e-fuel生成に人類の英知を集めよ。

■強烈だった中国EVシフト

 ここでは、完全電動化の問題を考える。ノルウェーとオランダは2025年からガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する意向を明らかにし、昨年9月にはイギリス、フランスも2040年を目処に追従。中国も電気自動車(EV)に対する優遇措置を法制化し、脱ガソリン&ディーゼル自動車社会に対する方針を打ち出した。

──法制化といえば、中国EVシフト報道は強烈でした。今一番の自動車消費国ですから、自動車メーカーへの影響は大きいと思います。

松田:背景には、中国の産業事情も大きく影響していると思います。中国は世界有数の消費国であるとともに、工業国でもあります。経済が停滞気味のなか、何か手を打たなければならない。たとえばEV化を打ち出すことで、リチウムイオン電池を世界の自動車メーカーから買ってもらえる。少し前、ソーラー電池の需要拡大を日本も狙っていましたが、製造コストの部分で全部中国にシェアを奪われたという経緯がある。中国はレアメタル資源も豊富ですし、国策としての援助があるから同じ電池生産の分野では敵わない。昨年、日産もNECと共同開発だった車載用電池メーカーの株を中国ファンドに売却しました。

──巷で言われている自動車業界リセットを中国が視野に入れている、と言われるひとつの由縁ですね。

松田:しかし実際に大気汚染も深刻なのは確かで。たとえば北京ではナンバープレートの偶数奇数で走行できる日が決められています。中国のドライバーは、マイカーを持っていても週に3日ぐらいしか走れないんです。

──他にもロンドンも渋滞税がありますし、パリの旧型車乗り入れ禁止措置などありますね。

松田:アメリカのフリーウェイでもカープールレーンというクルマ1台に1名乗車では通ってはいけない制限区画もありますね。そういう制限をプラグインハイブリッド車やEVなら免除するという動きは世界的にあります。中国は、先ほどのナンバープレートによる走行日指定を、EVだったらなくしますよという優遇措置を現在採っています。

■水素自動車は普及するか


──やはり、世界的にも自動車のEV化の波は避けられないと。

松田:電気は風力、火力、水力、または回生エネルギーと、どんなものでも作れるというメリットがあります。もう一方で話題になっている水素は、燃料電池として使うには純度が求められ、現在99.9%ぐらいないとダメなんです。水素も何からでも作ることができますが、精製に別のエネルギーが必要でまだ開発の余地があります。

──電気の方がエネルギーとしてシンプルなんですね。

松田:しかし電気は損失が多いし、何かに変えておかなければならないのでバッテリーが重要になってきます。そのバッテリー自体は生産もリサイクルも大変で、そういう側面で言うと現状ではEVがエコかというと、そうでもない。リチウムイオン電池はレアメタルを使用しているし、電解液は硫酸を使っている。容量が大きければ大きいほど実は環境負担が大きいんですね。「ウェル・トゥ・ホイール(油田から車輪)」という考え方があって、原油産出からクルマが廃車されリサイクルされるまでに排出するCO2排出量を見ると、実はまだガソリン車が一番少なかったりするんです。

──つまり、実はエコロジーかどうかはそれほど問題ではなく、ビジネス上の駆け引きの方が大きいという側面もありそうですね。

松田:あとは目新しさでしょうね。自動車メーカーもそれを新たなビジネスチャンスと捉える部分もあって、一緒にEVと言っている部分もあるでしょう。もちろん大手メディアの作るムードもあると思います。電気自動車が現在、どういうレベルの商品なのかもよく調べないで世界に遅れるな、という論調もどうかと思いますが(笑)。そういう風潮に世界中のトップが流されている感じはしますね。

──そのあたりは、リアルユーザーの声が聞きやすいネット社会になっているんで、もっとみんな色々アンテナを張った方がいいですよね。

松田:現実に、もう少しガソリン&ディーゼルでもここまで燃費を良く、CO2排出を軽減できる、というマツダのように気骨あふれる自動車メーカーもいるんで、彼らには頑張ってほしい部分もあります。でも結局、日本には石油資源がないので、長い目で見て石油市場に振り回されない社会を実現する必要はあると思いますよ。

■自動車市場は衰退してくのか

──個人的には、安易に今の風潮に流されずに、日本は既存技術=ガソリンエンジンベースのハイブリッド化で勝負した方が、スマホや家電製品で日本企業が衰退したような轍を踏まないような気がしているんですが。

松田:確かに、このEV問題がどう着地していって、みんなが幸せな生活を続けながら次の時代に移行するかは大切な問題だと思います。でも、オイルショックを経験したり、戦後直後の両親世代などを見てきた身としては、日本が石油に頼らないエネルギーを獲得するという意味で、電気はアリ、EVはアリだと思います。でも、バッテリー技術のブレイクスルーは将来的に絶対必要でしょうね。

──その技術革新で日本が世界をリードすれば、ビジネスチャンスも広がると。

松田:そういうことも言えるでしょうね。

──現実的にEVはまだ全然未完成。少なくとも現行ユーザーの方々は身にしみている。でも大手メディアはもうガソリン車じゃないと喧伝する。そうすると、ユーザーはEVはまだ様子見だけど、ガソリン車はもう数年後には使えないかもしれない。そう考えると結果、新車は当分買わない方がいいかもと判断する人も増えるんじゃないかと思うんです。それって国内の自動車市場を衰退させてしまうのではないかと。

松田:資本主義って、無駄なものを作らないと人々が潤わないというか、なんでも効率、コスパという考え方が現在のデフレを招いている一因でもあると思います。都市への人口集中もそうですね。地方が過疎化したことにより、産業が成り立たなくなってしまっている。シンギュラリティーの問題も、効率化で機械が人の代わりをしていくという話で終わると、どんどん失業者が増えていってしまうわけで。

──それが幸せな未来かというと、クルマの未来のかたちがどうなるか? よりも重要な問題になってくるような気がしますね。>(以上「BEST TIMES」より引用)




   雑誌社記者が松田秀士氏(自動車評論家)に「2040年の「自動車」を想像してみる」という観点から質問し、それに答えた対談記事だ。
 ここに来て、欧州のEV車以外は自動車にあらず、という風潮の勢いが衰えたようだ。それはEV車は何も金属の鍛造技術や鋳造技術、さらには金型製造技術などなくても簡単に企業参入できるからだ。EV業界世界トップのテスラーも元々はソフト企業だった。

 昨年から中国の100社を超えるEV車製造企業が欧州へ雪崩を打って販売攻勢をかけて来た。そうすると欧州諸国のEV車製造で自動車産業を日本に奪われた失地回復を目論んでいたアテが外れた。確かにEV車は素晴らしい勢いで普及しているが、それが欧州各国の国内総生産に寄与しない、という現実が見えてきた。
 さらにはV社の普及に追いつかない急速充電設備がEV利用者にフラストレーションを与えた。それはEV大国となった中国でも同じだ。この五月の連休では充電渋滞が中国各地で起きた。その影響か、中国でのEV車の売れ行きは鋭角的に下落した。それはEV車購入を促進していた中国政府の補助金の打ち切りも大きく影響している。

 補助金の打ち切り分に相当するだけテスラーやBYDなど各社がEV車の値引きを実施した。それによって、中国ではEV車に対して益々買い控えが起きているという。
 あれほど狂信的にEV車でなければ環境は守れない、と執拗に主張していた欧州各国の首脳たちも少しは冷静になったのか、e-fuelを使う内燃機関なら「認める」と言い出した。それらのEV車を巡る環境の激変を受けて、テスラー株が大幅な下落を記録している。一時は資産総額でトヨタを超えたと持て囃されたが、それらはCO2地球温暖化というプロパガンダの上に咲いた「仇花」でしかなかった。

 私たちは高校の科学で一次エネルギーの方が二次エネルギーよりも熱効率が良い、という真理を学ぶ。熱効率が良ければCO2発生がより少ないのは明らかだ。私はCO2を排出していることが地球温暖化に繋がっているとは考えていないが、狂信的なCO2温暖化信者たちもEV車が内燃機関車よりもCO2排出が少ない、というのは無理がある。確かに走行時はEV車はCO2を排出しないが、それ以外のところではレアメタルの採掘で環境破壊をもたらし電力の爆食いによるCO2排出を増やしている。
 ただ、ここに来てe-fuelという落としどころが出てきた。石油を掘削して燃やすのならCO2が増えるが、CO2とH2Oとを光合成触媒を用いてe-fuelを合成するのなら、e-fuelを燃焼してもCO2が増えないから了とする、という理屈のようだ。

 世界各国の科学会社がe-fuelの合成に乗り出しているが、ドイツと日本が進んでいるようだ。ことに川崎重工ではe-fuel製造船を進水させて、実証試験を始めようとしている。川崎重工では水は海水から取り、CO2は空気中から、そして精製・合成するエネルギーは船の上に林立させた風車(棒状の物)で発電した電気エネルギーを使用するという。
 つまり船に装置を積んだ生成装置を海に浮かべて、自動走行させてe-fuelが満タンになれば自動航行で港へ帰ってくる、という予定のようだ。それだとe-fuelによる自動車燃料は1リッター当たり10円~15円で供給可能だという。夢のような話ではないか。こうした議論こそ、私たちが望んだものだ。

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