間もなく習近平氏終焉か。

<習近平の3期目続投はあるか
 10月下旬開催が予想される中国共産党第20回党大会において、習近平の権力がこのまま維持されることが決まったとする報道が相次いでいるが、私はこの見方に大いに懐疑的であり、最終的には習近平は引退することになると考えている。
 私が言いたいのは、現段階で習近平が中国共産党内部での実権をすでに失っていて、「総書記」としての地位も建前としてのみ存在するだけだ、という意味ではない。実際、習近平は今なお強大な権力を有していて、自らの方針に中国全土を従わせる動きを見せている。
 その証拠となるのが、上海、広州、深圳の一部で新たなロックダウンが行われるようになったことだ。ロックダウン政策に反対する李克強の考えを押し潰して、習近平が自分の考えを押し通していることは間違いない。
 習近平の3期目が決まったとするような報道も色々と出ている。7月11日付の香港紙「明報」は、秋の党大会で習近平の第3期目総書記連任は確実で、習近平に「人民の領袖」の尊称が使われるようになると報じた。今後「一つの国家、一つの政党、一人の領袖が重要である」という宣伝フレーズを定着させるとの話もあった。
 「人民の領袖」との呼び方については、中国国営テレビ局の中国中央電視台(CCTV)のウェブサイトに「人民領袖習近平」という特別報道のページが設けられてもいる。
 習近平を「人民の領袖」と呼ぶことについては、人民解放軍内でもコンセンサスがあるとも報じられている。習近平が台湾海峡両岸問題、すなわち台湾に中国の支配が及ばない民主主義政権が存在することを解消することができるならば、「人民の領袖」と呼ばれるに値するというわけだ。
 さらに、7月18日付の香港紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」は特ダネとして、習近平が11月にドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領、イタリアのドラギ首相、スペインのサンチェス首相という欧州4ヵ国の首脳を北京に招くことを決定したと報じた。
 つまり習近平が10月下旬に開かれる党大会で総書記3期目続投を確定させ、その後にこの4ヵ国の首脳を招くことになる、というわけだ。
 ドイツ以外の3ヵ国はこうした招待があったかどうかを明らかにしていないが、ドイツは招待があったことは認めた。ただし、首相が実際に行くかどうかは1週間前ぐらいにならないと公表されないとの立場だ。
 香港紙「明報」の報道によると、すでに習近平は長期執政のための下準備を終えているとされる。軍隊としての人民解放軍、警察権力としての公安部、宣伝機関としてのマスメディアをすでに掌握していて、この権力の座は揺るがないというわけだ。
 確かに、こうした報道をつないで見ると、習近平の3期目が決まったとの見方はそれなりの根拠があるように感じることだろう。

党内部も軍内部も掌握できていない
 公安部について言えば、習近平の腹心である王小洪が公安部長(公安大臣)に昇進したのは事実だ。王小洪は次期党大会で党中央政法委員会書記と国務委員に出世するとの話も出ている。だが、この出世予測については、習近平側の願望が色濃く反映されているとはいえないか。
 軍について言えば、軍のトップは中央軍事委員会主席の習近平であり、その下に二人の中央軍事委員会副主席がいて、さらにその下に序列4位の国防部長(国防大臣)の魏鳳和がいる構図となっている。注目したいのは、まず序列4位の国防大臣の魏鳳和が、李克強が中心となって5月25日に開催された10万人のオンライン電話会議に出席したことだ。
 この会議では明確には述べられていないが、事実上、習近平のゼロコロナ政策を否定するような内容であり、地方の党幹部を中心に約10万人が参加したことが注目された。反習近平派が中国全土に広がっていることを見せつけた経済政策関係の会議だったわけだが、ここに経済と関係ない国防大臣の魏鳳和がわざわざ参加したのである。
 これは魏鳳和が反習近平派についたということを間接的に示し、解放軍内部が習近平によって完全掌握されているわけではないということを示す役割を果たした。
 さらに6月17日、習近平の招集によって開かれた政治局会議では、25人の政治局委員のうちなんと7人が欠席するという珍事が生じた。この欠席者の中には、許其亮、張又侠の二人の中央軍事委員会副主席も含まれていた。
 習近平が招集した政治局会議に二人の中央軍事委員会副主席がともに欠席したのは、二人が揃ってたまたま体調不良だったからという可能性もないわけではないだろう。だが、二人の中央軍事委員会副主席が従順な習近平派だと見られることを嫌って、意図的に欠席したという可能性も高いのである。
 そして、魏鳳和国防大臣とともに中央軍事委員会副主席の二人が反習近平派についたとすれば、実際には習近平は軍を掌握できていないことになる。
 また台湾武力統一反対論を主張していた劉亜洲退役上将は、党内きっての国防政策の理論派と呼ばれ、国防大学の政治委員を務めて軍内部の信任が極めて厚い人物だったが、習近平を諌める動きをしたことで、いまだに行方不明である。
 そもそも軍の幹部はこぞって国防大学で劉亜洲の指導を受けており、劉亜洲に対する対応があやふやなままでは、軍が素直に習近平の言うことに従うとは考えられない。
 人民解放軍は72時間で台湾侵攻を成功させることができると言っているようだが、軍事常識的に見れば、そんなことは絶対に不可能である。
 つまり、習近平が台湾海峡両岸問題を解決すれば「人民の領袖」と呼ばれるに値するとのコンセンサスが解放軍内にあるというのは、裏返して考えてみた方がいいのではないか。そんなことは現実的には不可能であり、逆説的には習近平は「人民の領袖」と呼ばれるに値しないというコンセンサスなのだとも、解釈できる。
 欧州の4ヵ国の首脳を北京に呼ぶ案にしても、習近平の願望が強すぎて実現性はないだろう。習近平としては昔の朝貢貿易的なイメージで、欧州の4ヵ国の首脳が自分にかしずく図式にしたいのだろうが、この習近平の意図を、4ヵ国の首脳たちが気付かないということがあるだろうか。
 イタリアのドラギ首相はこの報道の2日後に辞任したのは、思いがけないアクシデントだったということになるだろうが、7月19日にこの件について中国外交部の定例記者会見で質問されたとき、趙立堅報道官は「どこからそんな情報が入ってくるのかわからないが、フェイクニュースだ」と一蹴しているところも興味深い。
 これは間違いなく外交の話であり、ドイツ政府はこういう話があったことを認めているのに、肝心の外交部がこれを完全否定しているのである。
 そもそも3ヵ月以上も前にこんな情報をわざわざ公表するだろうか。むしろ習近平続投が「既定路線」であるかのように打ち出さないと、自分の権力基盤が危ないと思っているということを、自ら明らかにしたものとは言えないだろうか。

「人民の領袖」と呼ばれたい習近平
 そのことは、今後習近平に「人民の領袖」の尊称が使われるようになるとの報道にも感じる。
 わざわざ「これからそう呼ばれるようになる」などとわざとらしく報道せず、静かに習近平を「人民の領袖」として位置付けた宣伝が次々に開始されるという方が明らかに自然だ。だが、そうはうまくできない事情があるからこそ、「これからそう呼ばれるようになる」という報道を行ったと見るべきではないか。
 そもそもこのことを伝えたのが中国本土のメディアではなく、香港の「明報」だったというところにも意味深いものを感じる。本来は人民日報などで取り上げるべきところだが、抵抗が強くてできなかったということではないのか。
 実際、2018年に人民日報が習氏を「人民の領袖」と一度伝えたが、党内で異論が噴出してその後取りやめになったという話もある。2019年12月には政治局会議で習氏を「人民の領袖」と呼んだとの報道もあったが、やはりその後が続かなかった。2021年11月にも党中央政策研究室主任の江金権氏が、習氏は「党の核心、人民の領袖、軍の統帥」になったと表現したこともあったが、この時にもその後が続かなかったはずだ。
 つまり、習近平は自らを「人民の領袖」と呼ばせたいと、何度も仕掛けてきたけれども、いずれもうまくいかなかったというのが実情なのだ。
 そもそも問題は、中国共産党のトップ層が、あと5年間も習近平独裁を許して、自分たちが権力者としてのうのうと暮らせる体制が維持できるのかについて、大いに疑問をもっているというところにある。
 経済の重要性や、どうすれば経済がうまく回るかが理解できず、朝令暮改的なことを含めて無茶苦茶な指導を次から次へと行う習近平に、もはやついていけないという意識が指導層の中にかなり広がっていると見るべきではないか。
 清華大学教授の鄭毓煌教授は、2022年前半で中国では46万の会社が倒産し、310万の自営業者が破綻し、若者の失業者は8000万人に達していることを明かした。習近平の推し進めるゼロコロナ政策によって、倒産やリストラが相次ぎ、大量の失業者が生まれているのだ。
 さらに彼らが多額の借金によって作った不動産という資産が、バブル崩壊によって事実上価値を奪われた。生活をズタズタにされたことでの習近平に対する怨嗟は、中国全土に広がっている。
 北京大学の姚洋教授は、中国の100兆元(2000兆円)のGDPのうち17兆元(340兆円)が不動産と関係しており、政府が強引に進めた不動産業界への厳しい融資規制が断崖式に経済に打撃を与えていると非難した。
 また、中国の銀行は、規模の大小を問わず、その多くが破綻しかねないところまで追い込まれている。銀行に預金はできても引き出しがなかなかできないということが、メガバンクでも起こっている。中国経済は全面崩壊局面に入ってきているのだ。

民心は完全に離反している
 経済オンチの習近平路線はもう勘弁してもらいたいという意識は、中国共産党の指導層の間でも、一般人の間でも、普遍的に広がっていると見るべきだ。この中で習近平にさらに5年託すという選択肢が残っているとは、私には思えない。
 党内の権力闘争に勝つために様々な圧力をかけていく従来型のやり方を習近平は今も行っている。それはもちろん、それなりに有効なものでもある。だが、そうしたやり方は民心が概ね離反していないという前提のもとで効果を発揮するものだ。
 いまや民心が完全に離反し、中国共産党内部でさえ反習近平派の動きが広がっていることが見えはじめ、習近平にとって都合の悪いデータが次々と表に出てくるようになっている。そんな中で、従来のパターンで権力を維持できると考えるのは違うのではないか。
 私は習近平のメンツを大切にしつつも、この秋の党大会での退任に向かって動いていくのは避けようがないと考えている>(以上「現代ビジネス」より引用)




 現代ビジネスに朝香 豊氏の「習近平はまもなく引退する…「3期目続投」を既定路線化する報道を疑うべき理由」というも刺激的な論評が掲載された。朝香氏は「もはや民心は完全に離反している」と断定し、多くの評論家が習近平氏の3期目続投は確定的とする論評を否定している。
 その根拠は経済崩壊が社会秩序破壊に到り、中国そのものが崩壊しかねないからだ、という。朝香氏の中國の状況分析は私と意見を同じくする。決して中国は経済的に盤石でもなければ、軍事大国というには軍の体制がお粗末だ。ロシアがウクライナ侵略戦争に当初投入できた軍勢は19万人だったが、中国が台湾進攻で動員できる軍勢はそれよりも少ないのではないだろうか。

 なぜなら人民解放軍は外敵と戦うよりも、中共政府を脅かす内敵と戦うためにあるからだ。しかも人民解放軍は中共政府が直接指揮しているとはいえない。軍管区ごとに司令官がいて、彼らの傭兵に近い存在だ。体制としては習近平氏が中央軍事委員会主席として全軍に君臨しているが、直接人民解放軍を指揮することは出来ない。中央軍事委員会主席の下には「二人の中央軍事委員会副主席がいて、さらにその下に序列4位の国防部長(国防大臣)の魏鳳和がいる構図となっている」。
 朝香氏は「序列4位の国防大臣の魏鳳和が、李克強が中心となって5月25日に開催された10万人のオンライン電話会議に出席した」ことに注目している。なぜなら10万人会議は李克強首相が主催する「事実上、習近平のゼロコロナ政策を否定するような」会議であり、経済会議に軍関係者が参加するのは極めて異例だからだ。李克強首相が習近平氏と対立関係にあることは周知の事実だ。

 そもそも経済政策は李克強首相の管轄だった。それを習近平氏が奪う形で経済政策に口出ししている。その結果が「経済崩壊」だ。崩壊する中国経済に習近平氏は次々と誤った対策を打ち出し「2022年前半で中国では46万の会社が倒産し、310万の自営業者が破綻し、若者の失業者は8000万人に達している」という。さらに中国民の多くが「多額の借金によって作った不動産という資産が、バブル崩壊によって事実上価値を奪われた。生活をズタズタにされたことでの習近平に対する怨嗟は、中国全土に広がっている」という。
 金融機関は「規模の大小を問わず、その多くが破綻しかねないところまで追い込まれている」という状況にある。「銀行に預金はできても引き出しがなかなかできないということが、メガバンクでも起こっている。中国経済は全面崩壊局面に入ってきている」というのが中国経済の現実だ。崩壊する中国経済を立て直すでもなく、習近平氏は台湾軍事侵攻をことある毎に叫んでいるが、人民解放軍は既に習近平氏から離反しているのではないだろうか。

 朝香氏が論評の最後で「私は習近平のメンツを大切にしつつも、この秋の党大会での退任に向かって動いていくのは避けようがないと考えている」と結論付けているのは的を得ているのではないか。このままでは中国は大乱に陥る。しかしパブル崩壊を押し止める有効策はない。
 つまりバブルは崩壊させるしかない、というのが日本の不動産バブルや米国のリーマンショックの経験から得た結論だ。バブルは仮需要に塊だから、仮需要を取り去って実需要に経済サイズを縮めるしかない。そして仮需要を形成しているのは実態のない金融膨張だから、金融機関が実需要へ向かって金融収縮するのは避けられない。金融収縮により大量の経済破綻者が生まれるのも避けられないが、中国社会に大量の経済破綻者を吸収できる余力があるだろうか。

 バブル崩壊の実態は仮需要を実需要へ収縮させる金融収縮だが、金融収縮している限り深刻な不況が社会を襲うのは避けられない。なぜなら金融収縮は経済をデフレ化させるからだ。
 収縮する金融を再び拡大させる特効薬としては外国投資が有効だ。日本でもバブル崩壊の金融に効いたのがハゲ鷹と云われた米国投機金融資本だった。しかし、撤退する外国資本は今ですら中国金融に収縮する方向の作用を及ぼしている。あれほど潤沢だった外貨準備も習近平氏の「一帯一路」や「新シルクロード」政策などにより払底してしまった。もはやAIIBの話など全く聞かなくなったではないか。

 崩壊する中国経済の責任を誰かに取らせなければならないが、中共幹部たちはその責を習近平氏に負わせようとしているのではないだろうか。党中央は静かに、だけど確実に習近平氏を切り離しにかかっているのではないだろうか。
 習近平氏に残された起死回生の手は台湾進攻だが、それすらも軍は予防線を張って阻止しようとしているようだ。なぜならロシアのウクライナでの愚を中国が台湾海峡で繰り返したくないからだ。習近平氏が事ある毎に叫んでいた台湾進攻は絵空事だと中国民にバレた時点で、習近平氏のカリスマ性の化けの皮も剥がれるだろう。その時期はこの秋になるのだろう。

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