いて食わせる、というのが社会主義国の実態だ。そんな国が現代で成り立つはずなどない。それは前世紀以前の「農奴社会」の残滓でしかない。

 ロシアが中国の属国化するなど、悪い冗談だ。国は軍隊だけで成り立つのではない。国民の総意が得られなければいかなる国も存続しえない。私たちは日本という海に囲まれた特殊な国に生きているからあまり「国体維持」など考えないが、大陸の国家は常に侵略と略奪を繰り返す、膨張と縮小の歴史だった。かつてユーラシア大陸を席巻した「元」の消長を想起すれば良く理解できるだろう。
 大ロシア帝国は必ず分裂する運命にある。同様に「大中華帝国」も分裂する運命にある、と習近平氏はなぜ考えないのだろうか。たとえ一時的に台湾を版図に加えたとして、それが永遠に続くことなどあり得ない。漢民族の平和を望むなら、版図の拡大ではなく、異民族の独立を促し、友好関係を築く方が遥かに良いだろう。そうした国家観を習近平氏が持てば、中共政府の存続も不可能ではない。広大な国家はそれだけ兵站が伸びた前線を維持する必要があるが、各民族が独立すればそれぞれの地域は各民族に任せれば良くなり、中共政府の支出はそれだけ削減できる。プーチンが築いた大ロシアも同様だ。ロシアは中国の属国化よりも、分裂する運命にあるだろう。

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