中国はロシアと極悪コンビのタッグを組むだろうか。

殺傷能力武器供与の動きあり
 バイデン米政権は、2月24日、先進7カ国(G7)との連携により、ウクライナに侵攻を続けるロシアと、ロシアの制裁逃れを支援した中国を含む第三国の250を超える個人・団体に制裁を科すと発表した。
 これらとは別に、ロシア企業の制裁回避に関与した中国などの約90の企業・団体に対する米国製品や技術の輸出を事実上禁止した。
 対象となった中国企業は以下の6社だ。
北京南江航空宇宙技術有限公司
中国電子科技集団公司第48研究所
東莞凌空リモートセンシングテクノロジー有限公司
イーグル男子航空科技集団有限公司
広州天海翔航空技術有限公司 
山西イーグル男子航空科技集団有限公司

 各企業それぞれに、軍事転用可能な民生用の製品や技術をロシア側に輸出していたとして、米商務省のブラックリストに上がったのだ。
 武器ではないが、軍事目的で使えるハイテク製品、民生用のドローン、地対空ミサイルレーダーの電子製品、ウクライナ戦闘に参加する雇い兵に人工衛星画像などを供与した企業である。

まさに「武器の一歩手前」の取引だった。
 中国はロシアの最大の貿易相手国だ。特に中国はロシアへのセミコン(半導体チップ)の最大の輸出国だ。
 ロシアのウクライナ侵攻以後、ロシアの対中輸入額は760億ドルと前年比13%増、対中輸出は1140億ドルと前年比43%増。
 ロシアの対中輸出は、液化石油ガス(LPG)が前年比2倍、天然ガスは50%増、石油は10%増になっている。
 ロシアの国庫輸入の半分は石油・ガスの収益である。西側諸国の経済制裁により売れなくなった石油・ガスは中国(インドも)が買ってくれたわけだ。
 対ロシア輸出品目の中に「武器の一歩手前」な「グレーゾーン」の製品もあり、輸入した製品・部品がウクライナ戦闘に使用される戦車やレーダーに使われていたとしても仕方のないことだ。
 ところが米国は今回、これらの製品・部品を輸出した中国企業を血祭りに上げた。これはあくまでもそれに続く措置の前触れだった。

軍事支援のアンビギュイティを察知

 バイデン政権はここ2カ月間、中国によるロシアへの殺傷能力のある武器供与を強く警戒し、監視してきた。
 2022年11月14日、ジョー・バイデン大統領がインドネシア・バリ島で習近平国家主席と会談した際に、バイデン氏は中国がロシアに武器供与することのないように釘を刺した。
 ところが、その後、中国は武器供与に向けて動き出していたのだ。
 そして越年。年明けとともに、米情報機関は中露の新たな動きをキャッチしていた。
 米情報機関筋の話として、ウォールストリート・ジャーナルがこう報じた。何やら奥歯にものが挟まったような表現だ。
「中国がロシアを助ける実用的な(軍事)支援に関する、何がしかのアンビギュイティ(曖昧性)が生じている」
 そして米政府は2月中旬、閣僚総出で警戒警報を発した。
 ロイド・オースチン国防、ジャネット・イエレン財務、アントニー・ブリンケン国務各長官、リンダ・トーマス=グリーンフィールド国連大使が一斉に「中国による対ロ武器供与の兆候がある。中国が供与に踏み切れば重大な結果が生じる」と警鐘を鳴らした。
 ブリンケン氏はCBSとのインタビューでこう述べた。
「中国は現在、弾薬から兵器自体に至るまで、ロシアに殺傷力のある支援を検討している。それが米中両国と米中関係に重大な問題をもたらすことをわれわれは中国に明確に指摘した」
 そして2月18日には、ミュンヘン安全保障会議に出席した中国の王毅国務委員(外交担当)との会談で「その事実」を突きつけた。
 会談後の「ジ・アトラティック」とのインタビューでブリンケン氏はこう明かした。
「私は期待を込めて、中国側にわれわれのメッセージが届くよう明敏な方法で伝えた」
「中国がロシアに武器供与するという兆候は米国だけでなく、ロシアのウクライナでの戦闘行為を中国が支援することのないよう望む他の国々も察知していた」
 中国当局は、ブリンケン発言に反発。これに対し、米情報機関筋は「兆候」を立証する証拠を公表すると脅しに出た。
 汪文斌・中国外交部報道局副局長は2月23日、「米国が極秘情報を公表するという情報とやらは単なる憶測にすぎない。中国を誹謗中傷する以外の何物でもない」と全面否定した。

 ロシアによるウクライナ侵攻から1年。米中は中国の対ロ武器供与をめぐる「論争戦争」に突入した。
 どちらかが嘘をついているのか。あるいはすでに表面化している軍用・民生用の仕切りが難しい「グレーゾーン」のブツ(製品・技術)供与で中ロの間で合意が成立したのか。
 中国は、これまで取ってきた「中立主義」をかなぐり捨て、準同盟国・ロシアに物心両面から肩入れすることを決めたのか。
 だとすれば、2月24日に発表した12項目の和平案は何であったのか。
 中ロの「合意」をカモフラージュするための「カブキ・プレー」(筋書通りの意味のない演技)だったのか。

戦車や戦闘機も欲しいがプライド許さず

 米軍事専門家たちは、2つの異なる観点から論じている。
 第1は、攻めあぐんでいるロシアは、真剣に中国の助けを乞い、中国は受け入れようとしているとみる見方だ。
 この場合、ロシアが欲しいのは、中国が開発した最新鋭の兵器だ。
「ポピュラー・メカニックス・ドットコム(popularmechanics.com)」の軍事記者、カイル・ミゾカミ氏は、ロシアが最も欲しがっている兵器は次の2つだと指摘する。
「ミサイル自体が標的を追尾する能力を持つ発射誘導方式、『ファイア・アンド・フォーゲット・赤外線ホーミング対戦車ミサイル(HJ-12)』だ」
「米国が所有する近距離防空ミサイル『アメリカン・ジャべリン』(射程4500~5500メートル)に匹敵する。『アメリカン・シャべリン』はウクライナにすでに供与されており、過去1年でロシアの主要戦闘戦車1100両を破壊損傷させている」
「さらにロシアが欲しがっているのは、交戦範囲40キロの軽量牽引榴弾砲『AH-4』と自走榴弾砲『SH-15』だ」
「AH-4は米国がウクライナに供与している『M777』榴弾砲と同性能の最新型榴弾砲だ」
「SH-15は、フランスの『セザール』(CAESAR)、スウェーデンの『アーチャー』(Archer)と同性能の自走榴弾砲で、両榴弾砲はともにウクライナに供与されている」
「さらにロシアとしては中国の最新鋭の『ZTZ-99』戦車や『J-10』多用途戦闘機が欲しいところだろうが、これはロシアのプライドが許さないだろう」

中国が世界経済から追い出されるリスク

 米国内の中国警戒論者は、中国が対ロ武器供与することを信じて疑わない。米下院軍事委員会の共和党系政策担当ブレーンN氏は、筆者にこう語る。
「ロシアは一日も早くウクライナ一部併合を実現させ、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟を阻止するという当初の目標を達成したいはずだ」
「そのためには現在の戦闘力を増強せねばならない。イランや北朝鮮からの安物の武器をもらっても役には立たない」
「NATOがウクライナにつぎ込む近代兵器には歯が立たない。そこで軍事大国の中国から最新鋭の武器がどうしても欲しい」
「石油・天然ガスを大量に売ってやっているという貸しもある」
「中国としてもこれまでの『口先だけの対ロ連帯』からロシアを本格的な軍事支援し、ロシアの勝利を導き出し、米国にひと泡吹かせたいという誘惑に駆られてもおかしくはない」
「膠着状態の戦況に、中国の武器が導入され、それでロシアにとって戦況が好転すれば、超大国・中国の名は世界にとどろく」
「米国が中国を『世界唯一最大の脅威』と位置付けているのであれば、ロシア・ウクライナ戦争を『米中代理戦争』の前哨戦にしてもいい」
「ロシアが勝てば、その勢いに乗って台湾武力統一の基盤作りすらできるかもしれない」
「おそらく中国共産党の超タカ派や人民解放軍の主流派ナショナリストはこうした構図を描いているに違いない」
「だとすれば、ウクライナ侵攻1年の節目で中国が動き出しいたとしても不思議ではない」
 むろん、こうした見方には同意しない軍事専門家も少なくない。

 シンクタンク「大西洋評議会ジオエコノミックス・センター」のマイア・ニコラズ上級研究員はこう指摘する。
「中国が対ロ武器供与に踏み切れば、米国とNATOは強硬な対中経済制裁に出る」
「中国としては、ロシア支援に脚を突っ込むことによってグローバル経済から爪はじきになることを覚悟せねばならない」
「中国は今やロシアなどに比べると、世界経済に深く絡み合っている。こうした立場にありながら、それを犠牲にしてまでロシアの味方になるとは思えない」
 超党派シンクタンク、「スティムソン・センター」のジェイソン・リー研究員はこう見る。
「中国が対ロ武器供与に踏み切る可能性は依然として小さいと思う。中国がロシアに武器を供与したことで戦況が大きく変わるとは思っていない」
「中国はロシアを経済的に支えているという点で満足している。中国はウクライナ戦争では従来通りの立場を堅持する」
「和平提案を打ち上げたが、その一方で対ロ武器供与に踏み切れるだろうか」
「戦闘を即時停止せよと言いながら、火に薪をくべるようなことはできないだろう。もしそうなれば世界は中国に偽善者のレッテルを張るだろう」

「証拠」提出は諸刃の剣

 前述の、中国による対ロ武器供与の証拠を示す極秘情報の開陳という米国の「脅し」について、ニュースサイト「インフォームド・インサイト」(Informed Insight)は、興味深い記事を発信している。
「米国の動きは、米中間の外交上の虚々実々のジオポリティックス・ゲームの一端を見せた」
「中国による対ロ武器供与という事案は、複雑かつセンシティブなイシューであり、多数のアクターとファクターが介在している」
「出すぞ、出すぞと脅す米国の動きそのものが米中ロのバランス・オブ・パワー(力関係)を揺るがしかねない。米国にとっては諸刃の剣になっているのだ」
「この事案は注意深く、慎重に長期的視野に立って扱うことが重要だ。すべてのステークホルダーの利害が絡んでいるからだ」

 分かりにくい言い回しだが、中ロがどんな協議をしているかを探る米情報機関の手口まで分かってしまう危険性が伴い、「その兆候」の証拠を公開することで米諜報機関のカラクリの一端が分かってしまうことが一つ。
「証拠」を突きつけられたことで中国とロシアが受けるダメージは計り知れない。
「白黒」がついたことで生じる次のリスクに米中ロはどう対応するのか――。
「パンドラの箱」を開ければ、また新たな「パンドラの箱」が出現する>(以上「現代ビジネス」より引用)



 引用論評では、中国がロシアに殺傷能力のある武器や兵器を供与・支援するか否か、という議論を延々と続けている。「中国は対戦車ミサイルや榴弾砲をロシアに供与するか、米専門家の見方」と題する文章で高濱賛氏(ジャーナリスト)は尤もらしく様々な引用を網羅して推察しようとしているが、結論は「米中の虚々実々の「ジオポリティックス戦争」が始まった」と締め括って闇の中に置いた。つまり「解らない」ということのようだ。
 私はそうは思わない。答えは簡単だ、中国は「最新式」と宣伝している戦闘機やミサイルなどの供与は決してしないだろう。なぜなら「ナンチャッテ最新式」という化けの皮が剥がれるからだ。ただ部品や民生用から軍事へ転用可能なドローンや劣化コピー・ジェットエンジンの消耗部品などは第三国を介して以前と同様に支援し続けるだろう。なぜならロシアが敗退して弱体化すると中国が困るからだ。

 台湾進攻以前に、中国の兵器がポンコツ揃いだとウクライナの実戦でバレるのは何としても避けたいはずだ。そして中国製最新戦闘機の攻撃能力や迎撃ミサイル回避能力などの情報が米国やNATOに丸見えになるのは大きなマイナスだろう。中国が誇る最新型戦車にしても、ポンコツだと知れ渡ったら笑いものだ。さすがにインド兵が投石で壊した装甲車をロシアに提供することはないだろうが、ウクライナ前線に実戦配備して極秘の装甲鉄板厚などがバレてはまずいだろう。
 さらに言及すれば、ウクライナ戦争で国力を使い果たしたロシアを配下におく可能性が高まった今こそが、中国にとって最も望ましい状況ではないだろうか。ロシアとガッチリ四つに組んで欧米と対立するのは中国経済の崩壊を加速させるだけだ。貿易輸出国の大半を占める先進自由主義諸国の市場から締め出されれば、残る貿易相手国は後進諸国のみとなり、GDPの50%を占める貿易の拡大どころか縮小の速度を速めるだけだ。

 ただ習近平氏の行動は時として常軌を逸する。彼は総書記に就任以来「改革開放」に背を向けて「戦狼外交」に舵を切った。意味もなく「元」経済圏を世界に打ち立てようと策したり、海洋国家の真似事をして「一帯一路」策で中国の外貨を濫費した。
 ただ自分たちが劣化コピーした兵器がどの程度役立つのか知りたい、という誘惑にかられることがあるかも知れない。開発した国営軍需企業が宣伝するカタログ性能通りの性能を現実の戦闘の場で発揮するのか、中共政府当局は知りたいだろう。しかし、それは中国の軍事力の手の内を明らかにすることでもある。カタログ性能であれ最新鋭兵器を開発したゾ、と脅すことで中国は戦狼外交を展開してきた。その軍事機密を明らかにするわけにはいかないだろう。

 そのような二重の意味から、私は中国が保有する最新鋭の戦闘機や戦車や対戦ミサイルをロシアに供与することはないと断言する。しかしロシアに負けてもらっては世界で最大の味方がいなくなるから、今後ともロシアが負けないように貿易を拡大して経済支援し、兵器一歩手前の部品供与などで支援し続けるだろう。戦争が長引けばそれたけ中国経済にとって対ロ輸出などでプラスに働く。ロシアが敗北する前に停戦が実現すれば、中国はロシアの後見役として国際社会で認知されるかも知れない。
 あり得ないことだが、習近平氏は時として常軌を逸した行動をする。先進自由主義諸国とのすべての関係を絶っても良い、と判断して武器供与に踏み切るかも知れない。その時は台湾軍事侵攻を実行する時だが、ロシア支援と台湾軍事侵攻の二面作戦を実行するほど中国に軍事力があるとは思えない。

 台湾軍事侵攻は中共政権の独裁維持のためのプロパガンダでしかない。台湾進攻のプロパガンダを絶えず叫ぶことにより戦時体制を維持する正当性が生まれ、中共政権が独裁・軍事政権維持の大義名分を手に出来る。しかしプロパガンダと現実を混同したプーチンほど、習近平氏は愚かではないだろう。
 ロシアは大ロシア帝国を再考する、というプロパガンダにロシア国民は洗脳され酔い痴れているが、たとえウクライナを占領したとして、それがロシア国民にとって何になるというのだろうか。プーチンはチェチェンなどの隣国を平定した来たが、それで劇的にロシア国民の生活が改善され国民所得が大幅に伸び、社会保障が拡大されただろうか。いやむしろ更なる軍備増強のために国民に還元されるべき国の富を国民の手から掠め取り続けているのではないか。まさかローマ帝政当時のように占領したウクライナ国民を奴隷として使役することなど出来はしない。中国は中央アジアの新疆でウィグル人を奴隷同然に使役しているが、欧州ではNATO諸国などの監視の目が多くて無理だ。大ロシア帝国などプーチンのプロパガンダでしかないし、それは習近平氏も望んでいない。従って、中国が大っぴらに最新兵器をロシアに供与することはないと思われる。

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