真剣に日本防衛の議論をしよう。

<予想を覆す苦戦を強いられるロシア、台湾情勢への影響──米専門家2人に聞くウクライナ戦争の教訓>
 「将軍は常に過去の戦争を戦う」という格言がある。だが目を向けるべきは、これからの在り方だ。ウクライナ戦争は、世界秩序をどんな形で再編成しているのか──。
 イラク・アフガニスタン駐留米軍司令官を務めたデービッド・ペトレアス元CIA長官と、ニューアメリカ財団CEOで元米国務省政策企画本部長のアンマリー・スローターに、フォーリン・ポリシー誌のラビ・アグラワル編集長が話を聞いた。
◇ ◇ ◇
――アメリカ史上、最長レベルの戦争で軍事戦略を指揮した将軍として、ウクライナ戦争に意外な点はあるか。

ペトレアス 意外だったことは多い。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、これほど(第2次大戦当時の英首相ウィンストン・)チャーチル的な人物であるのには感心し、少しばかり驚いた。
 戦略的リーダーは目的を正しく把握し、効果的に伝え、その遂行を監督し、どう改善するかを決定しなければならない。さらに、このプロセスを繰り返す必要がある。(ゼレンスキーは)見事にそれを実行している。一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はもちろん、そうではない。完全に失敗している。
 ロシア軍の無能さには本当に驚かされた。欠陥があるのは分かっていたが、(ウクライナ侵攻前の)演習期間に何もしていなかったらしいという事実は意外だった。
 普通なら、ただ戦車を送り込むようなことはしない。戦車の前方に歩兵隊を配置し、対戦車ミサイルの攻撃を防ぐ。迫撃砲などで援護し、防空体制を敷き、電子戦で相手の通信を妨害する。進軍中に障害物や爆発物に遭遇する可能性に備えて、工兵隊や爆発物処理隊も派遣する。だがロシア軍は絶望的なほどお粗末だ。
 対ウクライナ国境地帯での演習期間に何をしていたのか、謎だ。私だったら、研ぎ澄まされた状態で侵攻に臨めるよう、訓練していただろう。
 それだけではない。作戦計画が極めて不適切だった。指揮統制が構造的に混乱していて、現代化も衝撃的なまでに進んでいなかった。ロシア軍の作戦行動は、予測していたよりひどい。準備期間があれほどあったことを考えると、本当に驚きだ。

――アンマリー、あなたにとって意外だったことは?

スローター 最大の驚きは、特にインド、ブラジルや南アフリカの反応だ。ジョー・バイデン米大統領が掲げる「民主主義国と独裁国の戦い」という新たな構図の下、アメリカはこれらの国に積極的に接近してきた。太平洋地域で中国と向き合うなか、インドに対しては、クアッド(日米豪印戦略対話)などの数多くの話し合いに引き込む努力を傾けてきた。
 それでもインドは立場を明確にすることをあからさまに拒絶し、今もロシア産石油を輸入し、ロシアから武器を購入する用意もある。欧米の大半のアナリストの評価よりも、はるかに大きな変化が世界秩序に起きていることを示すシグナルだ。
 20世紀の非同盟運動とは事情が異なる。インド、ブラジル、南アフリカ、ASEAN諸国という重要国の一団が「これはもう私たちの戦争ではない。私たちが本当に懸念しているのは、私たち自身の地域内紛争だ」と主張している。

――軍事面の話に戻るが、世界各国はウクライナ戦争からどんな教訓を学んでいるのか。

ペトレアス 重要なのは、これは未来の戦争ではないと認識することだ。むしろ、冷戦の最盛期に逆戻りしたような戦いだ。私が旧東西ドイツ国境地帯に駐留する米軍旅団の少佐だった当時、戦争が勃発していたら、こんなふうだったのではないか。
 未来型の戦争の要素はあるが、非常に限定的だ。例えば、アメリカがウクライナに供与した高機動ロケット砲システム(HIMARS)は80キロ先の食卓を標的にできる。これは大きな変革だ。ロケット砲の射撃目標を観測するのは、今やドローン(無人機)だ。とはいえ、これはインド太平洋地域で紛争が発生した際、想定される国際的な情報・監視・偵察活動の在り方とは異なる。
 これから起きる劇的な変化として考えられるのは、無人システムの利用の激増だ。そうしたシステムは遠隔操作型に、それどころかアルゴリズムで管理されるものになるかもしれない。そうなれば(攻撃や殺害の)最終的判断は、マシンに状況判断や決断を行う能力を与えるアルゴリズムの設計者が下すことになる。
「見えるなら攻撃可能で、攻撃できるなら殺害可能だ」という冷戦時代の格言がある。では、全てが可視化されたら? 地上や上空、海上だけでなく、海中や宇宙空間も無人システムでカバーできる未来を想像してほしい。見えるものは攻撃できるし、全てが見えるようになる。その意味については、ごく慎重になるべきだろう。現実に待ち受けている未来は、今とは全く違うもののはずだから。

――ウクライナ戦争に対する中国の見方はどうか。中国はどんな教訓を得ているのか。

スローター 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は「友人にこんなことをされるなら、敵だとどうなるか」と思っているのではないか。現状はほぼ確実に、わずか1年ほど前、北京冬季五輪開催に合わせて訪中したプーチンと会談し、無制限のパートナーシップを約束し合ったときに習が思い描いたものとは懸け離れているからだ。
 ロシアの行動のせいで、中国は極めて難しい立場に置かれている。今や(中ロは)とても居心地の悪い関係だ。この点で、米政府の「民主主義国対独裁国」という戦略には疑問を感じる。アメリカは中国をロシアの側に押しやっているからだ。
 だが実際には、欧州各国が気付いているように、中国がコストに目覚める確かなチャンスがある。親ロ路線が経済制裁の面や、ロシアの行動を後押ししているイメージがもたらすコストだ。アメリカはより微妙な戦略を採り、中国と接触を図る方法を探るべきだ。
 台湾に関しては、中国の思惑を予測すべきではない。台湾を(防空ミサイルで)「ハリネズミ化」して、少なくとも攻撃した際の中国のコストを上げることは可能だ。非常に効果的な兵器を島全体に擁することで、台湾は中国と中国軍、中国社会にとってのコストを引き上げられる。さらに、極めて効果的な制裁計画があれば、習が(台湾侵攻を)先延ばしする理由になるだろう>(以上「NEWS week」より引用)



 21世紀初期に起きたプーチンの戦争はロシアの敗北で終わろうとしている。たとえ敗北がないとしても、決して勝利できないうちにプーチンは政治生命を失うだろう。世界第二位の軍事力を保有すると思われたロシアにしては意外な結果だ。
 その原因はぺトレアスの分析した通りのものだろう。つまりウクライナのゼレンスキー大統領が予想外に有能だったことと、プーチンが呆れるほど無能だったことだ。さらにロシア軍が周到な戦術を用意しないまま、闇雲に戦車を先頭にウクライナ領へ攻め込んだことだ。

 しかし引用した記事の本質はプーチンやロシア軍の無能を嘲り笑うことではなかった。最後の質問に答えてスローターが云う「戦争のコスト」こそが引用記事の本質だ、と。戦争が掛けたコストに見合わない、と分かっていれば抑止力になるという理屈だ。
 敵地攻撃能力が抑止力になるのではなく、ハリネズミのような防衛力こそが抑止力になる、という発想は目新しい論理だ。そういえばサバンナで小型動物でしかないハリネズミが種を保存しているのは肉食獣から身を護る鋭利な針で身を包んでいるからだ。

 台湾防衛に関して最終章で「台湾に関しては、中国の思惑を予測すべきではない。台湾を(防空ミサイルで)「ハリネズミ化」して、少なくとも攻撃した際の中国のコストを上げることは可能だ。非常に効果的な兵器を島全体に擁することで、台湾は中国と中国軍、中国社会にとってのコストを引き上げられる。さらに、極めて効果的な制裁計画があれば、習が(台湾侵攻を)先延ばしする理由になるだろう」と述べているが、スローター氏の発言は示唆に富んでいる。
 日本防衛に必要なのは敵地攻撃能力ではなく、日本をハリネズミ化することだ。その試みは既にイージス艦などの配備により一部実施されている。さらにハリネズミ化を進めるなら、ミサイル開発ではなくレーザー砲開発に力を注ぐべきだ。地上に設置するのならレーザー砲を支える電力をはじめとする、周辺機器を整えることが可能だ。

 レーザー砲に必要な巨大な電力を絶えず発電し続ける必要はない。その代わり巨大容量のコンデンサーを開発して、一個のコンデンサーがレーザー発射一回分の電力を賄えるようにしておけば、コンデンサーの数が「弾」の数であって、百個ほどのコンデンサーを用意すれば、発電能力がレーザー砲発射に必要な電力の1/100の発電能力で足りることになる。
 レーザー砲を百発発射する間に、最初に発射したコンデンサーに充電できれば良いわけだ。その間に別つの休止していた発電機で発電を開始すれば良い。そうしたシステムにしておけば、無駄に巨大な電気を常に発電する必要はないだろう。

 日本の防衛に何が必要なのか。真剣に検討すべきではないか。米国のご機嫌取りに必死になって、日本の防衛のあり方を見失ってはならない。そして他国の防衛産業の頼り切った愚装備を整える危険性を絶えず考慮すべきだ。
 もちろん食糧安全保障こそが日本が整えるべき防衛課題の最優先だ。そして少子化対策も日本の防衛にとって欠かせない。防衛産業を含めた国内産業育成が喫緊の課題なのは云うまでもない。

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