政府の成長戦略を読んで「項目満載にして、策は何もなし」。

成長戦略
 社会課題を成長のエンジンへと転換し、持続的な成長を実現させる。この考えの下、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXの四分野に重点を置いて、官民の投資を加速させます。

(1)科学技術・イノベーション

 社会課題を成長のエンジンへと押し上げていくためには、科学技術・イノベーションの力が不可欠です。科学技術によるイノベーションを推進し、経済の付加価値創出力を引き上げるとともに、イノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援を行います。

大学改革
 世界最高水準の研究大学を形成するため、大学ファンドを創設し、10兆円を確保するとともに、2022年3月に運用を開始しました。大学の研究基盤への長期的・安定的支援を行うことにより、我が国の研究大学における研究力を抜本的に強化します。
 また、イノベーションの担い手たる研究者が、大学運営ではなく、研究に専念できるよう、研究と経営の分離を進めます。
 これら大学改革の実現に向けて、世界に伍する研究大学となるポテンシャルを有し、改革を行う大学に対し、集中的に大学ファンドから助成を行う等の制度を定める法案を2022年通常国会に提出し、成立しました。

イノベーション人材の育成強化

 官民のイノベーション人材育成を強化するため、大学の学部再編や文系理系の枠を超えた人材育成の取組を加速します。
 デジタル・グリーンなど成長分野への大学等再編に向けた大胆な規制緩和、再編に要する初期投資や再編後の当面の運営経費に対する継続的な支援を行うことで、大学の学部再編等を促進します。さらに、理系女子学生の活躍を促進するための取組も進めます。
 このほか、博士課程学生に対する経済的支援及びキャリアパス整備を大幅に強化しています。

地域の中核・特色ある大学の振興

 地域の中核大学や特定分野において世界レベルにある大学などがその強みを発揮し、社会変革を牽引していくため、「大学自身の取組の強化」「繋ぐ仕組みの強化」「地域社会における大学の活躍の促進」の3つの観点から、政府が総力を挙げて実力と意欲ある大学を支援する「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」を2022年2月に取りまとめました。

スタートアップ・エコシステムの構築

 スタートアップの育成は、日本経済のダイナミズムと成長を促し、社会的課題を解決する鍵です。このため、2022年をスタートアップ創出元年として位置づけ、5年10倍増を視野に、2022年末に5か年計画を策定し、大規模なスタートアップの創出に取り組みます。
 具体的には、公共調達におけるスタートアップの活用、海外のベンチャーキャピタルも含めたベンチャーキャピタルへの公的資本の投資拡大、スタートアップが集積するキャンパスづくりの推進、優れたアイデア・技術を持つ若い人材に対する支援制度の拡大、起業家教育の推進などに取り組み、戦後の創業期に次ぐ、日本の「第二創業期」を実現します。

オープンイノベーションの促進
 事業会社とスタートアップ企業のオープンイノベーションを促進するため、事業会社やCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)がスタートアップ企業に出資する場合に株式の取得価額の25%が所得控除される「オープンイノベーション促進税制」について、対象となるスタートアップ企業の要件等の拡充を行ったうえで、2024年3月31日まで制度を延長しました。

企業の海外ビジネス投資の促進

 日本の成長力強化及び経済安全保障の観点から、技術と意欲ある企業の海外ビジネス投資をサポートしていきます。
 これに関する施策の企画立案を行い関係省庁との調整を進めるため、2022年8月1日に、内閣官房に海外ビジネス投資支援室を設置しました。

2025 年大阪・関西万博

 2025年大阪・関西万博では、科学技術や、イノベーションの力で、未来を切り拓いていく日本の姿を世界に発信していきます。世界中の人々に「夢」と「驚き」を与えるような国際博覧会とするべく、必要な経費を確保し、円滑に準備を進めます。

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(2)「デジタル田園都市国家構想」などによる地方活性化
 新しい資本主義の主役は地方です。
 「デジタル田園都市国家構想」は、デジタル技術の活用により、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会を目指すものです。
 地域が抱える人口減少、高齢化、産業空洞化などの課題をデジタルの力を活用することによって解決し、地方から国全体へボトムアップの成長を実現していきます。

再生
Digi田甲子園の開催
 全国津々浦々でデジタル田園都市国家構想を力強く進めていくためには、地域の課題解決や魅力の向上にデジタルを活用した創意工夫あふれる取組を積極的に発信し、横展開していくことが必要です。加えて、地方公共団体・民間企業を始め、国民全体の関心を高め、幅広く参画いただける環境を整えることも重要です。
 このため、本構想の実現に向けた地域の取組を広く募集し、特に優れたものを表彰する『Digi田(デジでん)甲子園』を開催しています。

デジタル田園都市国家構想交付金

 意欲ある地域による自主的な取組を応援するため、デジタルを活用した地域の課題解決等に向けて、他地域の優良モデル等を活用して迅速な横展開等を図る事業や、地方への新たな人の流れを創出するためのサテライトオフィスの施設整備等に取り組む地方公共団体を支援しています。
 今後は、地方創生推進交付金、地方創生拠点整備交付金及びデジタル田園都市国家構想推進交付金を新たに「デジタル田園都市国家構想交付金」として位置付け、デジタル田園都市国家構想の実現に向け、分野横断的に支援します。

デジタルインフラの整備

 2022年3月に、光ファイバ、5G、データセンター/海底ケーブル等の整備計画として、「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」を策定しました。
 本計画の実行により、光ファイバについては、2027年度末までに世帯カバー率99.9%を目指します。5Gについては、2023年度末に、人口カバー率全国95%、全市区町村に5G基地局を整備、2025年度末に全国97%、各都道府県90%程度以上、2030年度末に全国・各都道府県99%を目指します。
 また、10数カ所のデータセンターの地方拠点を5年程度で整備するとともに、海底ケーブルで日本を周回する「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」を2025年度末までに完成させます。
 これらにより、日本中、津々浦々どこにいても、高速大容量のデジタルサービスを使えるようにします。

各分野のデジタル実装

 世界最先端のデジタル基盤の上で、自動配送、自動運転、遠隔医療、教育、テレワーク、スマート農業などのサービスを実装してまいります。

自動配送サービス・自動運転
 電子商取引が拡大する一方で、ドライバーの数は減少を続けています。さらに、ウィズコロナの中、高齢者などの利用者、ドライバーの安全を確保する観点からも、非接触型の自動配送サービスを実現することが重要です。
 このため、低速・小型の自動配送ロボットによる自動配送サービスを早期に実現するために、遠隔操作により道路を通行することができる低速・小型の車の交通ルールについて定める道路交通法の改正案を2022年の通常国会に提出し、成立しました。
 あわせて、高齢者の移動手段の確保やドライバーの不足に直面する地方では、人を運ぶ自動運転による移動サービスが期待されています。
 このため、同改正法においては、申請されたサービスの提供地域・区間を前提として、自動運転システムの性能、遠隔監視や緊急時の対応等を確認した上で、自動運転移動サービスを認める新たな制度を創設することも盛り込んでいます。
 また、自動運転の社会実装にむけて、2025年を目処に無人の自動運転サービスを40ヵ所で実現、高速道路でのレベル4トラックの実用化などを目指して、政府では、研究開発から実証実験、社会実装まで一貫した取組を行うプロジェクトに取り組んでいます。

医療
 オンライン診療、電子処方箋等という医療DXの基盤を整備することにより、利用者・患者それぞれの状況に応じた医療へのアクセスを可能とします。

教育
 GIGAスクール構想により、教育のICT環境の一層の整備や利活用のための支援等に取り組んでいます。また、オンラインを活用し、個に応じた学びを実現するとともに、大学・高校設置基準等の見直しにより、質の高い教育を実現します。

地方創生テレワーク
 地方でテレワークを活用することによる「転職なき移住」の推進など、地方への人材の還流のため、企業版ふるさと納税やデジタル田園都市国家構想推進交付金などを活用したサテライトオフィスの整備等を促進しています。
 また、企業等に対する情報提供・相談体制の整備や地方創生テレワークに取り組む企業の裾野拡大に向けた自己宣言制度・事例の横展開につながる表彰制度を実施しています。

スマート農業
 農業におけるデジタル技術の実装等を通じたスマート化を生産現場で推進しています。これにより、農業を若者にとって魅力のある産業とし、農業の成長産業化を図ります。

デジタル庁・デジタル臨時行政調査会

 デジタル化、DXを進める司令塔であるデジタル庁の機能を更に強化します。デジタル臨時行政調査会では、2021年12月、デジタル原則を策定するとともに、2022年6月には、規制の一括的な見直しプランを取りまとめました。今後は、同プランに基づき、社会のデジタル化を阻むアナログ的規制を3年間で一掃し、新たな成長産業の創出、人手不足の解消、生産性の向上や所得の増大等を実現します。

マイナンバー制度の利活用の推進

 マイナンバーカードは、安心安全なデジタル社会の「パスポート」であり、社会全体のデジタル化を進めるための最も重要なインフラです。マイナンバーカードと健康保険証、運転免許証との一体化、希望者の公金受取口座の登録を進めるとともに、本人確認機能をスマートフォンに搭載することで、利便性を向上させます。
 2021年12月20日から、マイナンバーカードを使い、スマートフォンによって、国内外で利用できるワクチン接種証明書が入手可能となりました。
 マイナンバーカードの普及を促進するとともに、消費喚起や生活の質の向上につなげるため、幅広いサービスや商品の購入などに利用できるマイナポイント(1人当たり最大2万円相当)を付与しています。また、マイナンバーカードのさらなる普及促進に向けて、QRコード付き交付申請書の送付や携帯電話ショップ及び商業施設での申請サポート事業などに取り組んでいます。

国家戦略特区を活用したスーパーシティ、デジタル田園健康特区の推進

 2022年4月、国家戦略特区諮問会議の審議等を経て、スーパーシティ型国家戦略特区として茨城県つくば市及び大阪府・大阪市を、デジタル田園健康特区として石川県加賀市、長野県茅野市及び岡山県吉備中央町をそれぞれ指定しました。これらの区域は、大胆な規制改革を伴ったデータ連携や先端的サービスの実現を通じて、移動・物流・介護、子育てなど様々な分野の地域課題の解決を目指し、「デジタル田園都市国家構想」を先導することが期待されています。

デジタルデバイド対策

 社会全体のデジタル化が進められる中、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を進め、高齢者、障害者等をはじめとした誰もがデジタルを活用できる社会を実現することが重要です。
 このため、デジタル機器やサービスに不慣れな方へのきめ細かなサポート等の必要性に関する国民の理解を深め、意識の啓発を図るため、既に国、自治体、各種団体等が行っている事業や取組とも連携し、きめ細かなサポート等を行う意欲のある方を募集し、幅広く、横断的に「デジタル推進委員」に任命し、今後、国民運動として展開していきます。
 デジタル活用支援推進事業では、2021年6月から、デジタル活用に不安のある高齢者等に向けて、オンライン行政手続等のスマートフォンの利用方法について学べる講習会を全国で開催しています。
 障害者ICTサポート総合推進事業では、障害者に対するデジタル機器の操作支援を行うパソコンボランティアの養成・派遣などの取組等を支援しています。

農林水産物の輸出促進

 2025年に2兆円、2030年に5兆円の輸出額目標の達成に向け、改訂された輸出拡大実行戦略に基づき、輸出産地・事業者の育成・展開、海外でのサポート体制の整備などを支援します。
 また、官民一体となった取組を更に進めていくため、2022年通常国会において、品目団体の組織化によるオールジャパンでの輸出力強化や輸出事業者に対する支援の拡充などを内容とする、輸出促進法等の改正案を提出し、成立しました。

みどりの食料システム戦略の推進

 持続可能な食料システムの構築に向け、「みどりの食料システム戦略」に基づき、中長期的な観点から、調達、生産、加工・流通、消費の各段階の取組とカーボンニュートラル等の環境負荷低減のイノベーションを推進します。
 本戦略を着実に推進するため、2022年通常国会において成立した「みどりの食料システム法」をはじめ、法律・予算・税制一体で現場の意欲ある取組を支援しています。

観光産業の高付加価値化

 新型コロナの影響への適切な支援を図りつつ、コロナ後を見据え、観光地域全体の魅力及び収益力の向上を図り、観光産業の高付加価値化を推進します。

沖縄振興策

 2022年5月15日に、沖縄の本土復帰から50周年を迎えました。沖縄は、成長するアジアの玄関口に位置付けられるなど、大きな優位性と潜在力を有しています。これらを生かし、沖縄が日本経済成長の牽引役となるよう、国家戦略として沖縄振興策を総合的・積極的に推進します。

PPP/PFIの推進

 公共の施設とサービスに民間の資金と創意工夫を最大限活用するPPP/PFIは、新しい資本主義における新たな官民連携の柱となる重要な取組です。2022年度から10年間の事業規模目標を30兆円と設定し、PPP/PFIが全国で自律的に展開される基盤を形成することを目指します。その早期実現を図るべく、特に、当初5年間を「重点実行期間」とし、「アクションプラン」に基づき、迅速かつ強力に諸施策を推進していきます。

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(3)カーボンニュートラルの実現・GXの実行
 2030年度46%削減、2050年カーボンニュートラルの目標実現に向け、単に、エネルギー供給構造の変革だけでなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる、経済社会全体の大変革に取り組みます。
 資源・エネルギーの安定的な供給・確保を大前提としつつ、官民連携の下、クリーンエネルギー中心となる脱炭素に向けた経済、社会、産業構造改革、いわゆるGX(グリーントランスフォーメーション)を実行していくことで、脱炭素という課題を我が国の成長エンジンへと転換し、持続可能な経済を作ってまいります。

GX(グリーントランスフォーメーション)への投資

 GXへの道筋の大枠を示したクリーンエネルギー戦略中間整理に基づき、2022年内に、今後10年のロードマップを取りまとめます。
 今後10年間で150兆円のGX投資を実現するため、GX実行会議を設置し、成長志向型カーボンプライシング構想を具体化していく中で、規制と支援を一体的に行うことで、投資を促進する方策などを具体化していきます。

再生可能エネルギーの導入促進

 再生可能エネルギーについては、S+3E(※)を大前提に、地域との共生を図りつつ、主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組みます。
 具体的には、再エネ普及のための送電網整備の加速化、電力系統用蓄電池の導入拡大などの投資、再生可能エネルギーの導入支援に取り組んでいます。
※安全性(Safety)を大前提に、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)のバランスを取り続けるというエネルギー政策の大原則

自動車の電動化推進

 2035 年までに新車販売で電動車 100%を実現するため、購入補助や充電・水素充てんインフラの整備により、クリーンエネルギー自動車の集中的な導入を図ります。
 車載用蓄電池については、国産生産能力を大幅に高めるため、国内生産基盤の確保に向けた大規模投資を促進します。
 さらに、カーボンニュートラルに伴う産業構造転換を図るため、部品サプライヤー、サービスステーション、整備拠点等の事業再構築を支援しています。

パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略

 2021年10月22日、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定しました。
 我が国の2050年カーボンニュートラルに向けたビジョン等を示すものとして、パリ協定の規定に基づき策定したものです。
 地球温暖化対策は経済成長の制約ではなく、経済社会を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるもの、という基本的考え方を示しています。

地域における脱炭素化

 2050年を待つことなく前倒しでカーボンニュートラル達成を目指す脱炭素先行地域を少なくとも100カ所創出することや、屋根置きなど自家消費型の太陽光発電や住宅の省エネ性能の向上などの重点対策加速化事業を進めること、さらには、株式会社脱炭素化支援機構を通じて、地域の再エネ事業に対して積極的に投資を行うこと等により、関係省庁が連携して、地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する地域脱炭素を推進しています。
 脱炭素先行地域については、2022年4月に第1回として26件を選定しました。また、7月から8月にかけて第2回を募集し、秋頃に選定結果を公表する予定です。
 重点対策加速化事業については、2022年7月までに22件の事業計画が策定され、支援を行っています。
 今後も、2025年度まで募集を予定しています。

サステナブルファイナンスの推進

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、3,500兆円ともいわれる内外の環境投資資金を呼び込みます。そのための金融市場の枠組みをつくり、我が国のグリーン国際金融センターとしての機能向上に取り組みます。

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(4)経済安全保障
 世界各国が戦略的物資の確保や重要技術の獲得にしのぎを削る中、我が国の経済構造の自律性の向上、技術の優位性ひいては不可欠性の確保を進め、国民の安全・安心を守り抜く。同時に、新たな経済成長を実現する。こうした経済安全保障の取組は、待ったなしの課題であり、新しい資本主義の重要な柱です。経済安全保障推進会議の下、省庁横断で、多岐にわたる新しい時代の課題に向き合います。これにより、我が国の経済安全保障を確立すると同時に、この分野に民間投資を呼び込み、経済成長も実現させます。

経済安全保障推進法

 経済安全保障推進法の着実な施行により、サプライチェーン強靱化への支援、電力、通信、金融などの基幹インフラにおける重要機器・システムの事前安全性審査制度、重要技術の研究開発推進、安全保障上機微な発明の特許非公開制度等を整備します。

半導体の国内立地促進

 戦略的な産業基盤を国内に確保するため、半導体の国内立地を推進する法案を国会に提出し、2021年12月20日に成立、2022年3月1日に施行しました。
 本法により、高性能な半導体等の生産施設整備等に関する計画の認定を受けた事業者に対し、新たに設置する基金からの助成等を実施することにより、事業者による生産施設整備への投資判断を後押ししていきます。

先端的な重要技術の研究開発支援
 我が国の技術的優位性を確保・維持するため、先端的な重要技術に係る研究開発や実用化を支援する基金を設け、人工知能・量子・バイオ・宇宙・海洋といった世界の未来にとって不可欠な分野における研究開発投資を後押しします。

重要土地等調査法
 国境離島や防衛関係施設周辺等における土地の所有・利用をめぐっては、かねてから、安全保障上の懸念が示されてきました。
 重要土地等調査法に基づき、土地等利用状況調査等を着実に進めます>(以上「内閣府ホームページ」より引用)




 政府は何人の国民に向かって政治をしようとしているのだろうか。内閣府の「成長戦略」という無駄に長い文を一読して、暗澹たる気分に陥った。そこに盛り込まれているのは「投資」とデジタル関係のカタカナ文字と若干のIT分野のアルファベットだけだ。決してすべての国民に向けた政策でもなく、そもそも国民の理解など当てにしていない自己満足に満ちた「成長戦略」策だ。
 しかも内閣府の連中は基本的に頭が弱いのか、デジタル化したらすべてが「上手くいく」と考えているようだ。デジタル化するにはIT機器に打ち込むデータとそれを分析してデータとして有効な形に纏める専門職と、データを打ち込む人たち、並びにデータ・システムを維持・管理する人たちの存在があって、初めて効果的に作動する。つまりデジタル化を推進するにはミスのないマンパワーが従前よりも必要になる。

 しかもデジタル化してIT技術を組み込んだ機器をより高度なものにすると、それだけ電気が必要になることを忘れてはならない。例えばガラケーとスマホで比較すると、通信中の消費電力はガラケーが普通0.5whなのに対してスマホは普通10.1whと20倍も多く電気を消費する。タブレットなら約27whとガラケーの50倍近く電気を消費する。
 カーボンニュートラルを掛け声にしているのに対して、政府が掲げる成長戦略は省エネに逆行する施策といわざるを得ない。しかも2035年にEV化するというが、現行の全国で使用されているすべての自動車がEV化されたなら、一体どれほどの電力が必要か、政府は推計しているのだろうか。そのための施設整備や送電線の取り換えなどにかかる費用が一向に予算計上されていないが、政府は12年後の完全実施に向けていかなる方策が用意されているのか。

 「国家戦略特区を活用したスーパーシティ、デジタル田園健康特区の推進」の段落においては特定の数ヶ所を「特区」として「スーパーシティ、デジタル田園健康」地域にするようだが、なぜ田園が健康と結びつくのかトント分からない。
 そこで農産物は「みどりの食料システム戦略の推進」によって生産されるという。農業生産の工場化といったものを想定されているのかも知れないが、それなら別に地方でやらなくても、大都市圏の消費地に近いビルで生産した方が輸送コストもかからないし、労働力の確保にも困らないだろう。第一デジタル環境は既に整っているではないか。

 土やミミズの力を借りて農業を行うのに、デジタル化など無用だ。機械化こそが望ましいし、そのための圃場整備は全国的にほぼ完了している。なぜ次々と目新しいメニューを出して生産現場を混乱させるのだろうか。デジタル化よりも地方にとって必要なのは従来から行って来た河川の浚渫や農業用水の整備など、「法定外施設」として国が維持・管理を放棄した赤線や青線を、再びしっかりと国の責任で保守・管理することではないのか。
 経済安全保障の項で最も重要なのは国内で産業サプライの再構築ではないか。それも早期に行う必要がありはしないか。高齢者となった各産業技術の「匠」たちの技を国内で継承するために、政府は積極的に中小・零細企業を支援すべきだ。喪われようとしてい膨大な「匠」の「知的財産」を守れないようでは「産業サプライを強靭なものにする」という方針は砂上の楼閣でしかない。現在日本が半導体分野で確たる地歩を築いているのも「匠」たちの技による部分が大きいことを理解すべきだ。「構造改革」で切り捨てて来た非効率で非生産的な「匠」の技を継承する懐の深さこそ、政府が公共投資で行うべき分野ではないのか。

 例えば半導体製造機械の核心的な部品にレンズがある。2nm半導体を製造する機器のレンズは地球規模に拡大して研磨誤差が2mm以下だという。それは到底IC制御装置付きの機械で出来るものではない。それこそ「匠」の技でなければ造れないし、だからこそ日本がその分野の世界シェアを独占しているのだ。
 いつまで政府はバリ協定とお付き合いするつもりなのだろうか。裾野の広い内燃機関自動車製造から玩具のような電気自動車製造にすべて切り替えて、現在の自動車産業が雇用している数百万人の雇用をどうやって守るというのか。かつて自動車の黎明期に動力競争で内燃機関に敗れた電気モーターを自動車の動力源に使うのは時代錯誤でしかない。しかも貯蔵の利かない電気を大量消費するのはエネルギー消費の効率化に逆行するのではないか。それなら同じ二次エネルギーの水素を利用する方が遥かに高効率的だ。そして日本が世界最先端の技術を有している内燃機関やハイブリッドの技術を産業界から駆逐することもない。日本は電気社会ではなく、水素社会を目指すべきだ。その原料なら日本領内に山ほどある。日本近海の地下にあるハイドロメタンの利用技術を研究開発すれば良いし、そうした技術開発は既に始まっているのではないか。CO2さえ出さなければ良い、というのならそうした政策で日本のすべての国民が幸せになる政策を最優先すべきではないか。

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