人は自分の目で相手を見、世界を観る。

戦争の行方を左右する「広告代理店」のマインドコントロール戦略/ゼレンスキーを操るのは誰か?
 戦争にプロパガンダは付き物で、アンヌ・モレリ『戦争プロパガンダ10の法則』(草思社文庫、2015年刊)によるとどちらの側も次のように言いたがる。
▼われわれは戦争をしたくなかった。しかし敵側が一方的に戦争を望んだのだ。
▼(だから)敵の指導者は悪魔のような奴だ(と判るだろう)。
▼われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う。
▼われわれの大義は神聖なもので、これは正義の戦いである。この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である。
▼(いや)われわれも意図せざる犠牲を出すことが(少しは)ありますよ。だが敵はわざと残虐行為に及んでいる。卑劣な兵器や戦略を用いている……。

 何やら、ごく最近も毎日のように耳にしてきた論法のようにも聞こえるが、これは英国の貴族の家柄でありながら労働党のリーダーになったポンソンビー卿が、第1次大戦中に英政府が行った「あらゆる国民に義憤、恐怖、憎悪を吹き込み、愛国心を煽り、『嘘』を作りあげ、広め」るための戦争プロパガンダの手法を分析して「10の法則」としてまとめたものの要約である。著者のモレリはベルギーの歴史家で、これらの法則が第2次大戦でもその後の戦争でも繰り返されてきた常習パターンであることを後付けている。

メディアの桁外れの波及力
 とはいえ、第1次大戦の時代にはまだラジオもなかった。戦争プロパガンダと言っても、それが行われたのは議会や集会での指導者の演説とそれを伝える翌日の新聞くらいなもので、マイクロフォンとラウドスピーカーからなる音響システムや、その両者間を無線電波で繋いだラジオ放送が登場するのは1920年代、広く普及するのは30年代だし、映画が無声からトーキーに切り替わるのも同じ頃だった。
 それらの新しい電気的マスメディアをいち早く活用して煽動政治を行ったのはヒトラーのナチスで、大広場に何万人もの聴衆を集めて集会を開くのは夜と決め、何十本の色とりどりのサーチライトが天を舞う中、ワーグナーの荘重な音楽が大音響で鳴り響き、そこで一転して訪れる静寂と真っ暗闇とを切り裂いて一筋の強力なスポットライトが輝いて、白馬に跨ったヒトラーが登場してヒラリと演壇に立ち、火のような演説が始まる……。
 馬も演壇の陰の踏み台も、ヒトラーの身長がそれほど低くないように見せるための演出だった。彼は身長172~175センチとされ、当時のドイツ人としては中肉中背、特に背が低いという訳ではなかったが、自ら命じて組織した親衛隊の中核=武装部隊の隊員資格を北方人種の出自、金髪碧眼、身長174センチ以上としたため、それより背が低いと思われないようにするために酷く気を遣っていたとされる。金髪碧眼でなく「黒髪茶瞳」は変えようもなかったが……。
 音声だけでなく、音楽、映像、画像、光線、旗、プラカード等々、視聴覚を総動員して人々の魂を揺さぶり戦争目的へと動員するこのやり方を、ゲッベルス宣伝相は「大衆の獲得という目的に役立つならどんな手段でもよい」「娯楽の中に宣伝を刷り込ませ、相手に宣伝と気づかれないように宣伝を行う」と説明しているが、まさにこれが「マルチメディア」によるマインドコントロールの元祖で、実際、戦後1950~60年代になると、米国の広告代理店が、テレビCMで人々を騙して物の消費に走らせるための手法を開発するため、ゲッベルスの宣伝術を徹底的に研究したと言われている。

戦争にも携わる広告代理店
 米国が行う戦争を正当化するために、広告代理店のあざといPR作戦のノウハウが採用された実例を初めて世界が目撃したのは、1990年のイラクのクウェート侵攻に対するブッシュ父の「湾岸戦争」だったろう。侵攻から2カ月後に米下院の公聴会の証言台に立った15歳のクウェート人少女が、奇跡的にクウェートから脱出に成功し米国に逃れてきた体験を通じて、自分の眼で目撃したおぞましい出来事として語ったことを聞いて、世界は「涙そうそう」に陥った。彼女はこう語った。
「病院に乱入してきたイラク兵たちは、生まれたばかりの赤ちゃんを入れた保育器が並ぶ部屋を見つけると、赤ちゃんを1人ずつ取り出し、床に投げ捨てました。冷たい床の上で赤ちゃんは息を引き取っていったのです。怖かった……」
 これを受けてブッシュ大統領も「心の底から嫌悪感を覚える。こういう行為をする者たちには相応の報いを受けることをはっきり知らせてやらなければならない」とコメントを発表した。ところがこれは全くの猿芝居で、このナイラという名の少女は実は在米クウェート大使の娘で、ずっと米国にいてクウェートなど行っていなかったことが判明した。クウェート政府は米国の一流広告会社ヒル&ノールトン社と契約してサダム・フセインの悪虐性を米国内と世界に向かってアピールすることを依頼したが、同社は手近な関係者の娘を役者に使うという安易極まりない方法で経費を節約し、自社の信用のみならず米国そのものの威信を傷つけたのだった。
 当時、テレビのニュースを点ければ必ず流れたのが「油まみれの水鳥」の映像だった。イラクが故意に油田にミサイルを撃ち込み、そこから流れ出した原油によって、WWF(世界自然保護基金)によれば約2万羽の野鳥が被害に遭い、その一部は野生生物レスキューセンターに搬送され約300羽が救済された、という話として伝わった。全身を真っ黒な油で覆われて羽を持ち上げることも出来ないでいる鳥たちの写真を見れば、誰もが「フセインは本当に悪い奴だ。ぶっ殺してやればいいんだ」と腹が煮えくり返り、そこにブッシュの「フセインはヒトラーよりももっと悪質だ」という宣伝文句が重なれば「日本も金だけ出すんじゃなくて自衛隊を送らなければいけないんじゃないか」という世論も湧いてこようというものである。
 後になって、これが米軍自身の油田攻撃によるものだったことが明らかになるが、これもヒル&ノールトン社によるフェイクであったのかどうか、今なお真相は不明のままである。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では
 冷戦が終わり、東側のワルシャワ条約機構(WPO)はゴルバチョフの主導でさっさと解体したにも関わらず、西側の北大西洋条約機構(NATO)は米国の反対で解散を躊躇い、それどころか自らの存在意義を「再定義」して欧州域外の危機に米欧が共同で当たること、それと並行して旧WPOの諸国を順次NATOに誘い込んでロシアの影響力を削ぐことを決めた。その罪科が今日のウクライナ戦争にまで及んでいることは、本誌が繰り返し述べてきた通りである。
 そのNATOの「域外化」の最初の試金石となったのは、ボスニア・ヘルツェゴビナをめぐってモスレム人とセルビア人との間で92年に起きた血で血を洗う民族抗争だった。冷戦の終わりと共に、旧ユーゴスラビア連邦はバラバラになり、ボスニア・ヘルツェゴビナでは人口の4割強を占める多数派のムスレム人が独立を宣言して支配勢力となり、3割強の正教系のセルビア人、2割弱のカトリック系のクロアチア人との間で対立。その後4年間で数十万の市民が命を落とす憎悪地獄に突入した。
 そのボスニア・ヘルツェゴビナのムスレム人の政府の外相が、政治も外交も携わったことがなく、単に米国留学の経験があって英語が堪能であるという理由で選ばれた大学教授のシライジッチだった。来るべき紛争を国際社会に訴えて味方を作るという任務を与えられて、ろくに資金もなく、随員がつく訳でもなく、たった1人でワシントンを訪れた彼が出会ったのが、PR会社のルーダー・フィン社のジム・ハーフというディレクターだった。
 ハーフはすでにその前年に、独立を遂げたばかりのクロアチア共和国から国際PRの仕事を受注していて、ユーゴをめぐる情勢に知見があった。シライジッチは彼を通じて、まずは米議会の有力議員やブッシュ政権のジェームス・ベーカー国務長官、大手マスコミの記者たちに自国の抱える苦難を理解してもらう仕事に取り組む。その苦心惨憺の様子は、高木徹が制作した2000年10月放送のNHKスペシャル『民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕~』と、その取材を元に執筆した『戦争広告代理店/情報操作とボスニア紛争』講談社文庫、05年刊)を参照してもらう他ないが、1つだけ強調しておきたい注目点は、「『民族浄化』という言葉がなければ、ボスニア紛争の結末はまったく別のものになっていたに違いない」(同文庫P,110)という1行である。
 ethnic cleansing。ワシントンのPRディレクターが思いついたこのたった一言のキャッチフレーズが、世界はもちろん米国でもほとんど誰も知らなかったボスニア・ヘルツェゴビナという独立したばかりの小国の運命に、米政府が深々と関わっていく情動的な契機となり、それがやがては98~99年のNATO挙げての「コソボ」空爆大作戦とセルビアのミロシェビッチ大統領の社会的抹殺という事件にまで繋がっていく。ホロコーストでもジェノサイドでもなく、この言葉。
 たった一言が、世界の世論の激情的と言っていいほどの流動を呼び起こして事態を動かしていく、そのマルチメディア的マインドコントロールの恐ろしさは、現に今も我々が目撃しているものである。さて、戦争解説者であるかのように毎日テレビに出てくるゼレンスキーを操るのはどこの広告代理店なのだろうか>(以上「MAG2」より引用)。




 たった一つのフレーズが歴史を変える影響力を持った例なら枚挙に暇はない。「リメンバーパールハーバー」がそうだった。日本海軍が真珠湾攻撃に踏み切ったのは欧州戦線に参戦したいルーズベルト大統領たちの陰謀だったことは明らかになっている。
 だからゼレンスキー氏もウクライナ戦争にウクライナ人を巻き込んで「ひと儲けしている」と推測するのは邪推もいいところだ。引用した論評は高野孟氏のTHE JOURNAL』2022年6月20日号より一部抜粋)したものだが、彼の邪推はゼレンスキー氏だけでなく、必死で祖国防衛戦争を戦っているすべてのウクライナ国民に対する冒涜だ。

 ゼレンスキー氏が誰かに操られている、と考えるのは邪推だ。ロシアのウクライナ侵攻を受けて英国などは彼に亡命を勧めたが、彼はキーウに残ってウクライナ国民と共に戦うと伝えた。当初ロシアは三日もあればウクライナ全土を制圧できると考えていたし、英国をはじめNATO諸国もそう考えていた。だから大統領としてキーウに残ることは、ゼレンスキー氏はウクライナ大統領として戦死することを覚悟していたはずだ。
 確かに世界には様々な思惑や陰謀が渦巻いている。経済のグローバル化を進めて来たのはウォールストリートに巣食うDSだし、彼らの影響力が「世界は一つ」というスローガンで広められたことも承知している。そしてDSたちの目的は「金儲け至上主義」の世界構築だ。「金儲け至上主義」という一点でDSたちは中共と結びついた。彼らにとって国家とは「仮の宿」でしかない。そもそもカネは天下の回り物で、国家にすら縛られるものではないからだ。だからDSたちの行動原理は反米的ですらある。

 プーチン氏はDSたちと握手して先進自由主義諸国の投資と企業を受け容れたはずだった。しかしプーチン氏は「大ロシア帝国」の亡霊に憑りつかれていた。習近平氏が「中華思想」に憑りつかれているように。そうした点で、この二人の独裁者は酷似している。
 高野氏はどのように理解しているのか知らないが、ウクライナに侵攻したのはロシア軍であって、2014年にウクライナのクリミア半島を蚕食したのもロシアだ。ドンバス地域に入植したロシア人を扇動し、大量の武器や資金援助をしてウクライナ政府と戦わせて来たのもロシア政府だ。ゼレンスキー氏が今回の戦争を仕掛けたわけではない。断っておくが、クリミア半島に暮らしているタタール人を追放して、ロシア人を大量入植してきたのもスターリン統治下の旧ソ連政府だ。

 数世紀に亘るロシアの「入植政策」は実質上の侵略政策だった。それと同じことを中共政府は新疆ウィグル地区やチベットやモンゴルで行っている。そして、もしかすると日本でもすでにそうした日本侵略プロジェクトが進行しているのかも知れない。
 親中派と称する反日・日本人が跋扈する政界や経済界を、私たちは警戒しなければならない。既に中共の魔の手は日本国内に深く静かに浸透している。お人好しの日本国民は「善隣友好」を唱えるが、中共にとっては日本国内に浸透するための方便でしかない。

 ただ高野氏がマスメディアのプロパガンダは危険だ、とする警告には同意する。彼は原油塗れになった海鳥の写真が環境利権を増幅させたと指摘しているが、全くその通りだ。今は北極海の氷が解けて、痩せ細った北極熊の写真が「地球温暖化」のせいだとして多用されているが、実際には北極熊は一時期1万頭まで激減した生息数が、現在では6万頭まで増えている「不都合な真実」をマスメディアは報道しない。
 ツバルが地球温暖化で水没している、という写真も使い回されているが、実はツバルの国土は増えているという「不都合な真実」をマスメディアは報道しない。中学の理科程度の常識があれば「連通管」の原理でツバルだけが水没するのはおかしい、と気付くはずだ。しかしテレビ局の人々は「連通管」の原理を理解してないのか、何度もツバル水没のビデオを繰り返し報道する。

 電気は良いが、内燃機関は悪い、というプロパガンダにもウンザリだ。電気を作るための装置や発電装置が何によって成り立っているのか、という検証を誰かしているのだろうか。その結果として電気がCO2の削減に寄与する、と科学的な根拠を得ているのだろうか。そしてCO2が地球温暖化の原因だ、というのなら、CO2濃度変期とは関係なく数度にわたって起きた氷河期と間氷期の繰り返しを、CO2濃度を使って合理的に説明して頂きたい。
 そうした科学的な検証もなく、CO2温暖化説を唱えるのは中世の宗教裁判に酷似している。現代もまた中世のままの世界にあるようだ。武力(人殺し)により土地を略奪し、奪った土地を「戦利品」として国民に誇示し歓喜する、とはどれだけ進歩しない人類たちだろうか。

 間違ってはならない、ロシアがウクライナに軍事侵略しているのであって、米国がロシアをけしかけたのではない。そうだとすればプーチン氏はどれほどの大馬鹿者だというのか。
 そして米国が武器を供与して大儲けしている、という評論家がいるが、ウクライナは米国に兵器の対価を支払っているのか。ウクライナへの武器供与が無償なら、米国が大儲けしていることにはならない。高野氏が自由に論理を展開して「言いたい放題」の論評を公開できるのも、自由で開かれた国に暮らしているからだ。決して中国やロシアではあり得ない慶事だ。そうした自由で民主的な社会の恩恵に一人でも多くの人類が浴するように、ウクライナの戦争でウクライナが敗れるようなことがあってはならない。

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