2023台湾有事論が「プロレスごっこ」だったかは10か月後に結論が出る。

「二つの中国政策」は即有事?
 「二つの中国政策」とは、現在の共産主義中国を「一つの中国」として承認する態度を根本的に改め、「台湾を明確に国際法上の国家」として認めるということである。私自身も、これが本来の正しい姿だと考えるが、共産主義中国にとっては絶対に受け入れられない考えである。したがって、米国がこの政策転換を行うときには「ほぼ確実に有事を招く」から、運用には慎重にならざるを得ない。
 特に、前記「与しやすいバイデンがいる間に~習近平の台湾侵攻が2023年の理由」で述べたように、バイデン氏が大統領でいる間の中国との「戦争」は大いに米国にとって不利である。
 できることなら、2024年の大統領選挙(まさかバイデン氏の再選は無いとは思うが……)の結果を待ちたいと考えているのではないだろうか。
 日本経済新聞1月28日「米空軍高官『台湾有事は2025年』 内部メモで準備指示」で報道されているように、航空機動司令部のマイク・ミニハン司令官が2025年の台湾有事の可能性に触れた。あくまで個人的見解とのことだが、逆に言えば、2024年の大統領選挙を終えてから、「台湾有事」に対処したいという米国側の願望も含まれているのではないだろうか。

石油の代わりに半導体で追い込む

 実際、現在急ピッチでTSMCの半導体工場が日本、米国、ドイツに移転する動きが加速している。しかしすぐに工場が完成するわけではない。
 例えばTSMCの熊本工場の出荷開始は2024年12月が予定されている。すでに着工された米国アリゾナ第1工場でも2024年に生産が開始される見込み(第2工場は2026年の予定)であり、ドイツでは2024年に工場の着工を検討している。
 つまり、この半導体供給という側面でも、米国としては「台湾有事」を2025年以降に引き伸ばしたいのだと思われる。
 ただし、「石油の代わりの半導体」で中国を追い込むこともすでに始めている。
 例えば、日本経済新聞1月28日「先端半導体の対中輸出規制へ 政府が導入調整、日米協調」という形で、日本やオランダを巻き込む形で中国への「半導体包囲網」が形成され始めている。
 半導体では完成品ばかりが注目されるが、2021年5月9日公開「日本の『お家芸」製造業、じつはここへきて『圧倒的な世界1位』になっていた…!」3ページ目「製造装置もシリコンウエハーも……」で述べたように、半導体製造装置分野では、日本と米国で市場の大部分を押さえ、さらにオランダを加えれば上位15社中13社を占める。
 2021年7月24日公開「なぜ海外企業は『日本の製造技術』に追いつけないのか? そのヒントは『戦艦ヤマト』にあった…!」3ページ目「戦艦大和の時代からの技術」で触れたディスコのように、日本の製造技術は「歴史的に蓄積」されたものであるから、簡単には真似できない。
 要するに「インテル入ってる」ならぬ「ニッポン入っている」のが半導体産業全体を俯瞰したときの構図なのだ。
 ちなみに、2019年7月24日公開「対韓輸出規制でわかった、『ニッポンの製造業』が世界最強であるワケ」冒頭で述べた、たった3品目の「輸出管理強化」という「指で押す」程度のことでさえ、韓国で天地がひっくり返るほどの大騒ぎになったのである。
 日本の半導体(製造装置等)技術は、米国も注目する安全保障上の核心だが、米国に協力することは、有事の際共産主義中国と全面対決に臨むという選択をするのと同じである。
 産経新聞2月4日「世界に強み、日本の半導体製造装置メーカーに『新戦略』の必要性 対中規制強化」の通りだが、我々はそのリスクをきちんと把握すべきである。

なぜ米国は中国をたたくのか?

 1991年のソ連邦崩壊以降、対ソ包囲網というNATOの本来の目的は失われたが、米国はNATOの東方拡大をやめなかった。一度でも米国と並び立った強国は徹底的に叩き潰すのが米国のやり方だからだ。
 1985年頃からのいわゆる「ジャパン・バッシング」も同じ構図だ。第2次世界大戦とその後の占領で徹底的に叩き潰したはずの日本が、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと浮かれたのが気に入らなかった。軍事的にはとるに足らぬ存在であったが、経済面の脅威として徹底的にたたかれたのだ。
 そして、少し前まで「チャイナ・アズ・ナンバーワン」と浮かれていた共産主義中国は、核兵器を400発も持つとされる軍事的にも強大な国だ。早くたたき潰さなければ米国の立場が危ういと考えるのも自然だ。
 したがって、実は「台湾有事」は「共産主義中国の都合」と「米国の都合」の2つの側面から考えなければならない。
 「共産主義中国の都合」については、前記「与しやすいバイデンがいる間に~習近平の台湾侵攻が2023年の理由」などで詳しく述べたが、「米国の都合」とは「台湾有事」を口実に共産主義中国を叩き潰すことである。
 中国の都合では、年内にも侵攻するか、それとも2024年の台湾総統選挙も絡めた「平和的統一」の可能性が高い。
 逆に米国の都合では、TSMCの工場移転にめどがつき、2024年の大統領選挙が「無事」終わるのを見届けた後、お家芸で中国を追い込んで手を出させるというシナリオになるのではないだろうか>(以上「現代ビジネス」より引用)




 大原 浩氏(国際投資アナリスト)は「中国の都合では、年内にも侵攻するか、それとも2024年の台湾総統選挙も絡めた「平和的統一」の可能性が高い」と、中国の台湾進攻が差し迫っているかのように煽り立てている。しかし投資アナリストは投資企業から食い扶持を得て一般人に投資を勧める役回りだから、大原氏が「戦争近し」と騒ぐ理由が分からないわけではない。
 投資を勧めるには「投資すれば儲かる」という銘柄やその理由を説明しなければお客は投資しない。そのためには「戦争が近い」と尤もらしく云えば、勧める銘柄もその理由も簡単に論理的に説明できる。つまり戦争さえあれば、「戦争銘柄」は古典的な投資教本に書かれているように、頭を使わなくても誰にでも説明できるし理解しやすい。だから投資アナリストは絶えず戦争や天変地異、果ては地球温暖化まで投資勧誘の材料にするのだ。

 だから台湾有事を投資アナリストが主張するのを真に受けてはならない。同様に独裁者や軍部が戦争が近いと叫ぶのを真に受けてはならない。なぜなら彼らにとって戦争が近いことが存在理由の必要条件だからだ。
 独裁者は外敵から国民を守ってやるから政治権力を全て俺に預けろ、という無言の「契約」で成り立っている。それは宗教指導者と称する独裁者も同じだ。だから独裁者が君臨する国は
絶えず戦争相手を求めて近隣諸国を恫喝している。

 同様に軍部も戦争が彼らの存続の必要条件だ。戦争の心配がない平和な地球になったなら、彼らは真っ先にリストラされるだろう。「戦争近し」と国民が感じ取れば軍事予算は増加し、軍需産業は軍部の意向に従うようになるし、政治家までも軍部の鼻息を窺うようになる。
 現にマスメディアが「台湾有事近し」と騒ぎ立てたお蔭で、国民が防衛予算倍増を受け容れるようになった。もちろん「戦争状態」が必要不可欠な存在理由の中国共産党と習近平氏が「台湾統一」と騒ぎ立てていることに起因するのだが、奇しくも中国の独裁者と日米軍部の利害関係が一致して「台湾有事近し」の大合唱になっている。大原氏もその大合唱に一役買って「2023年に有事勃発か」と台湾有事を煽っている。

 しかし、心配は不要だ。中国の現状は台湾進攻を開始する状態にない。ロシアがウクライナに侵攻した一年前、ロシア経済は絶好調だった。プーチンの取り巻きのオルガルヒたちも「我が世の春」を謳歌していた。ただプーチンは国家財政が怪しくなっていることは分かっていた。そのため、年金支給年齢を引き上げようとして国民が大反対をしていた。
 中国は実際に(国営企業の)退職者に支払っている医療保険料を約5,000円から1,500円ほどに引き下げて退職者たち一万人が抗議デモを起こしている。もちろん中央政府や地方政府の公務員給与を約40%もカットしようとしている。国民に課される税金は既に五公五民を超えて国民生活を直撃している。こうした状況を察知して、欧米諸国の企業は陸続と中国から撤退している。

 習近平氏は手に入れた三期目の切符を途中下車して、前途無効にしようとは決して思わないだろう。任期満了まで勤め上げ、さらに四期目を目指すだろう。そのためにも「自分は決してプーチンの轍を踏まないゾ」と固く決意しているだろう。
 独裁者でいればこそ、莫大な私財が形成できる。戦争を始めれば米国の金融機関に蓄えた資産が没収されるし、米国で暮らしている子供たちの身の安全が危うくなる。もちろん中国共産党の幹部たちの多くが米国の金融機関に蓄財し、子弟の多くが米国で暮らしている。彼らは深層部では米国の支配層とガッチリ握手している。習近平氏が「台湾を(武力)統一する」と叫び、米国政府が「台湾有事になれば乾分の日本と一緒に駆け付けるゾ」と応じているのは国家同士の「プロレスごっこ」を演じているに過ぎない。両国政府に輪をかけて騒ぐのが投資機関の雇われアナリストであり、彼らから莫大な広告宣伝費を受け取っているマスメディアだ。
 国民はそうした構図にあることを理解して、日本の未来の選択を誤らないようにしなければならない。

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