岸田氏の「所得倍増計画」は間違いだらけだ。

<「貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進め、投資による資産所得倍増を実現いたします。そのためにNISAの抜本的拡充や国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員して『資産所得倍増プラン』を進めていきます」
 岸田首相は今月5日、ロンドンの金融街シティーで「新しい資本主義」について講演、「Invest in Kishida(岸田に投資を)」と海外の投資家に呼びかけた。講演では人や科学技術、脱炭素化などへの投資について語ったが、そのなかで人への投資についての主張に注目した。

大荒れの株式市場、素人には大けがのもと
 日本の家計の金融資産は昨年12月末で2023兆円と初めて2000兆円を超えた。そのうち過半数を占める1092兆円が現金・預金だ。新型コロナウイルス禍による政府の給付金や個人消費の抑制が続き、家庭の貯蓄が増えたことが要因だ。
「資産所得倍増プラン」では、眠り続けてきた1000兆円単位の預貯金をたたき起こし、市場を活性化する。そして国民の投資意欲を盛り上げ、家庭内預金を積極的に投資に回すことが資産所得の倍増につながると力説した。首相の主張に経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう指摘する。
「首相はNISA(少額投資非課税制度)の抜本的な拡充を強調しますが、2024年以降の実施は小幅修正です。日本市場の活性化のため日本への投資を呼び込むことが講演の目的ですが、為替で円安が続くのを見ても、海外の投資家には不人気で、新しい資本主義の訴えも相手にされないようです」

 さらに岸田首相の「資産所得倍増プラン」もこう一蹴する。 
「『家庭に眠り続ける預貯金をたたき起こす』と言いますが、乱高下する大荒れのいまの株式市場に素人が手を出せば大けがのもとです。首相の言葉に乗って投資を始め、貯金を減らして老後の生活を危うくする高齢者が出てくることが心配です」

金融所得課税強化と矛盾
 そもそも岸田首相の「資産所得倍増プラン」は、宏池会の故池田勇人元首相の所得倍増計画の受け売り、「Invest in Kishida」は安倍元首相の「Buy my Abenomics(アベノミクスは買いだ)」と日本への投資呼び込みの二番煎じ。国民への投資呼びかけは、アベノミクスの結果生じた格差拡大につながりはしまいか。

 SMBC日興証券の宮前耕也シニア財政アナリストが述べる。
「これまで金融所得課税の強化を言う一方で、貯蓄を投資に回すためNISAの抜本的拡充の発言は矛盾し整合性に欠けています。ただ、NISAの拡充は投資への裾野を広げると同時に、金融所得課税強化の流れを修正する発言とも思えます。成長と分配のバランスをどう取るかに注目です」
 最近の総理大臣のなかでは、最も経済や金融の実態に精通した人間だと自負する、という首相の政策実現に期待しよう>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)



 引用したのは日刊ゲンダイに掲載された木野活明氏(ジャーナリスト)が寄稿した、夏の参議院選に向けて岸田氏の政策提言の一環として表明した「所得倍増計画」に関する論評だ。もちろん岸田氏の「所得倍増計画」の中味は矛盾だらけで明確な指針は何もない。
 何が矛盾しているのか。まず外国投資を呼び込む手立てとしてNISA(少額投資非課税制度)の拡充を上げているが、それは木野氏が指摘するまでもなく税制改革で上げている金融所得課税の強化に矛盾している。何よりも富裕層優遇税制の最たる配当所得課税20%源泉分離課税を廃止しようとする動きに明らかに反してはいないだろうか。

 そもそもデフレ経済からの脱却が出来ない限り所得倍増など出来はしない、という認識が岸田氏にないのではないか。デフレ経済から脱却するには海外移転した製造企業の生産現場を国内に回帰させる必要がある。国内雇用を堅調にし、人手不足が慢性的になってこそ、企業経営者が本気で生産性向上を図るための技術・研究開発に投資し、豊富な内部留保を新規工場建設に投資するだろう。当然ながら、新規工場を建設するに当たって、普通の経営者なら生産性の向上を図った効率的な工場を建設する。それがデフレ経済から脱却する発端となる。
 企業が国内で製造して、海外で競合する輸出は大丈夫か、という懸念は円安で払拭されるだろう。円安こそ輸出産業にとって朗報だ。しかも構造的に円安基調は当分の間は崩れそうにない。円安を嘆くよりも「モノ造り日本」が飛躍する好機とすべきだ。

 もちろん政府がUターン投資する企業に対して支援策を講じるべきだ。企業の技術開発や研究開発費に対して減税措置を講じるべきだ。ただし、減税した法人税本税は段階的に旧に復すべきだ。そして円安に直撃された消費者物価が個人の可処分所得減への影響をなくすために、消費税を廃止すべきだ。そうすれば消費者物価高騰が個人所得の消費支出に与えるマイナスの影響をゼロにすることが出来る。
 もちろんガソリンへのトリガー条項を発動すべきだし、高速道路千円乗り放題を実施して、都市近郊の温泉地や行楽地の賑わいを取り戻すことだ。料飲飲食業のコロナ禍からの経営難から脱却に資するために、当分の間は企業交際費の損金不算入を凍結すべきだ。そうすれば料飲飲食業者は経営改善に劇的な効果を見るだろう。

 個人投資を促して、個人を金融賭博に引き込んではならない。日本国民は概して投資・信託に不慣れだ。投資促進すれば詐欺まがいの金融商品が登場しかねない。そんなギャンブル国家に日本をするよりも、経済界全体が堅実な「モノ造り日本」に回帰する方が長く日本経済を成長させるだろう。
 アジアのリーダーになるためにも、日本は経済成長する義務がある。いつまでも無知蒙昧な経営者が生産部門を労働賃金だけのメリットを目当てに海外移転させる愚行を経済評論家諸氏は窘めるべきだ。

 日本の安全保障は経済安全保障があってこそ成り立つ。それは先に大戦当時の日本を振り返るまでもなく、ロシアの現状を見れば明らかだ。自国で製造産業の部品供給から組み立てまで一貫生産できる態勢にしてこそ、経済安全保障は成立する。グローバリズムの名の下に促進した「国際分業」は安易な利益最優先の企業経営でしかなかった。
 日本の労働者所得を上げてこそ、国内個人消費規模は拡大する。それが再び企業収益に繋がる、という好循環をもたらし、日本国民が消費する消費財は安心品質として世界でも受け容れられるだろう。再び日本が「モノ造り大国」として甦ることこそ、経済成長のカギだ。岸田氏の政策には国民所得倍増への明確な道筋がない。外国人労働移民を促進することは国民所得を増やす道ではなく、労働賃金を抑制する貧困化への道だ。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。