社会保障の大原則は「負担は応能で、支給は一律」だ。

<1人当たり毎月約1万6600円──国民年金の保険料の支払いは、給料が上がらず物価も高騰するいま、家計の大きな負担になっている。
 意外に知られていないが、国民年金への加入は国民の義務だ。1986年4月から法律で「20才以上、60才未満の人」は強制加入とされ、以来36年間、このルールは変わることなく続いてきた。

《国民年金、納付45年へ延長検討》
 10月15日、共同通信がそう報じた。国民年金は、20才から59才までの40年間が「納付期間」と定められている。政府は、その期間を5年延長することを目論んでいるという。前述の通り、これは強制加入なので誰しもが年間約20万円、5年間でざっと100万円の負担増を強いられることになる。つまり実質的な「大増税」なのだ。
 厚生労働省の諮問機関である社会保障審議会がすぐに議論に入り、来年中には結論が出されるという。岸田首相は国民に信を問う選挙も経ないまま、こっそりと実施してしまうつもりだ。
「少子高齢化という日本の年齢構成のいびつさは進む一方です。受給世代を支える現役世代のパイを拡大して、なんとか財源を確保しようという腹づもりなんでしょう」(ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さん)

将来受け取る年金(老齢基礎年金)は、保険料を納めた期間の長さによって変動する。
 現行制度では、満期まで納めた場合、受け取れる年金額は年間約78万円。月にすると6万5000円程度だ。
「納付期間が延長されても、受給額が上がるかどうかは不透明です。上がらなければ、40年間保険料を払った場合と、45年間払った場合の受給額が変わらないということなので、完全にその延長分は“払い損”になります。
 加入期間が延びると、12.5%も保険料を余分に払うことになるわけです。もし受給額が上がったとしても、10%以上増えるかというと、そうなるとはなかなか考えにくい」(前出・丸山さん)
 どのみち、損をするのは確実のようだ。

18才からお金を奪う
 政権トップがコロコロ変わっても、政府の年金制度に対する姿勢は一貫している。それは、「取れるところからできるだけ取り、できるだけ渡さない」というものだ。
 現在、年金保険料を支払っていないのは、任意加入している人を除く60才以上の「シニア世代」、学生納付特例制度を使って支払いを猶予されている「学生」、それに「第3号被保険者」と呼ばれるサラリーマンの配偶者の専業主婦(主夫)の人たちだ。
 前述のように、すでにシニア世代から保険料を“奪い取る”ための議論はスタートしている。
「それだけではありません。第一次ベビーブーム世代が60才を迎える頃と前後して、年金の給付開始時期が60才から段階的に65才に引き上げられました。歴史が繰り返されるのであれば、第二次ベビーブーム世代が65才を迎える2030年代後半には、給付開始が70才とされる可能性もあります。
 実際、年金が増えるというニンジンをぶら下げて、最大70才まで繰下げ受給ができる制度になっていますしね」(前出・丸山さん)
 大学生などの若者世代もターゲットだ。
「若い世代に対しても、支払いの猶予は決して『免除』ではありません。猶予期間中の保険料を後から追納しなければ、将来受け取れる年金が減らされます。
 さらに言えば、成人年齢が18才に引き下げられたことを理由に、将来、保険料の支払いも18才からとなる可能性もあります。ほとんどの人が大学に進学する時代ですが、会社員として働いていれば10代でも厚生年金に加入していますし、それ以外のフリーターの人たちも、18才になったら保険料を払うことになるかもしれません」(前出・丸山さん)>(以上「女性セブン2022年11月3日号」より引用)




 年金を検討する際に、最優先すべきは「年金格差」ではないだろうか。社会保障の大原則は「負担は応能で支給は一律」だ。それが最も良く表れているのが医療保険制度で、所得税額によって医療保険料は大きく異なる。しかし支給される際には納付した保険料や加入している保険組合に関係なく一律だ。
 ことに入院時に高額医療保険を負担した者は優先的に個室に入れるわけではない。差額ベッド料金を支払えば個室に入れる。だから医療保険は「負担は応能で、支給は一律」の大原則が貫かれている。

 しかし年金は社会保障にしては格差の存在を許している。しかも2~3倍といった格差ではない。数倍以上もの格差を放置したまま、年金制度を改定しようというのだから異常だ。
 すべての国民は国民年金に加入することになっている、というのなら名称も国民年金と統一すべきではないか。そして一階建てとか二階建て、さらには三階建てと摩訶不思議な説明を続けているが、年金に何階建てといった差別を設ける必要などない。年金格差こそ既得権益の最たるもので、掛け金に応じてもん金額が異なるというのは社会保障制度として明らかに問題がある。

 そして年金保険料と称しているが、年金加入が「強制」であれば、それは税金と何ら変わらない。国は様々なロジックを使って「税負担率」を先進自由主義諸国と比較して「日本国民の税負担割合は低い」とのプロパガンダを国民に流しているが、それは年金負担を「税」から省いているからに他ならない。
 現に社会保険料も含めた公的負担割合で比較すれば、日本は殆ど50%に達していて、先進自由主義諸国の中では高い位置になる。さらに公的負担率から公的支給率を差し引いた「純公的負担割合」をみれば、日本は17%を超えていて、スウェーデンも含めた他の先進自由主義諸国が軒並み14%台なのと比べて国民負担は高くなっている。

 年金負担に国庫財政が耐えられなくなっているのも、ここ30年間も全く経済成長していないからだ。年金支払い層に対して過重な負担を強いているのは事実だが、現在高齢者になっている人々も年金納付対象年齢の間は年金掛け金を支払ってきた。
 つまり年金負担者もいつかは年金受給者になる。暮らせない年金でしかない国民年金を受け取っている高齢者は貧困層に追いやられている。高齢者のホームレスの多くは国民年金受給者だ。国は生活保護制度で貧困層に対処しているつもりだろうが、生活保護を受けるくらいならホームレスのなった方がマシだと考える人も多いと聞く。それなら高齢者に対する生活保護制度を廃して、年金制度と一体化すべきではないだろうか。社会保障制度の全体設計をもう一度根本的に見直す必要があるのではないだろうか。

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