窮地に立っているのは台湾ではなく、習近平氏だ。

「台湾=不沈空母」の認識、崩れる
 ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問で、台湾海峡に戦雲が漂っている。8月4日昼12時から7日昼12時までの72時間にわたって実施された中国人民解放軍の軍事演習は一段落したが、訓練を主管した解放軍東部戦区は8月8日、「台湾海域で訓練を続ける」と脅しをかけている。実際、8月9日にも45機の中国戦闘機が台湾海域に出没した。中国軍の軍事行動に対抗して台湾軍も8月9日から11日までの3日間、対抗軍事訓練に乗り出した。

 1995年6月の李登輝前台湾総統の米国訪問に触発された「第3次台湾海峡危機」以来、27年ぶりの最大の危機だ。環球時報の総編集者は「台湾海峡危機が蔡英文総統の任期中ずっと日常になるだろう」という見通しまで出している。2020年に再選に成功した民主進歩党(民進党)蔡英文総統の任期は2024年5月までだ。
 72時間の「台湾封鎖」で核のない台湾の国防力と地政学的弱点は余すところなく露出した状態だ。中国の軍事訓練初日の8月4日、中国軍が東風-15B系列弾道ミサイル11発を「飛行禁止区域」に設定した台湾周辺の東西南北6海域に打ち上げると、台湾の関門空港である桃園空港は3日間で64便の航空便が欠航し、1日数百便の航空スケジュールが調整された。台湾最大港湾である南部の高雄港をはじめ、首都台北の関門である基隆港も直ちに船舶の出入りに影響を受けた。
 特に11発の弾道ミサイルのうち4発は台湾上空を東西に横切り、台湾東方海上に設定した作戦区域に落下した。このうち5発は、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落ちた。1996年台湾初の直選制総統選挙を控え、「台湾独立派」李登輝の当選を阻止するために造成された「第3次台湾海峡危機」の時でさえ、台湾本島の東側にはミサイルが落ちなかった。中国ミサイルが台湾上空を横切ったのは、1949年の国共内戦が事実上終了して以来初めてのこと。

 国共内戦後、米国が台湾本島と中国本土の間の海上軍事境界線に引いておいた「海峡中間線」も事実上無力化した。27年前の「第3次台湾海峡危機」の時とは違って、中国軍は果敢に「海峡中間線」にわたって作戦区域を設定した。
 過去、台湾軍はこの線を越える中国軍艦艇や戦闘機は敵対的意図を持っていると見なし、拿捕したり迎撃すると脅かしていた。しかし、中国軍は中国本土から台湾本島に最も近い福建省平坦島から「海峡中間線」に向かって長距離砲弾を発射した。平坦島から台湾本島までの距離は、ソウルから大田までの距離(140キロ)より近い126キロ(68海里)に過ぎない。
 台湾国防部によると、殲11(=J11)戦闘機とH-6(轟炸六型、Hong-6)など戦闘爆撃機を前面に出した中国空軍機66機も3日間の作戦期間中に台湾上空を回ったが、このうち22機は「海峡中間線」を行き来した。このうちJ11戦闘機はロシア製スホイ(Su)27を中国が独自生産したモデルで、米国製F-16Vとフランス製ミラージュ2000-5を主力とする台湾空軍に様々な面で手強い相手だ。中国官営の中国中央放送(CCTV)は、J11戦闘機操縦士がH-6爆撃機とともに台湾海岸線と山脈を下に見下ろして編隊飛行する画面を流した。
 合わせて解放軍東部戦区は中国海軍艦艇に乗った水兵が双眼鏡で台湾海軍護衛艦蘭陽号と台湾本島を狙う写真を官営新華社通信を通じて全世界に配布した。具体的な位置は公開しなかったが、ネチズンは写真の中に登場する地形・地物を根拠に中国海軍艦艇が出没した海域が台湾東部の花蓮付近という事実を明らかにした。

 太平洋を眺めつつ地形が険しい花蓮には台湾空軍が200台余りの戦闘機を地下格納庫に隠した紫山空軍基地がある。ところが、中国本土と背を向けており、比較的安全だと考えていた台湾東方海域にまで中国海軍艦艇が出没したわけだ。
 さらに、中国本土と近くで「第1・2次台湾海峡危機」の時、中国本土と砲弾を撃ち合った金門島にも8月4日から3日間、中国軍所属と推定される無人機(ドローン)が1日最大7回ほど出没した。無人機は台湾軍の信号弾警告を受けて退却を繰り返した。中国国防大学の孟祥慶教授は「解放軍の視野に“海峡中間線”は存在しない」と断言した。
 「第4次台湾海峡危機」とも呼ばれる中国の今回の武力挑発に、台湾が受けた衝撃は相当なものだ。中国が台湾本島に爆弾を一発落とさずに周辺海上で武力デモを行うだけでも、事実上台湾の国家機能を麻痺させる可能性があるという事実が明らかになったためだ。

 かつて台湾島は「不沈空母」と考えられていた。海と険しい山で保護される台湾特有の地形で、中国軍の上陸は事実上自殺行為と見なされていた。1949年に国共内戦で敗退した蒋介石・蒋経国前総統父子が台湾島を逃避先に選び後日を誓った理由もこのような理由からだ。
 しかし、中国のミサイルと海・空軍戦力の飛躍的強化は「台湾=不沈空母」という従来の認識を根こそぎ崩している。「不沈空母」もやはり海上補給船が途切れれば無用の長物に過ぎないという事実が明らかになったためだ。3隻の空母戦力まで確保した中国海軍は、台湾南部に作戦区域を設定し、台湾本島とフィリピンのルソン島の間のバシ海峡まで事実上遮断した。
 バシ海峡は北東アジアと東南アジアを最短距離で結ぶ台湾海峡が封鎖される場合、迂回航路の役割を果たさなければならない。中国海軍の太平洋進出の第1関門である「第1島連線」の一部でもある。ところが、中国海軍のバシ海峡封鎖で有事の際、米海軍の支援を受けることもままならないという事実が明らかになったわけだ。「島連線」とは、太平洋の島を鎖のように繋ぐ仮想の線で、中国海軍の作戦半径を意味するもの。
 さらに、中国軍が今回「航行禁止区域」に設定した6か所の作戦区域のうち、3か所は台湾の12海里(22キロ)領海線と重なるように設定された。台北北部海上の作戦区域は12海里領海線に半分ほどかかっており、北部の知龍港一帯の作戦区域は10海里、南部の高雄港近くの作戦区域は9海里の外側に設定された。「第3次台湾海峡危機」の時は、中国軍は台湾本島12海里の内側に作戦区域を設定できなかった。台湾を国際法上、12海里の領海を持つ別の国家とは認めないという確実なシグナルを送ったわけだ。
 台湾は中国の「第3次台湾海峡危機」以後、最大規模の挑発に事実上お手上げムードだ。「海峡中間線」が事実上無力化されるや、台湾国防部は「海峡中間線は過去70年間双方が同意してきた線」という糾弾声明を出すに止まった。
 今年8月4日、中国軍が東風弾道ミサイルを発射した際、台湾西部の新竹県の海抜2,680メートルのルサン基地にあるペイブポーズレーダーはミサイル発射を早期警報するなど威力を発揮したが、警告に終わってしまった。
 サード(THAAD=高高度ミサイル防衛システム)製作会社の米レイセオンのペイブポーズは、約5,000キロ前後の軍事行動まで探知できるレーダーだ。過去、北朝鮮が平安北道東倉里(ピョンアンプクト・ドンチャンリ)の発射場で打ち上げた長距離ロケットまで捉えている。
 しかし、ペイブポーズの早期警報にもかかわらず台湾軍は台湾領空を東西に横切って島東方の海に落ちた中国の東風弾道ミサイル4発を目を開けたまま見守らなければならなかった。中国本土から台湾まで最も近い距離は126キロに過ぎない。台湾軍は台湾山岳の随所にパトリオット3ミサイルと台湾版パトリオットである天宮ミサイルで対空防御システムを構築しているが、近い距離から超音速で飛んでくる中国ミサイルを探知するという保障はない。

 台湾側は中国の72時間(3日)軍事演習に対抗し、8月9日から11日まで72時間の軍事演習を実施したが、両岸間の戦力非対称だけを露呈したという酷評があふれた。中国軍の上陸阻止訓練を行うとして、曲射砲(155ミリ)と迫撃砲(120ミリ)などを持ち出したのだが、中国からは「国共内戦に使っていた骨董品大砲を持ち出した」という皮肉まで出た。
 逆に、中国共産党の習近平総書記兼国家主席は3日間の「台湾封鎖」軍事訓練の結果、上陸作戦に伴う莫大な人命被害なしにも事実上台湾を「武力統一」できるという予想外の成果を確保することになった。今年秋の第20回中国共産党全国代表大会で3連任を控え、軍部の支持を固めるのにかなり役立つものと見られる。
 これは「第3次台湾海峡危機」の時と似た流れだ。当時も軍経歴が浅い江沢民前総書記兼国家主席は「第3次台湾海峡危機」を助長し軍部の支持を引き出し、翌年の1997年、トウ小平の死後、トウの影を取り除き権力を強固にすることに成功した。このような内容は「米中国交正常化」の主役として第3次台湾海峡危機当時、水面下の仲裁に乗り出したヘンリー・キッシンジャー元米国務長官の自叙伝でも詳細に紹介されている。
 結局、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に触発された「第4次台湾海峡危機」は米国の有意義な介入があってこそ終了するものと見られる。李登輝元総統の1995年6月の米国訪問に触発された「第3次台湾海峡危機」は、米海軍がインディペンデンス級とニミッツ級の2つの空母戦団を台湾の北側と東側海域に急派してようやく一段落した。
 中国側で最も神経を尖らせているのも、米海軍第7艦隊の動きだ。ジョン・カービー米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)戦略疎通調整官は8月4日、「米国は数週間以内に軍用機と軍艦を台湾海峡に通過させる」と明らかにした。中国環球時報は、米海軍ニミッツ級原子力空母ロナルド・レーガン号の航路を追跡した結果を知らせ、7月30日頃フィリピン近海にあったレーガン号が日本に北上した後、8月9日まで依然として沖縄北東の日本海域にとどまっていることを確認した。
 中国海軍も東海(=日本海)艦隊管轄の台湾海域だけでなく、それぞれ北海艦隊管轄の黄海と南シナ海でも8月15日まで実弾射撃訓練を予告し、レーガン号の接近を源泉封鎖しようと躍起になっている。台湾海峡、風雲急を告げる様相となってきているが、これは尖閣諸島危機にも繋がる。中国の動きから目を離せない状況となっている>(以上「MAG2」より引用)




 台湾有事を煽る記事がワンサカと湧くように出るのにはウンザリしている。MAG2に「無料メルマガ『キムチパワー』2022年8月17日号」のブログが掲載されていた。台湾有事を煽るのは自由だが、荒唐無稽な記事はこれで打ち止めにして頂きたい。
 なぜ荒唐無稽かというと、中国軍と日米台連合軍とでは問題にならないからだ。今回の大袈裟な「台湾を包囲する大軍事演習」のポンコツぶりを見れば明らかではないか。当初は100発のミサイルを発射すると脅していたが、実際には11発でしかなかった。

 その11発のミサイルもロフティッド軌道で台湾を飛び越えて確認できたのは9発で、5発は日本のEEZ海域に着弾した。日本のマスメディアは日本に対する恫喝だ、とEEZ内に着弾したミサイルに抗議したが、中共政府は日本の抗議があってから「日本のEEZ内に意図的に落した」と発表した。何のことはない、当初予定していた着弾点からミサイルが外れて、日本のEEZ内に着弾しただけだ。初めから日本EEZ内にミサイルを撃ち込む予定なら、日本政府に事前通告するのが常識だ。
 つまり中国は11発のミサイルを発射して、マトモに飛んだのは4発でしかなかった、ということだ。固形燃料のミサイルは耐用年数が11年ほどしかない。それもマニュアル通りにメンテナンスをしていての話だ。中国が所有しているミサイルは演習で実態が露わになったほどのお粗末さだ。

 台湾を取り囲むように設定された六ヶ所の演習海域に出動した軍艦は11隻だったという。勇ましく黒々と煙を吐いて出港した二隻の空母はいずれの演習海域にも姿を見せなかったようだ。そして演習が終わったとされる日以後に母港へ帰還している。つまり鈍足空母は演習ですら足手まといで使い物にならなかったのではないだろうか。
 メルマガ氏は先の大戦の米軍の日本各地への空襲をご存知ないのだろうが、B-29が大編隊を組んで襲来し、絨毯爆撃を繰り返した。中國空軍機が台湾海峡の中台境界線を越えたと騒いでいるが、僅かに二十数機程度の飛行機が境界線スレスレまで飛来して、スクランブル発進した台湾空軍機を見るや直ちに引き返す、といったことを繰り返したに過ぎない。せめて百機を超える爆撃機や攻撃機を台湾海峡の境界線に沿って南下させるくらいのデモンストレーションをすべきではなかったか。

 台湾が中国の演習に対抗して本格的な「演習」をしなかったから「台湾弱し」というのもどうかしている。世界のどこに戦争前から手の内をさらけ出すバカな国があるだろうか。中国軍の「大演習」では米軍のみならず、自衛隊もレーダー等で中国軍の情報を子細漏らさず収集している。
 むしろペロシ氏訪台に噛みついた中国に対して、米国は対中半導体禁輸で応じた。これ以上中国のデジタル技術を進化させてはならない、という固い決意の表れだ。そして米中を天秤にかけ信頼できない韓国に半導体製造を任していてはならない、と米国内での製造に舵を切った。もちろん半導体製造に日本の協力は欠かせないため、日本との共同開発を強く打ち出した。

「戦狼外交」をいつまで習近平氏は続けるつもりなのだろうか。しかし中国にそうしたお遊びを続けられる余力は殆どなくなっている。経済崩壊は中国の各組織を巻き込んで確実に中国社会を蝕んでいる。
 中共政府が打ち出すべき政策はバブル崩壊を先延ばしする金曜緩和ではなく、金融バブル崩壊の広がりを止めるために金融引き締めすることだ。しかし、そうした適切な経済政策すら打てないほど、中共政府はボンクラ揃いなのだろう。デフレ経済下に消費増税した日本の財務省と五十歩百歩といったところか。

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