戦争の早期終結はウクライナ軍の総攻撃に掛かっている。

<日本有数のロシア通である2人が対談し、ウクライナ戦争を議論した。クリミア奪還、爆破陰謀論、戦車旅団......。この戦争はいつ終結に向かうのか>

※本誌2023年4月4日号「小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析」特集に掲載した10ページに及ぶ対談記事より抜粋。

 昨年2月のウクライナ戦争開戦から1年が過ぎた。この1週間、モスクワではウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が、キーウではウォロディミル・ゼレンスキー大統領と日本の岸田文雄首相が会談したが、その間も各地で戦闘は続いている。
 政治解決への努力が続く一方、両軍共に一歩も引かず、この戦争の帰趨を決定付ける大きなファクターは結局は軍事力であるようにも見える。この1年、多くのメディア出演をこなし、正確な情報分析と分かりやすい解説で高い信頼を得てきたのがロシアの軍事・安全保障を専門とする小泉悠氏だ。一方、ロシア公使やウズベキスタン大使を歴任し、ロシア情勢に造詣が深いアナリストが河東哲夫氏。

 実は小泉氏が専門家として脚光を浴びる前、まだ「軍事オタク」だった頃に見いだしたのが河東氏で、今から10年以上前、小泉氏を外務省に分析員として推薦したという関係にある。
 旧知の2人は、今どのようにこの戦争を議論し分析するか。3月11日に東京で行われ、専門家の知見と洞察がぶつかり合った「超分析」対談を2週連続でお届けする。
(聞き手は本誌編集長・長岡義博。近日ニューズウィーク日本版YouTubeチャンネルで動画を公開予定)
◇ ◇ ◇
――お2人には戦争開始直後の昨年4月、ニューズウィーク日本版ウェブサイトで対談してもらいました(記事はこちら:【河東哲夫×小泉悠】いま注目は「春の徴兵」、ロシア「失敗」の戦略的・世界観的要因を読み解く)。
 今も戦争が終わる気配はありませんが、本日は、この1年の総括と今後の展望をディテールにこだわって議論・分析していただきたい。
 昨年の対談では、「この戦争はどのように終わる?」という質問に対し、河東さんは「停戦したとしても、ウクライナは中立国の地位を周囲から保障してもらいながら軍備を維持するだろう。そうすれば、10年後にまた同じようなことが起きるかもしれない」と答えています。
 小泉さんは「この戦争はすぐには終わらない。プーチンは戦果があればそれに乗じて戦争を続行するだろうし、負けていればやめるわけにいかない。落としどころが定まらないまま、ずっと戦闘が続くイメージがある」と分析されている。小泉さん、この分析を振り返ってどうですか。

■小泉 われながら当たったと思います。ロシアはもちろんウクライナも、旧ソ連の中の大国でそれなりの国力があり、軍隊の規模も大きい。旧ソ連15カ国の中で2ケタ万人以上の軍隊を持っている国は、この両国しかない。そこにお互い動員をかけたり、外国から武器を調達したりしながら戦っている。どちらも簡単に、純軍事的に音を上げる状況ではない。
 この戦闘をやめるとすれば政治決断しかないが、河東先生が昨年おっしゃっていたように、(ウクライナには)どこかでやめてもロシアがまた同じことを繰り返すという恐れがある。あるいは、ここでやめたら(2014年以降、ロシアに奪われた)2割の国土を永久に取り戻せないという恐れがある。
 プーチンからすると──そもそも彼の戦争目的はよく分からないわけですが──2021年7月の論文(「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」)に彼が書いたように、ウクライナを取り戻さなければいけないという思想に本当に取りつかれているとしたら、明らかに現状は不満足なんだと思うんです。
 ウクライナの領土も主権も、まだ全然影響下に収められていないと思っている。こう考えると、能力と意思がある以上は戦闘が続くと考えるべきだったでしょうし、同じことがこれから先にも言えるのではないか。

――河東さんはいかがですか。
■河東 昨年の2月24日、ロシア軍の勢いをテレビで見て「ゼレンスキー大統領は危ないかな」と思ったんだけれど、ロシア軍は緒戦でつまずきましたからね。あれを見て、戦争は長引くだろうと考えました。もしもロシアの敗色が濃厚になれば、ロシア国内の安定性自体も危うくなるだろうと思いましたが、今のところまだその状態にはなっていない。
 小泉さんに付け加えれば、戦争は長引くだろうし、仮に停戦しても、ロシアだけじゃなく、ウクライナのほうも仕掛けてくる可能性がある。

■小泉 確かにここで中途半端な停戦をした場合、ウクライナ側にも失地回復に向けた動機を残してしまうということは考えられる。今回の戦争で明らかになりましたけど、ウクライナ側も血の気が多いんですよ。
 だから、もしウクライナが軍事的に優位な状況で停戦したが、領土的に野心がまだ残っているような状態だった場合、ウクライナから停戦破りに行ってしまう可能性は排除できない。
 その意味でも、今は主に軍事的なフェーズですが、どこからか外交・政治のフェーズとして停戦をどう設計するかを詰めていかなければ、どちらにとっても危ないと感じます。>(以上「NEWS week」より引用)




 ウクライナの停戦が近いのか、という分析を軍事専門家と元外交官が対談で語り合ったと云うが、一読して中身は何もなかった。ただ直ちに停戦とはいかない、という現状の追認を確認し合っただけだ。
 1991年に独立したウクライナ領内へ攻め込んだのは紛れもなくプーチンのロシアだ。クリミア半島や東部四州の併合宣言までして、勝利を手にしたかのように振舞っているプーチンこそ退くに引けない状況に追い込まれている。

 ゼレンスキー氏も1991年の領土を取り戻すまでロシアと戦う、と決断している。ゼレンスキー氏の方から折れて停戦することはない。一方のプーチンも併合宣言をしてしまった以上、形としては「ロシア領」をウクライナ軍に攻め込まれていることになる。
 ただ国連は2022年10月12日の国連総会で、ロシアが一方的に宣言したウクライナ4州の「併合」を「違法で無効」とする決議を採択している。ただし、クリミア半島は「無効」の中に含まれていないため国連総会決議にウクライナを納得させてウクライナ戦争を停止する効果はない。

 しかし川東・小泉両氏が四方山話のように「はあ~、ウクライナ戦争は長引くじゃろう」と相槌を打ち合うのなら誰にでも出来る。国力があるウクライナとロシア両国が対峙して戦えばそうなる、というがウクライナは人口5,000万人の国だ。ロシアの1/3にも満たない国が、世界第二位と自画自賛しているロシアと堂々と四ツ相撲を展開しているのには驚く。つまりロシアは私たちが想定していた軍事大国ではなかった。
 ロシアの兵器も兵器市場の世界で人気を博しているほど高水準のものでないことも露呈した。核兵器こそ恐れるに足りるものだが、それ以外はポンコツといって差し支えない。しかもポンコツ兵器すら底を突きそうになっている。

 ウクライナがドイツや英国などから供与された最新式の戦車で総攻撃を掛ければ、長く伸びたロシアの防衛線は各所で突破されるだろう。クリミア半島への進軍にしても、ウクライナ軍が厳重な防衛体制を敷いたロシア軍の注文に嵌るとは思えない。何らかの手段を講じて、ウクライナ軍は秘かにクリミア半島内に軍を送り込み、背後からロシア防衛軍を撃破するのではないだろうか。
 そしてロシア国内世論がこれから何年も戦争続行でプーチン政権を支持するとは思えない。奇しくも2024年はロシア大統領選挙だ。これまではプーチンが仕組んだ「プーチン信任選挙」だったが、来年のロシア大統領選挙はどうなるか。

 ロシア国内に厭戦気分が高まれば、プーチン独裁政権は「アッ」という間に瓦解する可能性がある。既に息子や夫を失った多くのロシアの母親たちがプーチン政権に抗議している。「ロシアで厭戦気分がじわり 「自衛戦争」に若者は懐疑的」2023/2/20産経新聞より」
 四月か五月と予想されているウクライナ軍の総攻撃が始まれば、ロシア軍はむしろ内部から崩壊する恐れがある。敗走する軍を前にして、プーチンは独裁者の地位を守れるのか。「河東・小泉」両氏がウクライナ戦争は長引くと予想したが、案外近い日にロシア軍の撤退でウクライナ戦争は終結するのではないだろうか。

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