真実不虚。

<戦争が始まって以来、ロシア当局はメディアを抑圧し、SNSへのアクセスを制限し、政府に近しい少数の女性を通してプロパガンダを行っている。フランス国際関係研究所のジュリアン・ノセッティ準研究員に、フランスのマダム・フィガロがインタビュー。 

 ある国は包囲され、ある国は封鎖される。ウクライナ侵攻以来、ロシアは「特別軍事作戦」という言葉を使い、国民に耳障りの良いプロパガンダを展開している。いくつかの独立系メディアは閉鎖や放送停止を余儀なくされ、外国人特派員もモスクワやロシア国内での活動を停止せざるを得なくなった。SNSはブロックされ、制限され、親プーチンのレトリックであふれかえっている。 
 プロパガンダの立役者には、プーチン大統領の行動を正当化するために前線に立つことをいとわない女性たちがいる。その中には、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官、人気トーク番組の司会者オルガ・スカベーエワ、そして2月末から欧州連合(EU)によって放送が禁止されているチャンネルネットワークRT(ロシア・トゥデイ)の代表マルガリータ・シモニアンが含まれている。この3人はいずれもEUの経済制裁の対象だ。彼女たちの役割は? ロシア国民がこの戦争の本質と悪事を知るのを防ぎ、その抗議を避けることだという。フランス国際関係研究所(Ifri)のジュリアン・ノセッティ準研究員に話を聞いた。 
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ーー(マダム・フィガロ)手ごわい検閲にもかかわらず、ロシア人は当初からウクライナ侵攻に反対するデモを行ってきました。情報はどのように届くのでしょうか? 
(ジュリアン・ノセッティ)主にSNSと、TelegramやWhatsAppなどのインスタントメッセージアプリが使用されています。アプリを使っている人たちは、当局に目を付けられていることも認識しています。ロシア当局は、これらのアプリの普及を認識しており、長い間、アプリを制御、あるいはブロックしようと試みてきました。
 ーーFacebookは開戦の1週間後にアクセスを遮断されましたが......
  ロシア当局は10年近くFacebookを制限しようと試みてきました。この状況下で、これまで実行に移せないでいたことを断固として実施できる理想的な政治的正当性を見いだしたのです。 
ーーどういうことでしょうか? 
 ロシアはメドベージェフ大統領の時代の2010年代以降、インターネットの「主権化」を進めてきました。具体的には、通信経路を国が一元管理することで、ネットに流通するコンテンツや情報を統制することです。2019年12月に採択された法律に基づくプロジェクトは、非常に大きな経済的コストがかかり、ロシア国民に対する過酷な社会政治的対価をも払わせることになりました。2017年以降、モスクワをはじめとする主要都市では、デジタル領域を標的とした一連の抑圧に対して、数多くの抗議活動が行われてきました。 
ーーオールドメディアを対象とする法律もあります。 
 そうです。そして、ロシア政府は、ここ数週間で新たな一歩を踏み出しました。異論を唱える声を封じるだけでなく、SNSを含め、「戦争」や「侵略」など、事実を表現する言葉の使用を禁じ、法律で15年以下の懲役を課したのです。国営メディアも、クレムリンに近い実業家が支配する民間メディアも公式の発表に忠実です。前例のない、極めて流動的な状況です。 ロシアは鎖国状態です。このことは、数カ月後、あるいは数年後に、私たちがこの国についてどれだけ理解しているのか、という疑問を投げかけるでしょう。現在のロシア政権が存続したとしても、メディアやデジタル領域を封鎖し続けることができるでしょうか? 
ーー自由の残るインターネットが、オールドメディアを補填すると期待できるでしょうか? 
 この10年、「テレビ派の国民」と「SNS派の国民」の対立が鮮明になってきています。前者は、労働者や年金生活者を中心としたプーチン大統領の支持基盤。一方のSNS派は、主に若者と都会で教育を受けた人々で構成され、デジタル・アクティヴィズムの中核をなしています。しかし、テレビでロシアのナンバーワンメディアであることに変わりはなく、また、政府に楯突くことはない。そして、テレビの視聴者は、都会の若者以上に、投票所に足を運ぶのです。 
ーーこの情報戦の標的はSNS派の国民ですか? 
 主な対象は、ロシア人全般です。政府は、ロシア国民の耳にプーチン政権の正当性に異議を吹き込むような出来事についての情報流出を防ぐことを目的としています。 クレムリンのもう一つの標的は、当然ながらウクライナ人です。大統領が逃げる、あるいは死亡するといううわさをSNS上で流し、彼らと大統領との間にある信頼の絆を切り崩そうとしています。 最後に、ウクライナに対するロシアの侵攻は、ヨーロッパに対する政治戦争でもあります。私たちの事実関係の認識にある程度の混乱を起こし、法の遵守や表現の自由といったヨーロッパの政治的価値観から距離を置くように仕向けることも目的です。 
ーーこのプロパガンダはグローバルな問題だということでしょうか? 
 過去15年間、欧米人はテクノロジーが民主主義のイデオロギーも同時にもたらすという約束と恩恵を前提として、デジタル外交を行ってきました。しかし、2016年以降、米国の選挙運動へのロシアの干渉に見られるように、クレムリンは敵対的なシナリオに対抗し、目的を達成するための手段としてデジタルを利用しています。

 我々欧米人の目は曇っていたのかもしれません。テクノロジーは中立ではない。反民主主義的、権威主義的な目的に使用することもできるのです。今回の戦争でも、そのように使用され、重要な役割を演じています>(以上「FIGARO.JP」より引用)



 マスメディアは決して中立的ではない。人がマスメディアを創り上げている限り、その「創り手」の人の価値観が必ずマスメディアに投影される。人は必ず自分の目で観るからだ。
 ロシアのように当局によって情報統制されるなら、人による価値観の投影では済まされない偏向報道がなされる。その大部分は「報道しない」ことによる情報統制だ。つまり国民に情報を報せない、ことによる国民コントロールを治世者がマスメディアを通して行う。

 ロシア政府は海外株式市場への自国企業が上場するのを禁じた。ロシア政府は東側の経済圏の確立を目指すと宣言したようだ。グローバリストたちが中国やロシアに対して行ってきた投資や企業移転によるグローバル化はすべて瓦解した。
 自由主義陣営の経済圏に中国やロシアを引き込むことによって、中国やロシア社会が自由化し、それに引き摺られるようにして中国やロシア政府が自由化や民主化するのを期待していたが、すべては「無」に帰した。それどころか自由主義市場で蓄えた利益で軍拡し、自由主義諸国が築いてきた平和への挑戦を始めた。

 彼ら独裁者たちは国民の自由など少しも気にしない。彼らの権力と富が最大化することだけが彼らの関心事だ。独裁者の願望とは彼らの政治権力の拡大強化と、それらの権力を駆使して掻き集めた富を高く高く積み上げることでしかなかった。
 東西冷戦ではなく、ロシア政府は東西経済圏の対立だという。西側先進自由主義諸国と対峙すべく、ロシアを盟主とする東側独裁専制主義国の経済圏を構築するという。プーチン氏は何処までお目出度い人物なのだろうか。東側諸国の経済は先進自由主義諸国にパラサイトして存続しているに過ぎない、という現実を全くご存知ないようだ。

 ロシアにも経済学者や国際政治学者はいるだろう。なぜ彼らはプーチン氏に進言しないのだろうか。先進自由主義諸国を敵に回してロシアがウクライナを平定することは出来ない、とプーチン氏に現実を教えるべきだ。
 ウクライナ軍事侵攻以来、ロシアから10万人以上もの若者たちが出国したという。そのほとんどがIT企業などに従事する知識階層だという。彼らはプーチン氏のロシアに絶望して、プーチン氏の命が尽きるのを外国で待つのだという。決して故国を捨てたわけではない。

 知識階層の若者がゴッソリといなくなれば、ロシアは経済成長力を確実に失う。なぜなら先進自由主義諸国の企業が大量に撤退した後、ロシア国内の撤退した企業の工場を接収しても、それを稼働する技術力や部品調達力をロシア国内で獲得することが出来ないからだ。
 もちろん直ちに接収した工場を動かすことは出来ないが、知識層の若者たちに任せれば、何とか動かすことくらい出来るようになるだろう。しかし知識階層の若者たちがいなくなればそうした工場を稼働させることは困難になる。

 プーチン氏を支持している壮年から高齢層の国民もやがてウクライナでの戦争の実態を知ることになる。それでもプーチン氏を支持するだろうか。SNSから情報を得る若い層の言い分を拒絶している荘・老層も戦場から帰国した兵士たちから現実を聞かされる。
 ロシアが隣国で何を仕出かしたのか、現実を知れば愕然として反・プーチン運動がロシア全土で湧き上がるだろう。それはもはや如何なる教権力を行使しても抑え込むことは出来ない。仏教の経典(般若心経)に「真実不虚」という言葉がある。真実を虚にして「嘘の報道=プロパガンダ」でいかに国民を洗脳しようとも、決して真実は不虚ではない。プーチン氏が信仰するキリスト正教にはこのような言葉はないのだろうか。

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