なぜ日本を衰退させるだけの「無能無策の政権」が続くのか。

2012年の総選挙で安倍晋三氏率いる自民党が大勝を収めて以来、自公連立政権がすべての国政選挙で勝ち続けている。政治学者の白井聡氏は「この体制の統治パフォーマンスは決して褒められたものではない、むしろ統治の崩壊とも言うべきひどい水準にあるのに、なぜ退場させられないのか?」と疑問を呈し、その最大の理由は国民の「無知」のせいではないかと指摘する。日本の有権者は、なぜ自民党に票を入れ続けるのだろうか。


維持されてきた「2012年体制」
 今から10年前の2012年の年末に衆議院解散選挙があり、安倍晋三氏率いる自民党が大勝を収め、野田佳彦氏を首班としていた与党民主党は下野しました。2009年の総選挙によって成立した民主党政権は、ここに終わりを迎えました。
 周知のように、それ以降、自公連立政権がすべての国政選挙で勝ち続け、政権交代が起こる気配は、まったくなくなっています。
 安倍・菅・岸田を首班として続いてきた「2012年体制」。なぜ、この体制が数々の失策と腐敗にもかかわらず維持されてきたのか?
 それは野党が弱いからだとか、小選挙区制度が良くないからだといった理由づけがしばしばなされますが、私は小手先の理由づけにすぎないと思います。理由はどうあれ、自公政権は国政選挙をやるたびに、相対的に最多得票を取り続けてきました。ですから、なぜ維持され続けたのかという問いに対する答えは単純で、要するに「多くの国民によって支持されてきたから」と言うほかありません。
 この国民の選択の堅固さは、コロナ禍の下での、緊急事態宣言発令下での、医療崩壊の状況の下でのオリンピック開催が強行された直後の2021年の総選挙でも、今回の参議院選挙でも証明されました。このような選択をする社会とはどういうものなのか。

各政党の政策をロクに見ていない有権者
 2021年12月に公表された、ある調査結果を報告する記事が話題になりました。その調査とは、アメリカの大学で教鞭をとる堀内勇作氏らのチームが、「コンジョイント分析」という手法を用いて実施した実験的調査です。それは、日本の有権者が諸政党の提示する政策をどう評価しているかと、その評価と投票行動がどう関連しているのか、を検証するものでした(「マーケティング視点の政治学――なぜ自民党は勝ち続けるのか」『日経ビジネス』2021年12月27日号)。
 この調査の実施方法の手順は次のようなものです。すなわち、政策を「コロナ対策」「外交・安全保障」「経済政策」「原発・エネルギー」「多様性・共生社会」など5つの分野に分け、各分野に各党が2021年総選挙で掲げた政策をランダムに割り振り、架空の政党の政策一覧表を作ります。そのようにして出来上がった架空の党の政策一覧表を2つ並べ、「どちらの党を支持しますか」と被験者に問うて、選択してもらうというものです。
 これを繰り返すことによって、政党名を抜きにして「どんな政策が支持されているのか、支持されていないのか」が明らかになるわけです。
 この調査が明らかにしたのは、自民党の政策は大して支持されていない、というよりもむしろ、現在国会に議席を持つ国政政党のうちでかなり不人気ですらある、ということでした。とりわけ、原発・エネルギー政策や多様性・共生社会などの政策分野では、最低の数字をマークしました。逆に、2021年総選挙で議席を減らした共産党の経済政策は、きわめて高い支持を受けています。
 この結果は、私を含む政治学者たちの常識を粉々に打ち砕くものです。有権者は、どのような判断基準により投票するのか。候補者への漠然とした親近感や知人に投票を頼まれたなど、「有権者は合理的な判断により投票するものである」という民主主義の原則からすれば外れる事象はあるものの、有権者はおおむね政策を基準として投票先を決めているはずだ。そのような、政治学者が想定する常識的な前提は、現実と大きく乖離していることが明らかになりました。
 早い話が、日本の多くの有権者は各政党がどんな政策を掲げているのかロクに見ていない、ということをこの調査は明らかにしました。

ただ何となく自民党に入れている
 そして、自民党の政策は支持されていないのに、なぜ選挙で勝つのでしょうか。
 堀内氏らのグループは、もう1つの調査を実施しています。それは、先に説明した方法でつくられた、すなわちランダムにつくられた(言い換えれば、まったく出鱈目につくられた)政策パッケージの一方を「自民党の政策」として提示し、先ほどと同じように、もう1つの架空の党の政策一覧表と並べ、どちらを支持するか選ばせたのです。
 こちらの調査の結果もなかなかに衝撃的なものでした。それによると、どの分野のどんな政策でも、「自民党の政策」として提示されると、大幅に支持が増えたのです。日米安保条約を廃止するという、きわめて人気の低い共産党の外交・安全保障政策でさえも、「自民党の政策」として提示されると、過半数の被験者から肯定的な評価を得ました。
 自民党の政策が支持を受けていないのに選挙をやれば勝つことの理由が、ここから見えてきます。政党の掲げる政策をほとんどロクに見ておらず、ただ何となく自民党に入れている有権者がかなり多くいる、あるいはそうした有権者が標準的な日本の有権者ではないのか、ということです。

思考停止の選挙
 これほどの政治的無知が最近始まったのか、それとも昔から存在しているのかについては、何とも言えません。ただ、はっきりしているのは、有権者の大半がこのように思考停止しているのであれば、そんなところで選挙などやっても無意味である、ということです。これはもう、野党の実力がどうだとか政策の打ち出し方がどうだとか以前の問題です。
「いままでは自民党、これからも自民党」という観念に凝り固まった有権者が多数存在しており、そうした「政権担当能力は自民党にしかない」という、コロナ禍によっても完全に根拠なしと証明されたはずのイメージは、ここ10年余りの間にかえってますます強固になったと考えられます>(以上「JB press」より引用)




 これまでも選挙の都度「なぜ自民党が勝つのか?」と遣る瀬無い思いばかり噛みしめて来た。政策面でも財政運営でも日本を衰亡させるだけの、自公政権の愚劣な政権を日本国民は本当に支持しているのだろうか、と不思議でならなかった。
 JB press紙に掲載された白井 聡氏(評論家)の「「統治崩壊」でも勝つ不思議、なぜ日本人は自民党に票を入れ続けるのか?」を一読して疑問が氷解した。「そうだったのか、日本国民は「思考停止」だったのか」と。つまり「各政党の政策など見ていなかった有権者」ということなのだ。

 消費増税し、財政緊縮し、そして外国人労働者移民を推進して、日本経済が成長するはずなどない。デフレ経済下では財政出動し消費マインドを冷えさせる消費税を廃止してGDPの主力エンジンたる個人消費を拡大する施策を実施するしかないのだが、そうした簡単な理屈すら日本国民は理解できないほど「バカ」になったのだろうか。
 財務省や御用経済評論家は直ぐに「財源は~」と反論するが、「財源は経済成長だ」と私は何度も書いてきた。経済成長すれば適正インフレを必ず伴う。経済成長が4%でインフレが2%なら1,200兆円×0.02=24兆円の国債償還と同じ理屈になる。そうすると直ちに利率が上がれば国債費が増大する、と反語のように反論する向きがいるが、国債の過半数を保有しているのは日銀だ。つまり国債費の半分は自分で自分に支払っているのと同じだ。

 そうした基本的な常識を弁えた国民(大人)がいなくなったのはなぜだろうか。かつては古典落語にもあるように、庶民は床屋や銭湯で「政治談議」に花を咲かしていた。政治権力者が絶対的な権力を持っている時代であっても、日本人は政治権力者を洒落倒したり落首で批判した。
 世界でもまれなほどの「言論の自由」に恵まれた現在の日本にあって、「物言えば唇寒し」の状況を作っているのは誰だろうか。その最大の責任者はマスメディアではないか。マスメディアがいつの間にか世論形成あるいは世論誘導の機関に堕して、国民から自由闊達な政治批判の雰囲気を奪ったのではないか。

 過去30年間の政治は間違っていた、という結論がGDPゼロ成長という結果で出ている。それすらも「ゼロ成長が正しい」とするバカな評論家の登場により日本をいよいよ衰亡させている、という現実から国民の目を逸らしている。少子高齢化は人口減だからGDPの成長はあり得ない、という愚かな経済評論家モドキの言をマスメディアが拡散するのは許せない。なぜなら、それこそが根本的な誤りだからだ。
 自公政権は労働者不足を外国人労働者移民で乗り切ろうとして来た。移民を促進する政策こそが労働者賃金引き下げの大きな要因だと、なぜ国民は気付かないのだろうか。なぜ経済評論家は批判しないのだろうか。経済学部生が大学一年で学ぶ経済原論程度の知識があれば判る簡単な経済原理ではないか。

 かつて東インド会社の綿織物が欧州世界を席巻していたが、産業革命により生産性を著しく向上させた英国製の綿織物がインドへ逆輸出されるに到った「経済戦争」史をご存知ないのだろうか。蒸気機関の出現と蒸気機関を動力とする自動織機の発明により、産業革命が起きた。つまり百台の織機を一人が管理するだけで動かせるようになり、一台の織機に一人の労働者が必要だった綿織物業界に革命をもたらした。その革命により人件費の高い英国製の綿織物が安価で高品質な綿織物として世界を席巻した。
 日本でも中国などへ海外移転させた生産現場を国内へ回帰させ、生産性の高い装置と設備を導入して「モノ造り日本」を蘇らせることこそが日本再生のスタート地点となる。もちろん生産性を高めることから外国人労働者移民は不要だ。そうした日本再生こそが喫緊の政治家だということが、なぜ日本国民に理解されないのだろうか。

 引用した記事の最終章「思考停止の選挙」は秀逸だ。鋭く日本衰退の原点を抉っている。なぜ知能の低いと思われる、モラル規範の乏しいと思われる候補者が多く当選しているのか。なぜ家業とする世襲議員が国会に満載なのか、それは「思考停止の選挙」が繰り返されているからだ。かつてプロスポーツ選手だった人や芸能人だった人が悪いわけではないが、彼らは専門的に経済や法律を学んでいない。少なくとも行政や国家のあり様を専門家の下で学習した経験が乏しいはずだ。
 しかし選挙でそうした候補者が当選する。あたかも選挙は人気投票のようだ。高名な政治家の子や孫が立候補すると、有権者が歌舞伎の襲名披露でも見るような感覚で世襲候補に群がり投票する。それこそが「思考停止の選挙」でなくして、何だろうか。そんなことを繰り返していたら、日本は衰亡するだけだ。

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