それでも米国民は民主党の大統領を支持するのだろうか。

 <トランプ氏は共和党の大本命になれるか?
 「アメリカを再び偉大で輝かしい国にするために大統領選挙への立候補を表明する」
 トランプ前大統領(以下、トランプ氏と表記)は「みんな、準備はできてるかい?」と呼びかけた後、高らかに出馬を宣言した。
「私の任期中、この国は偉大で栄光に満ちていたが、いまは傾いている」
 経済制裁で中国を困らせたことや、在任期間中の金正恩総書記との会談後に北朝鮮が1発も長距離弾道ミサイルを打たなかったことなど、大統領時代の実績を並べ「アメリカを第1に据える」と「アメリカファースト」の姿勢を強調してみせた。

 11月8日の中間選挙からわずか1週間でトランプ氏が出馬を表明したのは、ひと言で言えば“焦り”だ。中間選挙で勝ち切れなかった責任論を交わし、数々の疑惑をめぐる訴追を抑止し、共和党内のライバルに先んじたいとの思いが垣間見える。
 その中間選挙では、筆者をはじめ日米のメディア関係者の多くが、共和党の大躍進を予測していた。
 共和党のシンボルカラーは赤、バイデン大統領率いる民主党は青。その色にちなんで、筆者もラジオ番組で「上下両院ともに全米規模でレッドウェーブ(赤い波)が拡がるでしょう」とコメントした。
 ところが、波は起きなかった。少なくとも上院の議席の過半数を民主党が維持したことで、バイデン大統領は連邦裁判所の判事を自ら指名した候補で満たし、下院で政権に不都合な議決をされても上院で却下できることになった。バイデン大統領からすれば、「ギリギリ、セーフ」の結果となった。
 この背景には、2016年のアメリカ大統領選挙で、直前まで有力とされていたヒラリー・クリントン氏がトランプ氏に敗れたように、各メディアや調査会社が弾き出す情勢調査が、正確に世論を反映できていない問題がある。
 それと同時に、今回は有権者の中に、「インフレを招いたバイデン政権には不満だが、過激な発言をやめないトランプ氏が応援する候補にも入れたくない」(元FOXテレビプロデューサーで共和党支持者)という気持ちが芽生えたことが大きい。
 特に18歳から29歳の若者層が民主党候補に投票したことが、トランプ効果を不発に終わらせた要因の1つである。

 CNNやABCなどアメリカ大手メディアの委託で出口調査などを実施しているエジソン・リサーチによれば、下院では若者層の63%が民主党候補に投票している。
 上院でも、例えば激戦州の1つ、ペンシルベニアの場合、若者層の実に70%が民主党候補に投票し、それが結果に結びついた。
 2020年の大統領選挙での敗北をいまだに認めないトランプ氏の言動、そして、選挙で民主党が争点に掲げた中絶問題や気候変動の問題などが、インフレに対する不満以上に投票行動を左右したと見るべきだろう。
 トランプ氏が本気で返り咲きを狙うのであれば、共和党支持者の造反を減らすこと、そして何より若者層を味方につける努力が絶対条件になる。

唯一「赤い波」が起きたフロリダ
 そんな中にあって唯一「レッドウェーブ」が拡がったのが、大統領選挙では毎回、天王山の1つとなる激戦州、フロリダでの州知事選挙であった。
 筆者は、ラジオで中間選挙の解説を担当する立場上、CNNのモニターで、赤と青に塗り分けられていくフロリダの地図を見ていたが、州内に67ある郡は、あっという間に赤に色分けされ、その9割近くを44歳という若さのロン・デサンティス氏が制した。
 対抗馬の民主党、チャーリー・クリスト氏も元州知事で弱い候補ではないが、彼の得票が上回ったのはわずかに5郡だけであった。
 結局、デサンティス氏は150万票の大差をつけて圧勝した。民主党支持者が多いヒスパニック系住民の支持も集めた。フロリダ州の知事選挙でここまで差がついたのは過去40年で初めてである。
「あと2年! あと2年!」
 2年後の大統領選挙を意識し、デサンティス氏の支持者らが勝利の歓声を上げる光景をモニター越しに見ながら、前述の元FOXテレビプロデューサーから届いたメールの文面「彼こそが共和党の希望」という言葉に得心がいった。

トランプとふたりのライバル候補
 少し気は早いが、実際には1年余りとなった大統領候補者指名レースに触れておきたい。
 まず民主党だ。民主党は、バイデン大統領が再出馬を表明すれば、大きな失政や健康問題が生じない限り最右翼となる。大統領を支える立場のハリス副大統領やブディジェッジ運輸長官は出馬せず、ミシガン州のウィットマー知事らも出馬を見送るはずだ。

 バイデン大統領自身は、中間選挙で大負けを回避したことで息を吹き返した。
 11月14日には、インドネシアのバリ島で、中国の国家主席である習近平総書記と3時間に及ぶ会談をやり遂げた。習近平総書記に対する姿勢は強気で、ポーランド東部にロシア製のミサイルが着弾したときも、G7やNATOの首脳を前に、アメリカの大統領らしいリーダーシップを見せた。
 バイデン大統領本人は出馬に前向きだが、実際に出馬するかどうかは、79歳となる夫を気遣うジル夫人らの判断が鍵となる。

 対する共和党候補の筆頭格はやはりトランプ氏である。
 トランプ氏も76歳と高齢だが、長い大統領選挙レースを勝ち抜くうえで不可欠となる資金力と知名度は、他の共和党有力者の追随を許さない。
 2020年の大統領選挙で投じられた選挙運動資金は全体で100億ドルを超えている。単純に2候補で割っても、1候補当たり50億ドル(=7000億円以上)必要になる。個人資産だけでは到底足りず、巨額の献金を集めるだけの要素(人気、カリスマ性、実績、勢いなど)が複数必要になる。

 その点、フロリダ州知事のデサンティス氏はどうか。
 イタリア系アメリカ人のデサンティス氏は、イェール大学からハーバード大学ロースクールへと進んだエリートだ。
 2018年、州知事選挙に僅差で勝利したあと、新型コロナウイルス対策ではロックダウンを拒否し、マスク着用やワクチン接種の義務化も拒否して、自由をこよなく愛するフロリダの市民に拍手と喝采を浴びた。
 LGBTQや移民政策でも保守系の好む政策を推し進め、いつしか「ミニ・トランプ」あるいは「トランプ2.0」などと呼ばれるに至っている。
 ただ、デサンティス氏が「洗練されたトランプ」とも呼ばれるのは、ハリケーン「イアン」が州全域を襲った際に、避難民救済や復興対策を政治ゲームにせず、現地を訪れたバイデン大統領と協力し、迅速に進めようとしたことにある。
「いかにも保守でトランプと言動は似ているが、実務に優れている。トランプ氏の挑発にも簡単には乗らない冷静さもある」(ボストンのテレビ局、WGBH記者で民主党支持者)
 これが現在のデサンティス氏に対する率直な評価だろう。だとすれば、中間選挙で勝利し、それを手柄にして再選戦略を描いていたトランプ氏にとっては強力なライバルになる。

 では、トランプ政権を支えてきたマイク・ペンス前副大統領はどうだろうか。
 ペンス氏は、11月14日に放送されたABCテレビのインタビューで、中間選挙について、大統領選挙での敗北を認めないトランプ氏が足かせになったとの見方を示し、「次はもっと良い選択肢がある」と自身の出馬に含みを持たせた。
 副大統領在任時代から「共和党本流に近く、議会への根回しもできる」と評されてきたペンス氏のことだ。出馬を宣言すれば、共和党第3の候補に浮上するのは間違いない。
 ただ、デサンティス氏は若い。下院議員の経験はあるが、国政レベルで真価を問われたこともなければ、大統領候補として誰かの対抗馬になった経験もない。
 市民が保守化し、移民も増えているフロリダの特殊性が、デサンティス氏をもてはやしているだけ、の感もある。何かの問題で期待が失望に変われば、出馬したとしても予備選挙の途中で撤退を余儀なくされるだろう。
 一方のペンス氏は地味だ。63歳という年齢は悪くないが、トランプ氏と袂を分かったため、デサンティス氏と同様、トランプ氏から激しい「口撃」にさらされることになる。

焦点はこれからの1年
 トランプ氏の出馬宣言で、2024年の大統領選挙が動き始めた。予備選挙が始まるまでは1年3ヵ月、候補者が正式に決まる党大会までは1年半以上ある。
 バイデン大統領が出馬した場合、選挙で勝てるかどうかは、インフレを抑えアメリカの景気を回復させられるかどうかが最大のポイントになる。
 共和党のトランプ、デサンティス、ペンスの3氏にとっては、先に述べた若者層に加え、支持層である非大学卒白人の有権者、そして近年、民主党から鞍替えしている黒人やヒスパニック系住民を振り向かせる政策や争点を演出できるかどうかが勝敗を分けることになるだろう。
 いずれにしても、アメリカ大統領選挙はマラソンレースだ。様々な要素が絡む点では、トライアスロンと言ってもいい。
 誰が、民主・共和両党の候補として相まみえるかは断定できないが、前述したアメリカのメディア関係者に聞けば、「次の大統領選挙で勝ちたいなら、民主党はバイデン大統領、共和党はトランプ氏という形がベスト」こういった答えが異口同音に返ってくる。
 そうなれば、アメリカの「分断社会」はさらに深刻化しそうだが、構図としては筆者の見立てもほぼ同じである>(以上「現代ビジネス」より引用)。





 清水 克彦氏(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師)が「大統領選「トランプの出馬宣言」は焦りか…これから起こる、共和党「3人の候補者」激突のシナリオ」と題する論評を現代ビジネスに掲載している。2年後の米国大統領選挙に関する論評がなぜ「現代ビジネス」に掲載されるのか、それは米国大統領が共和党から出るのか、民主党から出るのかによってビジネスに大きく関わって来るからだ。
 ただしビジネスといっても大きくは「中国への投資ビジネス」に限定される。米国には拮抗した政治勢力、つまり「国民の生活が第一」の共和党と、グローバル投機家に支配された民主
党があるからだ。どちらの党の大統領候補が2024年11月に勝利するかはビジネスに大きく関係する。

 現在のバイデン政権下ではウォールストリートでは「中国投資熱」は依然として盛んだ。実際には中国の外国為替取引を見ると外国から投資された資金は引き上げられている。そして習
近平氏が「ゼロ・コロナ策」を続ける限り、中国経済は確実にマイナス成長となる。
 しかもWカップが開催されたことに驚いていた一部の中国人は日本がドイツに勝利したことを知って「Wカップが開催」されていることを多くの中国人が知ることとなった。これまで中共政府は日本をはじめ欧米諸国は「ゼロ・コロナ策」を実施していないから酷いコロナ禍に見舞われて多くの国民が罹患して悲惨な状況になっている、それに引き換え中国は習近平様が実施ている「ゼロ・コロナ策」によって国民が守られ、世界で一番感染患者数が低く抑えられ理
ている、というプロパガンダを流してきた。
 だが、Wカップが実施され、競技場に数万人もの観客が詰めかけ、観客はマスクすらしていない、という現実を知った。それに引き換え、中国では未だにロックダウンを繰り返し、有料のPCR検査を毎日のように義務付けられている。もちろん企業も例外ではなく、中国でアップルの製品製造をしている鴻海精密工業(ホンハイ)では陽性患者が出た、ということで工場が閉鎖されるのではないか、とパニックになった16万人労働者が工場の門が閉鎖される前に数万人も大量脱出して故郷へ徒歩で向かったという。

 アップルが中国での製品製造を見限って、東南アジアの電子製造企業へシフトしようとしているのも無理はない。ことほど左様に、中国経済は習近平氏が打ち出した「内循環経済」策や「ゼロ・コロナ策」により崩壊の速度を速めている。
 未だに中国から撤退していない外国企業は自業自得だが、中共政府が「外国企業の対中進出への優遇策」を打ち出して、外国投資資金が中国から撤退するのを止めようとしている。そうした動きにウォールストリートの投機家たちが「中国投資市場は捨てたものではない」と投資熱を煽っているが、それは彼らが投資した資金を有利な為替レートで撤退させるための「踏み
台」を募っているだけではないだろうか。

 バイデン氏にはグローバリゼーションを推進する国際投機家たちが背後にいる。いや民主党はDSたちが支配するグローバル政策を推進してきた。それにより米国民は豊かになったか、というと逆だった。
 グローバル化は米国内を空洞化させた。米国の強い製造業は海外移転して、働かずして泡銭を手にする投機家たちが幅を利かすようになった。あるいは、海外へ製造部門を移した企業経営者が持て囃されるようになった。それでは米国民は貧困化するだけだ。そこに来て、バイデン氏はCO2排出利権に絡むDSたちの働き掛けによってパリ協定に復帰し、近い将来に排出CO2ゼロにすると国際的な約束をしてしまった。そしてシェールオイルの新規掘削を禁止してガソリン高騰の引鉄を引いてしまった。それでも、米国民は民主党の大統領を支持するのだろうか。

 共和党の大統領候補がトランプ氏になるか否かは解らない。76歳の前大統領は2年後には78歳になる。共和党の大統領候補として足掛け2年にわたる長い候補者レースをトランプ氏が勝ち残る確率はマスメディア予測よりも遥かに低いのではないだろうか。そして清水氏が上げた他の二名の候補予備軍も候補者レースに名乗りを上げるか否かも判然としない。
 私は全く別の候補者が現れるのではないかと思うし、そう期待する。彼には国民生活を重視する政治理念を米国民に明確に示すべきだ。もちろん自由主義諸国の盟主たる米国の力を衰退させることがあってはならない。そうした意味で、候補者として望ましいのはトランプ氏ではない。トランプ氏はNATO諸国とも激しく対立したし、ドイツや日本や韓国に対して米軍駐留経費の引き上げを突き付けた。それは米国の影響力を削ぐ行為でしかなかった。中國脅威と向き合う大統領の出現こそが米国にとって必要だ。





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