ロシア人や中国人は他人と「肝胆相照らす」仲になれるのか。

<ロシアによるウクライナ侵攻に先立ち、米当局者はそれが現実化した場合、中国が台湾攻撃の可能性を念頭に洞察を求める機会と捉えるだろうと警告してきた。だが、侵攻開始から2週間近く経過し、プーチン大統領が仕掛けた戦争は習近平国家主席にとって侵略の工程表というよりも、同様の行動を思いとどまらせるように作用しているものと見受けられる。

戦力の優位だけでは勝利を得ることはできない
 台湾とウクライナには多くの点で大きな違いがあるが、いずれも米国と足並みをそろえる民主主義体制であり、独裁主義国家が自国の領土や勢力圏と主張している立場にあるため、しばしば比較の対象とされる。プーチン氏がかねてウクライナ侵攻をほのめかしてきたように、中国も武力による台湾統一の可能性を排除しておらず、最近では台湾周辺での軍事活動を活発化させている。
 しかし、ウクライナにおけるロシア側のこれまでの戦況は、戦力の優位だけでは犠牲者を最小限にとどめつつ迅速な勝利を収めるには不十分であることを示唆している。中国による侵攻の可能性を常に警戒している台湾の人々は、ウクライナでの戦争の初期段階でロシアが苦戦している様子に勇気付けられている。
 台湾のテレビ局でニュースアンカーを務めた経歴を持ち、現在は与党民主進歩党所属の立法院(議会)議員の林楚茵氏はプーチン氏が命じた戦争について、「中国が想像するほど台湾攻略は容易ではないというシグナルを中国に送るもので、自国より小さかったり軍事的に弱かったりする相手をミサイルで負かすことができるという誤った通説を打ち砕くことにもなる」と語った。
 ウクライナ軍はこれまでのところ首都キエフや他の戦略的要衝でロシア軍に抵抗し、ドイツや日本、シンガポールなど従来は慎重姿勢だった国々も含め、世界中の政府が前例のないスケールの対ロシア制裁に参加した。ロシア軍は集合住宅や欧州最大の原子力発電所さえも無差別に砲撃し世界にショックを与えた。ロシア側は軍事目標だけを攻撃していると主張している。
 ウクライナでの戦争を巡る中国の姿勢にも戦況とともに変化が見られる。中国の薛剣・在大阪総領事は、台湾における中国の敵対勢力に対しプーチン氏によるウクライナ攻撃は「大きな教訓」を含むもので、「弱者は強者にけんかを売るほど愚かであってはならない」と侵攻直後にツイートしていた。

中国もロシア支持一辺倒からトーンダウン
 中国政府はその後、表現をトーンダウンしている。中ロの友好関係に制限はないとした2月の首脳会談の共同声明に沿った形で、中国は国連でロシアを支持する一方、ウクライナの主権に支持を表明するとともに民間人の犠牲に懸念を示した。
 ただ、台湾に関する中国の言動は相変わらずタカ派的だ。中国の王毅外相は7日、ウクライナが主権国家である一方、台湾は中国の「不可分の領土」だとして両者の比較をはねつけた。さらに、台湾との関係を正式なものとするよう求める米国内の声に警告を発するとともに、インド太平洋版の北大西洋条約機構(NATO)構築を狙っているとして米国を非難した。プーチン氏がウクライナ侵攻を正当化するのにNATOの東方拡大を指摘したのに呼応する。
 全国人民代表大会(全人代、国会に相当)に合わせて記者会見した王外相は、米国の動きについて、「台湾を不安定な状況に追い込むことになるだけでなく、米国側にとって耐え難い結果を招くことにもなる」と述べ、台湾は最終的に母国の懐に戻ると主張した。
 ブルームバーグ・ニュースが元当局者や著名な中台関係ウオッチャーら計十数人にインタビューしたところ、具体的な評価にはまだ時期尚早と全員が回答した上で、プーチン氏が始めた戦争は中国政府に台湾への軍事行為を思いとどまらせるとの見方が大勢を占めた。その多くは、プーチン氏が迅速な勝利を達成できずにいることや、ロシア政府の国際的孤立、米国とその同盟国による団結した対応、米軍介入の可能性、国内の反応などさまざまな理由を挙げた。
 これに対し、ロシアによる今回のウクライナ侵攻が習主席による台湾侵略をあおるとする少数意見があるのも確かだ。その結果、経済制裁が科されたとしても中国には小さな代償だとし、米国が紛争に軍事介入するか疑問視している。さらに、プーチン氏の動きからは、強度に統制された政治体制の年老いた指導者は外部の識者には合理的とは考えられないようなリスクを進んで取る可能性が浮き彫りとなったという>(以上「Bloomberg」より引用)



 引用した論評はロシアのウクライナ侵略戦争により、ロシアとNATO西欧諸国との関わりが先鋭化している、と心配している。確かに戦争だから先鋭化するのはもっともだが、それは幻影からの目覚めでもある。
 プーチン氏は数々の侵略紛争を勝ち抜くことにより自信を得た。しかし、それは自制を覚えた良識人と、暴力で相手を従わせることに快感を覚えたガキ大将の違いでしかない。人の場合でもガキ大将とそうでない者との差は「自制」が働くか否かだけである。「自制」心がなくて、滅多やたらと殴り掛かる者が「強い」とされているが、実際に「自制」心を取り除いて戦えば、それほど大差あるものではない。

 国際社会はロシアのみならず中国を過大評価してきた。その過大評価する国際社会を見て、習近平・中共政府の中国も自身を過大評価している。その現れが「一つの中国」の主張であり「戦狼外交」だった。
 しかし私は終始一貫して「中国は張子の虎」だと主張してきた。確かに中国経済は世界第二位でGDPは日本の三倍近い。だが中国の主たる輸出製品は中国に進出した外国企業が生産したものだ。つまり中国経済は外資と外国企業による底上げ経済でしかない。

 そうした経済構造はウクライナ侵略戦争により先進自由主義諸国から経済制裁を受けたロシアに見て取れる。SWIFTの停止と先進自由主義諸国による経済制裁によりロシアから外国企業が相次いで撤退すると、ロシアは深刻なインフレに見舞われている。
 それのみならず外国企業の撤退によりロシア人の雇用が失われ、経済の落ち込み以上にロシア国民の貧困化が始まっている。それは直接的にロシア国民の生活を直撃し、今後プーチン政権に対する大きなリスクになるだろう。

 中国はGDPの実に半分近くを貿易に依存している。日本ではGDPの主力になっている国内個人消費は30%にも満たず、国内投資が30%近くを占めている。その国内投資の大半は不動産投資で、現在は崩壊過程に入っている。
 GDPの約半分を占める貿易にしても外国企業が生産した製品を本国や世界中のユーザーに輸出していて、たとえロシアと同様に外国企業が撤退し、その工場を中共政府が接収して生産したとしても、中国内で消費することは困難だ。なぜなら外国企業が製造する靴下は一足が数百円もして、中国人が買い求める一足百円以下で販売できる製品ではないからだ。

 中国経済の約半分が貿易依存で、その大部分が外国企業によるものだ。だから貿易収支が黒字で中国の国家統計で黒字が積み上がったとしても、その大半は外国企業に帰属するものでしかない。中共政府が中国の貿易黒字を誇るのはお門違いでしかない。
 もしも中国が台湾に軍事侵攻を行ってロシア並みの経済制裁を受けたなら、現在のロシア以上の経済ショックが中国社会を襲うだろう。中国の国営企業で黒字を計上している企業はまずないし、製品を輸出して黒字を獲得するなどということは夢のまた夢でしかない。中国は「世界の工場」というのは誤りで、外国企業に中国の土地を貸して多くの中国人を雇ってもらっていただけだ。そこで多少の技術や意匠を剽窃したかもしれないが、工業生産の核心となる技術に関しては外国企業は本国でしっかりと防衛している。

 ロシアはソ連が崩壊した後に「自由主義国」の体裁を装って先進自由主義国からの投資や企業進出を図って来たが、その実態は「遅れて来た改革開放」でしかなかった。企業進出した外国企業が撤退すると、その資産を接収するとプーチン氏は表明したが、接収して生産を続行しようとしたとこで、部品供給態勢や製品の販路たる海外市場なき製品では製造できないし、製造したところで無駄に終わるだろう。
 ロシアと中国は肝心のところで「相手」をバカにして来た。少し長くなるが伊藤博文のことを話す。明治初期、富岡に製糸場を建設しようとする話が明治政府で持ち上がった。フランスが製糸場建設の話を聞きつけ、フランスに製糸場の建設と操業をさせてくれ、と申し出た。明治政府は国庫が払底していたため、願ってもないとその話に乗ろうとする者が大勢だった。しかし伊藤博文は建設資金は当方でどうにかする、製糸機械と技師を心配してくれないか、とフランスに返答した。そうした経緯から富岡製糸場は「国営企業」として出発し、製糸機械を輸入してフランス人技師から操作方法を習い、やがて民間に払い下げて富岡製糸場は日本製造業近代化の先駆けとなった。
 つまり資本を自前で調達し製造原理をフランス人技師から習って日本人のものとしなければ日本の産業革命は根付かない、と伊藤博文は看破した。明治日本がなぜ先進諸国の仲間入りを果たしたか、それは技術を盗み取るのではなく、必死で習得して自分の身とし肉としたからだ。「技師」という言葉からして、ロシアや中国の技術者を指す言葉と根本から異なる。「技師」のことを中国語では「吉士」と書く。日本では技術者は技術を持った師匠だが、中國では「男子」という意味でしかない。それでは技術がその国に根付かない。相手をリスペクトしなければ、真に技術を移転することは出来ない。常に相手を下に見るロシアや中国では、人との付き合い一つにしても「肝胆相照らす」ことはあり得ない。

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