プーチン氏に喝采するロシア国民は経済制裁を甘受しなければならない。

プーチンはほんとうは「何を」考えているのか
 ウクライナ情勢が世界を騒がせています。  そのような中、「そうは言ってもプーチンは戦争をしかけないだろう」という観測を表明する専門家の方々が増えています。
 果たしてそうでしょうか。 
 確かに、ロシア政府はウクライナ東部の国境近くに展開していたロシア軍部隊が演習を終え、部隊の一部が撤退を始めると、2月15日に発表しました。  また、クリミア半島に展開する部隊も撤収を始めたとNHKなどが報じています。  ロシアのプーチン大統領は、ドイツのショルツ首相とモスクワで会談し、米欧と協議を継続する姿勢を示しています。ロイター通信によれば、ロシアのラブロフ外相は、プーチン大統領に「対話継続」を進言したとも報道されています。  一時は16日にも侵攻開始という観測も出ていただけに、目先の懸念はひとまず後退したと解釈できるでしょう。  しかしながら、ロシア議会は15日に、ウクライナ東部にあるドネツク人民共和国と、ルガンスク人民共和国を独立国として認めるべきだと、プーチン大統領に要請しています。これは、緊張緩和の流れに逆行する動きと言えるでしょう。  情勢は依然として不透明で、またロシア国内の動きも、一枚岩ではないように見受けられます。  「ロシアにはもともと戦争をする気はない」という見方も根強くあるのはどうしてでしょうか。

プーチンの「謀略」
 軍事的な脅威をちらつかせ、西側諸国から「譲歩」を引き出す。こうした手法は「瀬戸際外交」と呼ばれ、プーチン大統領の「十八番」とも言われています。  今回のウクライナ問題についても、アメリカがバイデン政権になって、リーダーシップを欠いているという、西側諸国の「隙」を狙った「高度な外交戦術」という側面があるのは否定できません。
 ウクライナ軍の兵力は約25万人。強力なロシア軍といえども、簡単に勝てる相手ではありません。  まして、ウクライナはユーラシア大陸ではロシアに次ぐ2番目の面積を誇ります。  この広大な国土を占領統治するのは、ロシアにとって大きすぎる負担です。現在のロシア軍の兵士数では、占領統治はおそらく不可能だと思われます。  そのため、ウクライナとの「全面戦争」は、ロシアといえども「無謀」と言って過言ではないと思われます。実際、水面下では、ロシアは米国・バイデン大統領やフランス・マクロン大統領、ドイツ・シュルツ首相と交渉しています。  これが、軍事的な緊張は「プロレス」に過ぎず、「外交交渉」こそ真の目的という見方のほうが、現実的だと考えられているゆえんです。  ただ、本当に「プロレス」と考えて良いのでしょうか?

プーチンが考えている本当の侵略作戦
 西側諸国の予測通りに行動してくれるなら、こんなに楽な話はありません。  相手は、「あの」プーチン大統領。きっと今回も、あらゆる手練手管で、西側諸国を翻弄してくるに違いありません。ロシアのウクライナ侵攻はないと、本当に断言していいのでしょうか?  
 筆者は、ロシアによるウクライナ侵攻は「あり得る」と考えます。  それどころか、もしプーチン大統領が本気なら、すぐにでも侵攻するだろうと見ています。  なぜなら、プーチン大統領には、「いますぐ」ウクライナに侵攻するべき「理由」があるからです。  その1つ目の理由が、「ロシアの年金問題」です。  戦争だ、軍事だ、という話をしていたのに、急に「年金問題」が出てくることに、違和感を持たれるかもしれません。ただ、これがいまプーチン大統領にとって大問題となっているのです。

プーチンを追い詰める「ロシア版年金問題」
 世界で断トツの高齢化社会である日本は、公的年金制度をどうするかという問題を抱えていますが、ロシアにも同様の事情があります。  ロシアの平均寿命は約73歳と、比較的短い部類に入ります。  ただ、そのロシアも「高齢化問題」に直面しており、2030年までに、人口に占める65歳以上の割合が20%近くになると予測されています。  それを受けて、プーチン大統領が実施したのが、「年金制度改革」でした。  女性で55歳、男性で60歳だった年金支給開始年齢を、女性60歳、男性65歳まで段階的に引き上げることを、プーチン大統領は発表します。  しかし、これによってプーチン大統領は、ロシア国民からの反発を招いてしまいます。

プーチンの「焦り」
 大規模な反政府デモが発生したほか、2014年の「クリミア併合」時に約89%もあったプーチン大統領の支持率は、これによって、約63%にまで低下してしまいます。  その結果、プーチン大統領のロシアにおける権力基盤は、大きく揺らいでしまいました。  プーチン大統領にとって、「挽回」のチャンスがどうしても欲しいという状況です。  そのため、得意な外交によって、目に見える成果を獲たいというのが、プーチン大統領の本音だと考えられるわけです。ただし、プーチンがウクライナに「本気」になるのはそれだけが理由ではありません。後編記事『プーチンの「本音」を知ればわかる、ウクライナ「楽観論」が危ない「3つの理由」』では、さらなるプーチンの本音を見ていきましょう>(以上「現代ビジネス」より引用)



 プーチン氏は国民の不満をウクライナへの侵攻で逸らそうとしている。もっとも愚劣な独裁者が陥るドグマに、プーチン氏はも陥ったようだ。
 プーチン氏にはクリミア半島の併合で支持率を80%台に回復した成功体験がある。だから今回もウクライナの一部に軍事侵攻して「併呑」すれば、国民から熱狂的な支持を得られる、と思い込んでいるのだろう。

 しかし前回成功した手法が再び上手くいく保証は何もない。ウクライナ東部二州の一部新ロシア派が支配する地域を「独立国」としてロシア下院議会が承認した。それを受けてロシア大統領・プーチン氏が新ロシア派が支配する地域の独立を宣言した、というのが今の段階だ。
 今後「独立国からの要請」でロシア軍がウクライナ国境を越えて絵くらいな領内へ入る段取りだとしたら、それはプーチン氏の「終わりの始まり」でしかない。なぜならウクライナ東部地域へのロシア軍の侵攻は許されない国際法違反の「侵略」に他ならないからだ。

 米国よりも欧州諸国は「口実を設けて侵略する手法」には敏感だ。二度にわたる世界大戦はそのようにして始まった。同時にそのようにしてドイツ帝国もヒトラーも滅びた。プーチン氏も同じ道を歩んでいる。
 ただウクライナの一部をロシアが首尾よく併呑したとして、ロシア国民の年金問題が解決するわけではない。「独立国」を併呑したなら、ロシアはその地域住民の食料確保や社会インフラ維持の責任がある。そのためにロシア政府は財政支出せざるを得ない。

 ウクライナ東部二州の一部地域が潤沢な石油産出地域とか、金鉱があるというのではない。ロシアは「お荷物」を抱え込むだけだ。しかも抱え込んだための欧米先進諸国から経済制裁を受ける。昨日の演説でバイデン氏はプーチン氏やその側近に金融制裁を科すと明言した。
 今後、現実的にロシア戦車などがウクライナ国境を越えて侵攻したなら、ロシアのSWIFTコード停止措置を講じるかも知れない。そうすればロシア経済は頓死する。なぜなら石油や天然ガスの輸出がロシア経済の基礎だからだ。ドル基軸通貨を介して行われているWTO加盟国への輸出の道が絶たれる。もしもロシアが中国の「元」で決済してしても良い、と判断すれば、中国との取引は継続するかもしれない。ただし、中国の「元」を受け取ったところで、「元」で外国から輸入する物資の決済として支払うことは出来ないが。

 ロシアはプーチン氏が考えているほど「大国」ではない。そのGDPは韓国以下だ。産業も軍需産業以外に見るべきものは何もない。先端技術で世界の一角を占めている、という状態でもない。つまり基礎素材でも先端部品製造でも、ロシアは世界から置き去りにされている。
 ただ70年以上も前のローテク核兵器を大量に保有しているに過ぎない。しかも核兵器は「大国の象徴」でしかなく、実戦で使用できない金食い虫だ。実戦で使用すれば世界は終わる。つまり自国も終わる、だから使用不可能だ。実戦に使用不可能な、大国の象徴でしかない核兵器に毎年大枚を注ぎ込む国連常任理事五ヶ国やインド、パキスタン、北朝鮮などは愚かの極みだ。

 プーチン氏が誇る戦車などの兵器や核兵器を幾ら保有していても、ロシア国民の不満が解消されるわけではない。プーチン氏が採るべき道は軍需に注ぎ込んでいる予算を民需に回して社会保障制度を充実することではないか。
 まさかウクライナを占領して中国がウィグル人を奴隷として使役しているように、ウクライナを奴隷として使役して、ローマ帝国時代のローマ市民のようにロシア人に奉仕させるつもりなのか。そんなことなど出来はしないし、現代で通用する話でもない。ただ世界で唯一中共政府の中国では通用しているようだが。

 だからウクライナ侵攻でロシア国民が手に入れるものは何もない。ただ「大国だった」という自尊心を一瞬だけ満たされるかも知れない。しかし、その代償として世界からの経済制裁を受け、長く続く窮乏生活を耐えなければならない。年金に対する不満どころではなくなるだろう。
 他国を侵略する自国の独裁者に拍手喝采した代償を、ロシア国民も払わされることになる。そのことを理解して、ロシア国民はプーチン氏に喝采を送ることだ。

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