プーチンは欲望のままに、勝てない戦争にロシア国民を引き摺り込んでいる。

<2022年2月24日のロシア軍による東部ウクライナ・ドンバス地域への侵攻からほぼ1年近くがたった。この戦争はどうなるのだろうか。西側の大手メディアは第2次世界大戦中と同じように、都合のいい情報しか流していない。もちろん、東側のメディアもその点では同じだ。戦争状態は、かくも人間を異常にする。それは「飢えたガチョウは食べ物の夢を見る」のたとえ通りだ。
 太平洋戦争末期、毎夜の空襲警報の最中、人々はラジオから流れる「わが軍大勝利」の報を聞きながら、本当に勝利を確信していたのだろうか。今、キーウ(キエフ)は大量のミサイル攻撃でインフラが壊滅的状況にある。その中で、彼らはウクライナ戦争の継続と勝利を本当に信じているのだろうか。

ロシアの猛攻で戦線崩壊も

 西側でも、冷静に物事を見ている人々はいる。もちろんあえてこうした情報を客観的だとはいわない。ただし、一方的見解を修正するには、意外にいい情報だ。要するにそうした情報を知ることで、論理的つじつまがあうからである。そうでない情報は、プロパガンダと思ってよい。
 こうして今の状況を見てみると、少なくとも、戦線のフロントラインは東部ドンバスから南部ヘルソンにかけて膠着状態だといえる。それはロシアが併合した地域をせっせとロシア国家に編成替えしていて、大規模な攻撃を控えているからだ。
 ただし、ウクライナ軍は戦略上きわめて重要な基地、ドネツクのバフムートでロシア軍の猛攻で崩壊する可能性が高い。交通の要衝であるこの地を失えば、フロントの状況は一変し、戦争は一気にウクライナにとって不利になるかもしれない。
 肝心なウクライナ軍は、まず兵員の数において十分ではないということだ。戦争が始まった時点での両軍の兵力を見てもわかるとおり、ウクライナ軍は訓練を受けた常備軍がかなり手薄になっている。ロシアは、2023年早々にも行われるとされる猛攻に向けて、フロントラインに70万人を超える軍隊を配置しているという噂もある。
 このまま戦争を継続すべきなのか。ウクライナのゼレンスキー大統領が2022年末にワシントンに行ったが、これはアメリカ軍への援助要請だけの問題ではないと思われる。すでに彼は、ウクライナ内部で政治権力を失いつつあるとも言われているからだ。とりわけ苦戦する軍とゼレンスキーとの関係はよくない。
 戦争は兵器で勝つのではない。それを使える兵員がいないと武器は有効ではない。武器をNATO(北大西洋条約機構)から手に入れ、「ロシア対ウクライナ」の戦争を「ロシア対NATO」にしたいというゼレンスキーの思惑はわかるが、そうすればヨーロッパ、とりわけ東ヨーロッパは戦場となる可能性が高い。東欧にとっては、それは避けたい。これは、この戦争をどう位置づけるかという問題にかかっているといえる。

戦争の原因を振り返る

 少なくともこの戦争は、ソ連崩壊後独立した旧ソ連地域が、ロシアから完全に離れられるかどうかという問題に発端にあった。ソ連という国の中に組み込まれていた共和国は、経済、軍事、エネルギー、言語、教育、文化、さまざまな領域において、ロシアと密接な関係にあった。独立したからといって、そこから簡単に出ることはできない。
 とりわけウクライナ東部の工場地帯は、ロシアの工業地帯と1つのコンビナートをなしていた。原料、エネルギー、生産、販売市場など密接に1つの地域をなしていたのだ。
 この地域が2つの国に独立するからといって、ウクライナ側の工業地帯がロシアから独立できるわけではない。かつて旧東ドイツはソ連・東欧の工業基地であったが、ベルリンの壁崩壊以後、東欧社会と縁が切れたことで一気に衰退した。
 東ドイツは当初、西ドイツとは別の国として独立するつもりであったが、それがこれにより不可能となり東西ドイツ統一になったことは、あまり知られていないが、事実である。
 ウクライナの工場地帯を西側地域に引き寄せるには困難が多い。その一つがエネルギーである。原子力や天然ガスはロシア頼みである。工業製品もロシアと一体化していて、西側でそれが簡単に売れるわけではない。これはすべての東欧地域が抱える現実的問題である。
 軍事問題となると、よりいっそう複雑である。東ドイツでは、ソ連軍の全面撤退というシナリオが施行されたが、核基地をもっていたウクライナは簡単にはいかなかった。ウクライナは核を持たない国となり、ソ連の施設は撤収されるが、ウクライナがロシアにとって重要な要衝であることは変わりがなかった。それは黒海への軍港がそこにあるからである。
 とくにウクライナ南部地域には多くのロシアの軍事基地があり、ロシア人が住み着いていた。ウクライナ軍も独自の軍を1991年には設立させるが、武器や軍事施設は旧ロシアのものであった。アメリカに接近することで急造の新しい軍をつくっても、それがすぐさまうまくいくわけではなかった。
 また一方で、この30年で進歩したロシア製の武器を購入することもできず、西欧に比べてだけでなく、ロシアに比べても軍事的に貧弱なものになっていたことも、確かである。

言語差別は少数民族を傷つける

 言語問題も、大きな要因となっている。ソ連から分離したラトビアやエストニアでも、ロシア語を話す少数民族に対する言語差別が問題になっている。言語を統一することで国家を統一させることが、いかに少数民族を傷つけるかという問題は、世界中にある問題だ。義務教育から大学教育までどの言語を使うかで、排除された民族はあらゆる意味で市民権を失う。
 ウクライナ出身でハーバード大学のウクライナ史研究家のセルヒ-・プロヒは、『ヨーロッパの門 ウクライナの歴史』(Serhii Plokhy,The Gates of Europe. A History of Ukraine,2015)の中でウクライナ語によるウクライナ統一を強調している。一方で、ウクライナ政府がウクライナ語以外を認めない政策をとったことが、大きな反対運動を起こしたことについては、あまり言及されていない。この書物は西欧から見たウクライナに関するもっとも都合のよい歴史書といえるかもしれない。
 元スイス軍の職員で平和維持活動に従事した、ジャック・ボーの『オペレーションZ』(Jacques Baud,Operation Z,Max Milo,2022)は、この問題をウクライナ戦争のもっとも重要な要因だとして詳しく取り上げている。彼には、『フェイクニュースに支配される』(Gouverner par Fake News,2020)という書物もあり、西側の一方的な情報操作に極めて批判的だ。
 とりわけこの書物では、中東戦争での情報作戦について書かれているが、すでに西欧社会自身が、プロパガンダの虜になっていることが暴かれている。
 ボーによるとこうだ。少数言語に対する配慮のない旧ソ連邦の独立国の問題は、中国のウイグル問題と似ているという。とりわけウクライナ語がエリートと見なされる民族の言語として、下位言語と見なされるロシア語より優越しているという民族主義者の動きが、ウクライナ語のみの公的言語化を促進したという。
 これらの集団はネオナチともいわれているが、彼らの攻撃のターゲットはロシア人だけではない。ウクライナ人よりも劣ると目されているユダヤ人も含めたさまざまな少数民族も攻撃に対象になっているのだ。
 アゾフ軍団で有名になったアンドリー・ブリツキーは、「当面の、わが民族の歴史的使命は、生き残りをかけた最終的十字軍に白色人種を送り込むことだ」(前掲書54ページ)と述べたとも言われている。

ウクライナ語の公的言語化が火種に

 2014年2月23日、ロシア語とウクライナ語を公的言語としていた法律が廃棄されたことが、決定的だったという。それがドンバスやクリミア地域での住民の抵抗運動を導いた。
 この運動の支援に、さまざまな支援団体が参加したのだが、そこにセルビアの「ヨバン・セヴィッチ」グループなどのさまざまな右派グループがいる。そんなグループの存在が、「ネオナチはドンバス側である」という西側の批判につながっているともいう。
 実際、東欧の国のいくつかの左右の集団が、ウクライナの少数民族弾圧に抵抗するために参加したことは確かである。ハンガリーの「聖ステファン」、ポーランド右派の「ファランジュ」、スペインの左派「カルロス・パロミーノ」、イスラエルの「アリヤ」などである。とりわけ抵抗運動は、南部地域に集中していた。
 南部といえば、ロシア人だけでなく、ユダヤ人、トルコ系、チェチェン系などもいる地方である。この戦争に参加している非ロシア系義勇軍が、ロシア側にも多いのはこうした事情による。
 ウクライナ問題は、当初はこのウクライナにおける非ウクライナの処遇を巡る比較的小さな問題にすぎなかった。しかし、それは一方で東方へ拡大するNATOという問題へと発展している。
 1699年、17世紀最後に結ばれたカルロヴィッツ条約(当時のオスマン帝国とヨーロッパ諸国との間に結ばれた講和条約。オスマン側が初めて、ヨーロッパに領土を割譲することになった)以後、西側の東進は長く続いている。それを資本の文明化作用、人権と民主主義の拡大という美名で呼ぶかは別として、東欧・ロシア地域を混乱に陥れていることは変わりがない。
 今や問題はウクライナの問題ではなく、NATOとロシアという問題、いやそれ以上に、西側と非西側、先進国と非先進国との問題へと発展してしまっている。第3次世界大戦を恐れるのは、こうした拡大があるからだ。

世界全体が対立の時代に

 GDPの規模からから見て、ウクライナ単体でのロシアへの勝ち目はない。だからウクライナは西側を引き込むしかない。しかし、そうなると世界大戦とまではいかなくとも東欧を巻き込むことになる。それは東欧諸国がもっとも恐れていることだ。
 ポーランドへ打ち込まれたロシア製ミサイルの一件は、一瞬ひやりとさせられた。アメリカは慌ててロシアからの攻撃ではないと発表し、ウクライナ軍のものだと断定したが、戦争の拡大を恐れる以上、それは当然のことであった。
 ウクライナがモスクワを攻撃することも懸念されている。ウクライナ問題から、本格的ロシアとの全面戦争になり、それがヨーロッパに飛び火する恐れがあるからだ。
 とにかく急がれることは、停戦合意だろう。ただし、すでにロシアに併合された地域を取り戻すことは不可能だろう。ドニエプル側の西を維持すること、そして、ウクライナをNATOのミサイル基地にせず、中立の緩衝地帯にすることであろう。
 そうでないとすると、ロシアからの全面攻撃を受け、ウクライナは破壊されつくすかもしれない。一方で、NATOが支援し続ければ第3次世界大戦になるかもしれない。とにかく難しい問題だ。ウクライナ国民は、国土と国民の破壊から国を守らねばならない。その意味でも、虚勢をはらず、大国に翻弄されることなく、停戦へと進む勇気を見せる時かもしれない>(以上「東洋経済」より引用)




 的場 昭弘氏(哲学者、経済学者、神奈川大学経済学部教授)の「冷静に見て、ウクライナ戦争は来年どうなるのか開戦から1年、世界大戦の可能性はゼロではない」という論評が東洋経済に掲載された。日本国内にもロシア贔屓はいて、プーチンが始めた戦争を正当化する愚か者がいる。
 明らかにウクライナの領内に戦車を進軍させて戦争を始めたのはロシアだ。いかなるプーチンに屁理屈があろうが、戦争を始めた者に正義面をさせてはならない。戦争はすべての正当性を覆す犯罪だ。戦争を外交交渉の一種だ、と規定している現在の国際常識が間違っている。戦争は大量破壊であり大量殺人であり、そして重大な犯罪だ。

 そうした考察なくして的場氏は「哲学者」として何を語っているのか。彼はウクライナ東部や南部にいる少数民族に配慮して、ウクライナ語を公用語にすべきではなかった、という。それなら米国では英語の公用語廃して、スペイン語や中国語や日本語、さらにはスワヒリ語まで公用語として認めなければならないのか。日本でも日本語だけでなく、すでに在日外国人トップになった中国人の言語や在日韓国人に配慮して、韓国語も公用語の一環に認定すべきなのか。少数民族の言語に配慮すれば、欧州諸国ではもっと問題は巨大化し複雑になる。
 云うまでもなく、国家としてのアイデンティティーは言語だ。しかし不幸にして国内の多言語があって統一が不可能なため、英語を公用言語にしているインドやフィリピンなどがある。だがウクライナにウクライナ語があるのなら、ウクライナ語を公用語にして「問題だ」という方が問題だ。

 クリミア半島南端にロシア海軍基地があるからクリミア半島の領有権を主張しているウクライナが間違っている、というのは本末転倒だ。ソ連当時にソ連軍の海軍基地があったから、ロシア崩壊後にウクライナが「軒先」を貸す形でセヴァストポリ海軍基地へのロシア軍駐留を認めた。そうするとロシアは「母屋」のクリミア半島全体を併合してしまった。それもロシア大帝時代から入植していたロシア人による「住民投票」で決めたという屁理屈まで付けて。
 云うまでもなく、移民は何処の国にもいる。しかし移民は移民であって、国籍は移住した先のものになる。そして移住した先の国の一員として納税や勤労などの義務を負う。それが突如として「先祖返り」をして、祖国との併合を望む、とは移住先の国と国民に対する重大な裏切り行為だ。そうした行為を許せば、難民を受け容れる国は世界の何処にもなくなる。ましてや入植者を「少数民族」として権利を認め言語を認めよ、というのではウクライナ国民の一員とはいえない。彼らはロシアからの出稼ぎ住民でしかなく、土地取得や各種政治的な権利停止をしなければならないだろう。それが国家と国民のあり方だ。

 的場氏は「世界全体が対立の時代」になると予測しているが、私はそうはならないと思う。ただ独裁者が様々な意匠を用いて、国民を騙して国家の富を私有する行為は厳しく批判されるだろう、と感じる。様々な意匠とは、ロシアの「自由な投票」のない民主主義や、中国の社会福祉が著しく貧困な「社会主義」という意匠、さらにはイランのような宗教指導者と称するマホメッドの名を汚す暖衣飽食の似非・宗教者による独裁体制など、世界には国民を騙して富を独占する仕組み、つまり「意匠」が存在している。
 しかしロシアの似非・民主主義がプーチンの22兆円を超える外国金融資産の保有を可能にし、70余名のオリガルヒという金満家を生み出した「意匠」は国家や国民の富の収奪の仕組みの悪辣さがバレて、彼らが構築した国家の仕組みが解体されるだろう。

 中国共産党幹部たちの国家と国民の富を収奪する「意匠=中国共産党一党手独裁政権・中共政府」の悪辣さが暴露され、中共政府が打倒される日もそう遠くないだろう。国民は決して愚かではない。貧困を嘆くのではなく、極端な貧富の格差があることに国民は怒りが沸騰するのだ。中國では約6億人が月収千元以下の貧困状態にあるが、習近平氏は国外に1兆円以上の金融資産を保有している。
 実に愚かというしかない。プーチンは22兆円もの蓄財した資産を使うこともなく死を迎えるだろ。そうすると、巨万の富はないに等しい。習近平氏も外国に蓄積した1兆円以上の金融資産を使うことなく一生を終えるだろう。1兆円以上もの金融資産を溜め込んだのは何のためだったのか。独裁政権を掌握した連中の、なんと浅はかな事だろうか。彼らの飽くなき欲望のままに、戦争を始められたロシア国民こそ「いい皮の面」だ。的場氏は哲学者なら、人の業について哲学してはどうだろうか。なんと罪深い存在なのか、と。

 的場氏は引用記事で戦争は平気でやるのではなく、戦争遂行には人員が必要だと記述している。その人員は何によって動くのか、つまり戦争は経済力だ。米国やNATOが支援するウクライナの背後にある経済力はロシアの経済力を圧倒する。
 決してプーチンはウクライナに勝てない。ウクライナの各戦線は崩壊寸前だ、というのは欧米諸国のマスメディアがウクライナ側に立つ報道をしていると批判するのと同様に、的場氏の戦況判断はロシア側に片寄っている。冷静に経済力を見れば結果は自ずと出る。プーチンは決して勝てない戦争にロシア国民を暖かな家から引っ張り出して、凍てつく塹壕に閉じ込めている。そのことにロシア国民が気付けば戦争は呆気なく終わる。それはロシア国民の知能と判断力の問題だ。

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