円安策から円高策に切り替えろ。

<円の総合的な実力が約50年ぶりの水準に低下した。国際決済銀行(BIS)が17日発表した1月の実質実効為替レート(2010年=100)は67.55と1972年以来の低水準となった。実質実効レートの低下は円安と物価低迷が相まって円の対外的な購買力が下がっていることを示す。原油など国際商品価格も高止まりしており、輸入物価の上昇を通して消費者の負担が増すマイナス面も目立ってきた。

 BISによると、1月の数値は統計のある94年以降で最低だった2015年6月の67.63を下回った。日銀の推計を基にすると円の実質実効レートは1972年6月(67.49)以来の低水準となる。外国為替市場では1月上旬に円が対ドルで一時1ドル=116円台前半と約5年ぶりの安値をつける場面があった。
 実質実効為替レートは貿易量などをもとにさまざまな国の通貨の価値を計算し、物価変動も加味して調整した数値。高いほど対外的な購買力があり、海外製品を割安に購入できることを示す。円の実質実効レートは円相場が初めて1ドル=70円台に突入した95年の150台が最高で、当時に比べ半分以下に低下した。日本円の名目レートは73年に変動相場制に移行しており、固定相場制だった72年当時と同水準まで円の実力は低下している。

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今村卓(丸紅執行役員 経済研究所長)
 かといって、実質実効レートを今より高くできていれば、そうなる政策を選んでいれば、購買力低下は避けられた、今の日本経済はもっと良くなっていたと考えるのも正しくないと思います。例えば2013年以降、日銀が金融超緩和を選ばなければ名目で円高になっていた可能性はあるとして、同時に日本企業の海外進出が加速してコスト増になる輸出は低迷し、雇用環境も景気も購買力も今より悪くなっていたと思います。購買力上昇は、他国との価格競争に巻き込まれないようにする日本の産業構造の転換、日本経済の生産性上昇を通じた高付加価値化を通じて個人所得が増えることから得られるのであり、円高だったならという発想は意味がないと思います。
2022年2月18日 0:16

柯 隆(東京財団政策研究所 主席研究員)
 為替レートはその国の経済ファンダメンタルズと産業競争力に大きく影響される。とりわけ実質実効レートは国際貿易によって影響を受ける。しかし、日本経済の内実を踏まえれば、実質実効レートの低下は必ずしも悪いことと言い切ることができない。輸出主導の経済という点について大きく変わっていないからである。為替レートというのは結果である。調整する必要があるとすれば、経済構造と産業構造である>(以上「日経新聞」より引用)




 上記引用した記事と、その下の経済評論家たちの「感想」を一読して頂きたい。何が書かれているか、読者諸氏にはお分かりだろう。
 日本「円」が下落して、「円」の国際購買力が1972年当時の半分になった、という本記事と、それに対する経済評論家二氏の「円安も悪くはない」という能天気な論評だ。これを読んでも「ああ、そうか。日本はまだ大丈夫なんだな」と考えているようでは円安大歓迎の無能経営者にしてやられるだけだ。

 もちろん評論家二氏は「日本経済」に関する円安コメントを求められたから「そう」答えたのかも知れない。「日本国民にとって円安は」と聞かれたのなら「生活に及ぼす影響は大きい」と返答したかもしれない。国際的な購買力が低下するのだから輸入物価は高くなる一方だし、現行の経済成長ゼロのままでは労働賃金は上昇しないから、国民生活は逼塞するばかりだ。
 だからといって日銀の異次元円安政策を止めて、政府が円高政策を打てというのではない。為替相場に介入するのは間違っているし、日本経済の根本的な解決策にはならない。何はともあれ、まずは成長する経済に戻すことだ。

 そのためにデフレギャップを埋めるべく財政出動して内需を喚起し、同時に個人消費を刺激し貧困者救済のために消費税を廃止する。そして産業界に対しては国内投資を積極的に行うように投資減税を行い、減税効果が出るようにするためにも法人税本税を元に戻す必要がある。
 国内産業基盤を強化するために研究開発に補助金を出したり、減税を行う必要がある。価格競争で海外製造業で負けないために生産性向上や新規製品開発などに「株式会社日本」で全力を注ぐべきだ。

 もちろん海外移転した製造部門を国内へ回帰させる必要がある。労働不足と称して外国人労働者を大量移民させようとする自公政権当時の法律を廃し、引籠りなどを積極的に社会復帰させるための労働政策を展開する。外国人労働者に対して行って来た各種政策を引籠りなどのニートに対して行うようにする必要がある。
 そして労働年齢を引き上げれば、労働者不足は解消するし、人手不足こそが労働賃金を引き上げる動機となる。春闘前に政府首脳が経営者に頭を下げるバカなパフォーマンスをいつまで続けるつもりなのか、それこそ産業政策の無能さを自ら吐露しているのと何ら変わらないではないか。

 円高は輸出産業には厳しいが、輸入に頼っている石油や食糧などの消費者物価の引き下げにプラスに働く。日本経済に占める割合は消費支出が半分を占め、外需が14%ほどでしかないことに照らし合わせれば、経済成長に必要なのは円安ではなく、円高だ。円安で輸出競争力を保持するなど、国民生活を犠牲にする邪道でしかない。
 インバウンドが増えるのは円安で日本が買い叩かれている証拠でもある。もちろん株式投資などに外国投機家が群がるのも日本が買い叩かれているからだ。日本政府が先頭に立って中小企業も含めた国内企業を守り、産業基盤を強くするために社会インフラ投資すべきだ。すべては国家と国民のためだ。決して外国投機家たちのための「構造改革」と称する政治などやってはならない。経済成長すれば自然と労働者賃金も上昇する。だから野党は「所得倍増計画」を国民に提示すべきだ。

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