習近平氏の失脚が始まっている。

李克強首相の深謀遠慮
 1ヵ月前から続いている中国・上海の都市封鎖は、経済活動や住民の生活に名状しがたい混乱を与えながら、肝心のコロナ感染を全く制圧できていないという、大失策となっている。

 前編「習近平の『ゼロコロナ』への固執が招いた上海ロックダウン地獄絵図」で解説したように、秋の党大会を見すえて実績作りに狂奔した習近平国家主席の失態だが、その一方、このコロナ対策における習主席の大失敗・失態を横目にして、自らの管轄する領域で存在感を発揮している指導者もいる。党内における習主席最大のライバルであって対抗勢力筆頭の李克強首相である。
  上海がロックダウンされている中で、李首相はどのような動きをしているのか。それを時間順に追って見ていけば実に興味深いものがある。
 まずは上海ロックダウンが始まった直後の3月29日、李首相は国務院常務会議を主宰したが、会議のテーマは特大交通事故の防止や経済上の投資拡大の促進であってコロナ対策や「上海」とは全く無関係であった。
 そして4月7日、李首相は再び国務院常務会議を主宰した。今度の議題は年金政策・失業対策の調整と研究であって、やはり「コロナ」とも「上海」とも関係はない。4月9日、李首相は「経済情勢に関する専門家・企業家座談会」を主宰し、参加者たちの声に耳を傾けたが、コロナのことも上海のことも一切話題に出ていない。
 そして4月11日、李首相は視察先の江西省で「一部地方政府責任者座談会」を主宰し、参加者たちと共に経済成長の維持について討議した。江西省の党委員会書記・省長がリアルで参加した以外に、遼寧省・浙江省・広東省・四川省4省の省長はオンライン参加した。
 4月13日、李首相はまたもや国務院常務会議を主宰し、「消費促進」などに関し具体策を討議しそれを決定した。4月14日、李首相は来る洪水・旱魃期における「洪水対策・旱魃対策」に関して、関連中央官庁と各地方政府に「重要指示」を出した。そして4月25日、李首相は「国務院第5回廉政会議」を主宰、「清廉潔白の政治」の実現について参加者たちと討議して「重要講話」を行なったという。

上海ロックダウンには一言も触れず
 このように、上海ロックダウンの1ヵ月を通して、李首相は地方視察をしたり一連の会議・座談会を主宰したりして精力的に動き回っていることがわかる。これを見る限り彼の首相としての存在感は十分に示されていると思うが、その反面、この一連活動において、首相の彼が見事と言って良いほど、コロナ対策の話と上海ロックダウンの話に一切ノータッチの姿勢を貫いていることは特徴的である。
 上述の一連の会議・座談会では李首相は、喫緊のコロナ感染拡大のことに一切触れず、コロナ対策についても一言も語らない。そして、上海という2600万人の大都会がロックダウンされているという国家の一大事に関しては、李首相は、ただ見て見ぬふりしているのである。  普段ではそれはあり得ない話である。李首相の立派な「職務放棄」であるとも言えよう。それでも李首相が、そんなことは百も承知の上でコロナ対策と上海のことに一切触れない姿勢を貫いたのは、彼なりの政治上の深謀遠慮があるのであろう。

 彼がこのような姿勢をとった狙いの一つはやはり、国民から大きな反感を買っている「ゼロコロナ」政策を自分自身から完全に切り離して、首相としての自分はこの不人気な政策に一切関わってないことを国民に明確に示すことにあるのであろう。つまり彼は全国民に向かって、「俺がこんな馬鹿げた政策には全く無関係だぞ」と言いたかったのであろう。
 それと同時に彼はまた、自分が「ゼロコロナ」政策にも上海のロックダウンにもむしろ反対していることを暗に示唆しているのである。首相として独裁者習主席の看板政策に公然と異を唱えることはできないが、「ゼロコロナ」政策に一切ノータッチする態度を徹底的に貫く彼の言動は誰から見ても、この政策に対する反対姿勢の表れでしかない。

秋の党大会に向け政治闘争の予感
 その一方、李首相は、経済成長・消費拡大・失業対策などの課題で連日会議を開いて具体的対策を講じ、国民の関心に答えて国の実情に沿った政策を進める政策派・実務派首相として存在感を発揮している。
 4月12日、中国銀行所属の著名経済学者の管濤氏は「毎日経済新聞」の関連記事に登場して、「専門家・企業家座談会」を主宰した李首相については、「首相は各業界の抱える問題と困難を詳しく把握しており、問題のポイントをきちんと押さえている。人々は中央上層部が当面の情勢を把握していないのではないかとの心配があったが、李首相は実情をきちんと理解しているだけでなく、具体的対策も持っているから心が強い」と語った。
 党中央のメデイアで「習近平崇拝」が圧倒的な論調となっている中て、上述のような赤裸々な「李克強礼讃」が著名経済学者の口から堂々と吐かれて新聞紙に登場するようなことは中国では滅多にない。
 捉えようによっては、「実情に通じる実務派首相」の李氏に対する称賛はまさに、「実情を無視してゼロコロナ政策強行」の習主席に対する当て付けでもあるのである。
 言ってみれば、習近平の失敗を横目に、李首相は自らのイメージアップ作戦に成功して株を上げているが、ひょっとしたら李首相は、今後も続く習主席のコロナ対策の失敗とそれに伴う主席自身の権威失墜を見据えて、それに取って代わる指導者としての自分自身の地歩を固めているのかもしれない。
 秋の党大会に向かっての党内闘争が今後どういう展開を見せてくるのかはいまだ未知数であるが、一つ確実に言えることはすなわち、自らの主導する「ゼロコロナ」政策の失敗によって習主席の個人独裁体制はすでに綻び始めていることである>(以上「現代ビジネス」より引用)




 最近、中国内部から「習近平氏は既に失脚しているのではないか」と憶測させられる各種シグナルが送られているという。引用記事は現代ビジネスに掲載された中国評論家石 平氏の中国ウォッチングだ。
 一時李克強首相は習近平氏が経済関係にまで口を出して、党内外で存在感を失っていた。その李克強首相が存在感を増しているという。その現れが石平氏が指摘する上海ロックダウンと李克強首相との関係だ。

 ただ未確認情報で流れている習近平氏の「失脚」はあり得ない、と石平氏は見ている。なぜなら李克強首相が存在感を増しているのは事実だが、中共政府内部で権力争いがあれば、それは決着が付くまで表面化しないはずだ、と。
 この秋の党大会で権力の移譲があるとしても、数ヶ月も前から権力移譲が静かに進められるなどあり得ない。習近平氏は江沢民の後を継いで党の最高権力者になってから現在まで、党人事から官僚人事に到るまでで100万人以上も失脚させ、粛清してきた。そうした熾烈な権力争いが、表面化してから数ヶ月も静かに平穏に推移することなど決してない。

 しかし習近平氏が兄と恃むプーチン氏がウクライナ侵攻で苦戦し、弟分の金正恩氏は5月9日の「戦勝記念」で国民を大動員した軍事パレードを開催したためか北朝鮮で武漢肺炎のパンデミックが起きてパニックに陥っているという。さらに習近平氏が推進するゼロコロナ政策で上海などのロックダウンにより、中国経済は崩壊の速度を速めている。習近平氏が政治権力を維持することに興味を失ったとしても不思議ではない。
 これまでなかったことだが、上海などではPCR検査を強制する当局に対して市民が堂々と拒否し、出動して来た警察官を怖れなくなっている。一人でも陽性者が出れば本人は何処かの収容所に隔離され、その地区全員をPCR検査することになっている。しかしPCR検査で陰性であっても、地区全体がロックダウンされて集合住宅の出入り口は溶接されるため、PCR検査を受けて陽性になって何処かに隔離されるよりもPCR検査を受けずにロックダウンされた家屋内で過ごす方が良いと市民は考えている。

 北京でもロックダウンを実施して政情不安が一気に高まっているようだが、中共政府は政府倉庫には中国民が一年半は飢えないだけの膨大な穀物が貯蔵されている、と国民に宣伝している。
 中国では政治権力者が誰であれ、中国民は気にしない。ただ人民を飢えさせなければ、誰が権力者であろうと受け容れる歴史がある。その反対に人民が飢えれば、政治権力者がいかに高邁な論理を唱えようと、政治権力者は人民によって追放される。それが中国の歴史だ。だから食糧が不足すると判明した中共政府は世界の市場から最優先で穀物や小麦を買い集めた。

 しかし中国民は中共政府の発表を決して信じてはいない。倉庫にあるはずの備蓄穀物が横流しされていて空だった、ということは普通にあり得るからだ。だから政府の食糧倉庫の実地検査がある前に、各地の食糧倉庫が火事になる。いや食糧倉庫だけではない。弾薬庫も検査前にはよく火事になって大爆発を起こす。
 現在はロシアの化学工場や公共施設で火事が全国各地で起きている。備蓄していた必需品が必要となった段階で不思議なことに火事が頻発している。確かに世界の穀物市場で中国が買い漁って穀物の市場価格を高騰させたのは事実だが、世界で流通する穀物の50%が中国の倉庫に収まっている、という中共政府の発表を信じることは出来ない。なぜならそれほど多くの穀物コンテナがここ数ヶ月間に中国の関税倉庫を通過したとは思えないからだ。

 記事によると「李首相は、経済成長・消費拡大・失業対策などの課題で連日会議を開いて具体的対策を講じ、国民の関心に答えて国の実情に沿った政策を進める政策派・実務派首相として存在感を発揮している」という。それは相対的に習近平氏の存在感が低下していることになるが、だからといって李首相がこの困難な時期に次期総書記の名乗りを上げるとは思えない。
 習近平氏が仕出かした「一帯一路」や「新シルクロード」といった経済政策の失敗や「戦狼外交」による先進自由主義諸国から突き放された「火中の栗」状態の中国を拾い上げようとは思わないだろう。それらは習近平氏の責任として総括した上で、新総書記として名乗りを上げる方が良いと判断しているはずだ。そうした意味でなら、習近平氏の失脚が始まっている、というべきかもしれない。

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