円安には為替介入ではなく、経済の高効率化を。

<たとえるなら「敵のいない方向に無駄ダマを一発撃った」。9月22日に行われた円買い介入のことだ。本当にやることはなかろうと思っていたのだが、首相官邸ないし財務省が円安に我慢できなかったようだ。円安を止めるための介入は24年ぶりのことだという。

円買いの介入は、2つの意味で不適切だ。
 まず、仮に円安に対策が必要だとしても、為替市場への介入は有効ではない。これからさらに米国の政策金利が上がって日米の金利差が拡大しようかというときに、高金利通貨への世界的な資金の流れに対して一国の為替介入では流れを止められない。日本は大きな外貨準備を持っているが、円買い介入の場合、外貨準備が制約になるので為替市場の参加者に足元を見られる可能性がある。
 円安を止めるために有効な手段は、日銀による長短金利の抑制を止めることであり、「長期金利の動きは自由にします。加えて、今後日本も政策金利の引き上げを検討します」とでも日銀が情報発信するならば、体感として1ドル当たり20円くらいの円高はすぐに実現するだろう。円安に歯止めが掛からなくなることを心配する必要はない。

そして、そもそも今、円安を抑制する必要がない。何よりもこの点の理解が重要だ。
 エネルギー価格などの高騰に加えて円安が生活必需品の物価を上げていることは事実だ。物価上昇が経済的弱者にとって生活上の打撃になっていることは間違いない。しかし、このサポートは減税や給付金など困窮者への補助で行われるべきであって、円安の修正は正しい手段ではない。
「生産の海外移転が進んだので、かつてほど円安で輸出が増えない」「円安は日本の国力衰退の表れなので、円高の方がいい」といった声があるが、いずれも過去から現在を固定した議論だ。
 大事なのは「これから」だ。日本国内の設備投資を有利にするためにも、日本人を雇いやすくして賃上げと雇用の改善が起こりやすくするためにも、円高よりも円安の方がいい。円安によって日本企業の業績が改善しているが、企業は利益が出ている方が、投資をしやすいし、賃上げもしやすいのは当然だ。また、国力(国の産業の競争力)が本当に衰えているなら、自国通貨は安い方がいい。
 経済構造を「これまで」の状況に固定するのではなく、「これから」良くしていこうとするなら、円安は大きなチャンスなのだ。もちろん、同時に金利が低く金融政策が緩和的であることが必要だ。介入の同日に行われた日銀の金融政策決定会合で黒田東彦(はるひこ)総裁が金融緩和維持の必要性を説いたことは適切だった。これに水を差したという意味でも、今回の円買い介入は愚かだった。これで最後にしてほしいものである>(以上「ZAK ZAK」より引用)



 山崎元氏(経済評論家)の「為替介入は二重の意味で愚かだった 一国の介入で流れは止められず…黒田総裁が説く金融緩和維持の必要性は適切」と題する論評が掲載された。山崎氏の論評は私がこのブログで述べて来た持論に極めて近い。 
 つまり円安介入などすべきでない、という点と、円安がそれほど大問題なのか、という二点に関して私も極めて近い意見を持っている。なぜなら円安は長年の自公政権によるデフレ政策の結晶に過ぎず、日銀が本格的に円安を止めて円高へ移行させようというのなら、公定歩合を米国に負けないほど引き上げるだけで良いからだ。しかし、そうするとデフレ経済はますます深刻化することになる。

 だから円安で良い、と私は主張している。かつて円安だった当時、日本は「ジャパン アズ ナンバー1」といわれていた。経済力で日本が米国を追い抜くと本気で考えられていた。そこで米国は日本の経済成長を止めるためにプラザ合意を持ち掛けた。
 それは円高を日本に呑ませる米国の強引な「合意」だった。それで日本円は1ドル240円前後から一気に倍の120円に跳ね上がった。大きく輸出依存していた日本国内の製造業は軒並み業績を落として不景気に見舞われた。

 現在はその反対を米国が勝手にやっている。お蔭様で日本円は安くなって輸出企業は笑いが止まらないだろう。しかし多くの輸出企業が海外へ生産工場を移転させてしまったから、千載一遇のチャンスを生かせていない。
 だが、海外移転させた製造部門を国内へ回帰させる絶好の機会だ。海外の製造工場よりも生産性の高い、改良した製造工場を国内に建設して、製造部門を国内回帰させれば企業は儲かる。そして国内雇用も増大し、人手不足により賃金上昇も見込める。良いこと尽くめだが、ただ欠点は輸入消費財が値上がりすることだ。

 その解決策は税金を「減額」すれば良い。まずガソリンのトリガー条項を発動し、消費税を廃止することだ。そうすると個人消費の可処分所得が10%ほど拡大し、消費者物価上昇の10%分を補うことになる。面倒な「付加価値税」の計算や「消費税」の納税対象業者の煩雑な事務から解放することにもなる。
 それでなくても日本はすべての面で効率が悪すぎる。それは多分に制度設計する官僚たちの頭が悪いからだろう。山崎氏の要旨は「日本国内の設備投資を有利にするためにも、日本人を雇いやすくして賃上げと雇用の改善が起こりやすくするためにも、円高よりも円安の方がいい。円安によって日本企業の業績が改善しているが、企業は利益が出ている方が、投資をしやすいし、賃上げもしやすいのは当然だ。また、国力(国の産業の競争力)が本当に衰えているなら、自国通貨は安い方がいい」に尽きるだろう。そして、それは正鵠を得ている。

 日本経済は肝心な「モノ造り」を海外へ移転させる、という致命的な誤りを犯した。それを官民上げて、マスメディアまで囃し立てて推進した。結果として日本国民は貧困化し、失われた30年を過ごした。
 ではどうすれば良いのか。この30年間に仕出かした「誤った経済政策」の逆を行えば良い。労働の流動化ではなく、非正規労働者の正規化を行い、緩和しきった派遣業法を元の厳しい派遣規制法に戻すことだ。同時に海外から国内へ回帰する企業の製造部門に対して、徹底した投資減税を行い、国内各地に工業団地開発を中心とする経済特区を指定して国土の均衡ある発展を期すべきだ。

 もちろん投資減税などの効果を上げるためにも、法人税本税は旧に復し、景気対策としては企業交際費の損金不算入を一時的に損金算入を認めるべきだ。もちろん民主党政権時代に行った高速道路「千円乗り放題」政策を復活させれば都市近郊の行楽地や温泉街は活気づくだろう。
 そして経済刺激策として中心となる政策は消費税廃止だ。企業や個人経営者の手間暇をかける「付加価値税」の導入など愚の骨頂だ。いかに「付加価値税」の計算をしっかりやろうとも、企業や個人経営者にとって「納税」のための余分な事務作業でしかない。余計な事務作業を国民に課す政策など百害あって一利なしだ。非効率・非合理化してしまった日本の諸制度を徹底して見直し、官僚や制度のために働かされている国民を無用な手間暇から解放すべきだ。そうすれば日本社会が高効率化して自然と回り出し経済が活発になるだろう。それこそが本質的な円安対策になる。

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