ブタ心臓のヒトへの移植がもたらすものは。

<米メリーランド大学は10日、人体が拒絶反応を起こさないよう遺伝子操作された豚の心臓を米国人男性に移植する手術を成功させたと発表した。豚の心臓を人間に移植するのは世界で初めて。米国では臓器の不足が深刻な問題となっており、豚の臓器の移植に期待が高まっている。

 7日に移植手術を受けたのはメリーランド州に住み重い心臓病を患う57歳の男性。手術は8時間に及んだが、体調は良好だという。手術を行った医師は「手術は成功し見た目も正常だが、あすどうなっているかはわからない」と述べ、経過を注視していく方針だ。
 東京慈恵会医科大学の小林英司特任教授(移植・再生医学)は「画期的な出来事だ。心臓のような生命維持に直接関わる臓器を豚から移植し、少なくとも数日間生存できていることの医学的な意義は非常に大きい」と指摘する。
 米国ではドナーが不足している。米保健資源事業局によると現在約11万人の米国人が臓器移植を待っており、毎年6千人以上の患者が移植を受ける前に命を落としている。人間と似ている臓器を持つ豚の心臓や腎臓などの移植研究が進んでいた。 小林特任教授は「今後は患者の容体を注視する必要がある。短期的には拒絶反応が起きないよう制御できるかが重要だ。長期的には、豚の臓器を移植することによって新たな感染症にかかるリスクがあるのか、そして何より患者の生活の質がどのくらい改善するのか確認しなければならない。人工心臓による治療などと比べる必要があるだろう。臓器移植を待つ患者の選択肢が増えることを期待したい」と話す >(以上「日経新聞」より引用)



 「ブタ」とは人を罵るときに使われる動物の名だ。イスラム教圏を除き、多産で飼育しやすいことから家畜として食肉用に世界中で飼育されている。少し古いが2014年の統計では世界で飼育される家畜を動物別にみると、牛は14.7億頭、豚は9.9億頭、羊は12.0億頭、山羊は10.1億頭などとなっている。
 その豚の心臓が心臓移植に用いられた。米メリーランド大学で重い心臓病を患う57歳の男性に豚の心臓を移植手術を行ったという。臓器移植として再生iPS細胞を使った臓器製造とその移植が待ち望まれているが、なかなか臨床の段階に到っていない。重篤な疾患を臓器に抱える患者にとって、豚の心臓移植は一縷の望みとなるののは確かだが、前途に多難な課題が山積している。

 まずヒトでないブタの臓器を移植して、うまく定着するのか。さらに「人-人」移植よりも強く起きると予測される拒絶反応をどのようにして乗り越えるのか。
 確かにブタは成長が早く、様々な大きさの心臓を手に入れやすい。ブタの感染症を臓器と共に持ち込まないか、という危惧は臓器移植用の「無菌飼育」ブタを育成すれば防げるが、ブタの利点とされる成長スピードの速さが逆に移植後にヒトの成長スピードと同化するのか、という疑問もある。

 ブタの心臓を形成する細胞のDNAはブタのものだから、ヒトとは異なる成長時計が組み込まれている可能性がある。心臓という臓器はブタから取り出せるが、細胞の段階ではあくまでもブタの心臓だ。遺伝子レベルの「ブタからヒトへ」の移植が必要なのではないだろうか。
 記事によると「手術を行った医師は「手術は成功し見た目も正常だが、あすどうなっているかはわからない」と述べ、経過を注視していく方針だ」という。「東京慈恵会医科大学の小林英司特任教授(移植・再生医学)は「画期的な出来事だ。心臓のような生命維持に直接関わる臓器を豚から移植し、少なくとも数日間生存できていることの医学的な意義は非常に大きい」と指摘する」が、手術を受けた患者にしてみれば数日の命のためだけにブタ心臓移植を受けたわけではないだろう。

 医学の進歩のために冒険が必要なのは理解できるが、患者を「踏み台」にして良いのか。ブタの臓器がヒトの体内で、ヒト細胞に同化していく確実な検証実験データが積み重ねられているのか。そして異種動物から移植した臓器に起きるだろう想像を絶する激しい拒絶反応に対処する薬剤の開発が出来ているのか。
 米メリーランド大学ブタ心臓移植チームの準備態勢がいかなるものなのか、一切報じられてないため何も分からない。かつて、札幌医大で日本で最初の心臓移植手術を医師が行ったが、その際にも「功名心」から敢えて冒険を行ったのか、という批判が巻き起こった。日本に「木に竹を接ぐ」という諺がある。「木と竹のように性質の異なったものを接ぎ合わせる。 前後のつじつまが合わないこと、不調和なこと、つり合いのとれないことのたとえ」だが、そうしたことにならないことを願う

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。