米国製兵器の爆買いは日本防衛戦略を練った上でのことなのか。

敵基地攻撃は何のために導入するのだろうか。
 岸田政権が決定した「敵基地攻撃能力の保有」。当初は北朝鮮、いまでは中国をターゲットに兵器導入を進めている。しかし、その中身は明らかにされていない。いつ、どこを、何を目的として攻撃するのか。その説明はない。実際のところ、岸田政権も与党自身もわかっていないのだろう。

 そこにあるのは保守政治の願望充足なのではないか。憲法の制約を打破したい。「普通の国」になりたい。90年代そのままの大国意識から、韓国や北朝鮮を威圧したい願望がある。それをミサイル購入でかなえる程度の発想なのではないか。
 いずれ「自衛のためには先制攻撃も可能」と主張しかねない。はやくも安全保障屋は似た話をしている。米英が自国の先制攻撃を正当化するために持ち出す屁理屈なのだが、すでに国際社会では認められているかのように語る出羽守である。
 わかっていないのは防衛省・自衛隊も同様だろう。何をしたいのかを絞りきれていない。だからトマホーク以下、7種類ものミサイルを同時に導入しようとしている。そのようなあやふやな事業に予算を支出していいのだろうか。
 本来なら、少なくとも軍事的に納得できる説明が必要である。例えば「目的は日本正面への軍事力展開の妨害である。そのために海南島にある戦略原潜基地に軍事的圧力をかける」「具体的には海自潜水艦にトマホークを搭載して海南島付近で活動させる。そうすれば中国海軍は南シナ海防衛に力を奪われ、東シナ海に展開する軍艦は減少する」といった具合だ。
 だが、防衛省はそのような説明をしていない。実際にはできないのだろう。いまでも防衛戦略は陸海空でバラバラのままだ。その上で敵基地攻撃の構想をまとめる力はない。
 だから焦点も絞れない、総花的な施策となる。陸海空自衛隊の全てにミサイルを引き渡す。防衛産業にも4種類のミサイルを同時開発させるのはそれである。
 岸田政権は敵基地攻撃でも不真面目なのである。あやふやな目的のために防衛費増額と増税を進めることに納税者の理解は得られないだろう>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)



 
 文谷数重元氏(3等海佐・軍事研究家)が「防衛費倍増 これだけの疑問」と題して、「なぜ「敵基地攻撃能力」の中身を説明しないのか これでは納税者の理解は得られない」と納税者の疑問を喚起している。
 至極当たり前の疑問にも拘らず、こうして新聞紙上で敵地攻撃の「疑問点」を読まなければならないとは日本国民の危機意識の欠落ぶりには驚かざるを得ない。それも43兆円もの巨額予算の根拠となるべき作戦の一つとして政府から説明してもらっていないとは。そうした巨額予算を必要とする基本的な根拠すら示されないままだ。

 政府は国民に対して税を徴収して、各種政策を実施している。政府が使う原資はすべて国民から徴収した税金だ。よって政府は国民に対して説明責任を絶えず追うのは勿論のこと、政策決定の過程が明かでければならない。もちろん政策実施に必要とされる金額が公正妥当なものでなければならないし、その公正妥当性は常に外部者から検証可能でなければならない。
 防衛予算に関しても政府支出である限り、公正妥当なものでなければならない。岸田自公政権は米国からトマホーク500発購入する、と報じられているが、その数と金額が公正妥当なもので、配備目的たる「敵基地攻撃能力」を担保するに充分な兵器か否かの検証が防衛省幹部は勿論のこと、防衛専門家の第三者によってなされていなければならない。

 国会審議にそうした防衛省幹部や防衛専門家が登場していないのは何故だろうか。野党がそうした観点から質問しなかったからなのか。そうだとしたら、野党も週刊誌の記者程度の見識しか有していない防衛素人というしかない。
 米国製兵器の爆買いは短期戦略として「アリ」かも知れないが、日本の防衛を長期的観点から見るなら、国内防衛産業の育成は欠かせない。国内防衛産業の育成、という視点と米国兵器の爆買い、という視点と矛盾しないのか。二重投資という結果になりはしないか、という議論が防衛省や政府内で尽くされた上での米国兵器の爆買いなのか。

 日本は英国と共同してジェット戦闘機の開発に乗り出しているのではないか。既に高性能な国産ジェットエンジンは開発されたと報じられている。主要な機体などを英国と開発している段階だと聞くが、F35を大量購入する、という政府決定は国内防衛産業の開発意欲を削ぐ結果になりはしないだろうか。
 かつて日本は日本製OS開発で米国よりも先行していた。そのトロンBをPC搭載OSの国内標準とすべく動いていたが、米国から横槍が入ってトロンBをOSとする構想は一夜にして覆され、PCのはwindowsが標準搭載されることになった。かくして、日本はSNSでも米国の後塵を拝する結果に到っている。そうした失敗を防衛産業でも繰り返す危険性はないのか。

 最も忠実な米国のポチに成り下がった安倍自公政権下に米国製兵器の爆買い構想は突如として打ち出された。安倍氏が発行した「空手形」の回収に岸田自公政権が動いて、バイデン氏との会談でその確約をしたのではないか。日本の主要マスメディアは安倍自公政権下で米国兵器爆買い構想が登場した際に、安倍内閣で何があったのか殆ど何も報じなかった。
 そして今般のトマホーク爆買いが敵基地攻撃能力の確保になるのか、と云った軍事評論家の検証記事も全国紙やテレビ等の媒体を通して殆ど何も明らかにされていない。亜音速(マッハ1に近い速度)で飛翔するトマホークはジェット戦闘機で撃墜可能だ。敵基地攻撃が失敗した場合、敵から攻撃される動機と理由になる、という危険性を政府は議論したのだろうか。敵基地攻撃能力は「居合抜き」のように一撃必殺を期すものでなければならない。そうした実力を備えてこそ、敵が戦争を思い止まる抑止力になる。ポンコツ兵器なら却って敵が攻撃を決断する促進剤になりかねない。

 長期的な日本防衛の観点に立てば、敵基地攻撃ミサイルは国内防衛産業で開発すべきだ。それも精密誘導・超音速ミサイルでなければならない。確実に敵基地のみを破壊し、民間施設に害が及ばない、という精密誘導ミサイルでなければならない。
 しかも迎撃不可能な超音速ミサイルであるべきだ。自衛隊が保有している砲弾もすべて精密誘導に切り替えるべきだ。たとえば米国のハイマースのような高性能弾にすべて切り替えていくべきだ。そのためにも国内防衛産業の育成は不可欠だ。日本周辺に好戦的な国々が隣接している限り、日本が戦禍に巻き込まれる可能性は決してゼロにはならない。常日頃から防衛に配慮してあらゆる場面を想定しつつ、日本の防衛戦略を日々更新していく努力は欠かせない。

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