リーマンショックの再来はない。ただ小波が来るだけだ。

破綻前日に株価が60%暴落
 3月10日の金曜日、米連邦預金保険公社(FDIC)はニューヨーク時間の正午前、資産規模で全米16位の銀行であるシリコンバレーバンク(SVB)の閉鎖に動きました。これは2008年のワシントン・ミューチュアルに次いで、米国において過去2番目に大きい銀行破綻となります。
 このような場合、通常は営業終了まで待つものです。しかし、前日に親会社であるSVBフィナンシャル・グループの株価が60%も暴落したこともあって異例の対応となりました(図1)。それだけ預金が引き出されるペースが速かったということです。
 各種報道によると、カリフォルニア州サンタクララに本社を置く同行の総資産は2090億ドルで、テクノロジー分野、新興企業、エンジニアを結ぶ主要な金融窓口でした。スタートアップの創業者が新たな投資家を探したり、株式を公開したりするためには、この銀行と関係を構築することが重要だと考えられていたのです。
 このため、ベンチャーキャピタルから資金を得て上場した米国のIT企業やヘルスケア企業は、その半数近くがSVBの顧客です。こうした企業はいま、同行に預けたお金を動かせなくなっており、従業員に給与を支払うことができません。

悪化しつつある米銀の資金繰り

 FDICによると、2022年末の預金残高1750億ドルのうち、89%にあたる1560億ドルは預金保険で保護される対象外だといいます。今回の破綻劇を目の当たりにした人々は、「危うい」銀行から預金を引き出そうという誘惑に駆られるものです。
 同じことは1990年代後半の日本でもありました。当局が「危うい」とされた銀行全部に公的資金を注入したことで、ようやく人々の動揺が収まったのです。2008年のリーマン・ショックでも米当局がAIGなどに公的資金を投じています。
 今回も、当局が慌てて、対象外の預金についても保護するという異例の措置を決めたので、SVBを巡る危機はいったんは収束に向かうかもしれません。
 ただし、同じことは今後も繰り返されるに違いありません。2022年、米国の市中銀行の預金は、1948年以降で初めて減少しました。銀行の資金繰りが悪化しつつあるのです。
 英エコノミスト誌によると、米銀は過去15年間、これまでなかった預金獲得争いを強いられているそうです。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進める中、預金者は銀行預金よりも、財務省短期証券(T-Bill)やMMFといった利回りが高い選択肢にマネーをシフトしているからです。
 インフレを抑え込むためFRBが利上げを進めたことで、投資適格の最低ラインであるBaa格の社債と、世界一安全とされるT-Bill(6カ月物)の利回りが、逆転しそうになっています(図2)。

含み損を抱えた債券の売却を余儀なくされた

 もし逆転すれば、1980年以来、43年ぶりのことです。世界一安全な金融商品でそれなりの利回りを確保できる状況ですから、銀行が預金集めに苦労するのは当然でしょう。
 今回破綻したSVBに話を戻しましょう。
 同行が破綻に至るステップは、大きく次の4つに分けられます。
この1年半、IT業界ではレイオフが拡がると同時に、ベンチャーキャピタルの資金調達が減少した
ハイテク業界の苦境を知る預金者は自らの資産を引き出し始め、資金繰りに窮したSVBは、含み損を抱えた210億ドル相当の債券売却を余儀なくされた
このため18億ドルの債券で実現損が発生し、その穴を埋めるべく増資を発表した
その途端に株価は前日比6割も暴落し、さらに預金が流出した
 つまり問題の本質は、銀行が預金の引き出しをカバーするため、含み損を抱えた債券等を売却せざるを得なかったことにあります。

米銀が抱える含み損は自己資本の28%にも

 先日、FDICが発表したデータによると、米銀は2022年末時点で債券ポートフォリオに6200億ドル(約84兆円)もの含み損を抱えています(図3)。
 これは自己資本の28%にも相当する前代未聞の莫大な金額です。もちろん、途中売却しない限り、その損失は表面化しませんが、総資産(約23兆6000億ドル)の4分の1を債券(約5兆9000億ドル)が占めており、平均5年とされる債券の償還期限まで資金が固定してしまうのです。急激な預金流出に対応せざるを得なかったSVBのように、売った瞬間に莫大な損失を計上することになるので、売りたくても売れないのです。
 そんな状況下にあって、銀行預金と預入期間が同じである短期国債の利回りが急騰しているのです。これでは銀行預金が減少するのは当然です。
 全米の銀行預金は22年3月末のピークから同年12月末にかけて3.6%も減少しました。このため資金繰りが窮した銀行は、預金金利を大幅に引き上げて資金を調達するか、SVBのように損失覚悟で債券を売るしかありません。
 しかし、預金金利を上げるといっても現在、預金金利のベースとなる米政策金利(フェデラル・ファンドレート)は4.5%にまで上昇しています。このため、期間1年前後の譲渡性預金(CD)を5%程度の利回りで発行する銀行もあるほどで、銀行にとって大変なコスト上昇要因となっているのです。

低金利前提のビジネスモデルが崩壊

 さらに悪いことに長短金利が逆転しています。通常、金利は短期よりも長期の方が高くなりますが、このところ逆転しています。銀行は短期で資金調達を行い長期で運用するのが一般的なので、運用と調達との間に逆ざやが発生しているのです。SVBの株価と長短金利差をグラフ化すると、ほぼ連動しており、そういった窮状を如実に示していると言えます(図4)。
 今回、SVBの破綻で、米銀が抱える債券含み損の問題がクローズアップされましたが、長期金利が急騰していない日本を除けば、世界中の銀行が同じ悩みを抱えているのです。つまり、いつ世界的な金融危機に発展してもおかしくないということです。
 それもこれも、元をたどれば金利の上昇が原因です。1981年から2020年まで趨勢的に下がってきた金利が本格的に反転したことは、これまで39年間、低金利の持続を前提に構築されてきたビジネスモデルが崩壊したことを意味します。それだけに筆者は、SVBの破綻は大きな金融危機の始まりだと考えています>(以上「JB press」より引用)。




 米国のシリコンバレー銀行が破綻して「すわリーマンショックの再来か」と投資家たちは騒いでいるが。米国経済は深刻な不況に見舞われているわけではない。その反対に好景気下でインフレが進行したためFRBが金利を引き上げただけだ。
 そうするとシリコンバレー銀行が破綻したのだが、その解析は引用記事の中にある。つまり「米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進める中、預金者は銀行預金よりも、財務省短期証券(T-Bill)やMMFといった利回りが高い選択肢にマネーをシフト」したためにシリコンバレー銀行の窓口マネーが払底し、それを知った預金者たちが慌てて預金引き出しに走ったためシリコンバレー銀行が破綻した。

 市岡繁男氏(相場研究家)は「シリコンバレー銀行破綻は氷山の一角、世界金融危機に発展してもおかしくない」との論評をJB pressによせているが、決してリーマンショックの再来が「来た」というものではない。
 ただ市岡氏が副題に記したように「金利が急騰していない日本以外、世界中の銀行が似たような状況に」なることは予想される。安い銀行金利よりも利回りの良い金融商品にマネーをシフトさせようとするのは投資家たちの行動原則だ。銀行預金が大量に引き出されるのはあり得るが、銀行が金利を引き上げて財務省短期証券などに対抗すれば投資マネーの銀行離れを防ぐことが出来るだろう。

 米国のシリコンバレー銀行だけでなく、ニューヨークのある銀行も破綻したと報じられているが、破綻した構造はシリコンバレー銀行と同じだ。窓口に預金者たちが殺到して、現金準備が追い付かなかった、というのが破綻理由だ。
 時間が経過すれば和金者たちの利回りのよう証券へ資金を移す、という動きも沈静化するだろう。ここはマスメディアが銀行破綻を騒ぎ立てないことだ。冷静に「資金運用している銀行」にすべての預金を払い戻すことは困難だ、という論理を説明すべきだろう。ただ銀行が不良債権を多く抱えこんでいたら単純に破綻する、が。

 そうした意味で深刻なのは中国の金融機関だ。既に小口現金ですら払い戻しできないほど負債超過に陥っているが、中共政府の強権発動で小口払い戻しですら「予約制」にして、金融破綻を一日伸ばしに先送りしている。
 中国の経済崩壊は既に止められない坂道を転がり落ちていて、不動産破綻から公的機関のデフォルトへ、さらに金融機関破綻へと中国全土に広がるのは時間の問題だ。全人代は晴れがましく習近平氏の三期目と新執行部の承認をしたが、それこそが中国崩壊のトリガーだった。習近平氏が「改革開放」から「戦狼外交」に舵を切ったのが、中国経済が「張りぼて経済」でしかないという現状分析ができない経済素人の判断だった。しかし幸いなことに、中国から主要企業は撤退し、対中デカップリングはある程度まで進んでいるから、リーマンショックほどの甚大な影響はないだろう。ただ「元」経済に依存した国家や企業は痛手を被るのは避けられないが。

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