ウクライナ侵略戦争はロシアに何をもたらすのか。

キエフへのロシア遠征軍が窮地に
 ロシアがウクライナに侵攻して、2週間以上がたち、南東部の侵攻は順調で中部に拡大しているが、ベラルーシからキエフを目指したロシア軍が、ドローン攻撃とウクライナ軍の善戦で、キエフ包囲の侵攻が遅れている。この戦争と世界構図を検討しよう。

 在米ウクライナ大使館へ外国人部隊志願の米国人は6,000人で、うち半数は兵役経験が無い等の理由で断念させ、およそ100名がポーランドに向かっているという。米国からの参加者は多くて1,000名程度になるようだ。
 ウクライナ軍の練度が問題であるが、それをカーバーするほどの能力がある義勇兵は、多くは来ないかもしれない。
 しかし、ウクライナ国民は、「ロシア撃退可能」が9割となり、それを裏付けているのが、現状の戦闘状況のようである。ゼレンスキー大統領も「われわれはすでに戦略的な転換点を迎え、目標に向かって、勝利に向かって進んでいる」という。そして、米傭兵会社は、すでに戦闘能力のある200人以上の傭兵をキエフに送っている。
 プーチンは戦争に負けると命が危ないので、勝っている局面でキエフ遠征部隊の弾薬が尽きる前には戦争を止める必要がある。

 また、露連邦保安庁(FSB)の情報機関のトップらを自宅軟禁処分として、ウクライナに関する誤った情報を報告した罪とした。そのほか、開戦に反対したロシア軍の将官8人前後がすでに解任されたようだ。政権の内部粛清が開始されて、この戦争の失敗を部下にかぶせている。
 逆に、ナビウリーナ中央銀行総裁は辞表提出したが、受領拒否されている。中央銀行の外貨準備の多くをロンドンなどに保管していたが、その資産を凍結されてしまった。侵攻を事前にナビウリーナ氏に知らされずに、大失態になっている。
 その心情をベラルーシのルカシェンコ大統領に、停戦は近くなったと話したような気がする。プーチンも自己の失敗を徐々に感じているようだ。
 ベラルーシ軍は、ロシアの要請でもキエフ遠征軍の支援を拒否し、軍の300人がウクライナ義勇兵として、ロシアと戦うという。軍の拒否でベラルーシからの補給ができなくなっている。しかし、プーチンは、強引に補給やキエフ遠征部隊の援軍をルカシェンコ大統領に求めた。このため、ベラルーシの参戦も考えられる。
 
 「人道回廊」で停戦したが、停戦時に補給路も安全になるので、補給が進むはずが、その後の戦闘でも激化していない。キエフ遠征軍の被害が大きく、補給もないようだ。
 戦車と一緒に輸送隊も多くのトラックに食糧や弾薬を積み込んでいたので、この物資がいつ尽きるのかは分からないが、ドローン空爆や対戦車ジャベリンや多数の兵器で、破壊が進んでいるようだ。1日10台を破壊したとすると、10日で100台になり、遠征軍の多くを破壊できる。それが証拠に、車列がなくなり、攻撃を避けるために森に退避している。一部は泥濘に嵌り動けなくなり、放棄した車両もある。
 しかも、ロシア製のイグラ型携帯型防空システム(MANPAD)がポーランドやルーマニアなどから多数、ウ軍に供与されて、ウクライナ軍将兵は使い慣れているので、それでロシア軍機を打ち落としているので、ロシア軍機の支援をキエフ遠征隊は受けられないようである。

 しかし、最新鋭の兵器が苦戦なのに出てこない。何かが変である。最新鋭戦闘機はどこにあるのか、古い防空システムを潜り抜けるはずが、どうもロシア軍近代化の多額の費用は、将軍や政治家の汚職で、ほとんど実戦部隊の装備には回っていないようである。軍備は古い。1980年代以前の兵器が多い。
 このため、キエフ遠征隊は2002年に期限切れの食糧を配布されただけで送り出されている。ロシア軍が弱いのは、将軍や政治家が汚職の限りを尽くしたからで、ウクライナは汚職に助けられたとも言える。
 
 反対に、欧米諸国から多量の兵器がウクライナ軍に供与されて、それが戦場で使われている。いつか、戦況が逆転しそうな予感がする。ロシアは、いらだち、米国からの兵器輸送に対して攻撃すると宣言し、また、同盟国軍であるイラン軍に、クルド人自治区アルビルの米軍基地を攻撃させたり、戦線拡大も視野に米国との対決をも辞さないようである。
 しかし、NATO加盟国もロシア軍に対する評価を一変した。通常戦では、ロシア軍には負けるはずがないとなった。ロシア、恐れるに足らずである。ソ連復興というプーチンの戦略全体が崩壊したようである。
 それと、戦車を守る歩兵を十分に付けないために、戦車は対戦車ミサイル・ジャベリンの餌食にされている。ロシア軍の戦術面での欠陥も指摘されている。
 そして、つい最近は、カラのトラックが放置されてるのをウクライナ軍が捕獲している。相当な物資が消耗されていることがわかる。

 これは、どうも、キエフ遠征部隊が窮地にあるような気がする。
 このため、早くキエフを攻撃して、キエフを陥落させる必要になり、攻撃を急いでいる。キエフ包囲のため、南に回り込みたいが、ウ軍の抵抗も強くて、なかなか進まないようであるが、キエフから15キロの地点まで来た。
 この状況で勝っている東南部のロシア軍は、中部地域に進軍して、キエフ遠征隊を助ける必要があり、急いでいる。それと誘導ミサイルがなく、無誘導の爆弾になり、航空支援もない。軍近代化費用が汚職されて、十分なミサイル数もないことが判明した。汚職で普通の弾薬もなくなる可能性も出ている。軍事予算の多くが汚職で豪華なヨットに化けていたようだ。
 このため、ロシア軍の装備も兵数が足りなくなり、シリア兵と装備を投入するが、言語が通じないので前線には投入できない。シリア兵だけで組織した軍団を作るしかない。または、戦線が伸び切っているので物資の輸送路の守備しかできない。ロシア兵と連携した戦闘はできないからだ。
 しかし、まだ、ベラルーシ軍の参戦の可能性や相当な物量があるので、キエフを陥落させることもできる。すると、親露の傀儡政権を立てられるが、もしキエフ遠征隊の部隊全滅になると、負けたことになり、プーチンの生命が危うくなる。
 その前には停戦する必要がある。キエフ陥落を目指すが、全滅はできない。この微妙な段階になっている。このため、ロシアとウクライナはオンライン形式による直接の停戦交渉を開始した。

 キエフの攻防が勝敗を決め、停戦になるはず。その条件は、キエフの帰趨如何であろう。
 しかし、ロシア軍がキエフを落として親露政権を立てても、ゼレンスキー大統領が、西部の都市リビウに逃げ、そこでゲリラ戦を長期に指揮すると、ロシアの国内経済が貧困化し、兵器弾薬も尽きていくことになり、長期戦での体力があるかどうかでしょうね。ということで、停戦がどこかで必要になる。
 GDPが世界11位の国家は、どこまでゲリラ戦を戦えるのかは分からない。GDPトップの米国でさえ、ゲリラ戦では10年持たないからだ>(以上「MAG2」より引用)



 津田慶治氏(国際・国内リアリスト)の論評を再び掲載した。ロシア軍は継戦能力を超えたようで、ベラルーシやシリアや中国などで傭兵を募集しているようだ。国内でも十代や二十歳過ぎの若者たちを徴兵して前線へ送り出しているようだ。
 ウクライナへの空爆にしても「無差別」化し、病院や学校などを重点的に破壊しているようだ。いずれにせよ、戦争犯罪を繰り返し犯しているロシアに侵略戦争を正当化できる理屈は欠片もない。

 それでもネットの板を拝見するに、ロシアを擁護する意見が多く見られるのは「遺憾」というより「奇異」な感じがする。それらは明らかに特殊な団体が特定の意図の下の書き込みではないか。
 たとえゼレンスキー氏がロシアを挑発(そのような事実はないが)したとしても、プーチン氏の侵略戦争を正当化できるものではない。ウクライナに侵攻したロシア兵たちは「ウクライナ侵略戦争」の実態を知っている。ロシア軍の士気が低いのは当然だろう。

 キエフ総攻撃はロシア軍の全滅に繋がる戦況ではないだろうか。総攻撃は砲撃から始まり、キエフの街を破壊してからロシア歩兵が戦車を先頭にして市街地へ進軍することになる。もちろん戦車は各種対戦車ミサイルで撃破されるだろうし、廃墟となった瓦礫の陰から歩兵は狙撃兵によって狙い撃ちされるだろう。
 そもそもウクライナ国境に進軍していたロシア軍19万人すべてがウクライナ国境を越えて進軍したのは戦術的に間違いだ。軍事評論家たちの多くは1:3にすべきだという。つまり前線で戦う軍は全体の1/4ほどで、残り3/4は兵站や後方基地を守るものだという。しかしロシア軍は100%が戦いに投入された。後方支援基地は脆弱化している。兵站や後方支援基地を攻撃されたなら進軍したロシア軍は補給を絶たれて降伏する以外にはないだろう。

 おそらくロシア軍は敗退する。ウクライナに高圧的な態度で武装解除を迫っていたロシアが「停戦合意」のハードルを下げ始めた。ロシア国内は先進自由主義諸国の経済制裁により50%ものインフレにロシア国民は直撃されているが、今後ハイパーインフレに見舞われるだろう。
 食糧自給率100%のロシアだが、それはロシア国内の市場経済が機能している場合の話だ。ロシアは広大な国家で、周辺部から都市部への物資輸送もままならなくなり、都市部の国民は深刻な食料不足に陥るだろう。そしてハイパーインフレは都市労働者を直撃する。国民のプーチン政権に対する不満は高まるだろうし、国営放送が嘘のニュースを垂れ流して戦争を正当化しているが、この高度な情報化社会で、やがて国民も戦争の真実を知るだろう。

 ほとんどゼロに近いが、ロシアが侵略戦争に勝利したところで、瓦礫の山と化したウクライナの地を手に入れても、ロシア国民は飢餓から逃れられない。先進自由主義諸国の経済制裁は続くだろうし、プーチン氏は僅かな期間延命するだけでしかない。
 そしてロシアにはウクライナ戦後復興の責任が覆いかぶさる。破壊した社会インフラや瓦礫と化した都市を復興するために、ロシアは重い賠償責任を果たさなければならない。勝利したとしても、その責務から逃れられるものではない。

 ロシアは財政破綻により国体維持が国難になり、最悪の場合は国家分割に見舞われかねない。沿海州はかつて中國の領土だった。そして北方領土は日本固有の領土だ。シベリアは国際石油資本が進出して、現地政府と話し合って利益の大部分をウクライナへの戦後賠償に充てざるを得ないだろう。
 敗戦したなら、ロシアの非核化も進むだろう。プーチン氏が核兵器の使用を仄めかしたロシアに核保有を国際社会は決して認めないだろう。プーチン氏はもちろん生きていればだが、国際司法裁判所で戦争犯罪人として裁きを受けなければならない。ロシア政府首脳も軍幹部も戦争犯罪を問われるだろう。戦争はロシアに何をもたらすのか、ロシア国民は真剣に考えなければならない。

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