自由主義世界の未来のために。

<ゼロコロナ政策の影響で、15日発表の中国実質成長率は0.4%と、大失速の中国。しかし、世界が中国経済に依存している今、その崩壊を喜ぶのは自分の首を絞めるも同然>
 もう間違いない。今の中国経済には強い逆風が吹いている。その原因は、ほぼ中国政府にある。強引なゼロコロナ政策で、経済活動を広い範囲で止めてしまった。
 毛沢東主義への回帰を急ぐ習近平(シー・チンピン)政権が民間企業への締め付けを強めたので、景気の牽引役だった情報技術部門が麻痺してしまった。放置していた不動産バブルがはじけて経営破綻が相次ぎ、市場の混乱も招いた。
 そこへロシアのウクライナ侵攻が起こり、輸入に頼る食料やエネルギーの価格が一気に高騰した。だからIMFは4月に、今年の中国経済の成長率予測を4.4%に下方修正した。2%程度という見方もあり、そうなればほぼ半世紀ぶりでアメリカの成長率を下回る可能性がある。
 しかも、そこに長期の逆風が加わる。生産性の伸びの鈍化や人口減少、ハイテク部門の頭脳流出などだ。こうなると、中国経済は無敵どころではない。西側諸国の一部から歓喜の声が上がるのも無理からぬところだ。しかし、中国経済の崩壊を期待するのは間違いだ。
 第1に中国が景気後退に陥った場合、その打撃を受けるのは中国共産党ではなく、党とは何の関係もない13億超の一般国民だ。1978年の改革開放以来、中国では8億人以上が貧困から脱出できた。もしも経済が崩壊すれば、この素晴らしい成果が無に帰してしまう。
 またアメリカと中国の経済は今や相互依存の関係にあるから、アメリカ人の暮らしも脅かされる。前政権以来の貿易戦争で高率関税を課しても、アメリカ人は猛烈なペースで中国製品を消費している。
 ゼロコロナ政策により中国の製造業が失速して供給が減れば、アメリカの物価はさらに上昇する。成長なきインフレの不気味な予感が現実になりかねない。
 中国はアメリカ製品の輸出先としても、カナダとメキシコに次ぐ第3位の重要な存在だ。中国経済の失速でアメリカ製品(自動車や電化製品、医療機器や燃料など)への需要が減れば、中国への輸出で稼いできた米企業や労働者に打撃となる。
 最後に、中国共産党はもっぱら経済成長と生活水準の向上を持続することでその正統性を維持している。深刻な景気低迷でその権威が揺らぐ恐れが生じれば、彼らが今まで以上に攻撃的で民族主義的な外交政策を採用する可能性が高まる。

 どこの国でもそうだが、内政面の不満から国民の目をそらすには好戦的な愛国主義と戦争を持ち出すのが一番だ。
 ウクライナでの戦争が続き、アメリカ経済が軟化しつつあり、中国経済の抱える問題がこれまで以上に明らかになってきた今、世界的な景気後退のリスクは高まっている。
 ハーバード大学の経済学者ケネス・ロゴフが指摘するように「ある地域の経済が破綻すれば、破綻の連鎖が起きる確率も高まる」のだ。
 補助金漬けの不公正な競争政策や国際貿易のルールを平気で無視する体質など、中国政府の経済運営に重大な問題があり、しかるべき対応が必要なのは事実だ。
 しかし中国には、今の世界経済でもっと建設的な役割を果たしてもらわないと困る。だから問題があるなら、中国経済の破綻を歓迎するのではなく、前向きに対処すべきだ。
 中国経済の急激な失速は世界中に重大かつ予測不能な影響をもたらす。喜んでいる場合ではない>(以上「NEWS week」より引用)



 引用したNEWS weekの記事は「「世界の工場」がコケたら、みんな道づれ──中国に果たしてもらう役割とは」という題からしてバカバカしいものだ。なぜバカバカしいのか、それは「世界の工場」とはいえ、それは単なる組み立て工場でしかないからだ。しかも輸出先は「全世界」ではなく、先進自由主義諸国でしかないからだ。
 つまり先進自由主義諸国がデカップリングしたなら、明日にも壊滅する「世界の工場」でしかないからだ。評論家諸氏はどちらが主役で、どちらが従属して振り付け通りに踊っている人形でしかないか、お解りでないようだ。

 しかも「<ゼロコロナ政策の影響で、15日発表の中国実質成長率は0.4%」と中国統計局発表の数字を丸々信じているのにも笑える。第四半期は中国の貿易は殆ど停止状態にあり、中国GDPの10%を占める上海がロックダウンされていた時期と一致する。何処をどう見ても、第二四半期はマイナス成長だと、素人にも解るはずだ。
 ただ李克強氏が「マイナスにしてはならない」と主張したから、国家統計局が0.4%プラスにしただけではないか。真面目な経済評論家なら中共政府発表の数字など決して用いない。しかしNEWS weekの記者はそれほど真面目なのではないのだろうか。

 何度もこのブログに書いてきたことだが、中国経済は水膨れした「張子の虎」でしかない。トラの中に詰まっている「水」は外国投資であり、中国に進出した外国企業だ。それらが中国経済を実力以上に膨張させている。だが決して中国経済の血となり肉となっているわけではない。
 日本経済と根本的に異なるのは外国投資は株式市場を通して日本企業を支配している。実に株式市場の六割に達する、というから日本の株式市場も水膨れしている。しかし日本国内に外国企業が進出している例は極めて少ない。

 中国は改革開放により中国の安い労働力を求めて集中豪雨的に外国企業が人手のいる生産工場を中国へ移転させた。それらの多くは企業の肝の研究開発部門ではなく、人材養成が簡単な集約生産現場や単純大量生産現場だった。つまり「組み立て工場」を移転させただけだった。
 しかも「組み立て工場」で組み立てた製品は自国ないし自国と同様の先進自由諸国へ輸出した。決して中国国内向けの製品ではない。なぜなら中国国内で売れるような製品価格でないからだ。それだけに対中デカップリングは容易だ。製造部材や部品の供給を止めて、国内生産に切り替えれば良いだけだからだ。その際には中国で展開した製造ラインよりも生産性を向上させたラインを組む必要があるが。

 中国が「偉大な経済大国(中共政府は自らをそう呼んで国民に誇っている)」と自称できるのも中国に進出した外国企業あってのことだった。しかし中共政府は勘違いした。既に「偉大な経済大国」だから先進自由主義諸国は中国に平伏すべきだ、と考えた。
 外交を大転換して「戦狼外交」に打って出た。もはや韜光養晦(とうこうようかい)策で遜(へりくだ)る必要はないと。強い国にふさわしく、強い外交を展開すべきだと習近平氏が方針転換した。彼の「新シルクロード」や「一帯一路」の衣の下に隠していた世界戦略の真意「経済による世界侵略」の意図も隠そうとしなくなった。

 ロシアと中国の決定的な相違点は資源輸出国と輸入国の違いだ。もちろん食糧輸出国と輸入国の違いも大きい。ロシアは対ロ制裁を受けても国民が直ちに飢えることはない。しかし中国はそうはいかない。だから新疆地区の地下に広大な原油貯蔵庫を建設して、ロシア原油を大量購入して貯蔵しようとしている。台湾侵略により中国への原油輸入路が絶たれても、一年やそこら耐えられるようにするためだろう。
 しかし原油備蓄が戦時において有効かというと疑問だ。その位置やパイプラインなどの全容は偵察衛星によって建設時点からすべて米国にバレバレではないか。ピンポイントで高高度の無人ステルス・ドローンから攻撃されれば簡単に破壊されるだろう。

 バイデン氏はトランプ氏が対中制裁として引き上げた関税率50%を米国内のインフレを理由に0%に引き下げた。それでは対中経済制裁にならないが、バイデン氏が中共政府のエージェントだから仕方ないだろう。米国は中共政府のエージェントを大統領にして、自らの首を絞めている。米国にとって必要なのはトランプ氏の政策だ。米国の雇用と経済を米国内に取り戻すために対中貿易関税50%のままにしておくべきだった。
 JB press紙は「第1に中国が景気後退に陥った場合、その打撃を受けるのは中国共産党ではなく、党とは何の関係もない13億超の一般国民だ。1978年の改革開放以来、中国では8億人以上が貧困から脱出できた。もしも経済が崩壊すれば、この素晴らしい成果が無に帰してしまう」と中国民の心配をしているが、中国経済が拡大して得た富を中国民に分配された割合よりも、政府幹部のポケットを肥やし軍拡などに浪費した割合の方が遥かに大きい。中国のジニ指数を見るまでもないだろう。

 JB press紙が13億国民と称しているが、それも中国国家統計局の数字でしかない。現実には中国の人口は10億人程度でしかなく、世界随一の人口はインドではないかと云われている。いずれにしても中国にマトモな戸籍はなく、全国統一一斉人口調査をしたこともないから正確な人口など判るはずもない。
 私はJB press紙のように中共政府の中国を従前通りに太り肥やすことに反対する。対中デカップリングこそが世界平和のために必要だ。そうすれば中国民が貧困化し飢える、とJB press紙は指摘するが、それなら中国が米国から覇権を奪うまでも中国との共存を図るというのか。世界が中国に呑み込まれ、すべての人類の自由と人権が奪われて奴隷と化しても構わない、とでもいうつもりだろうか。

 中国が香港で行っている「中国化」が台湾に広がることを許してはならない。そして世界中に広がることを許してはならない。中共政府が民主化し、他民族へのジェノサイドを止めない限り、中共政府が存続することを容認してはならない。
 中国の未来は中国民が決めるべきだ。中共政府が中国民を飢えさせない限り、中共政府の中国を受け容れる、というのなら、可哀想だが中国民に飢えてもらわなければならない。JB press紙のセンチメンタルな論理では自由主義世界が消滅するだろう。その危険性を私は強く指摘する。

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