防衛兵器「地上配備型レーザー砲」の開発を急げ。

リアルタイム作戦指揮が勝敗を決する
ウクライナで威力を発揮した軍事宇宙利用

 そもそも宇宙開発はその始まりから、軍事と一体だった。米国・ソビエト連邦冷戦時代の全面核戦争というシナリオは宇宙を主要な舞台としていたことでも知られている。
 米ソは互いを直接攻撃できる、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を多数配備した。ICBMは安全な本土奥地から発射できるため、宇宙から配備状況を撮影できる偵察衛星が必要になった。また開戦した際にICBMの発射を即座に探知して反撃を開始するための早期警戒衛星、地球規模で展開する部隊が現在地を正確に把握するための測位衛星、部隊間の通信を確保する通信衛星――などが次々と実用化された。現在では民生用でも広く用いられている宇宙技術の多くは、こうした軍事目的で確立されたものだ。

 現在続いているロシア・ウクライナ戦争でも、欧米諸国による軍事援助の一つとして宇宙利用が挙げられている。その軸になっているのは、上記で挙げたような従来型の宇宙軍事利用の発展型である。
 軍事作戦は、敵の情報を偵察し、自軍の戦力を準備し、より有利な状況で戦闘することの繰り返しだ。この意思決定サイクルが数日から数時間、さらに数分単位へと短縮されれば、敵の弱点を突くよう味方に適切な命令を与え、戦闘を有利に進めることができる。
 これには宇宙利用が欠かせない。偵察衛星やドローンなどはもちろん、陸海空のさまざまな部隊と情報共有するには、衛星による高速通信が不可欠だ。また、これらの情報をスマートフォンやタブレットで利用することで、一兵士に至るまで高度な情報共有が可能になるのだ。

 ロシア・ウクライナ戦争でも大いに活用された「宇宙情報」。実はその使い方の巧拙で、ウクライナとロシアには差がついているという。一方、日本人なら気になる中国の軍事動向に関しては、その技術の内容で米国を凌駕するレベルに成長しているという。さらに、来るべき宇宙時代に、日本の自衛隊はどう対応するのか。次ページ以降で詳しく見ていこう。
 ウクライナ軍は欧米諸国から偵察衛星、測位衛星、通信衛星などの宇宙アセットの提供を受けることで、短期間で前ページで紹介したような分単位、リアルタイムでの作戦指揮の手法を習得したとみられる。一方、ソ連時代の宇宙技術を継承したはずのロシアは、このような作戦指揮を執れていないようだ。
 昨年9月のウクライナ・ハルキウ州での大規模な反攻作戦では、街道を軸として移動するロシア軍に対し、ウクライナ軍が道路から離れて柔軟に部隊を移動させ、ロシア軍部隊の後背を突いて翻弄する場面が見られた。ウクライナ軍はロシア軍の位置を衛星情報などを活用してリアルタイムで把握し、短時間で作戦を立案して速攻で撃破し、ロシア軍の援軍が到来する前に次の行動に移っていったと思われる。
 戦車やミサイルといった戦力で優位にあったはずのロシアは、リアルタイムの作戦指揮で戦力を効果的に運用するウクライナ軍に、予想外の苦戦を強いられることになった。
 ソ連崩壊に伴い、ソ連の軍事的脅威が激減したことで、米国をはじめとした各国の宇宙の軍事利用の必要性が低下した。そのため、従来なかった利用手段を新たに開拓することよりも、従来から利用されていた宇宙の衛星データなどを、より地球上の戦闘で有効活用することに主眼が置かれた。ウクライナ戦争で宇宙利用が成果を上げたのもその一環といえる。

新時代の宇宙軍事利用では中国が先行
「宇宙戦闘機」も視野に!
 さて、日本人であれば気になる、台湾海峡での有事など中国の動きについてはどうだろうか?実は、中国は宇宙を活用した軍事行動で米国に先んじており、米国はその対応で後手に回っていることが明らかになっている。
 これまで紹介してきた、従来型の宇宙アセットを利用した作戦指揮能力を持つことは、中国も重視している。つまり、日本周辺で有事が発生した場合、宇宙アセットを利用した作戦指揮能力をより高度に備えた側が、戦力を倍加させて優位を確保できるだろう。逆に言えばそれができなければ、いくら戦力を整えても少数の敵に敗北する可能性が高いということだ。
 しかし、中国に関してはそれだけではない。
 冷戦終結から現在に至るまでの期間に、経済、技術、軍事力などあらゆる面で躍進した中国は、宇宙軍事利用でも冷戦期の延長ではなく、新たな分野での利用を拡大してきた。そして、こういった新規分野で米国は出遅れてしまったのである。

中国が実用化した極超音速滑空弾は
宇宙からの衛星監視体制なしには迎撃が困難

 具体例で説明しよう。
 冷戦時代に想定されていたような全面核戦争の場合、米国とソ連は互いに「早期警戒衛星が敵弾道ミサイルの一斉発射を探知し、こちらが全滅する前に報復攻撃を命じる」という態勢を敷いている。早期警戒衛星とは、その名の通り発射を「早期に」探知することに主眼を置く衛星である。現在では冷戦時代ほど切迫してはいないが、米ロがこのような警戒態勢を敷いていることに変わりはない。
 また冷戦後には、地域紛争で弾道ミサイルが使用され、これを迎撃することが想定されるようになった。この場合も、やはり早期警戒衛星が発射を探知し、警報を受けた地上レーダーが探知・追尾して迎撃ミサイルを誘導するという手順が取られる。
 一方で中国は、極超音速滑空弾(HGV)を実用化した。従来の弾道ミサイルはロケット推進で高度数百~数千キロメートルの宇宙空間まで上昇し、音速の数倍~十数倍という高速で目標へ真っすぐ落下する。これに対してHGVは、弾道ミサイルで加速するのは同じだが、目標の数百キロメートル手前で大気圏に突入し、マッハ10前後もの超高速で飛行機のように滑空する、といったものだ。従来型の弾道ミサイルと異なり、HGVは地球の丸みに沿って低空で飛来するため、水平線を越えて接近するまで地上のレーダーで探知できず、迎撃が難しい。
 そこで将来の早期警戒衛星には、宇宙からHGVを見下ろして飛行経路を継続的に追尾し、迎撃ミサイルを誘導する能力が求められる。米国では、小型衛星を多数配備して弾道ミサイルやHGVを立体的に監視する、次世代早期警戒衛星の配備が開始されているが、迎撃システムを含めてこうした運用体制を整えるにはまだ時間を要する。つまり現時点では米国が中国に後れを取ってしまっているのだ。
 さらに脅威的なシナリオも現実味を帯びてきた。
 中国は、他国の人工衛星に接近して写真撮影をしたり、攻撃したりする実験も行っているとみられているのだ。平時には他国の軍事衛星の性能を調べ、有事には衛星を無力化して優位を確保することが目的だ。これは、航空機における戦闘機の役割とよく似ており、「宇宙戦闘機」の原型ともいえる。このような能力を中国が一方的に保有すれば、宇宙での軍事的優位を強めることになるだろう。

航空自衛隊から「航空宇宙自衛隊」へ改称
機能強化で「制宙権確保」が任務になる未来

 一方、これら中国などの脅威に対抗するために、日本の自衛隊はどのように宇宙での防衛を行おうとしているのか。
 日本ではかつて、宇宙の防衛利用に大きな制約を掛けていた。1969年、衆議院において「我が国における宇宙の開発及び利用に係る諸活動は、平和の目的に限る」との決議がなされている。この決議により「自衛隊のための宇宙開発を行ってはならない」との解釈がなされた。そのため、自衛隊は気象衛星や通信衛星などの人工衛星を保有できず、自衛隊以外の組織が保有する人工衛星を利用することのみが許された。
 その後、2003年には日本独自の偵察衛星である情報収集衛星の運用が開始されたが、これは防衛省ではなく内閣官房が所管している。自衛隊ではなく、あくまで政府の衛星という位置付けだ。
 08年に転機が訪れた。宇宙基本法が施行されたのだ。この法律には「宇宙の平和利用の定義は国際条約と日本国憲法に従う」と明記されている。この定義であれば他の安全保障の解釈と同様、侵略を目的とせず専守防衛の範疇であれば、自衛隊は独自の衛星保有が可能となったのだ。
 とはいえ、防衛に特化した衛星をすぐに開発できるというものでもない。まずは17年から、自衛隊は独自の通信衛星「きらめき」の運用を開始した。通信衛星は技術的に民生用でも防衛用でも大差がなく、新規開発要素がないため、従来から自衛隊が通信衛星サービスを利用していたスカパーJSATホールディングスにPFI*方式で委託している。
 これに加えて、自衛隊は独自の防衛目的衛星の検討や研究を進めてきた。
 組織面では20年5月、航空自衛隊に宇宙作戦隊を発足させた。これが22年3月には組織規模をさらに拡大し、四つの隊と群本部からなる宇宙作戦群となった。ロシア・ウクライナ戦争を契機として防衛費の大幅増となったことも追い風になったが、自衛隊の宇宙分野での能力拡大自体は、宇宙基本法制定以来の既定路線だった。宇宙作戦群は地上のレーダーで同盟国やJAXA(宇宙航空研究開発機構)などと協力して宇宙空間を監視することを任務としている。
 加えて令和5年度(23年度)予算には、宇宙状況把握(SSA)システムの製造費が計上された。これは他国の衛星に接近して写真撮影を行うための専用衛星だ。明らかに前述の中国の攻撃衛星に対する対抗手段とみていい。
 防衛省はさらに将来に向け、衛星の高機動化や燃料補給の技術開発も掲げている。今後の情勢によっては、他国の衛星を攻撃する能力も検討されるだろう。そうなれば日本版宇宙戦闘機の誕生も絵空事ではない。
 これらの先にあるのは、地上での防衛で優位に立つには「制海権」「制空権」に加え、「制宙権」も必要になるという未来だ。政府が数年内に航空自衛隊を航空宇宙自衛隊に改称する方針を示したことからも、「制宙権確保」が自衛隊の任務の柱に加わると見込まれていることが分かる。
 航空宇宙自衛隊というSF的な名称には自衛隊内部でも戸惑いがあるようだが、かつて航空機が戦争に使われ始めた時代には「空軍」という名前も空想的に思えたことだろう。同じことが宇宙でも起こっている。
 もはや宇宙戦争は現実のものとなりつつあるのだ>(以上「DIAMOND」より引用)




 中国脅威論を展開する評論家を数多く見て来たが、ここでも大貫剛氏(フリーライター)が「中国が宇宙で敵国衛星を直接攻撃も?「リアル『スター・ウォーズ』」の脅威がすぐそこに」という論評を週間DIAMONDに掲載している。
 中国脅威論は様々な観点から展開されるが、その多くは現実の中国を知らない妄想の類だ。確かに中国は人工衛星や惑星探査機などを打ち上げている。来年かそこらには宇宙飛行士を月へ送り込む計画を発表している。日進月歩の進化を遂げているが、人工衛星の打ち上げや宇宙飛行士を月面着陸させることがそれほど刮目すべき技術進歩なのだろうか。

 米国が月面に宇宙飛行士を着陸させ地球へ帰還させたのは1969年のことだ。半世紀以上も前に米国が成し遂げたことを、中国が現在達成しようと躍起になっていることが、それほど「目を見張る」ようなことなのだろうか。旧ソビエト連邦(現在のロシア)がユーリ・ガガーリン少佐(1934~1968)を乗せた宇宙船「ボストーク1号」の打ち上げに成功したのは61年前の1961年4月12日のことだった。
 それ以降も科学技術は飛躍的に進歩し、PCなどの電子機器も比較にならないほど進化した。宇宙から地上を監視する偵察衛星を軍事大国が保有するのは常識となっているが、ロシアがそうした情報をリアルタイムでウクライナ戦争に活用していないようなのが疑問だ。ロシア軍はローテクのドローンなどを多用して、戦場の情報を収集しているようだ。

「新時代の宇宙軍事利用では中国が先行」という章では「宇宙アセットを利用した作戦指揮能力をより高度に備えた側が、戦力を倍加させて優位を確保できる」との論理を展開しているが、宇宙から直接攻撃することでないことは明らかだ。宇宙アセットとは情報収集と敵国の人工軍事衛星を破壊することだという。
 しかし宇宙利用では人を乗せた軌道周回衛星を早くから打ち上げていたロシアこそが世界最先端ではないか。しかしプーチンの戦争でその威力を充分に発揮しているとは思えない。つまり米国の偵察衛星と比較して、ロシアが宇宙から収集している軍事情報は米国がウクライナに提供しているものとでは比較にならないほど劣っている。

 その原因は偵察衛星に積載している情報収集の電子機器の精度の相違ではないだろうか。中国が偵察衛星に積載している情報収集電子機器がどの程度のものなのか、おおよその見当はつく。そして現在のものよりも、次に打ち上げる偵察衛星の電子機器の精緻さでは従来のものよりも劣るのは明らかだ。なぜなら米国が対中半導体規制が効いているからだ。
 そうしたロシアが宇宙から収集する情報が粗いと思われるのは電子機器を構成する半導体のレベルによるのではないだろうか。そしてロシアが開発したとされる極超音速ミサイル・キンジャールをウクライナ戦争に用いたが、欧米製携帯地対空ミサイルによって迎撃されている。「中国が実用化した極超音速滑空弾は」という章で迎撃ミサイルで撃ち落とせない、との論を前提とした論理を展開しているが、中国の兵器がロシア製兵器の劣化コピー版であることを考慮すれば、それほど恐れることはない。

 引用論評の「宇宙戦争は現実のものとなりつつある」という結論は既にそうなっているが、それは中国優位で推移しているということではない。あくまでも優位にあるのは科学総合力で世界をリードする米国だ。2NM半導体の開発競争では中国は足元にも及ばない。いや中国は自力で14nm半導体すら製造できない状態だ。
 日本の自衛隊は「自衛のための戦力」という憲法規定の枠内で防衛装備を充足させるなら、宇宙に目を向けるのではなく、日本に飛来するミサイルの早期発見と、その迎撃態勢の構築に全力を注ぐべきだ。その切り札となるのが地上配備型レーザー砲だ。地上配備型レーザー砲なら間違いなく防衛のための「戦力」だ。その開発に幾ら投じても周辺諸国を刺激することはない。米国からポンコツ・トマホークを爆買いすることなど愚の骨頂ではないか。日本は攻撃兵器を保有すべきではない。中国脅威論を手を変え品を変えて煽る者が次から次へと現れるだろうが、日本を戦争へ導く煽りに乗って敵基地攻撃兵器など配備してはならない。それは理想論ではなく、憲法にそのように規定してあるからだ。日本国民なら日本国憲法を順守するのが務めではないか。

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