「ロケットマンごっこ」ではあるまい、そのカネで国民の食糧を買え。

個人の穀物取引を取り締まり
 北朝鮮専門ネットメディアの『デイリーNK』は昨年12月、咸鏡北道の消息筋が「同10月末に続き、11月中旬にまた、個人が道端で穀物を販売する現象を徹底的になくす指示が下された」と述べ、「こうした指示で最近、個人が食糧を販売することが極めて難しい状況だ」と述べたと報じた。
 同消息筋は「こうした措置は、個人間の食糧取引を防ぎ、国家が食糧価格を統制、掌握しようとするものと見える」と述べた。
 韓国の統一部は今年2月16日、記者たちに対し、北朝鮮が昨年10月に新たな糧穀政策を導入し、個人間の穀物取引を取り締まっていると述べ、『デイリーNK』の報道内容を確認した。
 統一部は「完全に(個人的な穀物売買が)中止しようとしたとは言えないが、チャンマダン(農民市場)を通じた食糧取引が以前のように自由ではないという話があちこちから聞かれる」とした。市場での穀物取引を完全に禁止したかどうかはまだ確認できないが、かなりの統制を受けているのは事実だという認識だった。
 統一部当局者は「昨年末から北韓(北朝鮮)の食糧事情が深刻だというシグナルが見える。まだ年の初めなので、昨年生産した穀物がなくなったということではあいだけに、絶対量の問題というよりは『分配の問題』が発生した状況」と説明した。
 北朝鮮当局は道端や市場での穀物販売を統制し、新たに設置した「糧穀販売所」で穀物を買うように住民たちを誘導しているとみられた。

最初は住民にも人気だった「糧穀販売所」

 北朝鮮の食糧供給は配給品を渡す「食糧供給所」と「市場」が共存することで成り立っていた。北朝鮮当局はこの「市場」の機能を「糧穀販売所」へ移管し、食糧供給全体を国家統制下に置こうとしたとみられた。
 完全な配給制を復活することはできないが、配給制度を補完するための主食の売買は国家が統制しようとしたとみられた。
 このため、北朝鮮当局は国営の「糧穀販売所」のコメの価格を当初は市場の価格よりも低く設定し、住民の購入を誘導した。住民たちも安くコメを買えると当初は人気だったという。しかし、コメを安く売ると国が経費を負担しなければならない。これを避けるために農場からの購入価格を安く抑えた。
 すると農場側は生産物を国に安く買いたたかれるために、拠出を渋り出した。さらに、品質の悪いものを糧穀販売所に出し、品質の良いものを市場に出すようになった。農場は国にコメなどを買いたたかれるくらいなら、高くなるまで貯蔵しようとし、市場の流通が妨げられるようになった。
 糧穀販売所で売られるコメの質が低下し、消費者から不満が出た。消費者は糧穀販売所での購入を止め、再び市場で購入するようになった。このため、こうした動きを阻止するために昨年10月ごろから、市場での穀物売買を統制する動きを強めた。
 金徳訓首相が全国の食糧供給所と糧穀販売所の視察を続けた背景には、こうした状況を把握しようとするものだったとみられた。
 2022年12月に最高人民会議常任委員会常務会議が開かれ、「農場法」、「糧政法」の修正、補充が行われた。「糧政法」の修正は、先述の穀物販売所の設置を決めた2021年9月ごろの修正に続くものだった。
『労働新聞』(昨年12月8日付)は、農場法について「社会主義農業企業体としての農場の定義、穀物予想収量の判定、穀物義務買付け計画の示逹、農場活動の条件保障に関する条項が修正された」とした。糧政法については「糧穀の買い上げや加工、販売などにおいて制度と秩序を厳格に打ち立て、糧政事業を発展させるための重要な諸問題が補充された」とした。
 農場を「社会主義農業企業体」とするのはこれまでにあまりない表現だった。北朝鮮が農村を思想革命する中で生まれた言葉だけに、市場経済的な意味合いを強めたというよりは、収穫から流通の全段階で当局の統制を強めることで、農場経営の効率化や生産性の向上を目指したものである可能性が高い。
「糧政法」の改正は農場からの穀物買い上げや、販売について国家統制を強化するものとみられた。農場には穀物を市場に売らせず、消費者は市場で穀物を購入せずに糧政販売所で購入するように統制を強めたのではないかとみられた。こうした措置により、北朝鮮の食糧流通はさらに硬直したものになっていった。

「12の重要高地」のトップは穀物

 朝鮮労働党は昨年12月26日から31日まで党中央委員会第8期第6回全員会議(総会)拡大会議を開催した。
 金正恩党総書記は会議での報告で「新年度(2022年)に人民経済の各部門で達成すべき主要経済指標と12の重要課題を基本目標に定め、その達成方途を具体的に明示し、2023年の計画遂行が経済発展の中・長期戦略遂行へつながるようにすることに作戦と指導の中心を置くこと」について強調した。
 北朝鮮は2021年1月に第8回党大会を開催し「国家経済発展5か年計画」(2021~2025年)をスタートさせた。
 金正恩党総書記は2022年9月の最高人民会議第14期第7回会議で施政演説を行い、5か年計画で「2025年末には2020年の水準より国内総生産額は1.4倍以上、一般消費財の生産は1.3倍以上伸びる」と述べ、5か年計画期間の年平均経済成長率が7%に設定していることを明らかにした。
 しかし、2020年から始まった新型コロナウイルスの影響で、北朝鮮は2020年から貿易の9割を占める中朝貿易は激減し、経済制裁、コロナと中朝貿易激減、水害の3重苦に襲われた。
 韓国銀行はコロナ禍以降の北朝鮮の経済成長率は2020年がマイナス4・5%、2021年がマイナス0・1%と推定した。2022年も大きなプラス成長は無理と見られている。2021年から始まった「国家経済発展5か年計画」の年平均7%成長の目標達成は最初の2年でほぼ絶望的になった。
 北朝鮮はそうした状況の下、2022年12月の党中央委第6回総会で「達成すべき主要経済指標」と「12の重要高地」を提示したわけである。ここで今年達成すべき産業分野ごとの数値目標が設定されたとみられた。「5カ年計画」の目標達成が困難になったために、12の産業分野で2022年に獲得すべき目標が設定されたとみられた。
 党機関紙『労働新聞』などの公式メディアは「12の重要高地」がどういう産業分野なのか報じなかった。そうした中で、北朝鮮の平壌のメーデー競技場で1月5日、「全員会議の決定を貫徹するための平壌市決起大会」が開かれた。
『朝鮮中央テレビ』がこの決起大会について報じる中で、競技場の電光掲示板に「12の重要高地」の産業分野が紹介された。これによれば、
(1)穀物(2)電力(3)石炭で、それ以降は
(4)圧延鋼材(5)有色金属(6)窒素肥料(7)セメント(8)木材(9)布(10)水産物(11)住宅(12)鉄道貨物輸送
という順序、内容であった。
「12の重要高地」の優先分野が穀物、電力、石炭という順番であることを見ても、食糧、エネルギー問題が依然として北朝鮮の最も深刻な課題であることが分かった。中でも穀物生産の行方が国家の最優先課題であった。

農村問題を討議するが、生産向上の具体策なし

 そして、朝鮮労働党は2023年2月26日から31日まで「農村問題の最終的解決」を掲げて党中央委員会第8期第7回全員会議(総会)拡大会議を開催した。党中央委総会は2022年12月末に開催されたばかりで、約2カ月で再び党中央委総会を開催するのは異例であった。
 党中央委総会の第1議題は「新時代の農村革命綱領実現のための初年の闘争状況と一連の重要課題について」であった。
 金正恩党総書記は第1議題についての「結語」で「社会主義農村建設目標の達成は壮大で深刻な革命であるため、農村問題を成功裏に解決するためには科学的な段階と目標を設定し、目的指向的な闘いを展開しなければならない」とし「現段階の闘いにおいて農村を革命的に一新させることを国家の富強・発展と人民の福祉増進を成し遂げるための重大な革命課題」とした。
 その上で「穀物生産目標の達成を人民経済発展の12の重要目標の第一の目標に掲げた党中央の意図と今回の総会拡大会議の基本目的が言及され、主な農業発展目標と課題」が提起された。
 公表された内容では、農業生産を向上させるための具体的な施策はあまり明らかにされていないが、国家経済発展5カ年計画の終わる2025年までに、灌漑システムの完備を急ぐことが強調された。さらに、干拓地の開墾や耕地面積を増やし、1ヘクタール当たりの収穫高を上げることなどが求められた。
 しかし、北朝鮮の食糧問題ひっ迫の原因となっているとみられる糧穀販売所の設置や市場での穀物取引の是非など「流通」問題についてはまったく言及がなかった。「協同農場」の名称が消えたことや、圃田担当責任制の実施などについても言及はなかった。
 党機関紙『労働新聞』は3月3日付で、朱哲奎(チュ・チョルギュ)副首相兼農業委員会委員長が寄稿で「これまでわれわれが農業をしっかりと営むことができなかった根本の原因は、農業指導機関の幹部らが営農物資保障条件や災害性異常気候にかこつけて農事の作戦と指揮を、責任を持って行わなかったところにある。
 こうした思想観点と事業姿勢では、いつまで経っても国の穀物生産を増やすことができず、党と人民の前に負っている重い責任を果たすことができないという教訓をいま一度骨身に染みて胸に刻んだ」と自己批判を行った。
 張賢哲平安南道農業科学研究所所長・博士も寄稿で「道の農業科学研究機関に責任を負っている幹部として、農業科学者の一人として、あまりにも遠くかけ離れていたという罪責感に頭を上げることができない」と自己批判した。
 党中央委員会総会が「農村問題の最終的解決」を掲げて開催されたが、農業生産を向上させるための具体的な方策は灌漑システムの整備以外には上がらなかった。
 また、食糧不足を起こしている原因とみられる「糧穀販売所」の設置や運営の問題点を含めた「流通」の問題についても言及はなく、農業担当者の責任や決意だけが問われるという形で終わってしまった>(以上「現代ビジネス」より引用)




 平井久志氏(ジャーナリスト)の「北朝鮮「ミサイル連射」のウラで”新たな異変”…食糧危機をまねいた金正恩に、国民の「大ブーイング」が起きている…!」と題する論評が掲載された。北朝鮮は餓死者が出るほど極端な食糧不足に陥っているが、独裁者金正恩氏はミサイルやロケットを景気良く打ち上げ花火のように発射している。
 それらの予算を食糧輸入に回せば、当面は餓死する国民の命を救うことが出来る。しかし金正恩氏は「無慈悲」にもミサイルを発射する予算はあっても、国民を餓死から救う食糧購入の予定はないようだ。

 もちろん計画経済の社会主義国に失業はあり得ないし、食糧不足など論外のはずだ。そのための独裁体制であるはずだが、北朝鮮では国民が餓死しようがお構いなしのようだ。もっともそうした実情は北朝鮮だけではないようだ。
 押しなべて、独裁主義国では独裁者や政府幹部は暖衣飽食しているが、国民が貧困や飢餓に苦しむのは普通のことのようだ。経済計画の大失敗により失業者が全国に溢れているのは中国も北朝鮮と大して変わらない。政府幹部だけが暖衣飽食しているのも、北朝鮮と大差ない。

 

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