民主主義の有難さが分からない米国民。

ウクライナ関心度は80%から69%に低下
 ロシア軍による無差別攻撃で破壊される町や村。殺害される市民。戦火を逃れて国外に避難する婦女子。
 連日のように全世界に支援を訴えるウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領。
 この間まで米メディアがこれでもか、これでもかと映像を流していたウクライナ情勢。
 春には米国民の80%が関心を示していたウクライナ問題は、9月に入って69%に減ってしまった。
 この間にジョー・バイデン大統領がウクライナに供与した軍事援助額は1730億ドル。
 2024年就役予定の米新鋭原子力空母「ジョン・F・ケネディ」(CVN-79、積載排水量10万1605トン)の建造費とほぼ同額だ。
(日本が湾岸戦争に拠出し、「Too little too late」=今さらこれだけではどうにもならない=と国際的な不評を買った支援額ともほぼ同額)
 今後、戦闘が長引けば、支援額は右肩上がりで増える。バイデン政権に中長期的政策があるわけでもない。
 ウクライナの戦況について米国民(および西側国民)に伝えているのは、米保守系シンクタンク「戦争研究所」*1(The Institute for the Study of War)が公表する情報だ。
 生データは、米国防総省、米情報機関から非公式に入手している。いわば米国防総省の名を出さぬ事実上の「大本営発表」といっていい。
*1=2007年、ネオコン(新保守主義者)が中心となって設立した軍事研究機関で、イラク戦争をテーマに多様な紛争地帯における軍事作戦、敵の脅威、政治動向に焦点を当てた報告書を発表して脚光を浴びた。米国連大使だったキンバリー・ケーガン氏が理事長。ゼネラル・ダイナミックス、ダインコープ(元レイソン)、マイクロソフトが資金を拠出している。

その戦争研究所の9月11日の発表は、というと―――。
「ウクライナ軍が東部ハリコフ州で攻勢を維持し、10日にロシア軍の鉄道による補給拠点だったクピャンスクを奪還した」
「11日にはロシア軍が同州内の重要拠点としてきたイジュ―ムを奪還した」
「急速な反攻で東部ハリコフ州のロシア軍制圧地域のほぼ全域を奪還した」
「米欧から供与された兵器でロシア軍の補給拠点をたたき、同軍の継戦能力が大幅に低下したタイミングで一気に攻勢をかけた」
「ウクライナ軍にとり、2~3月にかけて首都キーウ(キエフ)を守り抜いて以来の大きな戦果となる」
「自壊ぶりを隠せないロシア軍が局面打開へ大量破壊兵器の使用などに踏み切る懸念もある」
「ロシア軍は、イジュームを失ったことで、東部ドネツク州全域の制圧というロシアの目標は達成困難になった」
 何やら、これでウクライナ軍はロシア軍を一気に駆逐するかのような情報だ。
 米国および西側諸国にとっては、「明るいニュース」だが、この種のニュースは過去6カ月の間に何度も聞かされてきた。
 聞く方(米国民もメディアも)も“耳たこ”だし、それがウクライナの勝利に直結するとは信じていない。
 米主要紙「ロサンゼルス・タイムズ」(印刷版)の9月13日付、一面記事の見出しはこうだった。
「ウクライナは戦争終結からほど遠い。今日のウクライナの作戦は成功したが、戦争力は依然プーチンが掌握」
 確かに今日、昨日のウクライナ軍の作戦は成功した。
 だからといって、戦争終結に向けた状況が開かれたというと、そんなことはバイデン氏すら思っていないだろう。
 いつまで続く、泥濘(ぬかるみ)ぞ、なのだ。

ハーバード世論調査:48%が軍事支援停止
 その一方で米国民は、対ロシア経済制裁のしわ寄せをじわり感じている。
 ガソリンをはじめとする物価高、インフレ定着化で米庶民の日常生活は厳しさを増している。
 米国民の51%が「ウクライナ戦争は米経済にダメージを与えている」と答えている。
 ハーバード大学ケネディ行政大学院米政治研究センター(CAPS)とハリス世論調査が7月に行った共同世論調査によると、47%の米国民が「ウクライナへの軍事支援は十分すぎた。ストップすべきだ」と言い出したのだ。
(https://iop.harvard.edu/youth-poll/spring-2022-harvard-youth-poll)
 もっとも、ロシア侵攻から6カ月経ったから「軍事支援ストップせよ」と言い出したわけではない。
 こうした声は侵攻2か月後の5月段階で米議会には出ていた。
 バイデン氏は5月、ウクライナに対する40億ドルの追加軍事援助を要請したが、下院では57人の共和党議員が反対、上院では11人の共和党議員がこれに反対した。

カネは納税者のガソリン代に回せ
 大物上院議員、ランド・ポール氏(ケンタッキー州選出)は、反対理由についてこう述べていた。
「ウクライナの戦闘を支援することが本当に米国の国益に合致するのか。ガソリン価格の高騰に苦しんでいる納税者に、1人当たり500ドル配れば彼らは助かるのだ」
「ウクライナにくれてやる新たな40億ドルはそれだけの価値があるカネだ、ウクライナよりも米国民を優先すべきだ」 
(https://thehill.com/homenews/senate/3495060-here-are-the-11-republican-senators-who-voted-against-the-ukraine-aid-bill/)
(https://www.newsweek.com/full-list-57-house-republicans-voted-against-ukraine-aid-1705463)
 ウクライナへの新たな軍事支援に反対した上下両院の共和党議員の大半は、親トランプ派。
 ロシア侵攻に際してプーチン氏を「激励」したトランプ氏の意向を反映していると見て間違いない。

トランプ再登場まで戦闘続ける
 保守派政治評論家のチャーリー・サイクス氏は9月13日のコラムでこう指摘する。
「戦闘がだらだら長引けば、米国はウクライナを見捨てるのか。プーチン氏はそう思っているし、そうなることを期待しているに違いない」
「そんなことはとんだ誤算だ、と今は言い切れるが、同氏の希望が全く根も葉もないことではない」
「バイデン氏は9日、新たに137億ドルの対ウクライナ軍事・経済支援を議会に要請した」
「これに対して保守系ヘリテージ財団と『米国を憂慮する在郷軍人会』(Concerned Veterans for America )は、連邦議員にこの追加支援案を拒否するようアピールした」
「今、保守陣営で発言力を持っているのは(300万人の視聴者を誇る)テレビのアンカーマンだ」
「フォックス・ニュースのタッカー・カールソン氏はミッチ・マコーネル上院共和党院内総務よりも影響力を持っている」
「カールソン氏は最初から『ウクライナがどうなろうとも米国の国益には無関係だ』と言い続けてきた」
「共和党議員の多くが、いずれカールソン氏の主張に耳を傾ける公算大だ。トランプ氏はNATO(北大西洋条約機構)からの脱退、NATOの解体を主張してきた」
「プーチン氏はバイデン氏が2024年の大統領選挙後に去り、再びトランプ政権が登場するまでウクライナ侵攻(占拠)を続けるつもりなのかもしれない」
「プーチン氏の究極の目標は、NATO弱体化にとどまらず、米欧加の軍事同盟に楔を打ち、崩壊させることだ」

中国よりロシアに脅威の米国民
 超党派の「シカゴ国際関係評議会」(Chicago Council on Global Affairs)が行った最新の世論調査の結果が注目されている。それは以下の通りだ。
一、「ロシア嫌い」の米国民はウクライナ侵攻以後、85%にまで達した。(10年前は44%だった)
二、ロシアを「敵対国」と思う米国民は57%だ。(中国を「敵対国」と思う人は22%)。
 ロシアを「脅威」と答えた米国民は60%になった。(中国を「脅威」と答えた人は52%)。
三、ロシアがウクライナから撤退するまで軍事支援をせよ、とする米国民は53%。民主党支持者は66%だが、共和党支持者は51%と少ない。
四、「ウクライナに米軍を派遣すべきだ」と主張する米国民は26%だ。(「対ロシア経済制裁は続けよ」とする人は3月には55%だったのが、5月には54%と減っている)
(https://www.thechicagocouncil.org/research/public-opinion-survey/us-public-views-china-and-russia)
 この世論調査で見る限り、米国民は「中国の脅威」よりも「ロシアの脅威」を恐れている。
 だが、それが即、米国の死活的国益とは直接関係のないウクライナを最後まで助けるか、ということにはなりそうにない。
 前述のサイクス氏のコラムのタイトルは「米国はウクライナを見捨てるか。起こりうることだ」(Will the U.S. Abandon Ukraine? It could Happen.)。
 かつて「自由と民主主義」を錦の御旗に国際介入主義を党是としてきた共和党保守派。
 どちらかと言えば、内向的スタンスに終始してきた民主党リベラル派。
 ウクライナ情勢では、双方の立ち位置は入れ替わったように見える。「ウクライナ」は中間選挙の争点として急浮上しないのだろうか>(以上「JB press」より引用)




 「ウクライナ見捨てるか米共和党、トランプ再登板待つプーチン」とは刺激的な見出しだ。副題には「1730億ドル支援と戦闘長期化に苛立ち、米国の威信毀損は二の次」とあるが、本当に米国民は国家の威信や毀損は二の次なのだろうか。
 確かに、先の大戦に際しても米国民は「モンロー主義」をホワイトハウスに期待していた。そのためルーズベルトは「リメンバー・パールハーバー」を仕掛けて、米国民を参戦させた過去がある。

 ウクライナ支援よりもガソリン代を引き下げよ、という米国民の要求が分からないわけではない。しかしガソリン代が高騰したのはバイデン氏がパリ協定に参加して、シェールオイルの新規掘削予算を止め、アラスカからの天然ガスパイプライン工事を停止したからだ。
 CO2温暖化など非現実的な「気候変動犯人説」に踊らされて、化石燃料の利用を止めようとしたバイデン・民主党はどうかしている。また米国民もインフレの要因をバイデン氏の失政に由来するものと、ウクライナ危機によるものとを区別して考える冷静さが必要ではないだろうか。

 世界ではならず者の二人が大きな顔をして跋扈していた。一人はプーチン氏で、もう一人は習近平氏だ。彼らは独裁者として振舞い、国家を代表して大きな顔をしているが、彼らの政権基盤に正当な手続きはないに等しい。
 プーチン氏は政敵の政治家や批判的なジャーナリスト、最近では企業経営者までと百人近くを殺害している。習近平氏に到ってはもっと徹底した粛正を行い、政治家や官僚から企業経営者まで範囲は広く、その数は万を超えている。彼らの手は殺害し拷問し投獄した者の血に塗れている。

 そしてプーチン氏は国際社会に敵対する侵略戦争を始めた。これほどの犯罪が21世紀でも行われるとは、人類はどこまで罪深いのだろうか。そして習近平氏は隣国・台湾を「一つの中国」だという詭弁を弄し、それを金儲けしたい一心の日本を含めた欧米諸国の政治家たちは容認した。こんなマヤカシが21世紀でも堂々と罷り通ることに慄然とする。まさに正義の死を意味する現実に、日本を含めた先進自由主義諸国の政治家たちは気が付かないのだろうか。
 台湾は何処からどう見ても独立国だ。「中華民国」という国名まである。なぜ国連をはじめ国際社会は台湾を見放し中共政府の中国を受け容れたのだろうか。現実追認主義というのなら、ウクライナが数日で降参していたら、ウクライナもコミのロシアを国連は容認したのだろうか。そんな国連にどんな正義があるというのだろうか。

 米国は民主主義国の旗手として国際社会の先頭に立っている。その自覚が米国民にないとしたら、米国は暴飲暴食する単なる肥満児になってしまうだろう。そんな国に民主主義国の旗手など任せられないし、日本が同盟相手として頼むに足らないだろう。
 誰が何と言おうと、ウクライナとロシアとの戦争は民主主義国を守る戦士と、侵略者との戦いだ。決してウクライナが敗退してはならない戦争だ。むしろプーチン氏を徹底的に叩きのめして、二度とプーチン氏の真似をして侵略戦争を仕掛けようと誰も思わないようにしておく必要がある。世界にはプーチン氏以外にもならず者の独裁者はまだまだいる。日本の隣国だけで二ヶ国もある。先進自由主義諸国は団結して、全人類が民主的な社会で自由に生きられるようにしなければならない。政治は国家と国民を護るためにあるのであって、独裁者の我儘のためにあるのではない。

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