仏・マクロンの「裏切り」。

仏・マクロンの「裏切り」に、中国が大喜びしアメリカが激怒している…!
 フランスのエマニュエル・マクロン大統領が「台湾問題で米国と中国に追随するのは最悪」などと発言した。同盟国の間では「マクロンの裏切り」という批判が広がっているが、私は「これこそがフランスの本音」とみる。西側のひび割れは、今後も広がる可能性が大きい。

 マクロン大統領は4月5日から7日まで、中国を訪問し、習近平総書記(国家主席)と会談した。6日に北京から広州に移動する機内で、米メディア、ポリティコと仏紙レゼコーのインタビューに応じ、そこで今回の発言が飛び出した。同氏は、なんと言ったのか。 ---------- 〈欧州が直面している最大のリスクは、自分たちのものではない危機に巻き込まれて、戦略的自律性を発揮できなくなってしまう事態だ。困ったことに、パニックに陥って、欧州自身が「我々は単なる米国の追随者」と信じてしまっている。台湾危機の加速は我々の利益になるのか。その答えはノーだ。最悪なのは、台湾問題で米国の課題や中国の過剰反応に合わせて、欧州が追随しなければならない、と考えてしまうことだ〉 
----------  この発言が報じられると、米国では反発する声が渦巻いた。4月10日付のポリティコは「共和党議員たちは、台湾に関する『マクロンの裏切り』を非難している」という見出しで、次のように報じた。
 ---------- 〈共和党の上院外交員会のメンバーであるトッド・ヤング議員は「中国共産党は西側社会と我々の経済的安全、さらに我々の生き方に対する最大の挑戦だ。フランスは、この脅威に目を開かねばならない」と語った。下院の「中国に関する特別委員会」のマイク・ギャラハー委員長は、FOXニュースに「(マクロン発言は)困ったものだ。不名誉で、地政学的にナイーブすぎる」と述べた。下院外交委員会のマイケル・マコール委員長も「大統領の意見には、失望した。中国共産党の台湾に対する脅しは、世界のバランス・オブ・パワーに対するリスクなのだ」と語った〉
 ----------  米ウォール・ストリート・ジャーナルは10日付の社説で、マクロン発言を、こう痛烈に批判した。 
---------- 〈彼は習近平氏との会談後という最悪のタイミングで、ド・ゴール主義的なひらめきを示してしまった。…台湾をめぐる危機は誰も望んでいない。加速させるのは、なおさらだ。だが、それを防ぐためには、信頼できる抑止力が必要だ。
…マクロン氏が対ロシア戦争で米国民の支持を減らしたい、と思っているなら、これ以上うまい発言はなかっただろう〉
 〈マクロン氏は米国の兵器やエネルギーに対する欧州の依存度を減らしたい。と述べている。それは結構だ。しかしそれなら、そのための資金を出し、政策を変更してはどうか。
…バイデン大統領は眠っていないなら、マクロン氏に電話して「ドナルド・トランプ氏を再選させようとしているのか」と尋ねるべきだ〉 
----------  欧州からも批判が出た。たとえば、欧州メディアのユーロニュースは「完全な分析の間違い。発言のタイミングも破局的だ」とフランスの専門家の言葉を伝えている。マクロン発言と同じタイミングで、中国は台湾付近で実弾を使った軍事演習を始めたからだ。 
 中国は大喜びした。中国共産党系の環球時報の英語版、グローバル・タイムズは10日付の記事で「マクロン氏の戦略的自律に関する発言は、米国の覇権維持能力の低下を示している」と書いた。次のようだ。
 ---------- 〈欧州が米国依存を減らし、米国と中国の抗争に引きずり込まれないよう注意を促したマクロン発言は、台湾問題をめぐって、欧州が深く関わらないよう欧州にブレーキをかけたと見られている。この合理的で実用的な警告は、フランス大統領を直ちに批判した米国の政治家やメディアを驚かせたようだ。かれらの不満は、米国が同盟国を制御する能力の低下と、覇権維持に対する懸念を反映している〉

中国とヨーロッパの蜜月ぶり

 はたして、マクロン発言はロシアの侵攻に抵抗するウクライナを支援し、中国の台湾侵攻を阻止しようとしている米国や欧州に対する「裏切り」なのか。ウクライナで米国に頼りながら、台湾は知らんぷりするなら「もちろん、そうだ」と言わざるをえない、と私は思う。  米国のウクライナ支援は1月時点で、軍事、金融、人道分野を合わせて769億ドルに及んだ。フランスの17.6億ドルの実に44倍だ。この実績をみれば、フランスは米国の支援に、ほとんど「ただ乗りしている」と言ってもいい。米欧の関係者が怒るのも当然だ。  だが、これが「マクロンの本音」でもある。
  この発言が飛び出した中国訪問で、マクロン大統領は習近平総書記(国家主席)に対して、まるで媚を売るかのように「親中姿勢」を強調した。
  4月5日に開かれた在中国フランス人向けの講演では、ウクライナ戦争をめぐって、中国の和平提案について、こう語った。 
---------- 〈フランスは中国の和平提案を歓迎する。フランスは提案のすべてに同意するわけではないが、それは紛争解決への意欲を示している。したがって、これが和平提案とは言えないとしても、少なくとも、平和への道を達成する試みであり、責任感を示すものだ〉 
----------  翌6日に北京で開かれた首脳会談では、習氏に「ロシアを理性的にして、すべての関係者を交渉のテーブルに戻すには、あなたを頼りにしている」とまで言い切った。 
 習氏は、そんなマクロン氏を異例の大厚遇で迎えた。6日の会談に続いて、7日には広州に移動したマクロン氏の後を追って、自分も現地を訪れ、ネクタイを外した非公式会談と晩餐会を催したほどだ。
  7日に発表された中仏共同声明は「多極世界で国連を中心とする多国間国際体制を強化する」と記し、中国が最大の戦略目標に据えている「米国の1極支配打破=多極化実現」にも調子を合わせた。マクロン政権の親中路線は「本物」である。 
 だが、欧州が中国に傾斜したのは、マクロン氏が初めてではない。 
 ドイツのアンゲラ・メルケル前首相は経済的利益を重視して、中国に非常に友好的だった。英国のデイビッド・キャメロン元首相も「黄金時代」と呼ばれるほどの親密な中英関係を築いた。なぜ、そうなるか、といえば「欧州は中国から遠い」という実に分かりやすい地政学上の理由からだ。欧州は中国に侵略される心配がないので、経済重視で中国に傾斜するのである。

米国も一枚岩ではない
 米国がマクロン発言に怒るのは当然だが、では「米国はウクライナ支援で一枚岩なのか」と言えば、そうでもない。マクロン氏の逆をいく形のロジックで「ウクライナよりも台湾支援に全力を挙げるべきだ」という意見が共和党を中心に強まっている。
  3月17日公開コラムで紹介したように、たとえば、共和党のジョシュ・ホーリー上院議員は2月の講演で「我々は欧州全部を合計したよりも多くの武器をウクライナに送った。台湾を奪取しようとする中国の抑止こそが米国の最優先事項だ」と強調した。
  同じく下院議長のケビン・マッカーシー氏は昨年10月、「ウクライナに白紙の小切手を切れない」と語り、トム・コットン上院議員もワシントン・ポストの取材に「いまやロシアは行き詰まり、北大西洋条約機構(NATO)にとって差し迫った脅威とは言えない」という見解を示している。 
 共和党に限れば、安全保障上の優先順位はあきらかに、ウクライナから台湾問題に移りつつある。具体的な脅威をもたらす国との力関係で安全保障を考える「リアリズムの立場」に立てば、当然である。 
 米国にとって、ウクライナを脅かすロシアと台湾を脅かす中国のどちらが、より大きな脅威なのか。台湾であるのは明白だろう。ロシアは核保有国とはいえ、戦場で敗北しつつある。人口も経済規模も中国の10分の1にすぎない(デタラメ統計だが)。一方、台湾が中国に奪われれば、米国は太平洋で確保している覇権が危うくなる。
  一言で言えば、マクロン氏が「台湾は欧州に関係ない」と思っているように、米国の共和党も「ウクライナよりも台湾が大事」と思っているのだ。

米国のリアリズムの論理

 米国のリアリズムは意外な形でも表面化した。 
 米国やNATOの機密文書が漏洩した事件だ。文書はウクライナの戦争関連情報だけでなく、米国が韓国政府内の議論も把握していたことを暴露した。「米国に弾薬の提供を求められたら、どうするか」を議論していた韓国高官の会話を盗聴していたのだ。慌てた米国は韓国への釈明に追われた。 
 同盟国の要人に対する米国の盗聴が発覚したのは、これが初めてではない。 
 2013年には、国家安全保障局(NSA)の職員だったエドワード・スノーデン氏による暴露で、当時のアンゲラ・メルケル独首相の電話を盗聴していたことが発覚した。当時のバラク・オバマ大統領は釈明に追われたが、同盟国も盗聴対象にする方針は、いまも変わっていない。  昨年10月に発表された情報活動に関する大統領令は、セクション2で「大統領が米国の安全保障に害を及ぼすと決定しない限り、国家情報長官(DNI)が電子情報(電子メールや盗聴など)の収集対象を更新するたびに随時、公表する」と定めている。つまり、どの国を対象にするか、そしてそれを公表するかどうかは、ジョー・バイデン大統領次第なのだ。

リベラリズムだけで動くはずがない

 日本はかつて、自動車摩擦をめぐって当時の通産省と自動車メーカーなどの会話が、米中央情報局(CIA)に盗聴されていた。今回の例をみれば「日本が盗聴対象になっていない」と考えるほうがナイーブすぎる。 
 米国は同盟国といえども、いつも紳士的にふるまって、付き合っているわけではない。シャンペン・グラスを合わせていても、舞台裏では法もルールもお構いなしに、相手の腹を探っている。「英国には永遠の友人も永遠の敵もいない。あるのは永遠の国益のみ」と語った、かつての英首相パーマストンの言葉通りである。 
 機密文書漏洩問題が、水面下でこっそりと続いていたリアリズムの発露とすれば、マクロン発言は国益に対する考え方を堂々と表面化させた事件と言える。緊張が高まる世界で、なりふり構わず、本音で動く国家の本質を示している。 
 米国のジョー・バイデン政権は自由と民主主義、法の支配といった理想を掲げ、ロシアや中国との戦いを「独裁・専制主義陣営vs自由・民主主義陣営」と定義してきた。だが、そんな美しいリベラリズムだけで、国家が動くわけではない。 
 マクロン氏や米国の言動にいきり立っても、仕方がない。本来、国家はそういうものなのだ。岸田文雄政権や一部の日本のマスコミ、専門家のように「リベラリズムで世界が動く」とみているほうが、よほどおめでたいのである。 
 2つの事件は、自由・民主主義陣営の内側でも、国益をめぐる本気のせめぎ合いが始まった現実を示している>(以上「現代ビジネス」より引用)




 引用記事を書いた長谷川幸洋氏(ジャーナリスト)はよほど米国が嫌いのようだ。米国が困難なに直面すると欣喜雀躍し、兵衛国と欧州諸国が緊密になると機嫌が悪そうだ。
 しかしマクロン氏の常軌を逸した親中発言は習近平氏へのリップサービスの限度を超えている。まるで欧州諸国を代表して中国と金儲けの取引をしているかのような発言だった。

 中国から帰国してオランダへ行ったマクロン氏はオランダ市民から「中国の犬」という激しい批判を浴びた。「お前の国では百万人規模のデモが起きて、パリ中がゴミだらけだ。早く国へ帰って国民と話し合ったらどうか」と罵声を浴びた。
 つまりマクロン氏は米国のマスメディアからだけでなく、EUの市民からも批判を浴びている。いや、おそらく政治音痴の日本国民の大半もマクロン氏には怒りを覚えているだろう。なぜなら欧州(NATOとロシア)の問題でしかないロシアのウクライナ侵攻に、日本政府もそれなりに関与しているではないか。それにも拘らず、マクロン氏は中国が台湾進攻しても、フランスは何もしないと発言したのだ。

 そして長谷川氏のような能天気なジャーナリストが「マクロン氏や米国の言動にいきり立っても、仕方がない。本来、国家はそういうものなのだ。岸田文雄政権や一部の日本のマスコミ、専門家のように「リベラリズムで世界が動く」とみているほうが、よほどおめでたいのである」とトボケた発言を記事にする。
 現在欧州で起きている戦争は「民主主義国家」対「独裁専制主義国家」の戦いだ。それは台湾でも起こり得るから、日本政府と国民はウクライナを明日の台湾だと思って応援している。そうしたロジックを分かろうともしないで「「リベラリズムで世界が動く」とみているほうが、よほどおめでたいのである」と断じるとは。お目出度いのはジャーナリストのくせに自由と人権を死守しようとしない能天気野郎の長谷川氏の方だ。

 もちろんリベラリズムだけで世界は動いているのではない。政治家であれば国家・国民の立場で動くべきであろう。経済人であれば企業利益のため、従業員のため、経営者として動くだろう。人は立場によって行動する動機が異なるのは当然だ。
 しかしジャーナリストとしての長谷川氏が「リベラリズムだけで世界は動いているのではない」などと発言してはならない。全人類の自由と平等のためにジャーナリストたちは最前線で銃をペンやカメラに持ち替えて闘っている。

 先進自由主義諸国の国民は激しくプーチン独裁政権を憎んでいる。独裁者が軍事力で隣国との国境線を変更しようとするすべての企てに「ノー」を突き付けている。そして今世紀で独裁専制主義が地球上から消え去るのを願っている。
 もちろん習近平氏も少なくない世界の独裁権力者の一人だ。彼と誼を通じて経済取引を行い、彼の隣国への軍事的恫喝を容認するかのような発言は断じて容認されるべきではない。マクロン氏の行動を厳しく批判しない人はジャーナリストを名乗ってはならない。

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