ロシア原油や天然ガスに頼った欧州の「CO2削減ごっこ」だった。

ウクライナ問題をきっかけに石炭ブームの状況に
 燃焼時に二酸化炭素(CO2)排出量が天然ガスの約2倍となる石炭は、世界の脱炭素化の取り組みの下では、最も不適切なエネルギー源との不名誉な扱いを受けてきた。そのため、欧州を中心に主要国ではここ10年、石炭の使用が減少傾向を続けてきた。ところが足元では、世界的に石炭への需要が強まり、石炭ブームの状況が生じている。そのきっかけとなったのは、ウクライナ問題だ。
 対ロ制裁措置として、先進国はロシア産エネルギーの輸入削減、停止を急速に進めてきた。ロシア産エネルギーへの依存が特に高い欧州諸国も、ロシア産石炭の輸入停止、ロシア産原油の原則輸入停止を決め、さらに脱ロシア産天然ガスを急速に進めている。しかし、ロシア側が制裁措置への報復から欧州向け天然ガスの供給を大きく絞っていることから、欧州ではエネルギー不足が深刻となっている。特に冬場の需要期には、エネルギー不足が人々の生活や企業の経済活動に甚大な影響を与える可能性が高まっているのである。
 天然ガスの多くをロシアからのパイプラインを通じた供給に長らく依存してきた欧州諸国は、LNGの貯蔵設備など関連設備が不足していることから、ロシア産天然ガスを他国からのLNG調達で簡単に代替できる状況にはない。そこで、天然ガスよりも単価の安い石炭に依存する傾向をにわかに強めている。
 気候変動対策として石炭消費の削減を強く掲げてきたにもかかわらず、電力確保に向けて短期的には石炭購入を増やす動きが広がっているのである。

欧州で広がる石炭火力発電の稼働再開、拡大、廃止延期の動き
 ドイツ政府は6月に、ロシアからの天然ガス供給が先行き大幅に減る事態に備え、代替策として石炭火力発電の稼働を拡大させる法整備を進めることを明らかにした。ショルツ政権は石炭火力発電について、理想的な目標として、2030年に廃止することを打ち出してきた。メルケル前政権では2038年の廃止を目指していたが、これを前倒ししたのである。そして2035年にほぼすべての電力を太陽光や風力などの再生可能エネルギーで賄う計画を4月に打ち出していた。
 しかし、ウクライナ侵攻後に天然資源のロシア依存脱却が急務となる一方、再エネの発電能力を積み増すには時間を要することから、「脱炭素」に逆行する石炭に一時的に頼るという苦渋の選択をしたのである。
 欧州では、ドイツのほか、イタリア、フランス、英国、オランダ、オーストリアも石炭火力発電の稼働再開か拡大、廃止の延期を相次いで表明している。

中国、米国でも石炭火力発電への依存度が高まる
 石炭への需要を強めているのは欧州だけではない。エネルギー価格全体が高騰する中、石油火力発電などと比べてかなり安価な石炭火力発電を増やす動きが他地域にも広がっている。そして、安定した電力の確保という観点からも、石炭への需要が多くの地域で高まっている。
 世界最大の石炭消費国である中国でも、石炭の生産と発電燃料としての需要が拡大している。昨年、全国的な電力制限や計画停電を迫られたことから、電力不足への警戒感が強いのである。中国は、世界の石炭発電能力の約半分を抱え、国内発電所が世界の石炭消費の約3分の1を占めている。
 米国の一部地域でも、石炭火力発電所の使用が増えている。異例の猛暑で電力需要が高まっており、今夏に停電のリスクが高まっているためだ。汚染物質を大量に排出するミズーリ州の老朽化した石炭発電所は、年内に閉鎖されるはずだった。しかし、地元の送電会社が停電のリスクを低減するためには同発電所からの電力を必要であるとしていることから、さらに数年は稼働を続ける可能性が高まってきた。

日本はCO2排出量が少ない石炭火力発電で技術力を見せられるか
 中国、日本を代表に、アジア諸国は電力発電に占める石炭の比率が高い。昨年開かれた第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)でも、早期に石炭火力発電からの依存を脱却できない日本は、多くの国から批判を浴びていた。しかし、ウクライナ問題以降、世界で石炭需要が高まる下では、日本は批判されなくなっている。日本にとっては一息付ける状況になったとも言えるものの、脱炭素の取り組みを緩めることになってはならない。
 欧米よりも石炭火力発電からの脱却に時間を要する日本は、その分、CO2排出量がより少ない形の石炭火力発電に転換していくための技術開発に注力してきた。その技術力は主要国の中で最高レベルなのではないか。
 日本は、より環境負荷の低い石炭火力発電に向けてさらに技術力を磨いていき、それを他国にも供与することなどで、脱炭素化に向けた積極姿勢を世界にアピールできるだろう。また、それを通じて脱炭素化を主導していくことも可能となるのではないか。こうした点から、脱ロシアで生じている一時的な石炭ブームは、日本にとっては好機でもある>(以上「NRIニュース」より引用)




 投資会社の木内 登英(エグゼクティブ・エコノミスト)が引用記事をNRI誌に掲載した。一読してウクライナ以後のCO2に対する欧米の変化を記述している者だが、基本的に共鳴するものが何もない。
 なぜなのかと考えると、そこに哲学が見あたらないからだ。ロシアのウクライナ軍事侵攻と、それに対する欧米先進自由主義諸国の対ロ制裁によるロシア原油と天然ガスの供給削減が変化をもたらしている、という事実があるだけだ。

 しかし酸化反応によるエネルギーを利用しているのは化石燃料に限らず、バイオ燃料も光合成を行う植物も含めて殆どすべての生物だ。そうした自然の営みを無視するかのようなCO2排出ゼロ、などと叫んでいたこと自体が異常だった。
 欧州諸国はロシアからの天然ガス依存から、石炭燃料へとエネルギーソースを切り替えているという。もちろんVE(電気自動車)導入への流れも減速せざるを得ない。VEがCO2排出ゼロだなんて馬鹿げた話ではないか、それを大真面目に推進する、としている政治家諸氏の方がどうかしている。

 木内氏は石炭ブームが訪れたのは日本にとって千載一遇の好機だと書いているが、CO2排出ゼロだなんて、出来もしない運動を政治課題にしている政治家のバカさ加減を批判すべきではないか。ヒトが生きている限り一人一日約1㎏のCO2を排出している事実を無視してはならない。それは「怪しからぬこと」ではなく「物質の自然循環」の一環だ。
 むしろ物質の自然循環を壊す原発こそ戒めるべきだ。岸田氏が原発の再稼働だけでなく、新規建設にまで言及したのには、彼の見識を疑う。最終処分すら決まっていない、最終処分と称しているのは放射性物質の無害化まで行う、ということではなく、特定の場所に放射性廃棄物を放置するということでしかなく、それが10万年も人類に害を及ぼさない、という保証はどこにもない。マスメディアや御用学者が云っている最終処分場とは「とりあえず置いておける場所」でしかなく、10万年どころか1万年すら安全性は保証できない。つまり人類に全く無害な原発などこの世に存在しないのだ。

 ただ火力発電で問題なのは硫化化合物や窒素化合物といった人類に良くない物質が大量に大気中に放出されることだ。そうした化合物を除去する技術は世界でも日本が進んでいるのは間違いないだろう。
 CO2排出ゼロ、などという馬鹿げた議論から脱却して、人類にとって安価で安全なエネルギーを安定的に確保することを議論すべきではないだろうか。欧州諸国がCO2削減に努力している、という宣伝が日本に行き渡っていたが、その殆どすべてが嘘だったと露呈した。もう「CO2削減ごっこ」など止めて、省エネについて技術開発を進める方向で大人の国際会議を開催すべきではないだろうか。

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