逆噴射する習近平氏

「失業対策」にひそむ闇
 中国がこのほど失業問題対策として打ち出した「以工代賑」政策が、いろいろと物議をかもしている。
 2月1日に、中国国家発展改革委員会が公布した修正「国家以工代賑管理弁法」に「人の手でできることは、出来るだけ機械を使用しない」といった新しい内容が加えられたからだ。
 「以工代賑」とは、中央政府によるインフラ工事などで雇用を創出する貧困・失業対策政策で、1984年以降、繰り返し行われ、すでに1750億元以上が投じられている。この政策のガイドラインとして発布された管理弁法は2014年に修正されてのち、今回改めて修正され3月1日から施行されることになった。8章52条からなる。
 当局によれば、今回の修正は専門の資金とプロジェクト管理、監督検査などの方面で具体的な要求を盛り込み、新時代の新たな旅路のプロセスにおける以工代賑政策の概念、制度ルール、工程、管理要求をレベルアップして改善したという。

 全体として、中央が統括し、省が総合責任を負い、市県郷レベルで実施される。
 主に農村部のインフラ建設プロジェクトで、中央が投資計画の基本内容を規定し年度投資計画を省レベルに伝え、定期的に調整し、状況を監視監督する。
 プロジェクトごとの資金の範囲、建設領域内で、発展が遅れた地域に資金を振り分け、公益性のあるインフラ建設や産業発展に合致したインフラ建設を行う。目的は民衆を建設労務に参与させ報酬を分配することで、資金の内訳は労務報酬が最大であることが強調されている。

「ニューディール」に似ても似つかない・・・

 またプロジェクト実行に当たり、民衆を組織し、技能研修を行うことも要求されている。
 以工代賑投資計画の対象となるインフラプロジェクトとは、主に交通、水利、エネルギー、農業農村、地方都市建設、生態環境、災害後復興など。プロジェクト前期の任務としては、まず民衆を組織し、労働技能研修や安全研修をうけさせ、労務報酬を管理、支払うための具体的な要求を明確にする、とした。
 また、このプロジェクトで、ニセの労務組織を作るなどして労務報酬をだまし取るような詐欺行為がないよう厳しく管理、総合評価するメカニズムも作る、としている。
 米国の1930年代のルーズベルト大統領によるニューディールの一環で取られた失業対策に似ている、と言う人も、日本の技能研修制度に似ているという人もいる。
 このプロジェクトは貧困弱者層に対する特殊な救済政策であり、これまでも継続して行われてきた。2022年は500万人の民衆を地元で就業させ、一人当たりの平均増収は8000元を超えた、とされる。
 2023年版以工代賑と2014年版との違いは、新たな総合救済モデルを提示している点だ。単に貧困層に労務報酬を出すだけではなく、1.公益性インフラ建設+労務報酬+技能研修+公益性のある管理職ポスト開発をセットにしたモデル、2.産業発展に合致するインフラ建設+労務報酬+技能研修+資産の割引株式化配当をセットにしたモデルによって、管理職に出世したり株式保有の機会もある。
 また技能研修を行うことで、プロジェクト終了後も、習得した技術によって新しい仕事を探すことができる。さらに労務報酬が投資全体に占める割合をもともとの15%から30%以上に引き上げた。だが、26条と28条に含まれる内容が物議をかもしている。

地方組織の「腐敗」と「利権」

 26条では、以工代賑プロジェクトは競争入札で事業者を選ばなくてよく、いかなる組織、個人も入札を強要してはならない、とある。
 これは建設許可、手続きの簡素化のためもある。
 さらに28条では、県レベルの発展開発当局は、以工代賑プロジェクトの事業組織、施工組織が、「人の手でできる部分は機械を使用せず、民衆を労務者として組織し、専門の施工業者チームを用いない」という要求に従うよう指導する、とある。
 競争入札を行わない、ということは上層部が事業者を指定するということであり、その決め方には必ず癒着や汚職の問題が起きるだろう、という懸念の声がある。
 競争入札しないプロジェクトとは、もともと次のように決められていた。
1.一般に国家安全、国家機密に関わるか危険な災害救援が伴うもの
2.貧困救済資金で行われる以工代振で出稼ぎ農民を雇用する場合
3.施工主が求める技術が特定及び専門性の高い技術である場合
4.施行企業が自ら建設し自ら用いるプロジェクトで施工企業がプロジェクトの要求に合致している場合
 しかし、これまでの以工代賑では「複雑な技術などが必要で適宜入札行われるプロジェクト以外は、入札制度を実施しなくてよい」とあり、実際は適宜入札が行われてきた。
 入札を一切しなくてよい、となると、おそらくは郷鎮、村の幹部たちのコネによる業者が、貧しい村民を組織し研修し、報酬を管理することになる。
 きちんと管理されているかを審査する組織も結局、共産党末端組織となると、従来からある汚職構造の中に落とし込まれることになるだろう。
 そもそも、入札しても様々な汚職が起こるのだから、こうしたプロジェクトが地方のレベルの低い共産党末端組織の利権になることは避けられまい>(以上「現代ビジネス」より引用)




 習近平氏が打ち出す政策は悉く時代錯誤としか云いようがない。だが、彼が目指す人物像が毛沢東で、毛沢東を超える現代の英雄になりたいのが彼の願望だというから度し難い。
 中国ウォッチャーの福島香織氏(評論家)が「習近平の逆走が止まらない…「肉体労働」を奨励する中国「貧困・失業対策」の時代錯誤な中身」と題する論評で毛沢東を理想とする習近平氏の幼稚さを描き出している。毛沢東時代への回帰策として彼が打ち出した「人民大食堂」構想は一月と持たずして廃止されたようだし、失業が蔓延している中国社会を立て直すために急遽実施した「中国版ニューディール政策=以工代賑」も矛盾だらけで早くも躓きそうだ。

 以工代賑が時代錯誤というよりも経済減速を無視しているのは、中国国家発展改革委員会が公布した修正「国家以工代賑管理弁法」に「人の手でできることは、出来るだけ機械を使用しない」といった新しい内容が加えられたからだ。それは生産性の向上を図るよりも、生産性の低下を奨励する、という馬鹿げた政策でしかない。
 習近平氏の周囲には経済政策に明るい人材が皆無なのかと絶望的になる。確かに経済当局は隠蔽しているが、50%を超える失業率と若者たちに蔓延している「躺平主義」を打破するためにも仕事を用意しなければならないため、当局が機械化よりも人海戦術を採用したいのは理解できる。

 しかし福島氏が看破しているように「複雑な技術などが必要で適宜入札行われるプロジェクト以外は、入札制度を実施しなくてよい」とするなら「郷鎮、村の幹部たちのコネによる業者が、貧しい村民を組織し研修し、報酬を管理することになる」から、末端の共産党員たちの利権の温床になるのは自明の理だ。
 習近平氏がいかなる根拠を手にして、政策を発案し決定しているのだろうか。中共政府当局が発表する統計数字はすべて当てにならない。GDP成長率はもちろんのこと、人口統計も当てにならない。ただ相手がある貿易統計や電力供給統計などの数字は誤魔化せないため、当てにして良いだろう。

 習近平氏がなすべきことは、まず基礎的なすべての統計数字を正確なものにすべきだ。政策決定の基礎となる人口統計は全国一元化した正確な戸籍制度を整備することから始めなければならないたろう。さらに工業基準を定めて工業製造と製品の品質水準を確保し、統一したものにすべきだろう。さもなくばMADE IN CHINAが「安かろう、悪かろう」の代名詞から脱却することは出来ない。
 中国は政治体制を含めた近代化を急ぐべきで、中世さながらの独裁体制を謳歌している場合ではない。中国経済は崩壊している。国民の暮らしは困窮の度合いを強めるのは火を見るより明らかだ。何処の国であろうと、政治は国家と国民のためにある。独り習近平氏のためにあるのではない。

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