防衛費倍増は本当に日本防衛に必要か。

<防衛省はステルス戦闘機F35を147機購入する計画だ。陸上基地用のF35A(1機約100億円)が105機、空母用のF35B(同約140億円)を42機購入するが、米国側が契約後に値上げすることもあり、円安も手伝って、より高価になりそうだ。
 旧式化しつつある戦闘機を新鋭機に入れかえるのは当然であっても、ミサイル攻撃に対し「敵基地攻撃」や「反撃能力」で対処しようとし攻撃用の各種のミサイルの購入や開発に巨費を投じても効果は乏しい。山岳地帯のトンネルに潜み、自走発射機で移動するミサイルを秒速7.9キロで1日1回世界各地の上空を通過する偵察衛星で撮影するのは極めて困難。高度3万6千キロで周回する静止衛星からはミサイルのような小さな物は映らない。無人偵察機を上空で旋回させれば対空ミサイルで撃墜される。
 相手が先にミサイルを発射すればその首都など固定目標に反撃することは可能だが、首脳部の現在位置はわからない。核ミサイルに対し火薬弾道ミサイルで報復するのは、大砲に対し拳銃で応戦するような形となる。米軍の核兵器を日本に配備する「核共同保有」を唱える人もいるが、核兵器使用のカギは米軍が握り、自衛隊は運搬役となる。米国がもし核使用に踏み切るなら自分の航空機やミサイルでそれを使うだろう。他方、核戦争にエスカレートして米国が標的になることを恐れ、核を使わないなら、自衛隊にそれを渡して使わせることは考えにくい。

 ロシアのウクライナ侵攻に恐怖感を持ち、「北の守りの強化」を言う人もいるが、ウクライナで苦戦するロシア軍が二正面作戦をする公算はゼロだ。ロシアの東部軍管区はシベリア中央部バイカル湖から日本海岸まで、日本の20倍に近い700万平方キロを担当しているが、兵員は8万人で自衛隊の3分の1。その一部はウクライナ戦線に投入されている。弱みを見せないよう、日本海で演習をして見せている。
 中国がロシアの愚行をまねて台湾を攻撃することも起きそうにない。中国の輸入相手の第1位は台湾で半導体の供給を依存し、台湾の輸出の44%は大陸向け、台湾の海外投資の6割以上は大陸にあると言われ、台湾人約100万人が中国で経営者、技術者などとして勤務している。中台の経済関係は一体化し、中国が台湾に攻め込めば自分の足を打つ結果になる。
 台湾行政府の世論調査では、「現状維持」を望む人が84.9%で、「すみやかに独立」は6.8%にすぎない。蔡英文(ツァイインウェン)総統も「現状維持が我々の主張」と演説している。
 中国が威嚇さえしなければ、中台双方に経済でも安全保障でも有利なあいまいな関係、成功した内縁関係に比すべき状況が続くだろう。ロシアのプーチン大統領は大演習で威嚇したがウクライナ国民の反感を強め、引くに引けない状況になり侵攻し、大失態を招いた。これは習近平(シーチンピン)国家主席にとり「前車の覆るは後車の戒め」となるのではないだろうか>(以上「AERA2022年6月13日号」より抜粋)




 旧聞に属するが「防衛費の増額は本当に必要か? 「巨費を投じても効果は乏しい」専門家は否定的」という論評がAERAに掲載されていた。書いたのは田岡俊次氏(軍事ジャーナリスト)で、彼の分析は恐らく正しいと考える。以下、私の考察を論述して行く。
 まず「敵基地攻撃能力」として「遠距離巡航ミサイル」を購入しようとしているが、速度のノロい巡航ミサイルで敵基地を攻撃する、というのは馬鹿げている。岡田氏が論じているように、たとえ発見され迎撃されずに目標地点に到達したとして、戦争態勢に入った国がミサイルを「基地」に展示しているとは思えない。山中の洞窟や鉄道のトンネルなどに移動させていると考える方が常識的だろう。そうすると敵基地攻撃能力とは言葉だけで、戦略として価値は殆どない。

 そもそも日本が眼下の「敵」と想定する国は中国だ。だが中国ば誇示する軍事力は経済力を失えば一夜にして瓦解する代物だ。エネルギーをシーレーンに頼っているのは日本だけではなく、中国も中東の石油に依存している。米空母艦隊などで海上封鎖されれば中国の石油備蓄は一月しかない。しかも中国の対米輸出は一位で、日中貿易もかなりの比率を占めている。そもそも中国は日米と戦争できる国ではない。
 台湾に対しても中国は軍事侵攻できない。なぜならTSMCの半導体がなければ中国製造業は成り立たないからだ。軍事的な台湾統一する侵攻作成を実施すれば、統一する前に中国は半導体不足に陥るだろう。しかも攻撃により台湾のTSMCの工場が破壊されれば元も子もなくす。そうすれば中国が採り得る選択肢は現状の台湾進攻で台湾を脅して中共政府の体面を保ちつつ、台湾と良好な貿易・経済交流する方が好ましいだろう。

 それでなくても中国経済は崩壊している。中國経済を再生するには以前の「世界の工場」になるのではなく「工業立国」を目指すしかないだろう。つまり科学技術や半導体技術を自らの力で確立するしかない。つまり習近平氏の「戦狼外交」が間違っていたことになる。
 中国が経済発展するためには「改革開放」路線を維持すべきだった。そして徐々に民主化して、中共政権から国民主権に移行して行くべきだった。先進自由主義諸国と国際的な関係を深めれば、中国民も自由の息吹に触れて自由を求めるようになるのは自然の成り行きだ。

 だが習近平氏は自身の権力基盤を強化するために、毛沢東時代の計画経済に回帰させようとしている。中国近代化の先駆企業だったGAFAを潰して国有化するなど、習近平氏の経済政策は時代の趨勢に逆行している。
 中国共産党幹部が賄賂などで蓄財に励めば、それを見ている全ての公務員が真似をして蓄財に励むのは当たり前だ。「泣く子と地頭には勝てぬ」という言葉が日本にはある。国民は地頭(役人)には勝てない。習近平が自分に都合の良い独裁政権を維持し、権力基盤を固めれば、全国の716万7千人(「2015年度人事社会保障事業発展統計公報」による)公務員は習近平氏に倣って袖の下を国民から徴収する。それは公務員だけに止まらず、武装警察や人民解放軍も賄賂を国民に求めるだろう。かくして、中国は贈収賄天国になって激しく腐敗している。

 中国民は中共政権の中国に忠誠を尽くすだろうか。人民解放軍は「習近平万歳」と叫んで台湾に突撃できるだろうか。中国が他国へ攻め込んで版図を広げたのは歴史上チベットとウィグル、およびモンゴルの一部だけだ。
 中国が中国民の富を奪って整備した軍事力は殆どすべてロシア製もしくはその模造製品だ。ロシアの兵器がどの程度のものか、ウクライナ軍事侵攻でバレてしまった。第六世代に属すると豪語していた最新鋭の戦闘機が西側諸国が供与したミサイルにより相次いで撃墜されている。ロシアの誇る黒海艦隊もミサイル攻撃で殆ど殲滅されている。

 日本が配備すべき兵器とは何か、対中戦争で日本が採るべき戦略とはいかなるものか、まず議論はそこから始めなければならない。
 日本国民の命と中国民の命を無駄に損耗させないためには、中国の経済力を削ぐのが最も有効的だ。つまり中国を戦争など出来ない経済弱小国に戻すことだ。日本は先頭に立って対中デカップリング策を先進自由主義諸国に説くのが、最も有効な日本防衛策ではないか。まず防衛予算倍増ではなく、中国の脅威そのものに関する情報を国民に知らせるべきだ。それも中国の兵器のカタログスペックではなく、ウクライナで露呈したロシア製兵器の実態を日本国民に知らせるべきだ。シーレーンの確保が喫緊なのは日本だけではないことも、国民は知らなければならない。

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