先進自由主義諸国の対ロ経済制裁は効いているし、米国は責任を持って欧州諸国に原油や天然ガスを供給すべきだ。
<「脱炭素」なんて言っている場合か? 「脱ロシア」の次は「脱中国」だ 「ガス栓握る露」と「日本産業の喉元押さえる中国」は同じ
地球環境問題が国際的に注目されるようになったのは、1992年の「地球サミット」からだ。これが91年のソ連崩壊による米ソ冷戦終結と同時期なのは偶然ではない。
「世界全体が欧米型の民主主義に収斂して、平和が達成される」というユートピア的な高揚感のもと、地球規模で協力して解決すべき課題として、地球環境問題が大きく取り上げられるようになったのだ。
ところが、ユートピアは実現しなかった。経済成長した中国は、欧米が期待したように民主主義になるのではなく、ますます独裁色を強め、世界の覇権をうかがうようになった。急激な民主化に失敗して混乱したロシアは、強権的な国家に戻った。そして、ついにウクライナに侵攻した。
いまや「新しい冷戦」の始まりは明らかとなった。つまり温暖化問題を考える前提は、根本から変わった。もはや、「地球規模での協力による解決」など望むべくもない。
例えば、経済制裁はどうか。
いま日本の報道では、ロシアだけが世界で孤立しているような印象だが、現実は違う。制裁しているのはEU(欧州連合)、G7(先進7カ国)諸国のほかには、韓国、オーストラリアなど、わずかだ。
中国、インドに加えて、中東、東南アジア、アフリカ、南米などのほとんどの国は制裁していない。中国は多角的にロシアと貿易・投資を進めているし、インドはロシアから石油を割引価格で買いつけている。
世界の国々は、欧米の言うことをハイハイと聞くのではなく、みなそれぞれの国益で動いているのだ。この構図は、これからの「脱炭素」についても当てはまるだろう。熱心なのは世界の一部に留まるということだ。
さて、欧州がロシアのエネルギー、特に天然ガスにどっぷりと依存していたことが脆弱(ぜいじゃく)性となり、ロシアを好戦的にしてしまった。この代償は、ウクライナへの侵略戦争という破滅的なものだった。この日本への教訓は何か。
電気自動車(EV)を大量導入すると、どうなるか。バッテリーに必要なコバルト、モーターに必要なレアアースの生産は、いま中国が世界市場の大半を支配している。この状態は少なくとも今後5年程度は変えられない。
中国の重要鉱物に依存すると、何が起きるか。ロシアが欧州のガス栓を握っていたように、中国が日本産業の喉元を押さえることになる。中国は日本への経済的・政治的影響力を増すだろう。その状態で、台湾や沖縄県・尖閣諸島での万一の有事の際に、日本は強い態度に出られるだろうか。
最近まとまった日本政府の「クリーンエネルギー戦略中間整理」は、まず「脱ロシア」をしてから「脱炭素」などと、のんきなことを言っているが、安全保障への認識が甘すぎる。「脱ロシア」の次は「脱中国」こそが重要だ>(以上「夕刊フジ」より引用)
地球環境問題が国際的に注目されるようになったのは、1992年の「地球サミット」からだ。これが91年のソ連崩壊による米ソ冷戦終結と同時期なのは偶然ではない。
「世界全体が欧米型の民主主義に収斂して、平和が達成される」というユートピア的な高揚感のもと、地球規模で協力して解決すべき課題として、地球環境問題が大きく取り上げられるようになったのだ。
ところが、ユートピアは実現しなかった。経済成長した中国は、欧米が期待したように民主主義になるのではなく、ますます独裁色を強め、世界の覇権をうかがうようになった。急激な民主化に失敗して混乱したロシアは、強権的な国家に戻った。そして、ついにウクライナに侵攻した。
いまや「新しい冷戦」の始まりは明らかとなった。つまり温暖化問題を考える前提は、根本から変わった。もはや、「地球規模での協力による解決」など望むべくもない。
例えば、経済制裁はどうか。
いま日本の報道では、ロシアだけが世界で孤立しているような印象だが、現実は違う。制裁しているのはEU(欧州連合)、G7(先進7カ国)諸国のほかには、韓国、オーストラリアなど、わずかだ。
中国、インドに加えて、中東、東南アジア、アフリカ、南米などのほとんどの国は制裁していない。中国は多角的にロシアと貿易・投資を進めているし、インドはロシアから石油を割引価格で買いつけている。
世界の国々は、欧米の言うことをハイハイと聞くのではなく、みなそれぞれの国益で動いているのだ。この構図は、これからの「脱炭素」についても当てはまるだろう。熱心なのは世界の一部に留まるということだ。
さて、欧州がロシアのエネルギー、特に天然ガスにどっぷりと依存していたことが脆弱(ぜいじゃく)性となり、ロシアを好戦的にしてしまった。この代償は、ウクライナへの侵略戦争という破滅的なものだった。この日本への教訓は何か。
電気自動車(EV)を大量導入すると、どうなるか。バッテリーに必要なコバルト、モーターに必要なレアアースの生産は、いま中国が世界市場の大半を支配している。この状態は少なくとも今後5年程度は変えられない。
中国の重要鉱物に依存すると、何が起きるか。ロシアが欧州のガス栓を握っていたように、中国が日本産業の喉元を押さえることになる。中国は日本への経済的・政治的影響力を増すだろう。その状態で、台湾や沖縄県・尖閣諸島での万一の有事の際に、日本は強い態度に出られるだろうか。
最近まとまった日本政府の「クリーンエネルギー戦略中間整理」は、まず「脱ロシア」をしてから「脱炭素」などと、のんきなことを言っているが、安全保障への認識が甘すぎる。「脱ロシア」の次は「脱中国」こそが重要だ>(以上「夕刊フジ」より引用)
引用したのはCO2温暖化説に真っ向から異を唱える杉山大志氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)の論評だ。最後の一文「まず「脱ロシア」をしてから「脱炭素」などと、のんきなことを言っているが、安全保障への認識が甘すぎる。「脱ロシア」の次は「脱中国」こそが重要だ」には意を同じくする。
ただ対ロ制裁を実施している国は先進自由主義諸国だけで、世界では少数派だというのには首を傾げざるを得ない。経済力がある先進諸国の大半が対ロ制裁に踏み切っている効果は決して侮れないものがある。プーチン氏は「経済制裁は効いてない」と発言しているが、クレムリンの奥の院までは効いてないかも知れないが、先進自由主義諸国の経済制裁は確実にロシア国民の日々の暮らしに効いている。
評論家やコメンテータの多くは「食糧自給が出来てエネルギー輸出大国のロシアに経済制裁は効かない」などと解説するが、それは間違いだ。ことにロシアに進出していた先進自由主義諸国の各企業が一斉に撤退したのはロシア国民に「世界がロシアを見捨てた」という宣伝効果が大きいだけでなく、雇用や各種商品提供面で確実に国民経済に大きな影響を与えている。
ことにロシア国債のデフォルトはロシアが国際金融から資金調達の道を閉ざしたことになり、ロシア産業界に深刻な影響をもたらす。確かに天然ガスパイプラインの元栓は空いたままで、エネルギー輸出対価は国庫収入となるだろう。しかし戦争前ですらエネルギー関係のロシア財政収入に占める割合は30%台でしかなかった。他の経済活動による税収の方が大きかった事実を認識しておく必要がある。対ロ経済制裁を受けても、エネルギー収入があるから大丈夫だ、とテレビで解説するのは余りにロシア経済の実態を知らない発言だ。
杉山氏が「電気自動車(EV)を大量導入すると、どうなるか。バッテリーに必要なコバルト、モーターに必要なレアアースの生産は、いま中国が世界市場の大半を支配している。この状態は少なくとも今後5年程度は変えられない」と指摘するのは正しい。先進自由主義諸国は独裁専制国家とサプライチェーンを組むのは危険だと知った。中国は巨大な経済力を背景に東欧までも「一帯一路」経済圏に取り込んでいた。
それがいかに危険な事か、ロシアのウクライナ軍事侵攻で「現実」に独裁政権の脅威を目の当たりにした。そして対ロ制裁に踏み切らない中国に先進自由主義諸国は「拒否反応」を示すようになった。今更ながら「中国は一つ」だなどと中共政府と唱和していた国々が「唇寒し」の感に包まれている。
世界的なCO2排出権利権屋に踊らされて「脱炭素」と叫んでいた国々は電気自動車が本当にCO2排出を削減するのに寄与するのか。さらにCO2排出が地球環境を破壊しているのか、を科学的に検証する必要があるのではないか。
地球はCO2濃度とは関係なく、数度の氷河期と間氷期とを繰り返してきた。氷河期とは文字通り地上に「氷河」がある時期で、現在も氷河期である。そして間氷期とは地上のすべての氷河が消えた期間を指す。もちろん間氷期の平均気温は現在よりも遥かに高かったのは云うまでもない。それで地球が破壊されたのか、むしろ氷河期の寒冷な時期にこそ地球上の生命は危機を迎えている。地球気候の変動はCO2濃度といった微細なエレメントに支配されているのではなく、太陽活動や惑星の公転軌道といった大きな宇宙活動の影響によることが解明されつつある。
CO2排出は炭素の酸化反応によって生じる。それは地球上の有機物が作り出した炭素を空気中にCO2として還元することでもある。地球環境活動家はCO2を減らすために植樹が大事だと主張するが、木々はいつかは伐採されて燃やされる。つまり植樹は数十年から数百年を循環サイクルとするCO2の循環でしかない。地下資源も空気中のCO2を微生物や植物が炭素として「資源」に蓄えたものであって、それらをエネルギーを使用するの炭素をCO2循環サイクルに戻すだけだ。循環サイクルの長短はあっても、地下資源の利用は植樹するのと何ら変わらない。
ただ原子力の利用は核分裂エネルギーの利用であって、それは半減期10万年もの放射能を大量に排出する。地球の循環サイクルになかった生物に悪影響を及ぼす物質を地球環境に排出する。この方が深刻な影響を与えると、地球環境活動家たちが気にしないのはなぜだろうか。彼らは原子力利権の恩恵を受ける関係者なのだろうか。
対ロ経済制裁の旗振りをした米国は欧州諸国に対して、自国の原油や天然ガスを供給する責任がある。当然ながら、米国はパリ協定から離脱して、原油や天然ガスの増産に全力を傾けるべきだ。
欧州諸国も口ではCO2削減を謳いながら、実際は寒冷な冬を乗り切るためにCO2を大量に排出している。薪ストーブが自然に優しい、などといった寝言を唱えてはならない。CO2循環サイクルが短いだけで、地下資源を燃やして団を取るのと、原理は全く同じではないか。パリ協定に参加し、CO2排出削減のためにシェールオイルの開発凍結と天然ガスパイプラインの工事を対ししたバイデン政権はエネルギー政策を直ちに転換しなければならない。